いつも不幸だーと叫んでいる少年。
いつも通り昼休みに鞄を覗くといつもあるはずの弁当箱が無く、売店に行こうにも財布の中身はカラカラと干し草が舞う状態。
それを確認して不幸だぁーっと叫んだ所で近くのクラスメイト(女)からお弁当作りすぎたという理由から弁当を貰って何時ものメンバーと席について一口食ったとき。
「なぁ、かみやん」
「んぁ」
弁当箱のメイン。ハンバーグを口に含みながら主人公―上条当麻は答える。
「フラグ回収はいつするんだにゃー」
向かって右側。3バカの一角、土御門元春の口から出た一言に上条は頭の上に?
を並べる。
「ダメやて、かみやんが回収する訳ないやんか」
さらなる追撃に上条は更にこんがらがる。
「んくっ…。フラグってなんの話しだ?」
咀嚼していたハンバーグを飲み込み、質問をする。
「ありゃ…。やっぱり気づいてないにゃー」
「予想はしてたんやけど…、あいかわらずやなぁ」
と二人はパンを頬張る。
「お、おい、だからなんの話しだ?」
上条の質問を放置して二人はまた別の話題で盛り上がり出す。
仕方なくまたお弁当を箸でつつきながら食べ始める。
「うん、うまいな」
ぼそっと口から本音が飛び出すと少し周りが静かになった。
ふと見渡すと目の前で【幼女とメイドどちらがいいか】で言い合いをしていた二
人と、数人のクラスメイトが止まってこちらを見ている。
「…どうした?」
「かみやん、やっぱり酷やで」
「やっぱりフラグ男は違うぜぃ。また一つフラグを建てやがったにゃ」
二人は泣きながら上条を殴り始める。
周りでは男のクラスメイトが今や今やと参戦の時を待っている。
「ふこーだぁー!」
今日もクラスにはその声が響き渡った。
殴られた頬をナゾりつつノロノロと帰宅の途につく上条。
「フラグってなんだ、なぜ殴られなきゃいけない」
「ね、ねぇ」
「だぁー、今日も不幸だ」
愚痴をこぼす上条の少し後ろ。
小さな女の子が後ろから声をかけてくる。
「んぁ、どうしたんだ? 迷子か?」
「違うよ、お兄ちゃんが落としたから持ってきたの」
と少女は携帯電話を両手で持ち上げる。
上条は自分の体を片手でまさぐりながら携帯電話が無いことを一応確認して、自
分の携帯電話を受けとる。
「ありがとな」
「いいよぉ。あ、お兄ちゃん飴あげる。」
「いいのか? サンキュー」
と笑って言うと少女は恥ずかしそうに後ろを振り返り走っていった。
貰った飴を早速舐めながら少女を見送る。
「ん? ありゃ…旗か?」
その少女の背中の部分、さっきまではなかった、小さな赤い旗が目に入る。
「なんだありゃ?」
不思議に思いながらも、また家に向かって歩き出す。
少し歩いたところで、先ほど少女が届けてくれた携帯電話が振動しているのに気
がつく。
ポケットから取りだし、画面を確認するとそこには【御坂】と着信を示す文字が
書かれている。
小さくため息を吐くと、仕方ないといった感じで通話ボタンを押す。
『あ、つながった。もしもーし御坂さんですよ』「はいはい、なんですか」
「はいはいってなによっ、まぁいいわ、ねぇ暇よね?」
「……いや、私上条当麻は大変いそが『今から買い物付き合って』
上条が断りを入れようとすると間髪入れずに御坂が用件を言って通話を切る。
「……はぁ」
とため息を吐きつつ律儀に待ち合わせ場所へと進路を変えた。
(インデックスは冷蔵庫の中身だけでも大丈夫だろ、いざとなれば小萌先生とこ
行くだろうし)と安易な考えをして帰宅をやめる。
「あっ、きたきた、こっちこっち」
常盤台のスカートをヒラヒラさせながら元気よく手を振る少女が一人。
「遅いじゃない、女の子を待たすなんて」
「は? 時間通りだろ」
と携帯電話の時計に目をやる。
時刻は四時半。上条が聞いた約束の時間も四時半。
「はぁ? 今はもう50分よ」
御坂は近くにあった時計を指さす。
確かに時計は4時50分を指している。
「あー…。それはわるい」
と珍しく上条は素直に謝る。
「いっいいわよっ、別に。さっ行くわよ」
と御坂は踵を返すとショッピングモールの方へと歩き出した。
「おっおい」
と御坂のあとを追おうとする上条だったが、ふと御坂の背中にある物が見えた。
(フ…フラグ…だよな…)
流石は常盤台の生徒、ファッションが違うな。と思っていると、御坂が振り向き、手招きをする。遅れている上条を呼んでいるようだ。
「あぁ…わるい」
と上条は歩き出す。
着いた先は、女性服売場。
御坂はセール品の中から一着一着丁寧に眺めながら自分に合う服を探している。
上条はと言うと、御坂より少し後ろ、御坂が良さそうな服を自分の体の前に合わせてどう?と聞いてくるのを紳士に対応するだけだ。
そんな上条はふと魔が差してしまった。
「なぁ御坂?」
「なっなによ。」
