金曜日の午後。
週末の始まりで浮き立つ校舎は、つかの間の開放感で満ち溢れていた。
そんな素晴しい時間帯に、いつもの様に小萌先生にお小言を頂戴して職員室を後にしようとした上条当麻は、廊下で待っていた土御門に呼び止められた。
「カミやん、何してんだニャー。また補習かにゃ」
金髪にサングラスの、高校生というカテゴリに入れることをぜひとも拒否したいそいつは、イタズラっぽい微笑みを浮かべながら立っている。
「ああもう!魔術だ超能力だに関わると救われねえー!もう充分に人助けはしただろ!ハイリスクノーリターンだなんて、神さまなんて信じねー!!!」
つい最近も、幸運が舞い込んで来て海外旅行と喜んでいた矢先に、海外でゴタゴタに巻き込まれた。結果的に観光どころか、後一歩で命を落とすところだったりした。
「カミやん、それは同情すれば良いのかにゃー?」
土御門はそんなゴタゴタを知っているためか、あきれた笑みを浮かべながら当麻に向き直った。
「ま、それはさておきだ、カミやん。そのお詫びってこともかねて、良いもんをくれてやるぜぃ」
「あ、なんだよ。また何か事件に巻き込む気じゃねぇだろうなぁ…」
ここ数ヶ月で急速に人間不信に陥っている当麻は、人の言葉を素直に受け入れないという行動様式が身についてしまっていた。
「今回ばかりは違うにゃー、正真正銘、まっさらな誠意だぜぃ?」
土御門は笑顔を崩さずに、当麻に水色の封筒を渡した。
「なになに、デラックスダブル宿泊チケット、なんだこれ」
封筒に入っているチケットには、世界的に有名な高級ホテルチェーンの名前が書かれている。学園都市の中にある系列ホテルは、大きめのレセプションなどで使われる高級な場所だ。当然、当麻にとっては関係ない場所、と言い換えてもいい。
「疲れきったカミやんが、一日だけでも家事から解放されるように、つー心憎い気配りだぜい。ちょっと泊まって来たらいいにゃー、禁書も連れて。そのチケットでホテルにあるレストランの食事も付くし」
そう笑った土御門の顔に、裏は無さそうだったが、当麻はそれでも食い下がった。
「待て、待て待て、お前、ほんっっっっとに裏は無いんだな?」
「ああ、裏は無いぜぃ?むしろ、自分でも驚くほど今日の俺は裏がないにゃー」
マジで?っと視線で問うた当麻に、マジでマジで、と土御門はさらに数回うなずいた。
当麻は釈然としないまま、封筒を受け取ってポケットにしまった。一応、確認を一つ。
「なんだ、まさかとは思うけどお前、今日は寮に帰って来て欲しくないって、そういうことなのか?」
義妹という存在に対して、人並みならぬ愛着を持っている土御門は、たまに義妹の舞香がたずねてくると部屋が非常に騒がしくなる。
「ななななな、カミやん、何を、っじゃ、邪推してるんのかにゃー、そそそそんなことはないぜぃ。」
あからさまに態度を変えた土御門に対して、当麻は疑念のまなざしを向けた。
「な、なんだ、カミやん。その目は、なんかあったかニャー」
焦りのせいか、口調が変わってしまった。当麻は思い至って、ためいきを漏らした。
「あー、あれですか、あれですね。そのつまり、今夜は決めちまおうみたいな話で、早い話が隣人が居るとあれがあれで音が漏れても困るだろうと、そういうことですか」
土御門はそこまで言われて、笑顔が引きつった。
「カミやん、すまないにゃー」
「良いって黙って泊まって来る。なんか、俺負けた気分だし」
当麻は肩を落とすと、ちょっとそわそわしている土御門の肩を叩いて、その横を通り抜けた。
「健闘を祈る」
当麻の呟きは、土御門にきちんと届いた。
「1回家に帰って、インデックスに支度させてから出るか」
時間はまだ15時を回ったくらいである、ゆっくり支度しても遅めのチェックインとはならないだろう。そんな事を考えながら校門の方へと歩きだした当麻は、校門をくぐった瞬間に後ろから声をかけられた。
「見つけたわよーん」
当麻の後ろに立っていたのは、お嬢様学校で有名な常盤台中学の制服に身を包んだ少女、御坂美琴だ。
「なにしてんだお前、今日の上条さんは何だか負けた気分だから、あんまりお前と関わりたくないぞ」
「負けた気分?ああ、理解してんじゃない、罰ゲームよん」
そういえば、そんな話もあったなぁと思った当麻は、一瞬頭が固まった。
「あのはなし、まだいきてたのか」
そんな言葉がぽろっと口をついて出た瞬間、電撃の槍が当麻を襲った。
「な〜にが まだいきてたの? よ!この私が真剣になって勝ったんだから、当然、罰ゲームはやってもらうわよ!」
当麻としては色々と考慮して欲しい事情もあったが、そうは言っても負けは負けである。学校同士の対決でも一切力を出せず、案の定負けている。これが美琴一人との闘いであれば、当然負けることはないにしてもだ。
「なんでしょうねこの、勝負に勝って試合に負けたみたいな感じは、ええ、良いんです、上条さんが頑張って救ったこの街で、皆さんがどう暮らそうが」
