「あれ、あそこにいるの神裂だよな?携帯なんか睨みつけて何やってんだ?」  
と、呟いたのは上条当麻。  
なんやかんやで事件に巻き込まれたりフラグを立てたりするこの話の主人公。  
そしてその視線の先にいるけったいな格好をしているのは元天草式十字凄教の女教皇で  
現在はネセサリウス所属の魔術師、それに加え聖人でもあるかんざきさんじゅうはっs  
 
 
 
 
 
フルネームは神裂火織、18歳のピチピチギャルだぞ、エヘヘ☆ミ  
 
 
 
 
変な電波と混線した様だがこの二つを足して割ったらちょうどいいくらいの説明になるだろう。  
まぁその神裂火織と呼ばれる少女(異論は認めない)が携帯電話をじっと睨みつけたまま右往左往してるのであった。  
(んー、なんかよくわからないが困ってるのか?最近の携帯は無駄に機能に凝ってるのとかもあるからなぁ)  
といつものように助けに行っちゃうカミジョーちゃん、立てたフラグは数知れず  
「よぉ神裂、どうしたんだ?何か困ってるみたいだけど」  
「――っ!べ、別に何も困ってなどいません最新の電化製品だとまだまごついたりしますが携帯電話くらいならもう余裕で使いこなせるのですからちょっと新しめの学園都市製携帯電話を渡されたくらいで問題ないのです馬鹿にしないで下さい」  
と息継ぎもなしにまくし立てる神裂さん(18歳)まるで適齢期を過ぎて焦っている嫁き遅れくらい焦ってます。  
「あーわかったわかった。とりあえず着信きてるみたいだし出ないのか?」  
「それくらいわかってます、今から出ようと思っていたのです」  
と言ったもののそこにはコール音がむなしく響くだけであった。  
えーっととか、確かここをとか何とかしようとはしてるのだが如何せん学園都市謹製の携帯電話  
iPh○neですらまともに扱えない彼女にとってそれは天使よりも手ごわい敵ともいえるであろう。  
手間取っていることに対する焦りなのか上条さんに見つめられているせいなのか彼女の顔は段々と赤く染まっていく。  
(なんか色っぽいよなぁ。これで18って言うんだからなぁ。小萌先生といい女の年齢ってのは凄いもんだなぁ)  
と明らかにイレギュラー二人を持ち出して女性全般に当てはめたりしながら彼女の方を眺めていると  
その場を支配していた電子音が鳴り止み、次にその場を支配したのは沈黙であった。  
 
「………」(まるで聖母かの如く慈愛に満ちた視線を向ける上条さん)  
「………」(つい、と顔を背ける神裂さん)  
 
「えーっと、その、なんだ着信履歴から掛けなおしてみるってのは?」  
「…れ……ば……せん」  
「ん?スマンもう一回言ってくれないか?聞き取れなかった」  
「それが出来れば苦労はしませんと言ったんです!どうせ私は戦う以外に脳のないエロイ格好をした女ですよ!!」  
「どわあああこんな往来でナニ叫んでんですかアンタ!ああっもうちょっと借りるぞ」  
 
(んーこりゃこないだ出たばっかの奴だな。神裂が使えなくても仕方ないか…)  
(ま、こういうのは基本的な部分は変わってないだろうからっと。お、これでよしと。流石に名前を見るのはマナー違反だな)  
「よし、これであとはここ押すだけだから」  
「あ、その―――ありがとうございます」  
ぺこりと頭を90度に近い角度で下げる神裂さん。彼女のポニーテールが揺れその背中に見えたのは  
「旗?」  
 
(あれって旗だよな?砂浜とかで取り合ったりする…)  
電話をするためにいそいそとその場から離れる彼女の背中には  
ビーチフラッグスで使われるものとほぼ同サイズの旗が在った。  
周囲を見渡してみても誰も背中から生えている旗には目もくれていない。  
(ひょっとして実は俺の知らない間に魔術でもかけられちゃったりしてんのか?)  
ふとそんなことを考えてしまい上条さんが自分の両目に右手の指を突っ込んで悶え苦しんでいるその一方で  
 