「背中のその旗はなんなんだ?」
「はたぁ?」
御坂は近くの鏡に背中を向けて後ろをのぞき込み、旗を確認する。
「なにもないじゃない。」
少し呆れたように言う。
「へ? じゃぁそこにある旗は?」と上条は御坂の背中にある旗に右手を伸ばし掴んだ。
するっと旗は御坂の背中から抜けると、上条の手の中に吸い込まれていく。
上条はそれをじっと見つめ、無くなったを確認してから御坂に向き直る。
「あんた大丈夫?」
少しぼーっとしてい(るように見え)た上条を心配そうに御坂が覗き込む。
(うわっ)
上条が少し後ずさりする。
「だっ大丈夫だから。」
「そっ…ならいいけど。」
と御坂はまた服を見始める。
上条は御坂を眺めながらぼーっとしている。
(っく、落ち着け上条当麻。相手は中学生だ、一種の気の迷いなんだ。)
上条は旗に触れた瞬間から御坂に対する感情が少しずつ変わり、今では完全なloveに変わっていた。
(落ち着け、旗を触ってからなんだ、右手で触ったから異能の力なら消えてるはずだ。…って事はこの感情は本当の…。)
などと御坂の後ろ姿、視線の先は腰あたりを眺めるように考えに耽っている。
(いっそこの感情はloveじゃないんじゃないか? そうだ、気のせいだ。)
と考えを纏めたところで、御坂が可愛い服を見つけたのか上条の方を向いて似合う?って視線を送ってくる。
ちょうど思考が終わったところで質問され、さらっと出てきた言葉が。
「美琴は可愛いんだから何着ても似合うと思うぞ。」
御坂は顔が真っ赤になるとバカっと呟いてまた洋服の方へ向く。が、一向に服を探そうとはしなかった。
上条はと言うと、自分の口から出た言葉に信じられないといった感じで唖然としている。
「ねっねぇ…。」
「な、なんだ?」
「かっ可愛いって…ホント?」
御坂が先ほどの服を持ったまま聞いてくる。
「…本当だ、美琴は可愛いぞ。世界一だ。」
上条は一度ため息を吐くと、思ったままに言う。
世界を飛び回りいろいろな女性(主に修道女と学生)を見てきた上条の完全な贔k…ごほん。素直な意見だ。
また御坂が赤くなるのが後ろからでもわかる。
「それってその…えっと…。ありがと…。」
「素直に言っただけだが…どういたしまして。」
御坂はそのあとまともに服を見ることもできず、手にある一着をレジに持って行く。
レジを通して値段が表示される。
財布を開けたところで、横からすっと手が伸びて、そのまま一万円札を置く。
レジにいた従業員は一万円お預かりさせていただきます。と言うとレジにしまい、お釣りを手の主―上条へと渡す。
「っえ、あっ。」
「可愛い美琴へのプレゼントだ。」
と、上条は御坂の頭を右手でポンポンと二度軽く叩き、手を握って歩き出す。
「どっどこ行くのよ。」
「あ…。そうだな、どこ行く?」
「っえ…あー。あ、ゲームセンターは?」
「ゲーセン? 美琴と行けるならどこでもいいよ。」
上条は御坂に向きながら笑顔で言う。
場所は変わってゲームセンター。
あの地下にある場所だ。
御坂はここに来る間だ、ずっと下を向いたまま照れているようだった。
理由は簡単、手を繋いでいるから。
上条はゲームセンターに着くなり、奥のプリクラまで一直線に向かう。
「撮るぞ、ほら。」
とプリクラの機械にお金を入れて御坂の肩に手を回す。
それで御坂はやっと現状を把握した。
「っえ…なんで…。」
「美琴、笑えよ。」
と上条は御坂の頬に自分の頬をくっつけて、カメラに視線を向ける。
カシャっと機械音の後そんな感じで続けて三枚撮り、上条はペンを使って色々書いている。
無論、その間も御坂の左手を右手で恋人繋ぎをしたまま。
少しして出てきた写真を上条は丁寧に切り取って御坂から携帯を借りると、携帯の同じ場所に写真を貼る。
「なっ…。」
「うむ、上出来だ。」
満足そうに携帯を返すと残ったものは自分のポケットにしまい、次は何をしようかとあたりを見渡す。
「あ…。」
ふと上条の視界に入ったのは有名な音楽系のゲーム。
「美琴、これできるか?」
「え? あっうん。」
と御坂が少し惚けた感じで言う。
その視線の先には携帯に貼られたプリクラがあった。
「よしっ、するか。」
と御坂をゲームの前において、両替をしに行く。
………。
……。
「まあまあだな。」
と感想をいいながらギター型のコントローラを所定の位置に置いて上条は携帯に目をやる。
電話が一通。
留守電も吹き込まれており、聞いてみるとインデックスから。
内容はお腹空いたから小萌の家に行ってくる。との事。
「美琴。今日はまだいけるか?」
「行けるけど、なに?」
「よし、行くぞ。」
と上条は御坂の手を引っ張りながら自分の家へと歩き出す。
さて、今日、御坂が寮に帰れるかどうかはまた別のお話で…。