アックア戦後、フリウリスピアを新調する為五和は上条当麻の護衛を離れる事になった。  
数日後。  
「? 建宮さん、対馬さんはどこかに行っているんですか?」  
「ああ、あいつだったらお前さんの代わりに上条当麻の護衛なのよな」  
「え…? 対馬さんが?」  
「あいつはアックアの時の被害が他の奴らよりはまだましだったからなー。  
とは言え、休む暇も碌に無かっただろうから、お前さんが帰って来たんなら交代してやってくれると助かるのよ」  
「はい! では、五和、行って参ります!」  
「おうおう、張り切っちゃってまあ。恋する乙女はなんとやら、なのよな」  
 
後日学園都市。  
「(この時間なら彼はまだ学校でしょうか。)」  
バッグを肩に掛け直すと、五和は上条当麻の学校を目指し通りを歩き始める。  
「(バイクでもレンタルした方が良いでしょうか。また彼と出かけられると良いですね)」  
想像に笑みを浮かべ、歩を進めていくと、五和は魔術的気配に気づいた。  
「(!? これは人払いの結界? 一体誰が……)」  
五和はフリウリスピアを組み立てると、気配を殺し慎重に術の中心へと歩を進める。  
 
そこは路地裏で、近づくにつれ何やらぺちゃぺちゃと水音が、それに混じって女性の鼻を鳴らすような声が聞こえてくる。  
そっと様子を窺うと五和は驚愕に目を見開かせた。  
 
「ふぅ、んん……ふふ、随分キスが上手くなったじゃないの、上条君」  
「ぷはっ……そりゃ対馬さんがキスが大好きで何回もしてくるからではないでしょうか、と上条さんは思いますよ」  
「あら? じゃあキスが大好きな対馬さんにもっとしてくれるのかしら?」  
「それはもう」  
 
見間違う筈もなかった。抱き合い口づけを交わしているのは上条と対馬。  
重なる唇の合間から時折絡み合う二人の舌が覗く。  
 
からーん……  
 
路地裏に五和の落としたフリウリスピアの立てる固い音が響く。  
 
「! 五和!? ……こ、これは、その……」  
「わわ! 五和!?」  
 
呆然としている五和に、対馬はおろおろと酷く動揺する。  
一方上条は五和の気持ちなど気づいてはいないから、ただ対馬とのキスを見られた事に動揺しているだけだ。  
 
「すまん! 五和! 建宮や神裂には内緒にしておいてくれないか?」  
 
上条は対馬が動揺しているのを見て、護衛対象とこんな事をしているのがバレるとやはりまずいのだろうか、と思い、対馬の為にも五和に頭を下げる。  
 
「対馬さん…応援してくれるって…頑張れって…言ってくれたじゃ…ないですか…」  
 
頭を下げる上条をよそに五和は対馬に話しかける。  
 
「そ、それは…で、でも! 本当は! 本当は私もずっと彼の事を…!」  
 
下げた頭の上で交わされる二人の会話に、上条としては疑問符を浮かべるばかりだ。しかし対馬の言葉を聞くと、毅然と顔を上げる。  
 
「五和。俺、対馬さんの事、本気なんだ。本気で好きになったんだ」  
 
まっすぐに五和を見つめながら上条ははっきりと宣言する。  
その言葉を受けると五和はがっくりと膝をつき、ただ地面を見詰めながら呆然とする。  
 
「か、上条君、その…」  
「行きましょう、対馬さん。建宮や神裂だって誠心誠意話せばきっと分かってくれます」  
 
おろおろと上条と五和を交互に見ていた対馬だが、がっちりと肩を掴み真正面から見詰めてくる上条に意を決する。  
 
「……分かったわ、上条君。一緒に…」  
「はい、一緒にいきましょう」  
 
 
二人が路地裏から姿を消してから、しばし。  
落としていたフリウリスピアを掴むと、五和は幽鬼のようにゆらりと立ち上がる。  
 
「…………ぅぅうううあああああああああああああああああ!!!」  
 
止め処なく零れる涙の軌跡を残しながら五和は走り出す。  
ただ、その身を突き動かす激情に任せて。ただ、あの二人の背中のみを追い求めて……  
 
 
上条と対馬は通りに出ると、一先ず何処かで落ち着こうと手を繋いで歩きだす。  
しかし、やはり対馬は思う所が有るのか、俯き浮かない表情をしている。  
歩みの重い対馬を先導するように歩いていた上条は、立ち止まり、顔を覗き込む。  
 
