「ふぁーっ、さぁーってと、インデックスも送り出したし、今日は一日どーすっかなぁー」  
 
 日曜日の今日、上条当麻は珍しく一日フリーダムだった。  
 インデックスは先程迎えに来た風斬氷華と遊びに出かけた。  
 しかも夕方には小萌先生宅で、吹寄と姫神も交えて、『ドキドキッ!? 女だけの鍋大会』なのだそうだ。  
 
「いやー、女だけって言われたら、俺も交ぜてとは言えないよなぁー」  
 
 なので、今日は一日ずっと一人きり。  
 珍しく休みに一人なので久々に仲間と遊ぼうと思ったが、土御門はおろか青髪ピアスも捕まらなかった。  
 その上、諸事情により財布の中身が慢性的に乏しい。  
 そこで上条が考えた一人の余暇の過ごし方とは、  
 
「ふぁぁ〜あ……。うろうろすっとロクな目にあわねぇーから、取りあえず今日一日は寝てすごす事にでもすっかな〜」  
 と言う、若さ絶賛暴走中の男子高校生にあるまじき選択であった。  
 だがしかし、ここ数ヶ月の間に彼が遭った空前絶後の大事件のバーゲンセールの数々を思うと、このように達観した結論に達したとしても仕方ない事だろう。  
 
 ただ、彼はある重大な事実を忘れていた。  
 最初の事件の発端は、彼の部屋のベランダで始まったのだと言う事を……。  
 
 
 
『浜辺と月夜とカメと』  
 
 
 
 寝てれば金が掛からないからいいよなー、と上条は大きく背伸びをしながらそんな独り言を言った。  
 そして、ちらりと自分のベッドを見る。  
 このベッドの本来の持ち主は勿論家主たる上条な訳だが、現在、このベッドを占有しているのはお出かけ中の白いシスターである。  
 今日はいないのだから使っても問題なかろうと思うのだが、上条は決してこのベッドを使おうとは思わない。  
 何故なら、  
 
「いやー……、何と言うか……、落ち着いて寝られないから」  
 と言う事らしい。  
 実は一度試したのだが、何だか正体不明のイイ香りがして、酷く興奮して寝られなかった経験がある。  
 しかも、その後暫くインデックスの顔がまともに見られなくて、それを悪い方向に勘ぐられて制裁(カミツキ)されたのだ。  
 
 上条はもう一度大きく背伸びをすると立ち上がって、彼の根城たるユニットバスに向かおうとした。  
 所がユニットバスのドアに手を掛けたところで、ピンポーンと呼び鈴が鳴る音が聞こえてきた。  
 上条は一瞬ぼーっと立ち尽くしたが、もう一度呼び鈴が鳴ると慌てて玄関に向かった。  
 
「ハイハーイ、どちら様ですかぁ〜?」  
 
 上条が何の警戒心も無くドアを開けると、そこには帽子を目深に被って顔の上半分が隠れた口ヒゲの男が立っていて、  
 
「上条さん、宅配便でーす。こちらにハンコかサインをお願いします」  
 と上条の目の前に、段ボール箱とその上に受領書を載せて差し出した。  
 
「あ? あー、ハイハイ、サインでいいですか?」  
 と上条が答えると、男は胸ポケットからペンを取り出して「どうぞ」と上条に差し出した。  
 上条はそのペンを受け取ると、受領書にさらさらっとサインを書く。  
 受領書にサインを貰った男は、  
 
「毎度ありがとうございましたー」  
 と受領書を乱暴にズボンのポケットに押し込むと、段ボール箱を上条に手渡して、さっさと背を向けて行ってしまった。  
 小走りに去っていく配達人の後ろ姿を見送りながら、何だかとても違和感を感じていた上条だったが、それが何か判らず、ただ首を捻るばかり。  
 しかも興味が段ボール箱の方に移ってしまうと、その違和感も忘れてしまう。  
 
「ちょっと重いな……。で、差出人はぁ……天草式十字凄教、五和……、おぉ! 五和からだ、何だろ?」  
 てか、こんなんでよく届くなぁー、とか言いながら段ボール箱を持って部屋に戻る。  
 そして、テーブルの上に箱を置くと、  
 