どんなに頑張っても幸福が自分に降ってこない少年は、疲れきったようにこぼした。
「ん?なんか言った?」
美琴はやけに嬉しそうに当麻の愚痴を無視して、ビシッと当麻に右手の人差し指を向けた。
「罰ゲーム、即実行してもらおうじゃない!」
美琴の罰ゲームは極々簡単で傍若無人なものだった。
「飯ゴチ、後はその場の気分」
ルールはあとから付いてくる、と言わんばかりの傍若無人っぷりだったが、負けは負けである。敗者の権利とか、捕虜の人権とかを思わず考えてしまう当麻だった。
「あー、そうか、んじゃ丁度良いや、ホテルで飯奢ってやるよ」
あんまりにもすんなりと話が進んで驚く美琴にチケットを説明すると、なんとも言えない微妙な顔をされた。
「なんだ、それじゃアンタの懐が痛まないじゃない、それに…」
美琴は当麻に聞こえいほどの声で、泊まりってと呟いている。
当麻は気が付かないまま、美琴の了解を取り付けるて一度帰って荷物を置いてくることにしてそこで分かれた。
コンサートホール前で落ち合った二人は、ちょっとした買い物をしながらホテルへと向かう。当麻にとっては、ちょっとではなかったが。
「お前、ちょっとしたって言ったよな」
「なによ」
「てめーのちょっとしたはあれか!雑貨屋とアクセサリーショップを虱潰しにすることを言うのかよ!」
美琴としては、本当なら服だったりも見たいわけだが、普段は制服しか着ることが出来ない身としてはそれも何だかである。
何にせよ、男と一緒の服屋はハードルが高いので、とりあえずネックレスだけ買わせて我慢した。お世辞でも、投げやりでも、歩きつかれて半分どうでも良くなっていても、似合ってるの一言はやはり嬉しかった。
「あんたねぇ、罰ゲーム中よ。言ったでしょ、その場の気分でって」
「けどなぁ」
服屋なんて連れ込まれた日には、相手のそばを離れるわけにも行かず、気まずさを味わいながら女性に笑顔を向けないといけないことになる。当麻としてはもう出来るだけ迅速に、目的地に着きたかった。
「そろそろ行こうぜ、映画観るんだろ」
食事には早い時間だったが美琴が携帯で調べたところでは、大型プロジェクターに映画配信サービスがあるようだった。
学園都市みたいな特殊な街では、繁華街なんかでデートをすると知り合いに遭遇する可能性が高い。
それだけ人数が多くても、社会階層と年齢で行動圏なんて簡単に決まってしまうのだから。
二人っきりで映画楽しみ、ゲームをしたり、あるいは泊まったりできる場所という需要で、ホテルは新しい顧客開拓を行っているのだ。
「まぁいいかな、映画観て、美味しい食事、罰ゲームとしては及第点ね」
「それ以上に何が出来るかってんだ!こっちは貧乏高校生なんだよ!雑貨屋でもたかられたし」
「罰ゲームでしょうが、大体、ホテルのチケットだけじゃ、あんたの財布が痛まないでしょ」
「歪んでるなぁ、お前」
いつもの調子だった二人は、それでもビジネス街の入り口に建っている大きな建物のロビーに着くと静かになった。
当麻にとっては、初めてのわりかし高級な場所である。なんとなく自分が浮いている気がする。
もっとも、この手の場所は歳や格好によって浮くことは無く、態度によって決まるのだが。そこまでの経験はない当麻である。
「なぁ、なんか俺たち場違いじゃねぇか」
一方の美琴は、普段どんなに傍若無人でも、お嬢様教育を受けている身である。加えて、本当に、(当麻にしてみれば冗談だが)生粋のお嬢様でもある。
「別にぃ、ほれ、普通にしてなさい。普通にしてればこんなとこで目立たないんだから」
美琴は当麻に、周り見てみーと適当な調子で声をかけた。
確かに、ロビーでは待ち合わせの大学生らしきカップルが数組いた。ロビーの一部は通りに面していて、オープンカフェスタイルになっているし、確かに色々な人が居る。
「大体、ホテルのロビーなんていろんなやつがいんのよ、そこのカフェで座って30分もすりゃ、風景の一部よ」
そんな風に言われてみればそんなものか、とも思う当麻である。よく考えれば、くつろぎを得る場で緊張するのも変な話だ、考えを改めてフロントに向かった。
チケットを見せるとIDの提示を求められ、一通りの手順で説明があった後にルームキーを渡された。どうも、とフロントのお姉さんに会釈して当麻は美琴の所に戻り、エレベーターに向かった。
「へぇー、結構広いじゃない」
ドアを開けて部屋に入ると、美琴はすこしはしゃぎながらベッドに身を投げた。スカートが翻ってショートパンツが見えた。
「お、結構広いし、なんか落ち着く部屋だな」
「グレードとしては、まぁそこまで上のグレードじゃないけど、広さ的にはこれくらいの方が落ち着くわよね、てかコレくらいの方が使い勝手良いし。あ、洗面所とお風呂も綺麗ー、普段は寮のユニットバスだし、まぁ今日は、その」
ベッドの柔らかさを堪能したの美琴は、部屋をチェックしている。もしかしたら、もしかするかもしれないという危機感とも、そわそわした感じとも取れる感覚が美琴の中で沸き立っていた。