「…大丈夫ですか、対馬さん」  
 
声を掛けられ、対馬はハッと顔を上げる。  
 
「え、えぇ。私は大丈夫。…ただ、五和の事を思うと、ね」  
 
そんな対馬の言葉に、上条はやはり疑問符を浮かべ、思案顔をする。  
 
「確かに五和の事は心配だけど、どうしてそこまで?」  
 
鈍感が服を着て歩いているような上条では、五和の気持ちを察するのは無理なのだろう。  
人を思いやる事は出来るが、人からの好意には実に疎い。  
 
「…こんな事になってしまってから言うのは何だけど、私と同じように五和もあなたに好意を持っていたのよ。  
ううん、きっと私なんかよりもっと強い。あなたの事を本当に想っていたわ」  
「五和が…?」  
「ええ。私は、そんな五和を応援してた。自分の気持ちを押し殺しても、五和になら、って」  
「……」  
 
上条が無言で続きを促す。  
 
「でも、やっぱり駄目だった…。五和といるあなたを遠くから見ていると、どうしても胸が痛くなるの」  
「だから…」  
「そう。今回私が五和の代わりにあなたの護衛に付く事になって、内心凄く浮かれてた。  
あなたと直接話せるんだって思うと、いてもたってもいられなくなった。……もう、自分に嘘がつけなかった」  
「……」  
「五和の戻ってくるまでの間だけでも、あなたとずっと一緒にいたかった。あなたに私の気持ちを知って欲しかった。  
……あなたに、わた、しを、好きに、なって欲しかった……」  
 
遂には泣きだしてしまった対馬を、上条はそっと抱き締める。  
 
「…正直、五和がそこまで俺を想ってくれていたなんて、気づいていませんでした。嫌われてはいないだろうとは思っていましたが。  
…でも、今俺が好きなのは、愛しているのは、対馬さん、あなたです」  
「…上条君」  
 
目元を涙で濡らし、見上げてくる対馬の額に口付けを落とす。  
 
「だから、泣かないで。あなたが泣いてると、俺はいつまでたっても不幸ですよ」  
 
上条の言葉に、目元を拭い、身を起こす。そこで、気付いた。  
 
「っ!?……ありがとう、上条君。……でも、お願い、五和を憎まないであげてね。あの子は本当は優しい子なの」  
「え…?」  
 
対馬は諦めにも似た儚い笑みを浮かべると、上条と体勢を入れ替える。  
 
「これは、きっと罰が当たったのよ。人の気持ちを無視して自分を優先させちゃった罰。上条君も五和も悪くない。悪いのは私」  
「何を言って…?」  
 
それだけ言うと、対馬は上条から身を離し、背を向ける。  
それで今まで対馬だけを見ていた上条も気付いた。先程まで歩いて来ていた通り、その向こうから五和が槍を構えて走ってきている事に。  
予想される結末に、一気に体中を悪寒が走る。  
 
「五和!? っ! 対馬さん! 駄目だ!」  
 
五和の構える槍先に自ら身を晒そうとする対馬に、上条は叫ぶ。対馬はもう眼を閉じてしまっている。  
五和は漏れ零れる嗚咽を噛み殺すように歯を食いしばり、流れ続ける涙で視界も塞がれ、もはや殆ど見えてはいない。  
 
スローモーションで流れるような状況に、上条は思う。  
 
――こんな、誰もが不幸のまま終わる結末なんて、認めない! 認められるか! そんな幻想は、ぶち殺してみせる!――  
 
脚の筋肉よ弾けろと言わんばかりに収縮させ、爆発するように駆ける。  
力の限り右手を伸ばすと、五和の槍が刺さる直前、対馬の腕を掴み脇に引き倒す。  
五和の槍が勢いそのままに上条の右腕の表面をがりがりと削っていく。  
 
「っぐぁ!」  
 
焼きごてを当てられたような痛みに視界が瞬く。目標を外した五和は、体勢を崩し、地面に横倒しに倒れ伏していた。  
 
「っつー、か、上条君!」  
 
引き倒され、尻餅をついていた対馬は、血塗れの上条の右腕を見ると慌てて駆け寄ってくる。  
 
「いてててて、大丈夫でしたか? 対馬さん」  
「馬鹿っ! あなたの方が…! ……くっ…ぅっ…ぅっ…」  
「大丈夫、大丈夫です。ちょっと削られただけです」  
「っぅぅぅぅ……」  
 
上条は、胸に縋り付き泣く対馬の背中を、左手であやすようにぽんぽんと叩く。  
 
 
「…ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」  
 
倒れ伏していた五和は、泣きながら謝罪の言葉を呟き続けている。  
対馬はそんな五和に近づき、その頭を胸元に抱え込むと、慈しむように撫でる。  
 
「五和…」  
「つ、対馬さ、ん、ごめんなさい、ごめんなさい、わたし、わたし…」  
「良いの。私が悪かったの。だから、五和は悪くない」  
「ぅっ…つしまさん。ごめんなさい、ぅぅわぁあああああああああ……」  
 