「して五和は何を送って来たんだぁー?」  
 上条はバリバリと遠慮無く梱包を剥がして段ボールのフタを開けた。  
 すると中からは、  
 
「手紙? と何だコレ? 液晶付きポータブルDVDプレーヤー……」  
 
 梱包材に厳重に包まれたDVDプレーヤーを見つけて、何だこりゃ? と上条の表情が険しくなる。  
 こんな仰々しいものを送って寄越すなんて、また何か事件が起きたのか、はたまた例のローマ聖教『神の右席』の情報か、はたまた自身の右手の……。  
 思い当たる事が余りにも多すぎて困惑する不幸な少年上条当麻。  
 
「――とにかく、先ずは手紙から……」  
 
 上条は神妙な面持ちで手紙を開けて読み始める。  
 
「何々……、拝啓親愛なる上条当麻様、あれからお変わりありませんでしょうか。先日の戦いでは天草式十字凄教一同が大変お世話になり――」  
 と読めども読めども上条に対する礼の言葉と、天草式の面々の近況ばかりで、ローマのロの字も出てこない。  
 気が付けば上条も肩の力を抜いて、この手紙を楽しんで読んでいた。  
 
「おー、みんな元気そうで良かった良かった。そか……、そーだよなー、毎日殺伐としてちゃ息が詰まっちまうもんなぁ〜」  
 としみじみと感想を述べた。  
 そして、  
 
「えっと、何々? 最後に旅先で撮影した面白いビデオレターを同封します。ちょっと大人向きですからお一人でご覧になってくださいィィ!?」  
 
 勝手に手紙を読む声が上擦ってしまう。  
 え……? 大人向き? DVDプレーヤーを見つめて、ぎょくっと生唾を飲み込んだ。  
 今、上条の頭の中には、あんな五和とか、こんな五和の姿が現れては消え、現れては消え……。  
 
「うぅっ、カミジョーさんも健全な男子コーコーセーですから、そんな誘惑には抗えませんよねぇ……」  
 とは誰に向かって言ったのだろうか?  
 上条は直ぐさま立ち上がると、壁際に置いてある多目的ボックスをガサゴソ漁って中から延長コードを取り出した。  
 そして先程のDVDプレーヤーと、側にあったティッシュボックスを大事に胸に抱きしめると、いそいそとユニットバス(しんしつ)に向かったのだった。  
 
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜  
 
 延長コードを外のコンセントに繋いでから、それを引っ張りながらユニットバスに入った上条は、浴槽の縁に置いたDVDプレーヤーから伸びるコンセントと繋いだ。  
 そして、準備完了と言うや、浴槽内に座り込んだ。  
 今、上条の頭の中は既に思春期の少年特有の妄想で一杯だった。  
 彼の頭の中では、神裂や五和や、その他天草式の女性陣が、大人水着で楽しそうにワッキャウフフしている。  
 今の上条の溶け切った顔を見たら、きっと百年の恋も冷めるだろうと言うだらし無さだった。  
 
「ふふふ、さぁーて……、ではよろしくお願いしまーす♪」  
 一体何をよろしくするのだろうか?  
 上条はポチっとなと前時代的な掛け声と共にプレーヤーの電源を入れた。  
 
 すると、フーンと微かにDVDが回転する音がして液晶画面に一瞬光りが走ると映像が映る。  
 そこにはクリームイエローの用紙に太いペンで手書きされたような文字で、  
 
「何々ぃー、『海辺の生き物の神秘』?」  
 
 上条は、題名がついてるなんて随分凝ってんなー、と感心しつつ、  
(あれ? 学習教材っぽいこの入り……カミジョーさんなんかすっげー騙された感じ……)  
 と最速気分は、表紙に騙されて失敗した時の気分になって、  
「まさか手の込んだどっきりか!? 俺の高まったパトスをどうすればいいと? 不幸だー……」  
 と目に涙すら浮かべている。  
 しかし、  
 
「いや! まだ終ったとは決まってないな。俺は五和を信じるゼ」  
 と必死に自分を鼓舞すると、再び画面を食い入るように見つめた。  
 
 すると、程なくして場面は変わり、先程とは打って変わって少し暗くなった。  
 映し出される映像は外の景色だろうか? 白っぽいでこぼこした地面は途中で暗くなり、そのずっと先では何かがキラキラしている。  
 スピーカーからは波の音が聞こえる事から水辺の近くなのだろう事が判るのだが……。  
 
