「上条、星は好きかよ?」  
「ほし? 唐突にどうした?」  
上条は手に取っていた本――みゅーとん・番外編、二ック「星」――を本棚に戻しながら聞く。  
「いやの、もうすぐお月見なのよ。それで、天草式の面子でお月見しようとおもってるのよな。それに上条も参加しないかよ?」  
このごろ上条は何かと天草式のメンバーとよく遇い、何かと一緒に行動することが多くなっていた。  
実はこれが天草式の面々が故意に捜索・発見・追跡・合流・同行しているだけなのだが…。  
 
――まぁ、こんなことはこの中では関係ない、省こう。  
 
「よし、きまりだの。じゃあ、明日、こっちから迎えを出すから家でまっててくれなのよ。」  
本屋からでると、建宮は開口一番にその言葉を残し、右手をシュっとあげて去っていく。  
「…なんだったんだ?」  
 
翌日。  
律儀に上条は自室にて待機中。  
もはや部屋の備品と化した修道少女とその愛猫は小萌先生のところへお月見へ。  
『とうま、小萌の所におつきみぃってのに行って来るよ、ご飯はいらないかも。』  
と朝一から部屋の冷蔵庫の中身を空っぽにして出て行った。  
出て行くときに風呂に入ろうとしている上条に一言。  
『とうまはお留守番だよ。呼ばれてないんだからね…、寂しいからって変なことしてたら…わかってるよね?』  
そう言葉を残して出て行った。  
「やれやれ。」  
そう呟きながら、テレビのモニターを見る。  
外はインデックスが出て行って、一時間ほどして振り出した雨で薄暗くなっている。  
少し前に小萌先生から「お月見は中止なのですぅ…」と鳴きそうな声で入った。  
後ろに居るであろうインデックスは大きな声で「おだんごっているの? おいしいかも。」とうきうきした声がしたから満足しているだろうと推測しながら先生と少し会話をして通話を切った。  
「これじゃあ、こっちも月見はなしかな?」  
と少しがっかりしながらモニターを見ていると、ピンポーンとチャイムがなる音が部屋に響く。  
「ん? あぁ、天草式のか。」  
と一人納得して玄関に向かい、扉を開ける。  
ゴンっと音を立てて扉に何かがあたる音がする。  
そのままの状態で開いた隙間から顔を出すと、五和が頭を抱えてしゃがみこみ、悶えていた。  
「あー…、わりぃ。大丈夫か?」  
「だっだいじょうぶです。」  
そういうやり取りをして、五和を部屋の中に入れる。  
五和を玄関まで入れたとたん、上条は顔を真っ赤にして視線を天上に向ける。  
「五和っさん…その…あ! 風呂、そう風呂だ、風呂入って来い。」  
そういいながら、上条は近くのドアを開け、風呂の準備を始めた。  
インデックスが行く前に上条が入ったこともあり、すでに湯は張っており入る準備はできていた。  
「ふっ風呂ですか…、わたしっその…いっいえ、いただきます!」  
何か覚悟を決めたように五和が脱衣所へと入っていく。  
 
――キュっ…シャーー  
シャワーを浴びる音を聞きながら、上条は脱衣所へと入っていく。  
やましい意味は無い、ただ、タオルと着替えを置きに着ただけなのだが、視界に入ってしまった。  
そう…五和の下着が。  
(ダメだ、上条当麻、見るんじゃない。)  
そう自分に言い聞かせながらも、男の性とは悲しいもの、視界から外す事無く、タオルと着替えを置いて、自然と手がそれに向かっていく。  
「…上条さん? なにやってるんですか?」  
「………ふぇ?」  
 
――世界が止まった気がした。  
       とは後日、上条が知り合いの土御門に話したことだ。  
 
シュールな光景だろう。  
風呂から上がってきたら思い人が自分の下着に手をかけようとしていた。  
選択のためだと思えば有難いのだが、洗濯機は絶賛活動中、言い音を静止した(上条がそう感じている)世界に流している。  
「こ、これはですね、ってあれ? 五和さん? 目が、目が…っ!!」  
 
