「しっかし流石フラグまみれの上条くんだにゃー。いったいかみやんのフラグ総数はいくつになるのやら。」
土御門はあまり上品とは言えないように微笑みながらつげる。
「てめえ!フラグまみれとかいうな!それにフラグつっても駄フラグばっかで全くもって実用価値皆無だし!…それに。」
「…それに?なんだにゃー」
上条当麻はとある事情により記憶喪失者である。よって、彼がいま話している土御門が本当に友達だったのかも分からない。
(でも、そんなの関係ないんじゃねえか?)
夏休み以前の記憶がなかろうと、数々の事件をともに解決してきた。
(俺はいつどんな風に土御門と出会ったのかすら知らない。)
そして、会ってから夏休みまでの思い出は戻ってはこない。
(たぶん、昔はこんな想いを抱いてなかったかもしれない。)
それでも、“今“の上条当麻の土御門元春への想いを否定することはできない。
―魔術と科学の狭間で暗躍するスパイ
―目的の為には味方の背中も刺す魔術師
―でも、いつも守りたいものの為に人一倍大怪我をする無能力者
どんな過程で土御門がスパイに入り、超能力者になったかは知らない。
しかし上条当麻は一人の男として土御門元春を愛していた。
(…笑っちまうよな、でも幻想殺しだろうとこの幻想は消せねえ、消させやしねえ!)
ふとそんなことに思考を巡らせていたため、自然と嘲りの笑みがこぼれていたらしい。
「どうかしたのかにゃーそんなにやけ面なんかして?新しい攻略法でも思いついたのかにゃー?」
「…土御門。」
上条の声があまりに真剣だったため、土御門は少し辺りに注意を深め。
「どうしたんだ?」
周りに聞こえないように声をひそめて問いかけた。
「…俺はさ。」
上条は自分の想いが土御門に届かないことを知っている。彼の心はおそらく舞夏という義妹の元にあるのだから。
数十センチ先にある土御門の顔。髪の毛は金髪、顔は黒め、サングラスに反射してまぬけな自分の顔が映る。
(あー、なんですかこの告白しちゃいそうなムードは!しっちゃっていいのか!)
もし告白したら今までのように接することは出来なくなる。一緒にバカやったりできなくなる、そんな不安が上条の口を重くする。
「かみやん?なんか様子がおかしいぜよ。」
心配そうに眉をよせる土御門。
(あーちくしょう!気遣った顔も可愛いじゃねえか!ってか顔近づけんな!!あとちょっとで口づけしちまう距離じゃねえか!)