『い、今、私は……、よよよ、夜のビーチに来ています。今夜は満月なのでとても明るいです』  
 緊張した感じの女性の声がスピーカーから聞こえた。  
 
「この声は五和……」  
 知った女性の声に上条は意味も無くドキッとする。  
 
『か、上条さん、見えますかー?』  
「ビーチ……か」  
 スピーカーから聞こえる呼び掛けの声に、上条は答えるように呟く。  
 更に、  
 
「ビーチったら、やっぱ水着だろ? だろ? ヨシ! ヨォーシ!!」  
 と上条は小さくガッツポーズを見せる。  
 
 しかし、画面に映し出される映像には人の気配が全く無い。  
 実際、画面には先程から引き続き月明かりに浮かび上がるビーチがどこまでも映し出されているばかりで人っ子一人出て来ない。  
 しかもカメラのスイングが速過ぎるので目を凝らして人影を探していた上条は、  
 
「キモチワル……」  
 上条は口元に手を当てて吐き気を堪えるのに必死だった。  
 
 そして、そんな上条の耳に心を芯を折る事実が告げられたのはその時だった。  
 
『こ、この辺りでは……め、珍しいカメの産……卵が……み、見られると言う事なので……』  
 
 五和のたどたどしい解説を遠くに聞きながら、  
 
「え? カメの産卵……、水着のお姉さんとかじゃなくて、カメのさ・ん・ら・ん……」  
(やっばりそー言う事か……、やっぱカミジョーさんにはこんなささやかな幸せさえ……)  
 
「ああああぁぁぁぁああああ!! やっぱり俺って、俺って……不幸だぁぁぁぁああああああああああああああああ!!」  
 と狭いユニットバスの中でただ嘆くのだった。  
 
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜  
 
 うっうっ、と涙を拭いながらも上条は律儀にDVDを観続けていた。  
 
「五和ぁ……、今時『子供はどうやって生まれるの?』的シチュエーション何てありえないから……、うぅ……」  
 
 時折ぐちぐちと意味不明の言葉を発する上条を措いて先程から波打ち際の映像が続いていた。  
 その為、スピーカーからは先程より一層波の音が大きく聞こえて来る。  
 そしてその音の中に時折、  
 
『中々見つかりませんねー』  
 と言う五和の何度目かの同じ台詞が混じる。  
 
「はーっ――いつまで続くんだこれ?」  
 上条も何度目かの溜息とともに愚痴を言った。  
 しかし、今回は少し違ったようで、  
 
「ん? 何だ……何か……」  
 上条の呟きと同じくして、それは五和も見付けたのだろう。  
 
『あ、あれは何かいますねっ! 行ってみましょう』  
 些か棒読みな台詞を言うが早いか、画面が微かに上下しながら謎の物体にどんどん近づいて行く。  
 
「うぷっ……五、わ……キモチ……!?」  
 揺れる画面に乗り物酔い状態の上条はふらふらになりながら画面に向かって毒づきかけて――、  
 
「何だあれ……ひ……と?」  
 
 近付くにつれ、物体のシルエットが明らかに人のそれだと判る。  
 画面で観ても人だと判るのだから、それは多分撮影しているはずの五和からも判っているはずなのに、カメラは一向に接近するのを止めようとしない。  
 
「おい……大丈夫なのか……? これ……」  
 上条は何か言い知れない不安に苛まれた。  
 そしてそれは現実の物となった。  
 
「な……んだ……?」  
 
 上条は、喉の奥から辛うじて声を絞り出した。  
 上条の両目は限界まで見開かれ、その両手はがっちりとDVDプレーヤーを掴んでいる。  
 
 画面に映る人物の上条の受けた第一印象は『宇宙人』だった。  
 
 月明かりを反射してテラテラと輝く黒い顔には目も鼻も口も無く、ヒゲのような突起が突き出している。  
 体も、黒く、大きく突き出した胸の辺りだけが白くなっている。  
 両手は、こちらも顔と同じように黒光りしている。  
 そして、二の腕から肩と、両足は太ももの付け根と思われる部分からつま先まで、真っ白で……。  
 