――いや、あれは鬼神だった、聖人? 足元にも及ばないね。  
       とは、後日。土御門に泣きながら話した上条の言葉だ。  
 
上条の視線の先、五和は後ろからまがまがしいオーラを出しながら、風呂場から出てくる。  
上条は極力下を見ないように、上を見ながら後退り、最後には脱衣所の壁に背中を着く。  
「かみ…いえ、とうまさん?」  
「はっはいっ!」  
「どういうこですか?」  
笑顔で、優しく、まがまがしいオーラを出しながら問う五和。  
「い、いえ、これはですね、カミジョウサンモ男のこな訳で、ごめんなさいっ。」  
光速で土下座をする上条。  
それを見下ろす五和。  
両者動かず、時間だけが過ぎていく。  
 
「っくしゅん。」  
「ほぇ?」  
上条が顔を上げると、五和が全裸でくしゃみをしたところだった。  
「だいじょうぶでせうか?」  
 
だが五和に反応は無く、ふらっとこちらに向かって倒れてくる。  
それを抱きしめる形で受け止めて、違和感に気づいた。  
それを確かめるため、背中に回っている右手を額へと持っていき、確信する。  
「五和…風邪か?」  
五和に反応は無く、上条は体を極力見ないようにタオルで拭いてからベッドまで連れて行く。  
体を拭いてる間に「あっ」とか「っん」とか「ふぁぁぁ」などの反応があったが、上条は気にしないようにしていた。  
ベッドに寝かせ、布団をかぶせ、部屋に暖房を利かせて、一通り終えてからもう一度五和の額に手を持っていく。  
「…あついな。」  
そう呟くと上条は台所まで行き、氷をもって風呂場に行って氷水を風呂桶に作ってベッドまで急ぐ。  
タオルをぬらして五和の額に乗せると、一息つく。  
「…雨の中来てくれたんだよな。」  
そう呟きながら、その看病は夜な夜な続いたとか……。  
 
朝、五和が目が覚めたときの状況は不思議なものだった。  
全裸の自分はベッドにぬくぬくと寝ており、額に今では少しぬるくなった濡れたタオルが一つ。  
ベッドにもたれながら寝ている上条当麻はいたって普段着のまま。  
自分の記憶には風呂場の外から物音がしたから扉を開けたまでは覚えているんだが、それ以降が思い出せずに小首をかしげる。  
「えっと…、この状況は…。」  
わからない中でも一つだけわかることがある。  
一番近くで寝ている青年が、夜な夜な自分のためにこのタオルを変えてくれたこと。  
一番大好きな青年が自分のためにここまで風呂場から運んでくれたこと。  
この青年が私に何一つ変な事をしてないこと………。ちょっと…寂しい。  
いろいろなことを考えながら、青年の頬に口付けをする。  
「ありがとう、とうまさん。」  
口付けに反応して少し身じろぎしたが、起きる気配は無い。  
「そうだ、ご飯。とうまさんもお腹が好いてるでしょう。」  
と安易に決め付け、ベッドからでる。  
そこで改めて、全裸だと認識して。  
「…服は?」  
あたりを見渡すが見当たらず、風呂に入っていたことを思い出し脱衣所に。  
洗濯機の中、水浸し衣服は着れるはずもなく。  
せめて下着はっと探してみるも下着はところどころ濡れており、とても着けれる状況じゃない。  
「どうしましょう…せめて。」  
とエプロンだけ着けて料理を作り始める。  
(恥ずかしいけど…がんばるのよ五和。とうまさんのために。)  
誤った方向への思考をしながら料理を作る。  
 
その後、目が覚めた上条に裸エプロン姿を見られるのはもちろんだとも。  
 
 

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