家で行われている女性陣の無言のにらみ合いが怖くなった浜面は町へと出かけてきていた。  
能力は使わないように言ってあるので帰ったら家が無かったなどと言うことはないと思うが若干の不安が残っている。  
いったい彼女たちは何を争っているのだろうか、昔はあんな感じではなかったのに。  
はぁ、とため息をつくと目の前が一瞬白く覆われた。こんな寒いなら出てこなければよかったかもしれない。  
しばらく歩くと目的の建物が見えてきた、どこにでも有る普通の病院だ。  
中へ入り見慣れた受付を通って2階へと上がる、そして階段の近くにある病室の一つの病室の扉をたたいた。  
中から声がしたのでドアを開けて中へと入る。  
昔は毎日のように見て、今は週一ほどのペースで見れる金色の髪。  
しかし下半身に本来あるはずのものは無く、無骨な機械がつながれていた。  
「よう、元気か」  
「まぁまぁかな。動けないから関係ないけど」  
あれで生きていたのは奇跡だと思う。今でもはっきりと覚えている。  
体の半分しかないフレンダと地面を染め上げる赤と黒の液体。  
学園都市にはあの常態から生きながらえらせる事ができる技術があるらしい。  
「ま、とりあえず座りなよ」  
 
傍に有ったイスを指差したので、浜面はかばんを脇においてイスに腰掛けた。  
「ところで、毎週来てるようだけどそんなに暇なの?」  
「んー、まぁ暇と言うか買い物するついでってのも有るけど……」  
浜面はそこで一旦言葉を切り、ため息を吐いてから言った。  
「身近な人間でお前が一番まともだから、話して楽しい」  
「………3人は?」  
「なんだか分からないけど喧嘩ばっかしてるな、今朝も食事の時にどこで座るかでもめてたし」  
(それは浜面のとなりに座りたいだけだよ)  
「麦野が不便だからって理由で俺のとなりになったんだけどあとの二人が睨んでくるんだよ」  
(そりゃそうでしようね)  
「そういやぁ、最近絹旗が寝ぼけて俺の部屋のベッドに入ってくることがあるんだよなぁ」  
(絶対寝ぼけてなんか無いよ)  
「最近一番つらいのは……言いにくいけど溜まっちまうんだよな」  
(言えば皆相手してくれると思うけどね)  
「フレンダはなんか楽しいこと無いのか?」  
「うーん、それなんてエロゲ?って感じのやつがリアルに居ることかな」  
「ふーん、面白いやつが居るんだな」  
(あんたが主人公だよ)  
「あっ、そろそろ帰って夕食作らないとまずいな。じゃあ帰るわ」  
「……ねぇ、またきてくれる?」  
「ああ、また来るよ」  
バタンと扉が閉じて病室に静けさが戻る、それと同時にフレンダの視界から途端に色が失われた。  
無機質な部屋、足のほうを見れば本来あるはずのものは無い。  
「浜面は知らないよね」  
あの三人よりも先に彼に恋心を抱いていたなんて。  
「バニーの衣装も手に入れたんだけど、もう着れないや」  
 
また、つまらない時間が始まる。  
 
終  
 

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