 上条は、ゴクリと唾を飲み込むと、  
 
「お……い……、こりゃ完っ璧、女じゃ……?」  
 
 上条にはどう見ても、頭をマスクですっぽりと覆われた、ワンピースの水着を着た女の人に見えた。  
 モデルにも似た長身、そして背後には長い黒髪がゆらゆらと揺れている。  
 
(俺……、こいつ知っ――)  
 と上条が、何かを思い出そうとしていた時、スピーカーから五和の叫び声がそれを遮った。  
   
『み、見つ、見つけ……ました。こ、これが珍……しいカメ……、プ、プリ、プリ……、「プリエしゅテしゅウミゅガメ」でへふっ!? ひ、ひた噛んだ……』  
 
「はぁぁぁぁあああ!? オ……、オイ! 今何て……、何て言ったんだ五和ぁぁぁあああ!!」  
 
 上条はDVDプレーヤーを両手で掴んで揺さぶった。  
 あまりに興奮していたせいで、  
 
『ああ、女教皇(プリエステス)様、私、大事な所で噛んで……、も、申し訳ありませんンンンン!!』  
 と言う五和の叫びも、多分五和がぺこぺこ頭を下げるせいでがくがく揺れているのだろう映像の中、両手を必死にパタパタさせて錯乱した五和をなだめていると思われる覆面女のコミカルな動きにも、上条は全く気が付かない。  
 
 上条はただ、ありえない現実を目の当たりにして混乱するのだった。  
 
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜  
 
「ッ、はぁ、はぁ……、おい、どぉなってんだよ五和……」  
 叫びつかれた上条はドスンと浴槽に背中を預けると再び画面に注目した。  
 
 その画面では、カメラが更に女性に近づき、  
 
『こ、このウミガメのと、特徴は……、こ、ここ、ここデスッ!!』  
 
 画面の端から五和と思われる女性の白い手がすっと伸びると、はちきれそうな水着の胸の片方をむんずと鷲掴みにした。  
 指が深く食い込んだ瞬間、波音に紛れて『オフッ!』と言う声が聞こえた。  
 
『み、みみみ、見えますか上条さん! こ、これ、これですよ!!』  
 どもる五和の声と共に画面に映し出されたのは、  
 
「ぶっ!? ゼ、ゼッケンンンッ!?」  
 
 上条は盛大に吹き出す。  
 それもその筈、画面に映し出されたのは学校などでよく見かけるゼッケンである。  
 しかも胸の谷間で歪んだそこには、ご丁寧に『かんざきかおり』と平仮名で記されている。  
(おいおいおい……、ゼッケンって事はこれはもしやスク水っすか!? しかも、神裂ってしっかり書いてあるって事はやっぱり中身は神裂かよ!!)  
 
「しかし、神裂が着れるスク水なんてよく有ったな……、うっ、っつ……」  
 呆れた声を上げる上条だったが、その体にはある男性特有の変化が現われ始めていた。  
(コ、コラ!? し、静まれ俺のマイサンンン! まだ状況が判らねぇのに勝手にエキサイトすんな!!)  
 必死に自分の体と格闘する上条を他所に、画面では神裂の後姿が映し出されていた。  
 
 全頭マスクの後ろからいつも通り垂らされている、神裂のトレードマークの一つでもある美しい黒髪の長髪。  
 その長髪に隠れて背中に見える小さなカメの甲羅のようなものはご愛嬌か?  
 
 神裂のきゅっと引き締まったウエスト、それに反して水着から窮屈そうにはみ出した白い尻と、しゅーっと伸びた長い生足、それらが視覚的凶器として目から上条の男を刺激する。  
 
「うわ……、やっぱエロいっすよ神裂センパイ……」  
 
 その姿に上条はすっかり見とれてしまう。  
 
 画面の方では、カメラがそのまま神裂の前に回りこんでくる。  
 その正面からの映像を観て上条は、  
 
「ん? あれ? 神裂の腹……」  
 
 上条が気付いたように、神裂の水着の臍のくぼみとはっきりわかる部分のあたりが不自然に盛り上がっている。  
 神裂のウエストが引き締まっているいるからそれは余計に目立つ。  
 そしてその部分を、時折そっと手袋で覆われた神裂の手がさするものだから余計に目を引く。  
 
