心の準備をする暇もなく、上条は唇を奪われていた。  
「先ぱ……っ!?」  
文字通り目と鼻の先で、まさかこんなことをするとは考えもしなかった上級生の少女の整った顔が、目を閉じて更に深く口づけようと肉感的な唇を強く押し付けてくる。  
思わず後退りしようにも、背後は壁。少女は自分の身体と壁で上条を挟み込むように、全身の支えを少年の身体に預けてくる。  
全てを包み込まんとする彼女の柔らかな感触に、女性経験のない上条は混乱するしかない。  
「まっ……待って下さい、先輩!」  
このまま飲み込まれてしまう事に恐怖を覚えた上条は、思わず少女の身体を力で引き離した。  
少女はそれに少しも驚かず、嫌悪の色も出さない。  
むしろ思った通りだとでも言うように、唾液にまみれた唇にからかうような笑みを浮かべた。  
「どうかしたのか? まだまだこれからなんだけど」  
言って、彼女は自分を突き放そうとした少年の腕を取ると、そっと自身の豊かな胸の谷間に抱え込む。  
弾力のある胸は触れた手に吸い付くようだった。制服越しに下着のザラついた感触も這い上り、初な少年の顔が真っ赤になる。  
「初めてだから分からない、って顔に書いてるけど。……それとも、私では不満かな?」  
「違っ……、っていうか、こうじゃないでしょう俺らの関係って! そんな、いきなりその、キ、キスなんてされても俺、先輩の事は、嫌いじゃないけどその、」  
混乱のあまりしどろもどろになる上条の様子を見て、少女は微笑ましいような含み笑いを漏らす。  
「堅いなあ……まあ、それが可愛いんだけど」  
なおも弁解を続けようとする少年の口は、再び唇に塞がれた。  
 
 

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