事の発端は上条少年のこんな一言だった。
「神裂ってさ、普通だったら今頃ガッコの制服着てんだよなぁ…」
その時たまたま話していた土御門はもとより、何処からともなく現れた青髪ピアスに何故か吹寄まで交え、異様な盛り上がりを見せたとか見せなかったとか。
その一部を割愛しつつご紹介しよう。
「そいや、小萌センセの制服姿って想像できないぜい」
土御門がふと思い出したように呟いた。
「言われてみれば…」
「ロリでヘビースモーカーでも学生時代があったはずやもんね」
「むしろ無きゃ困るだろ」
口々に思い付いたことを言う面々。
「幼稚園の頃から成長止まってそうやん、小萌センセって」
想像してみる。
幼稚園生ルックの小萌先生。
黄色い帽子に同じ色の小さなバッグを下げ、にっこにこの笑顔で、その胸元には『つくよみ こもえ』と書かれたチューリップ型の名札が……、
「…………」
そこまで想像した。
瞬間、皆一様に口許を押さえ、やけにリアルな表情になりそこへ脂汗を浮かべながら、
「「「「…やばい…」」」」
と声を揃えて呟いたとか。
「お、落ち着くんだぜい、れれれ、冷製になるにゃー…!」
「お前が落ち着け、冷やしてどうする」
違和感が無いのが恐ろしい。
「わ、忘れるんやー!」
「とりあえず次行きましょ、次っ」
戦々恐々としていた男衆に手を叩くことで先に促す吹寄。
本人としてもこれ以上はヤバイと認識したらしい。
「中学は…セーラー?」
小首を傾げながら上条が提案する。
「時代的に考えれば妥当な線だが…正直小萌先生の年齢を明かすのが怖いにゃーマジで」
「セーラー服…お嬢様校かしら?」
お嬢様という単語からイメージを膨らませてみた。
桜舞い散る春の頃。
校門から校舎へ続く道を優雅な動作で歩くセーラー服の小萌。
『小萌お姉様っ』
そんな小萌に歩を早めて歩み寄る後輩が一人。
『もー、はしたないですよー? あ…』
半ば小走りで近づいて来た後輩を軽く窘め、あることに気付いた。
『リボンが曲がっていてよ? ですー』
微妙に曲がったリボンを直そうと手を…、
手を…、
手…、
「……ぷっっっ! と、届いてない…くくっ」
「ないにゃー、ぷぷっ…絶対にないにゃー」
「……! ……!」
「うふっ、ぁ、あはは!」
今度は揃って大爆笑である。
妄想というか想像の世界にも関わらず。
流石に失礼な気もするが今の四人を止めるものは誰もいない。
「まずいぜい、腹筋崩壊的な意味でこれ以上は危険と判断して小萌先生の話題は切り上げるにゃー」