しがみ付いて大きな泣き声を上げる五和の頭を、撫で続ける対馬。そんな二人の様子に、上条はようやく肩の力を抜くのであった。  
 
 
「それで、何がどーなって今こういった状況になったのか大変不思議なのですが!」  
「どうしたの? 上条君。急に大声なんて出しちゃって」  
「ぺろぺろ、ん、ちゅ、れろ」  
 
そこは五和が一応取っておいたホテルの一室。そのベッドに上条は腰掛けている。  
そして、その上条の包帯の巻かれた右腕にしなだれかかる様にして、上条の頬や首筋を懸命に舐めている五和。  
上条の左腕に抱きつき、耳を甘噛みしつつ、ボクサーパンツの上から上条の股間をカリカリと引っ掻き、じらすような刺激を与えている対馬。  
上条はすでにパンツ一枚。対馬と五和も既に上下の下着だけの臨戦態勢。  
対馬は黒で統一し、ガーターベルトも装着の妖艶な装い。一方、五和はピンクのシンプルな可愛らしい下着だ。  
趣の異なる二人の姿に、理性に反して上条の股間は滾りを増すばかりだ。もう我慢汁で下着が一部変色してきている。  
 
「いや、だから、、ちょっ、ぬあおぉぉ、気持ち良ぃ…!」  
「ほらほら、どう? どう? まだイッちゃ駄目よ」  
「むぐむぐ、はむはむ、れろれろ」  
 
対馬が耳の穴に舌を挿し入れ、ぴちゃぴちゃと水音を上条の鼓膜に響かせ、五和は、場所を変え上条の指を一本一本舐めしゃぶり、甘噛みしたりしている。  
複数の場所から絶え間なく襲ってくる快感に、上条の思考力は低下し、ただただ暴発しないように歯を食いしばるのみだ。  
好機と見たのか、対馬と五和は一瞬アイコンタクトを交わすと、上条をベッドに押し倒し、お互い片手ずつで息を合わせてするすると上条のパンツを抜き取る。  
上条のパンツを脱がせると、飛び出してきた上条の肉棒にすかさず五和の指先が絡み、しごき始め、袋の方を対馬が優しく揉む。  
 
「く、ぅぅぅっ! これ以上は、まず、いって…!」  
 
上条はぼんやりとした頭で、天草式のコンビネーション凄い!と驚愕しているが、あながち間違いではない。  
始める前に、あらかじめ対馬と五和は大まかな流れを打ち合わせしていたのだ。  
 
上条はもはや快感に流されて状況確認を誤魔化されてしまったが、  
まず、落ち着く為と上条の治療の為にこのホテルにやって来る。  
上条が痛みを堪えつつバスルームで慎重に傷を洗浄している間に、対馬と五和はまた謝罪合戦を繰り広げていたのだが、埒が明かないと判断した対馬が、  
この先お互い罪悪感だけ持っていてもどうしようもない。上条君にも悪い。  
全部無かった事にして、まず上条君にお詫びとしてご奉仕しましょ! それでなし崩しに二人とも責任取らせちゃえば良いのよ! と囁いた。  
そんなのいけないです、と首を振っていた五和も対馬の説得にやがて顔を朱に染めつつも頷く。そして、一日の長が有る対馬があれこれと吹き込み、  
戻ってきた上条が、下着姿の二人に混乱している間に今に至る、と言う訳である。実にエロパロらしい超展開。  
 
「くっ、もう、でそうだ…!」  
 
上条が目を閉じ切羽詰まった呻き声を上げると、対馬が上条の亀頭を口に含み、五和が裏筋に沿って舌を這わせる。  
 
「……っぅぁ!!」  
 
締め付けてくる唇、亀頭の周りをくるくると舐め回す舌、そして肉棒全体に絡みついてくるもう一人の舌の刺激によって、あっという間に限界を超える。  
上条は自分でも気付かぬうちに対馬の頭を押さえ付けると、その口の中に全てを注ぎ込むように射精を開始する。  
 
「んぐっ!……むぐ…ん…ん」  
 
瞬間、対馬は眼を見開くが、すぐにその白い喉を動かし、少しずつ嚥下していく。  
ごくり、ごくり、と対馬が精液を飲み込む音だけが響く中、その様子を興味津々に間近で見つめていた五和もごくりと唾を飲み込む。  
普段以上の強烈な快感で想像以上の量が出ていたのか、やがて飲み込み切れず、押さえ付ける手を振り切り口を離すと、尚出続ける精液が対馬の顔とその金色のフワフワした髪を斑に染めていく。  
 