 
『ねーちんなんでさっきは電話に出なかったんだにゃー』  
『すいません、ちょっとした事情があって……』  
『ま、どうせどこを押したらいいか分からなかったって所なんだろうが  
それならどうやって掛けなおすことが出来たんだって事になるんだよにゃー』  
『く、分かっていて聞く辺りあなたという人は』  
『その話は後でじっくり聞かせてもらうとして本題に入るとするぜい』  
『ですから――-いや、そうですね。とりあえず要件を聞きましょう』  
『まぁ単刀直入に聞くが、あの服はちゃんと使ったのかにゃー?』  
『??使った?服は着るも――-ってまさか!あ、ああれのことを言ってるのですか!?』  
『どの『あれ』かは知らないけどこないだねーちん宛に送った『堕天使エロ猫メイド』コスセットのことですたい』  
『あんなもの着れる訳がないでしょう!前回のよりも更に布地面積が狭くなっ』  
『つまり着たんだな?前回のでコスプレの道に目覚めたって所か』  
『い、いきなり真面目な口調で何を言い出すんですかあなたは!着なくても見ただけで大体分かるでしょう!』  
『ちなみにしっぽはスカートの中につけるモノなんだぜい』  
『?それだとせっかくのしっぽが見えなく、はっ!?』  
『ねーちんとあろうものがこんな簡単な誘導尋問に引っ掛かるとは思いのほか気に入ってもらえたみたいだにゃー』  
『違います!今のは一般論を唱えただけであって――』  
『はいはいそんなことより早くあの服を使ってカミやんにちゃんと恩返しするんだぜい、それじゃ』  
『あ、こら!待ちなさい!大体使うと言われても何をどうし』  
 
 
こんな会話がなされてるのであった。  
 
 
 
(ん、終わったのか。にしてもえらく取り乱してたな。)  
と、目を真っ赤にしている上条さん。  
(にしたってあの旗は一体なんなんだ?ま、神裂に直接聞いてみるのが一番手っ取り早いか。)  
電話を終え、こっちに向かってくる彼女の表情は何故か硬く強張っており質問するのを躊躇っていると  
「すいませんがちょっと付いてきてもらえませんか」  
と、先手をとられてしまいなんとなくタイミングを逸してしまう。  
「あー一応聞くけどそれって俺の意思は関係なかったり?」  
「何か用があるというのならキャンセルする時間くらいなら与えます」  
「つまり拒否権はないんですね、わかりました」  
 
そんなこんなで二人はその場を後にするのであった。  
 
歩きながら世間話をすることで緊張もほぐれてきたのか  
先ほどのような表情はいつの間にか消え、そこにはいつも通りの神裂火織の姿があった。  
(こうやって見るとやっぱ凛々しい、っていうのか?かっこよさが目立つよな)  
(と思ったらさっきみたいにその、なんつーか、可愛い所もあったり…って何考えてるんだよ!)  
「どうかしたのですか?ちょっと顔に赤みが差しているような…」  
「別になんでもありませんのことよ。気のせいではなくって?」  
とどこぞの女学園の赤い薔薇のお姉さまのパチモンみたいな口調になる上条さん。  
「は、はぁ…そういうのでしたら」  
「うん、まぁ実際なんでもないから気にしないでくれ。というか聞きたいことがあるんだけどいいか?」  
「答えられる範囲でしたら」  
「じゃあ聞くけど俺たちどこに向かってるんだ?」  
後に上条当麻はこう言ったそうだ。  
 
『人生には色んな道があり、そしてその時々で選択を迫られるが  
この場所に辿り着いたのはあの道を選んだ時点で決まっていたんじゃないかな』  
 
と。  
 
その瞬間、ピシッと言う音が聞こえた(ような気がした)。  
「……えーと、もしかして答えられない質問だったり?」  
まさかこの段階の質問でタブーに触れたのかと思い焦る上条さん。  
「…………いえ、そんなことはありません」  
とてもじゃないがそうとは思えない雰囲気を纏い答える神裂さん。  
「今から向かうのは学園都市における私の拠点です」  
「拠点?」  
「まあ有り体に言ってしまえば宿ですね」  
そう言った後は何故かお互いに一言も喋らずにその拠点、第三学区にある高級ホテルへと到着したのであった。  
 