『「プリエステスウミガメ」は、目が、目が見えません……。本来は産卵場所まで、じり、自力で行くのですが、こ、ここ、今回は私が手を引いてゆく事にします』  
 
 画面の中で五和がそう宣言すると、画面の端からまた手が伸びてきて神裂の手を引いた。  
 すると、それを合図に神裂がゆっくりとした足取りで歩き出だした。  
 
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜  
 
 画面から神裂の姿が消えてからは、砂浜の映像がずっと流れていた。  
 
「こいつら何処に向かってるんだ?」  
 衝撃的な映像から一変、砂浜だけの映像に戻って落ち着いた上条は少し頭を働かせてみた。  
 一体全体この映像は何なのか?  
 映像には今の所神崎一人、あと多分撮影しているのは五和、この二人のどちらかもしくは両方が誰かに操られているのか?  
 しかし、何でこんな映像を取る必要があるのか?  
 そしてそれを自分に観せるのか?  
 
「んー……、考えが振り出しに戻っちまったぞ」  
 上条の頭の中にはピンと来るようなものは全く浮かばない。  
 いつもなら、こんな時にヒントのようなものを見つけるのだが……。  
 
『つ、着きました……ね』  
 何処かに着いたようだ。  
 気がつくと、大分波音が遠い。  
 上条がそんな事を感じていると、再び画面に神裂の姿が映った。  
 その姿は、少し前かがみで、  
 
「おい、何か苦しそうだけど大丈夫なのか?」  
 上条はその姿に心配そうな声を出す。  
 しかし画面の向こうの五和は気にする様子も無く、  
 
『こ、こ、ここが、産卵場所になります。他のウミガメと同じように「プリエステスウミガメ」も産卵の為に砂場に穴を彫ります』  
 と相変わらずどもりながらも説明口調で言う。  
 すると、それを合図に神裂が砂浜にずとんと膝を着く。  
 
「お、おい神裂、大丈……夫……」  
 状況の飲み込めない上条は心配したが、画面の向こうの神裂はやおら手を砂場に突き入れたかと思うと、  
 
「神裂……、穴なんか掘って一体……、……! ま、まさか!?」  
 上条はここで五和が何度も言っていたあるキーワードを思い出す。  
 その言葉とは『産卵』。  
(おい、産卵ってどういうことだ? 人間が産卵なんて出来るわきゃねぇだろ? それとも何かの魔術の儀式か?)  
 
「そおか……、儀式、天草式には色んなモノから術式を組む方法が有るって確か。そうかこれは何かの儀式なんだな! でもそれを俺に見せる理由って……?」  
 上条は答えを見つけたようで、また新たな難問にぶつかった事を理解した。  
 そして、そんな上条を置いて、神裂は穴を掘り終えたようだ。  
 
『穴は……もういいですね。そ、それでは今回のビデオレターのメイン!! し、しん、「神秘の産卵ショー」ですよ!!』  
 五和のやけくそ気味に盛り上げようとする高らかなコールを合図に、神裂は四つん這いになるとゆっくりとした動作で自分の掘った穴を跨いでゆく。  
 
『プ、女教皇(プリエステス)様、ストップですー!!』  
 と言う五和の声が聞こえるまで進むと、そこでピタリと止まる。  
 今度はそれが合図だったように、カメラは神裂の後ろに回と、丁度四つん這いで突き出された神裂のお尻をドアップで映し出したのだった。  
 
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜  
 
 画面いっぱいの神裂の尻を見て上条は声も出ない。  
 さらに、その突き出した尻の丁度割れ目の部分に大きなシミを見つけて、ごくりと生唾を飲み込もうとして、  
 
「うっ! ぐが!? ガハッ、ガハガハッ」  
 いつの間にかカラカラになっていた喉が引き攣って、盛大にむせてしまった。  
 そんな上条を再び置き去りにして、  
 
『女教皇(プリエステス)様、お、おお、お願いいします』  
 五和から緊張気味に、開始の言葉が投げかけられた。  
 すると、神裂が体をそらせて尻の方に砂まみれのグローブに覆われた右手を回す。  
 そして、四指が一体になった不自由な手で何度か失敗した後に、水着に指を引っ掛けると、半ば食い込んでいた水着の尻の部分をずるっとずらしたのだ。  
 