「お前、場慣れしてんのな」
当麻はベッドに座って、ちょっと緊張疲れしたのかグッタリしている。
「何言ってんのよ、こんなとこ泊まったことないわよ。大体、このグレードのホテルで泊まる時は家族でだし、こういうその…、二人向けってのは」
言い澱んだ美琴の顔を見て、当麻は今更気が付く。
―あれ、なんか、いつものノリだけど、ホテルの二人部屋って
今になってようやく、当麻は自分のしたことに気がついた。
少し冷静に考えて、中学生をホテルに連れ込んだってバレたらどうなるだろう。
少なくとも、童貞で無くなったであろう土御門以外の男子から、狙われることは間違いが無い。ましてや、二人で雑貨屋を見て回って、ちょっと買い物もして、ホテルに来て、映画観て、食事して…。
美琴を改めてみると、さっきから落ち着き無く部屋を見ているのは、そういうことか…。
「と、とりあえず映画、観る、か…」
こういう場でどちらかがぎくしゃくしてしまったら、もう片方もぎくしゃくするものだと二人とも気が付いていない。当麻はベッドの端にちょっと体をずらして、美琴が座る場所を作った。
「ええ、そうね。んと、リモコンは」
少し緊張しながらベッドに歩み寄ろうとした美琴は、カーペットに足をひっかけて少しよろめいた。普段ならばこの程度で転ぶことはない、ただ体が緊張してこわばっていると思いがけないことが起こる。
「って!うわぁ!」
まるでベッドに腰掛けた当麻の胸に飛び込むように、美琴はきれいにすっ転んだ。当麻は一瞬何が起こったのかわからなかったが、それでも胸に飛び込んできた美琴を抱きとめてベッドに押し倒された。
―なんで、こんなことになっているんでしょうか。
ベッドに身を横たえ、上条当麻は考える。
とりあえず、自分の胸の位置にある甘い香りを発する髪の毛のことや、抱きとめた少女の肩の細さは忘れることにしたい。
「み、美琴、さん?怪我でもされましたか?」
「少し、黙ってなさい」
美琴が普段より少し落ち着いた声でそう言うと、不思議と当麻は何も言う気は起きなかった。少しの間、沈黙が降りて来る。鼓動が速くなるのではなく、むしろ遅くなる。そんな落ち着いた沈黙だった。
「で、あんたはこの状況で、なんで止まってるのかしら?」
沈黙を破ったのは、美琴の方だった。
「あんたはっ、この美琴さんがっ、死ぬほど恥ずかしいのにこんなままでいるのに、なんで何もしないのよ!」
当麻はそう言われて、自分の言動を改めて思い返す。
仲の良い女の子をホテルに誘いました、彼女は快くついて来ました。これはどういう状況ですか。
「す、据え膳?」
美琴の手が即効で首にかかったので、当麻は慌てて訂正した。
「う、嘘、今のは何か脳から漏れてきただけで、心の声とか本音とかそういう類のものでは!つ、つまりその、美琴さんはその」
「そういうふうに考えていた、わけなんでせうか」
美琴が当麻を視線で殺すように睨んで、今度こそ怒鳴った。
「当たり前でしょうが!どこの世界に!好きな男に誘われて緊張しないで着いてくる女がいるのよ!どこの世界に!好きでもない男とホテルに来る女がいるのよ!」
後者は一杯いる気がする、とは言わぬが花だろうなと当麻は口をつぐんだ。
美琴は言葉を発してから気がついたのか、急速に顔が赤くなっている。
当麻はどうしようもなく男の子だったせいで、女の子の気持ちには無頓着だった。だが考えてみれば、そもそもどうして美琴は自分に突っかかってくるようになったのか、そもそもどうして当麻はそれを受け入れているのか。
考えるまでも無い、憎からず想っていたから。それはつまり何かのきっかけに飛び越えられる程度の高さの壁しかない、そういうことだった。さっきの一言、美琴の赤く染まった頬、あとは何のきっかけが必要なのか。
「急にんなこと言って、次に会ったとき嘘とかいうの、無しだぞ?」
当麻はそこまで言うと、美琴の肩を掴んで顔を引き寄せた。
「っん、…んぁ」
一分近い長いキスを終えたとき、美琴の口から甘いため息が漏れた。
「当麻、当麻ぁ!」
美琴は箍が外れてしまったのか、一気に甘えモードに移行してしまった。両手で当麻に抱きついて、いきなり頬をこすり付けている。
「っい、前なぁ!」
恥ずかしくて思わず声を上げた当麻を、美琴は少しさびしそうな上目遣いで見つめた。
「だめ、なの?」
何の作為も無いその視線はどんな電撃よりも強く、幻想でもなんでもない破壊力を持っていた。
「だめ、じゃねぇけど」
当麻は黙って、美琴の体に手をまわした。こうなった美琴は怒っているときより始末が悪い、そんな気がした。
「だいたい、あん時だって本当はこうしたかった。いつからかわかんないけど、あんたのことばっかり考えて、これじゃ不公平じゃない」
美琴のいうあん時とは、きっと美琴の決意を粉砕して、正面からぶつかった時のことだろう。上条当麻は知らぬこととはいえ、御坂美琴が涙を見せたのは、後にも先にも上条当麻だけだったのだから。
