これは、この物語が始まる前の物語。
「土御門からの伝言とは?」
暗い教会の中。
その一番前の席に、金色に輝く髪をとかしながら彼女は言う。
「いえ、何も。ただ、学園都市のトップは禁書を欲しがっているとは入っております。」
「禁書を? 何ゆえか…。」
報告を受けた彼女―ローラ=スチュアートは髪をとかす手を止めることなく考える。
「ふむ…。何に使うかは存ぜぬが、こちらにも幻想殺しを有する上条当麻は有意義に使えるであろう故、禁書を出せば手に入るのであれば仕方あるまいのかの。」
そう言うと、といていた髪をまとめ、足の辺りで折り返すと、頭のほうで止める。
「よし、禁書を学園都市へ。もちろん、上条当麻とは接触させよ。」
そういうと、ローラ=スチュアートは協会を出て行った。
同時刻、学園都市。
コポコポと音を立てる水槽の中。
男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える人間。
アレイスター=クロウリーは土御門元春からの報告を受けている。
「あちらさんは、上条当麻…幻想殺しを使いたがっている。」
「ふむ。して、禁書目録はいつ手に入る?」
「さあ、あちらの考え方次第だが…。近々くるはずだ。」
「そうか、これで”プラン”が進行させれるというものだ。」
そういうと、アレイスター=クロウリーは水槽の中をゆっくりと上へと上がっていく。
「幻想殺しはどうするんだ? あちらに使わせていいのか?」
「かわまん、あいつらにはアレの真の意味などわかるまい。」
そういうと、ゆっくりと液体の中を動く。
「真の意味?」
「ふむ。お前には何れは話すだろう。」
そういうと、水の中。土御門は完璧にアレイスターを見失う。
「やれやれだ。」
そう呟いた彼の元に一人の女性が現れ、次の瞬間には二人とも消えてしまった。
数日後。
「ホントにあの子をこの中に?」
大柄の男は大きな壁を、近くのビルの屋上から見下ろす。
「えぇ、上からの命令です。」
その横。露出がやけに多い服装の女性が相槌を打つ。
「仕方はないが…。なぜビルから飛ばさねばならんのだ?」
「さぁ…ま、いざとなれば私の七閃で…。」
と腰に差してある刀をに手を添える。
「あぁ、頼んだよ。」
そういうと男のほうは、壁の向こう側へと入っていく。それに続いて女性も…。
この後、上条当麻の愉快で不幸な楽しい日々が始まっていく…。
ただひとつ。記憶だけを残して…。