浜面仕上は思う。
ああもし隣にいるのが俺の彼女(口数少なくて健気な子を希望)で、
スクリーンに映し出されるものが当たり障りのない大作映画とかであったなら。
いわゆるデートと呼ばれるものになったのになあ、と。
「浜面、浜面。こういう時ポップコーンは両者の間に置くようにするのが超普通なんです。
そんなだから浜面は浜面なんですね」
浜面の隣に座る少女――絹旗最愛はパンフレットから顔を上げるなりそう言った。
両手はパンフレットから離さず、顔だけをこちらに向けて足ぶらぶらさせている。
どうも食料に手が届かないのが不満らしい。
「お前キャラメルポップコーンは邪道とかいってたじゃねえか」
「浜面がそれしか買わないからいけないんです。わかっててやってるんならとんだ超陰湿男ですね」
「言いながら置いた直後に食ってる奴が何を。 ……おい、あんま食いすぎんなよ、最後までもたねーぞ!」
「無くなったら買いに行けばいいんです浜面が。ああでも外の光が入ると超嫌なので扉は開けないように」
「へいへいこちとら無能力だぜちくしょう! 無理だよんなこたぁよおおおおおお!!」
絹旗最愛は考える。
あれよく考えたら学生証さえあれば浜面超用無しですね。
……ああでも一人だと微妙なラインでした。
浜面は黙ってポップコーンとジュースを買ってくるだけならいいのに、と。