「だから、いつかあんたにこう言ってやる、こうしてやるって思ってた」
美琴は当麻を強く抱きしめて、はっきりと言い切った。
「なんか遠回りしちまったな。遅くなったけど、美琴、好きだぞ」
自然に出てきた言葉、それがまた温かな沈黙を作り出す。
沈黙を守ったまま、二人は顔を近づけてもう一度キスをした。今度は軽く、唇を重ねるだけのキス、今まで知らなかった柔らかな感触と優しい温かさが伝わってくる。
二人は気がつけば無言のまま、何度も何度もくちびるを重ねていた。
当麻は美琴を抱きなおすと、駆け引きでもする様に重ねた くちびるの向こうに舌を進めた。
「ん、っん、ん…」
お互いの舌をなぞるようなキス、恋人同士の二人だけに許された甘い甘いキス。
すするような音が部屋に響き、二人はお互いの舌とくちびるを貪った。
「んん、ねぇ、当麻」
美琴は当麻の顔を覗き込んでつぶやいた。
「ねぇ、本当に、あたしを選んでくれるのよね?」
「当たり前だろ、何だよ急に」
当麻が不思議な顔でたずねると、美琴は拗ねたように体を離して起き上がった。
「だって、あんたはここに来るときも何か流れで、みたいな感じだったし。だいたい、いつも誰か女の子にいるじゃない。そりゃ不安にもなるわよ」
当麻は見に覚えがあるからか、すまなさそうに口をつぐんだ。
「こ、恋人なら、彼女なら、やっぱ特別でいたいじゃない」
当麻は美琴の言葉を聞いて、反射的に体を動かしていた。美琴を抱きしめて、くちびるを奪った。
「こんなこと、お前以外にできるかよ」
ベッドの上で膝立ちになった美琴の口を、一方的に襲った。舌を絡ませ、歯の裏と粘膜を味わう。美琴はされるがままで、体から力が抜けていった。
寄りかかるように抱きついた美琴を、当麻はベッドに横たえさせた。
「本当に、お前だけだからな」
「え、ちょ、っちょっとぉ待って」
キスですっかり無力化された美琴は、いきなり覆いかぶさった当麻に少しだけ抵抗した。それも、次のキスでほとんど無効化されてしまう。
「好きだぞ、美琴」
そんな言葉を言われるだけで、驚くほど簡単に自分の体が当麻の攻めを許してしまうのは、なんだか歯がゆくもあり、ちょっと嬉しくもあった。
当麻は美琴の額にキスすると、美琴の胸にあたりを軽く撫でた。
「ほれ、万歳してみ」
「な、こども扱いして」
恥ずかしそうに抵抗する美琴から、セーターを剥ぎ取った。何を心細くなったのか、美琴は胸の前で手を組んでいる。
「あんた、こういうときは積極的とか、そういうこと?」
「た、ちげーよ、お前がかわいいから、こうなるんだって」
「ばか」
愛のこもった馬鹿、それを合図に当麻は、白いブラウスの上から美琴のふくらみに手を当てた。少しだけ力をこめて、ブラの上から美琴の控えめな胸を愛撫する。
「ん、痛い…、当麻優しくして」
「わりぃ」
当麻はブラウスの第一ボタンに手をかけた、美琴は恥ずかしそうに顔を背ける。
「あんた、なんか手馴れてない?ひょっとして」
「ば、馬鹿言ってんじゃねーよ、こっちは一杯一杯だっつーの」
ブラウスのボタンがはずされ、あらわになった美琴のブラはかわいらしい水色。当麻はブラの中に手を入れて、美琴のやわらかさに初めて触れた。
「キス、して」
美琴が顔を向けてくると、当麻は自然にキスをして、さっきから触れている美琴の乳首を軽く爪ではじいた。
「ん、こら、ちゃんとブラをはずして」
当麻はお預けを食らった犬みたいな顔をしながら、一度ブラの隙間から手を抜いて美琴の背中に手を回した。
「待って、ブラウス、シワになっちゃうから」
美琴のブラウスを脱がして、もう一度背中に手を回す。
「あれ、んと、こうか」
右手だけではずそうとするが、中々外れてくれない。美琴はちょっと嬉しそうに微笑んだ。
「んふ、なんかかわいいわね、今のあんた。ほ〜ら、ちょっと落ち着きなさい」
美琴は自分の右手を背中に回すと、当麻の手が押さえているホックをはずした。
「よかった、やっぱあんたも緊張してるんだ」
「当たり前じゃねーかよ」
ホックがはずされると、当麻はブラに手をかけた。美琴の顔が少し赤くなる。
「ほら、大丈夫だよ。お前、すげーかわいいし」
ごまかすようにキスをして、当麻はブラを取り去った。
美琴の健康的な白い肌と控えめな胸が、美琴の呼吸に呼応して微かに動いている。それがたまらなく愛おしかった。
「し、しげしげと見つめてんじゃない!」
余りに照れくさくて当麻の頭にグーをくれてやろうとした美琴は、自分の胸が感じたことのない痺れに襲われて、手は虚空を切った。
「ば、ばか、さわらない、で」
「馬鹿はどっちだ、触らなきゃできねーじゃねぇか」
当麻はさっきよりもやさしく、手のひらで包むように柔らかなふくらみを刺激した。柔らかくて温かい。ごくごく自然に、当麻はその先っぽに口をつけた。
「ん…く、ふ」
美琴は手を口に当てて、なんとか恥ずかしい声が漏れるのを防いだ。当麻のやさしい手のひらと、温かな舌の感触が自分の乳首を刺激しているという事実が、美琴を余計に気持ちよくさせる。