射精し切った上条が荒い息をついて肩を上下させる中、対馬はその整った顔と髪を精液まみれにしながら、ちょいちょいと五和を手招きする。  
期待に顔を赤く染め上げた五和が近寄ると、対馬は五和の頬を掴み上向かせ、その薄く開いた唇に口の中に含んだままにしておいた上条の精液をどろりと垂らし込んだ。  
五和は舌に残る味と鼻に抜ける匂いにブルッと身を震わせると、次々と送り込まれてくる対馬の唾液混じりの精液を喉を鳴らし飲み込んでいく。  
やがて対馬の口の中から精液が無くなると、五和はねだる様に対馬の唇に吸い付き、舌で口内を舐め回し、対馬もその舌に応える。  
お互いの口の中に残る精液の残滓を味わうように舌を絡ませ合い、唾液を交換していく。  
五和が対馬の顔や髪に付いた精液を舐め取り、また口付け、一緒に味わう。  
 
息を整えながら、ぼうっと様子を眺めていた上条だったが、五和が精液を喉を鳴らし飲み込み始めた辺りからは、ベッドの上で正座しながら眼を皿のようにして二人の媚態を凝視している。  
そしてその媚態に当てられたのか、射精したばかりだというのに股間の逸物は先程以上の威容を誇っている。  
そんな上条に気付き、対馬は上条に秋波を送りながら見せ付けるように五和との口付けを激しくする。  
 
ようやく対馬と五和の唇の交歓が終わり、唇同士が唾液の糸を引いて離れると、対馬と五和は上条の目の前で下着を外し、全裸になっていく。  
対馬は控えめな胸ではあるが、ガーターベルトとストッキングで強調されたその美脚は正に芸術。  
五和は恥ずかしそうに腕で胸と股間を隠しているが、隠し切れず腕の中からこぼれ出そうになっている様は劣情を誘う。  
 
「じゃあ、まずは五和から…」  
「……はい」  
 
対馬が上条の肩を押して横にすると、自分も寄り添うように横になる。  
五和も対馬の言葉に意を決したように頷くと、上条の上に跨っていく。  
 
「ちょっ、ちょっと待った! 対馬さん、五和、待ってくれ。何と言うか、その……」  
 
流石に挿入の段になると上条は慌てて制止する。制止するも、何を言えばいいのか、と口ごもる上条の口に人差し指を置くと、対馬は語りかける。  
 
「…私達は上条君が好き。さっき五和と話し合ったんだけど、私は五和に申し訳無いと思っているし、五和も今日の事でとても後悔しているの。  
このままじゃ遅かれ早かれお互いに罪悪感で押し潰されてしまうわ。私達がお互いを許し合って、前に進む為にこれはきっと必要な事なの。  
上条君に何も言わずに始めてしまった事は悪いと思ってるわ。でも、お願い、上条君。私達を受け入れて…」  
「……」  
 
俯き黙り込む上条に、今度は五和が話し掛ける。  
 
「…私は、ずっとあなたが好きでした。あなたの行動や言葉は私にいつも勇気をくれました。いつも、いつだってあなたの事を思っていました。  
今日、あなたと対馬さんを見た時、頭が真っ白になって、嘘だ、嘘だ、ってそれ、しか、ヒック、考えられなく、なって…。  
自分勝手な事だ、っていうのは、分かってます。でも、お願いします…」  
「……」  
 
涙混じりの五和の言葉を受けてもまだ黙り込んでいる上条を、対馬と五和は不安げに見つめる。  
 
すると、次第に上条の肩が小刻みに震えだし、段々大きくなっていく。  
 
「ぷっ、あっはははは! そうかそうか。分かったよ、対馬さん、五和」  
 
顔を上げ、目元に涙を浮かべながら笑いだした上条に、対馬と五和は顔を見合わせる。  
そんな二人に、上条は優しく微笑む。  
 
「上条さんはこんな美人さん二人に好かれて、しかもそこまで想って貰えていたなんて、本当に幸せ者ですよ。あぁ、本当に、本当に幸せ者だ……」  
 
今度はまた俯いて涙を零す上条に、対馬と五和が抱きつく。  
 
「ふふ、泣いてるの? 上条君」  
「んなっ! ななな泣いてませんよ! これは、その、そう! 笑いすぎて涙が出てきちゃったというか……」  
「…可愛いです」  
「くぅぅっ、そう言うお二人さんも涙でべちょべちょですよー」  
「これは嬉し涙だから良いのよ、ね? 五和」  
「ええ、そうですよ、ね? 対馬さん」  
「「ねー」」  
 
三人で笑い合いながら、三人で涙を流す。そんな幸せな光景。  
 

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