 
 
(一体何が始まるんだ?)  
年上のおねーさんと部屋で二人っきりという事実にはまだ気づいてないのか  
そんな色っぽい方向に持っていこうとする回路が抜け落ちているのか  
上条さんの頭の中にはもしかしたらまた何か事件が起きたのかとかそういうことが8割くらい占めていた。  
残りの2割は、これがスイートルームって奴なのか!?(実際にはスイートではなくセミスイートなのだが)  
とか微妙にずれていることで占められていた。  
 
 
「上条当麻、そこの椅子に座りなさい」  
「はい」  
悲しいかな、急な命令口調でも美人の女性相手だとあっさりと聞き入れてしまうのが雄の習性  
「今回ここに連れてきたのはあなたに恩返しをするためです」  
「はぁ……って待てって!そういうのはいいって言ってるだろ」  
「あなたがそう思うのは勝手ですがこちらにも譲れぬ一線という物があるのです」  
その表情は真剣そのもので上条さんはきっとここに連れてきたのも受け取ってくれるまで帰さないとか言うんだろうなーとか  
かなり核心を突いているのだがその恩返しの内容までは流石に分からなかったようで。  
(あーこうなっちまったら適当にはぐらかしてジュースの一本でも奢ってもらうしかなさそうだな)  
「確かに私が恩返しをすることで「わかった」」  
「え?」  
「ここいらで一度受け取っておかないと雪だるま形式で増えていきそうだしな。何度もこっちに来るのも面倒だろ?」  
いや、あなたに会いに来るのは吝かではないというかむしろ会いたいというかとかごにょごにょ言ってるのだが  
上条さんは上手く誘導できたと思い安堵しているところだったので聞いちゃいない。  
「では準備をしてくるのでこの部屋で待ってて下さい。絶対にこの部屋から出てはいけませんよ」  
と言い残し、出て行ったのであった。  
 
呻き声(なにやら悩んでいるような)やらってこんなんできるかーっ!とかいった叫び声やらなんやらが洩れてきても  
彼はその部屋から出て様子を見にいこうとはしなかった。  
これは決して彼女の忠告を受け入れたからではなく今この部屋を出ると死が待っている  
ということを彼の第六感が告げていたからだった。  
(ふふふ、今まではこういうときに無駄に動き回ったせいで被害を増大させてしまっていた。上条さんは過去から学ぶ男なんですよ!)  
残念ながら既に被害を被るという方向に向かっているとは気づかなかったのを責めるのは酷であろう。  
 
それから数分が過ぎたところで急に音が止み静寂が部屋を包む。  
(なんだかわからんが妙に緊張してきたぞ…)  
 
「それでは入りますよ」  
 
そういって開け放たれた扉の先にいたのは堕天使エロ猫メイドのコスプレをした性人  
―――いや聖人であった。  
 
 
 
 
 
 
 
「ご主人様にご奉仕するニャン♪」  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「はっ!……なんだ夢か…それにしても凄いもの見たな」  
「っと、そろそろ朝飯の準備しないとまたあの暴食シスターに、たわばっ!」  
 
 
「ご主人様、お目覚めですかニャ?」  
 
「あぁ幻想(ユメ)じゃなかったんだな…ってなんなんだよその格好と言葉使いは!」  
「ゴホン、ですからこれが恩返しと言うことです。あなたの望むがままに奉仕したいと思います」  
と、三つ指を突いて礼をする神裂さん(堕天使エロ猫メイドコスVer)  
(どうせ土御門かなんかの入れ知恵なんだろ、ってあの旗もしかして体から直接でてんのか?)  
聞こう聞こうと思いながらも怒涛の連続攻撃でこの瞬間まですっかりその存在を忘れ去られていたのだが  
ついにフラグ回収の時間がやってきたようだ。  
「なぁ神裂、その背中から生えてる旗はなんだ?それも、えーっとそのコスプレの一部なのか?」  
「なにを仰ってるのかよく分かりませんが遠まわしに言わず笑いたければどうぞお好きなだけ笑ってください」  
「いや、そーいうのじゃなくてだな実際ここに―――ッ!」  
 
彼の右手がその旗に触れたその瞬間から物語は更に加速していく  
 

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