「ば、ばかぁ、ん…」
必死に声を出さないように、手の甲で口をふさいだ。それでも、甘い吐息が漏れた。
当麻は片方の乳首を口の中で弄び、もう一方を手で可愛がった。
爪で軽く引っ掻くように刺激しながら、摘んで弄ぶ。舌と指を同時に使って刺激すると、美琴の体は当麻の動きに呼応してビクビクっと痙攣した。
「美琴、かわいいよ、お前」
「ん、んぁ…。う、うるさい、わよっ」
美琴は何とか抵抗しようとしたが、もはや力はどこにも残っていない。さっきまで頑なに閉じようとしていた足はだらしなく投げ出され、全身でベッドのふかふかとした感触を味わっている。
当麻は美琴の緊張が解けたのに気が付くと、胸をいじめてるのを止めて、今度は白くてすべすべしたお腹にキスをした。可愛らしいほっそりとしたお腹のラインが、なんとも魅力的でたまらなかったからだ。
「馬鹿ぁ、どこにキスしてんのよぉ」
美琴が照れたように当麻の頭をポンポンと叩いた。
「ほら、腰、上げろよ」
当麻はその右手を美琴のスカートに置いた。ホックを外し、ジッパーを下ろす。
「あ、電気、消して」
美琴は観念したのか、恥ずかしそうにそっぽを向いたまま、そう言った。ここまできたら、当麻を止めようなんて気はなくなっていた。ていうか、無理だろ…。
「ヤダね、こんなカワイイお前を見られないなんて、上条さんはそんな条件飲んであげません」
当麻は美琴がグーを放つ間も無く、手を滑り込ませてさっとスカートを脱がした。美琴は能力を使って、電気を消そうとしたが
「そうはさせねぇよ」
当麻は、スッと右手を差し出して、美琴の額に手を置いた。
「ばっ、ばか」
幻想殺しを前に、能力者の美琴は本当にされるがままだった。
美琴は涙目になって足を閉じようとしたが、既に足の間に当麻が入っいて無駄だった。
美琴の白くてすらりとした足の付け根は、可愛らしい水色の布で覆われていた。その布は既に、一箇所だけ色が濃くなっている部分、愛らしいシミがあった。
「美琴、そんなに気持ちよかったのか?」
シミの上から指を擦りつけると、美琴は少し恥ずかしそうに身をよじった。
「ば、ばかぁ、そこぉ、触っちゃだめぇ」
当麻の指は美琴の下着から染み出してきた愛液で少しずつベトベトになっていた。
「ほら、シミになっちゃうから、脱がすぞ」
当麻が下着に手を当てると、美琴がその手を上から押さえた。
「み、見るの?」
「着たままできんのかよ!ってまぁ、そういう下着もあるらしいけど」
当麻が男の子らしい無駄な知識を披露すると、美琴は若干軽蔑のまなざしを浮かべた。「そういう趣味?うわ、ちょっとマジ、まぁ、趣味なら着てあげても」
邪魔してくる手をどかすと、当麻は下着を剥ぎ取った。
「ひぁあ!ちょっと待った!待った!」
「待ちません!」
美琴の膝裏に手を当て、足をグイっと持ち上げた。ちょうど、赤ん坊がおしめを換えられている様な状態で、当麻は美琴の秘所をまじまじと眺めた。
既に愛液に濡れて充分な湿り気帯びたそこは、濃密な女性の香りを放ちながら当麻を待ち望んでいた。
「美琴、かわいいよ」
当麻は極々自然に秘所に顔を近づけて、躊躇いも無く口を付けた。
「ば、馬鹿、汚いからだ、めぇ!」
初めて感じる感覚に、美琴の体全体が震えた。親にすら見せた事がないようなところに口を付けられ、誰にも聞かせたことがない声を聞かれている。
「汚いわけあるかよ、お前の体に汚いところなんかねーぜ」
「だってぇ、シャワーも浴びてないし」
当麻は美琴の秘所に口を付けたまま、舌を奥にと進ませた。不思議な味が口の中に広がり、美琴の秘所の柔らかさが舌に心地よかった。
「汚いっていうなら、まずはお前のその幻想を打ち砕く。俺が綺麗にしてやるよ」
「ん、んんっ、ば、バカぁ。きれいに、なにかんが、っえて」
「主に、ん、んん、口で」
秘所の中だけではなく、外側のヒダにも舌を這わせ、本当に隅々まで舐めていく。
柔らかく湿って温かな美琴の秘所は、当麻にとって甘い蜜のかかったお菓子みたいに感じられた。
当麻は舐めながら、秘所の上側に肉の突起があることに気がつく。
―ここが、例のあそこか
クリトリス、年頃の男の子であれば何となく知っている、女の子に刺激を与えられる部分。
当麻はくちびるでクリトリスを挟むと、優しく潰した。潰しながら、舌でツンツンとつつく。
「はぁ、ん、んッ」
美琴は再び口に手を当てて、されるがままになっていた。持ち上げられていたはずの足は既にどちらもベッドに投げ出され、
身体から力が抜け、当麻がクリトリスを刺激する度に電撃が走ったように軽く身体が動くだけだった。
自分でも、自分の秘所がどうなっているかは手に取るようにわかった。
―ヤダ、ドロドロになってる。キモチイ、当麻ぁ
浮かんでくるのはそれくらいだ。もう、ただただ身体が当麻の攻めを受け入れてしまっていた。部屋にピチャピチャと水っぽい音が響いた。
「ぁあん、っんっんん、音、たてないでぇ」
「ん、無茶言うなっての、んん」
「指、入れてみるぞ」
当麻の言葉が聞こえた、美琴はもう羞恥より新しい快感への渇きの方が強くなっていた。
美琴が黙って頷くと、当麻は中指を美琴の秘所にあてがった。
「痛かったら言えよ」
美琴の秘所は、当麻の唾液と美琴の愛液が混じりあって既にドロドロだった。
当麻は中指を優しく秘所に滑り込ませた。思いのほか、抵抗もなくすんなりと入った。
温かで不思議な柔らかさが当麻の指を包んでいる。
なるほど、爪を切れと男性誌に書いてあったのはこういうわけだったか、と当麻は一人で納得してしまう。
当麻は中指を軽く曲げると、優しく膣壁をなぞっていく。
「い、ひぃああっ!」
美琴はすぐに可愛らしい反応を返した。膣壁をなぞっていた当麻は、美琴が他の場所よりも強く返す場所をすぐに見つける。
本当に小さな、少しざらざらとした凹凸のある部分。今度はそこを強く擦るように指を前後に出し入れした。
軽く曲げたままの中指が、美琴の秘所のさらに奥を、何度も激しく刺激した。
「ん、っなぁ、んんぁあ!あ!あ!」
「痛くねぇか?気持ち…いいのか?」
美琴は快感と羞恥と悔しさがない混ぜになって、何も考えられないままに頷いていた。
「き、んああ、当麻ぁ、っあぁ、んんんっ」
美琴は当麻の指に合わせてまるで操り人形のように胸が上下し、あえぎ声をあげた。
知らなかった感覚と羞恥がない交ぜになって、美琴の思考は殆どなかった。
自分が気が付かないまま、少しずつ腰が上に上がっていく。彼の指を、もっと、もっと奥へ導くように。
「腰、浮いちゃってるぞ」
「あ、っんっん、ばぁ、バカァ」
当麻は自分の方に近づいてくる秘所に、蜜に吸い寄せられるように口をつけた。
既に充血して膨らんでしまった美琴のクリトリスに口を付け、舌で弄びながら指を動かし続けた。
「あ、んぁああ、あぁっ、一緒、弄っちゃだめぇえ」
美琴はあまりの快感に、既に何かが膨らむのを感じた。腰の下が熱く、たまらなく熱くなって。
全身がくすぐったさにも似た快感で満たされ、内側から全身を快感で揺すられる。
「当麻ぁあああ、だめえぇ!ホントにダメェエ!」
「いいよ、いっちゃえって」
クニクニとした感触と美琴の膣壁の温かさ、何よりも鼻につく女性の香りと美琴のかわいらしい声が当麻の心臓を高回転へと持っていく。
今更、ブレーキなんてかかるわけがない。指を更に速く、強く動かす。
「っぁつつぁああああ、ダ、メェエエエエエ」
自分の体がまるで制御できない、今まで感じたことのない放り出されるような浮遊感。
美琴は全身をこわばらせて苦痛とも言える快感をこらえようとしたが、努力もむなしく秘所から温かな水が吹き出て
当麻の腕と顔、ベッドに巨大なシミを描いた。
「だ、だから怒るなって」
とりあえず、バスルームから取ってきたタオルをベッドに敷き、
怒りと羞恥で何も言えなくなっているお嬢様を何とかなだめようとした。
裸身を隠そうと薄いシーツを被っているのがやけにいやらしいのだが、
それを言うとどんな危険な事態が待っているかわかっていたので何も言わない。
「その、悪かった。このとーり、俺もまさかあんな」
「それ以上…、言うんじゃないッ!!!!」
美琴はとりあえず電撃ではなく拳を握った。
傍らに膝を付いている当麻の鳩尾に向けて、握った拳を放ちイライラを沈める。
「次に余計な事言ったら、殺すわ…」
今回ばかりは一切容赦のない美琴に、当麻はがっくりとうなだれた。
「ぐっ、お前、レールガンより効くぞ…。く、と、とにかく、風呂沸いたし、入って来いって」
「ん、うん。でも、ちょっと、腰が抜け…。ねえ、連れて行って」
あさっての方向を向きながら恥ずかしそうにねだられてしまったら、当麻に出来ることはたった一つだ。
美琴の肩と膝に手を回し、首に手を回させるて持ち上げた。いわゆる、お姫様抱っこ。
「ちょっと待った、ねぇ…」
美琴は顔が近づくと瞳を閉じて、黙って当麻の方に顎を上げた。当麻もごく自然に、キスをする。
「キスしてる顔、可愛いな」
「ばっ、アンタも眼をつぶりなさいよ!」
有無を言わさず抱き上げて、美琴をバスルームへと連行する。
「ほら、暴れるなって」
着ていたシャツが濡れるのも構わず、美琴をバスタブに座らせると当麻はバスルームを出てベッドに戻る。
宴の後、正確には完全に終わってすらいないのだが、放っておいても後が面倒だった。
まるで、誰かが襲われたみたいに、ベッドの周りに服は散乱しているし、
ベッドメイクは乱れ、大きなシミが広がっている。
「うわぁ、これ、ヤバいだろ…」
とりあえず脱ぎ散らかした美琴の服をハンガーにかけ、下着はまとめておいて(ちょっとだけマジマジと見入ってしまったのは秘密だ)
ベッドのシーツが少しでも乾くようにエアコンをつけた。
「美琴ー、一人で大丈夫かー?下着だけまとめて置いておくぞー」
「勝手に下着を手に取るな!!」
バスルームに戻るとドアの前でちょっとだけそんなやりとりがあって、
何でか一緒にバスタブに収まることになってしまった。
確かにそれなり以上のホテルだけあって広いしジャクジーとバブルバス、
当麻としては美琴と一緒でなければ最高にリラックスできるはずなのだが…。
自分の膝の間に収まって背中を預けてくる美琴のおかげで、まったくリラックスできなかった。
それどころか腰を不自然に離し、密着させまいと努力しなければならないのだから。
「ちょっとアンタ、じゃない、当麻、なんでそんな変な姿勢なの?寄りかかりづらいんだけど」
「うるせえ!ちょっとした事情があるんです!男の子はデリケートなの!」
「へー、ふーん、あっそ、わかった」
声がニヤっと笑っていた。当麻は嫌な予感がしたが、この状態では動けない。
美琴は前を向いたまま当麻のペニスに手を延ばした。まだ充分に硬度を保ったそれを、撫でるようにさする。
「ちょ、まった、まって」
「ふふーん、今度はアンタがされる番、だからね」
「まて、マテ、なんか不穏な空気がぁ!」
美琴は覚悟を決める様に一度下を向き、グッと顔を上げた。
腰は治ったのか、軽い身のこなしで当麻の方に向き直った。
「まさか、美琴さんにあそこまでして、ねぇ?」
「ちょ、ちょっと待て、おまえぇ!」
美琴はイタズラっぽく笑い、当麻のペニスを優しくなでた。
触れるか触れないかの刺激は緊張をほぐすどころか、余計に張りを強くさせる。
「んふ、声も出ないって感じ?」
美琴は勝利宣言みたいな声で当麻に言った。
「何がしてほしいのか、正直に言うってんならしてあげても良いわよ?」
当麻は悔しそうに声を漏らした、口でしてください、と。
美琴は自分の眼前に露わになったそれを見て、愕然とした。
「マ、マジ、ちょっとこれ、なんか痛そうだけど大丈夫なの?」
「う、うるせえ!これはこれで恥ずかしいんだよ!あと、確かにこの状態が続くと痛いし辛い!」
美琴はピンク色の舌を延ばし、当麻の硬くなった先にある部分を一舐めした。
「うあ!な!」
「ん、なんか、変な感触」
「うわ!う、うるせえ!」
「止めてもいいわけ?」
「い、嫌です」
美琴は舌で当麻のペニスを上下に舐めた。
顔を横にして舌を延ばしペニスを舐めている様が扇情的で、
それだけで当麻はもう何か知らなかった快感に目覚めそうだった。
「ん、んん、ふぁ」
美琴は全体をきれいに舐め上げたあと、さきっぽを口に含んだ。
美琴の舌に反応してぴくぴくと動くそれは、最初の印象よりも幾分可愛らしいものに変わった。
「ん、んふ、ンムゥウ」
ペニスの裏を重点的に攻める、そこを攻めると当麻の顔が可愛らしく歪むのがわかったからだ。
「ふぁんた、いあいとかあいいかおすんおえ」
「な、いきなりなにを!」
「ふわぁ?あんた、意外とかわいい顔すんのね」
一度口を離し、舌でペニスを上下に舐めた。
舌の先っちょで舐めると、当麻は嬉しそうに吐息を漏らす。
「ん、んふぅあ、んんん、ふわぁ、んふ」
美琴は当麻のペニスを手で包みしごきながら、先っぽだけを口に含んだ。
今度は口内で舌を回しながら、手の動きを速める。
「ま、待て!ヤバ!な!」
当麻は美琴の頭に手を添えると、バスタブの縁に腰を落としてしまった。
立っていることも出来ないくらい、強い射精感が当麻を襲う。
「ん、らしていいよ」
加えたまま声を出されるとそれが更に強い刺激になって、当麻は限界を迎えた。
「わりい!」
「んっ!んんんん!!!」
美琴の温かな口を当麻の精液が、強い勢いで犯していく。
「ん!ふぅ…、ん」
美琴は手の動きを遅くしながら、舌でペニスをやさしくなぞっていく。
「ん、結構苦いのね、これ」
美琴は不思議そうに口の中の精液を掌に出して、ちょっと弄ってみた。
延ばしたり、糸を引かせてしげしげと眺める。
変なにおいもするし苦い、正直、好きでもない相手のこれを口に出されたら確実に殺すだろうなと、考えをめぐらせた。
「そんなもんで遊ばないの!ほら、手ェ洗う!」
当麻はシャワーで美琴の頭からお湯を浴びせた。
「ん、いきなりなによ」
「お前、まさかこれで終わりとか言う気ないよな」
当麻の声色が変わったことに、美琴は気が付かなかった。
「なぁに?だって、さっきの」
美琴は何か言おうとして、肩を捕まれた。
「え、ちょ、待っ」
ちょっと熱めにしたシャワーを流して、美琴を優しくタイル張りの床に横たえる。
「待ってってば!、さすがにここはちょっと」
「あぁ?あそこまでされて我慢しろとか、無理にきまってんだろ!」
美琴はうろたえたように当麻を見直したが、顔にも瞳にも獣の色が宿っている。
「ちょっと!アンタ普段はヘタレなのに!なんで獣入ってるのよ!」
「むしろ男は狼って、習わなかったんですかぁ!」
でも、このがっつき具合がちょっと嬉しい。当麻は自分を求めてくれているという、甘い充足感。
―ヒモにひっかかる女の事、馬鹿に出来ないわね
なるほどこれは、確かに他に変えがたい充足感だった。
タイルに冷やされて丁度いい温度になったお湯の流れを感じながら、美琴は体の力を抜いた。
「わかったわよ、ほらおいで。でもキスぐらいして、ほしいわよ?」
当麻に頭を後ろから抱えられて激しくキスを交わす。
腕をそのままにして、当麻は美琴の秘所をもう一度指で刺激した。
「ッん、んぁ、もう大丈夫、だから…」
「そか、んじゃ、行くぞ」
美琴はクスっと笑ってしまった、獣になろうが当麻は当麻だ。最後の最後では優しさが勝るのだから。
「痛かったら言えよ」
「痛がって止めたりしたら、ぶっとばすわよ」
「あ、ああ、わかったよ」
当麻は美琴の秘所に自分のペニスをあてがい、
先端を美琴の愛液と馴染ませるように、二、三度こすってみた。
膣口を刺激された美琴は、律儀に反応してしまう。
「こ、この後に及んで焦らさないでよ…、つ、は、恥ずかしいんだから、それとも入れるとこがわかんな」
そう言った瞬間、当麻は美琴の割れ目を少し指で広げて、スっと挿入した。
「っ痛!、マジ…で」
ペニスに強い抵抗があって、気持ち良いとは思えなかった。
当麻は自分が美琴を傷付けはしないかと怖くなりながら、
それでも美琴を抱きしめて奥へと這入っていく。
「当麻、好き、だよ…っひぃッ!」
当麻は美琴を強く抱きしめ、耳元でささやく、好きだと。そのまま、最後まで挿入しきった。
「きっつ、いな。美琴、大丈夫か」
「ば、馬鹿にしないでよ、あ、アタシは」
「アホ、か。俺ひとりで、気持ちよくなんてなれるかよ」
二人は磁力に吸い寄せられるようにキスをして、そのまま何度も唇を重ねた。
誰よりも近く、お互いに相手しか知らないところを感じて、そうして重ねた唇は、ソレまで以上に官能的だった。
「っう、動いてもいい、わよ」
顔をしかめ、目じりに涙まで浮かべて、美琴は当麻を受け入れていた。
当麻も幾分か美琴の締め付けに慣れて、ふたたび美琴の膣内のペニスは異常なまでに硬くなっていた。
「だから、お前な」
「いいから、怒るわよ。さっきから、辛そうにヒクヒクしてるし。アンタにも、気持ちよくなって欲しいもん」
当麻はわかったようなわからないような顔で美琴にキスすると、
美琴を抱きしめたまま腰をいきなりフルスピードで動かし始めた。
「ばっ、ちょっと、いきな、んん、ッッツゥ!」
あんなことまで言われて、我慢できるほど当麻は大人ではない。
紳士を気取るつもりも無い。
「美琴、ごめんな、でも凄く気持ち良いぞ」
美琴にしても、そう言われると体が軽く、どこかで受け入れて行ってしまう。
当麻は既に美琴を抱きかかえ、繋がったまま床に座っていた。
丁度、座ったままでいる当麻の上に美琴が腰を下ろしたように。
美琴は、痛みと快感が入れ替わり始めて、自分から少しだけ腰を動かし始めていた。
「んぁああ!うぁあっ!当麻、当麻ぁ」
キスをしたまま、二人は痛いほどに抱きしめあって、腰をぶつけた。
お互いの腹で、胸で、唇で、腕で相手を感じながら、狂ったように腰を揺らした。
「美琴、好きだ!俺!お前が好きだ!」
「当麻ぁ!当麻ぁ!ッッ!」
美琴の膣が、痙攣するように当麻のペニスを締め上げた。
波を打つような、一定のリズムを持った収縮作用に、当麻は制御できない高ぶりを感じた。
「キス、して」
繋がったまま、相手の唇を味わいながら、二人はほぼ同時に果てた。
「だから、ごめん!悪かった!」
「さっきも、聞いたんだけど」
美琴はバスローブに身を包んで、ベッドではなくソファに身を預けている。
正面のカーペットには、教科書に載ってもおかしくない綺麗な土下座を決めている当麻がいた。
「まさか、初めてがあんなところで、せめてベッドでって」
美琴の怒りは、怒りというか多分に照れも混じっているが、
とりあえず自分の希望など全く叶わなかったことに、怒っているのは事実だ。
「アンタ、一体どこまで獣なの?」
美琴はさらに、一番大事なところで怒っている。
「しかも、避妊もなしで、完全に膣内で出したわよねぇ?アンタね!
そりゃ嫌じゃないけど、さすがに無防備すぎない?最悪の事態の時、親になんて説明すりゃ良いのよ!」
「そ、そんときは当然、俺が殴られに行く、当たり前だろ…」
「そ、それは、まぁ」
マズい、と美琴は思う。
そういう事を言わせたいわけではないし、顔が思わず緩んでしまったのも悔しい。
「と、とにかく!今後はその、ゴムとか、色々用意しとくから」
「い、いいいい、色々ォ!?あんた、またその、する気、なの?」
思わず、額の辺りで派手なスパークが起きた。美琴は顔が真っ赤になって、何もいえないでいる。
「当たり前だろ…、お前が恋人だったら、我慢なんて出来るかよ」
「ああああ、もう良いわ。わかった、わかったわよ。とにかくその、避妊は、ちゃんとしなきゃよね」
真っ赤になった美琴を見て、当麻は思う。しばらく、こんな風にお互いのペースで進んでいけるのかな、と。
照れてしまった美琴に近づき、当麻は優しくキスをした。暖かくて、柔らかなキス。
これから、始まる新しい関係を思って、二人は少し長めにキスをした。
fin