「か、かか、神裂っ!?」  
 今、上条の目の前に神裂の尻の穴と、秘所が隠すこと無くさらけ出されている。  
 映像とは言え、月明かりの下に妖しく輝く二つの女穴を間近に見て、  
 
「う゛……」  
 と、上条は一言呟いたきり前かがみになってしまう。  
(そ、それにしてもさっきから尻から何が……)  
 神裂の尻の穴からは、先程から粘液質の透明な液体が、トフ……、トフ……と尻の穴が息をする様に収縮するたび溢れていた。  
 その秘穴が突然、ぐぐぐっと盛り上がると、そこを押し広げて何かが姿を見せた。  
 
「た、たま、ご……ォ?」  
 上条が言ったようにそれは確かに卵のように見えた。  
 それは神裂のくすみ一つ無い綺麗な秘穴を押し広げて徐々に姿を現した。  
 スピーカーからは、『フウッ、フウッ』と苦しそうな声が聞こえる。  
 勿体付けるかのようにゆっくりと秘穴を割ってせり出してくる白い物体。  
 それが、どの程度姿を現したのだろうか。  
 『フグッ!!』っと神裂が一際大きな声を上げると、ボボンと二つの白い玉状のモノが粘液と共に神裂の秘穴から飛び出してきた。  
 
『あ、あ、女教皇(プリエステス)様、ふ、二個以上はペナルティーです……、もど、戻しますよ……』  
 五和が慌てたような声を上げた。  
 そして、再び白い手が現われると、砂がこびり付いたままの玉を神裂の秘穴に押し当て、  
 
『女教皇(プリエステス)様……、い、いきます……』  
 
 玉に添えた人差し指と中指に力を込めた。  
 玉をぎゅー、ぎゅーっと押すと、神裂の『フギュー! フギュー!』と言う声と共に神裂の中に吸い込まれてゆく。  
 最後にすぶっと、五和の指を根元まで秘穴に飲み込むと、神裂は『フギュッ!』と背中を仰け反らせた。  
 ずるりと半ば開きかけた秘穴から抜いた五和の指まで粘液の橋か架かる。  
 
『ハァ……、ハァ……、プ、女教皇(プリエステス)様……、も、もう一個……』  
 興奮した声を上げる五和は再び玉を神裂の秘穴に押し当てると、今度は声も掛けずにいきなり押し込む。  
 神裂は長い髪を振り乱しながら『フギュ!? フゴォォォ!!』と何か叫ぶも、  
 
『こ、これは……、ば、罰なんです……、罰なんですから……』  
 と五和は夢見心地に同じ言葉を呟く。  
 
 最初は中々入って行かなかった玉も、そのうち徐々に神裂の中に飲み込まれて再びずぶんと五和の指ごと飲み込んだ。  
 しかし、今度はそれだけでは終らなかった。  
 五和が神裂の尻のあてがった手をこねくり回し始めたのだ。  
 当然神裂の体の中には、まだ五和の指が残ったままで。  
 
『ウギュー! ウ゛ゴォ、グギュー!? オ゛、オ゛オ゛……』  
 神裂は、めちゃくちゃに頭を振りながら、獣のような咆哮を揚げ続ける。  
 その間も五和は、  
 
『罰なんですから……、罰なんですから……』  
 と先程と同じ言葉を呟いていた。  
 
 その内に神裂が、『オ゛オ゛ッ!!』と一際大きな叫びを上げて身を反らせると、ドシャっと砂浜に突っ伏してしまった。  
 
『あはははははは……、女教皇(プリエステス)様……、処女なのに潮を吹くなんて……』  
 五和はぴしゃりと神裂の尻たぶに平手を打ち付けるとそのまま尻を撫で回しながら、  
 
『上条さんの目の前ですよ……、今度は失敗しないで下さいね……』  
 とギュッと五指を神裂の赤くなった尻に食い込ませながら感情のこもらない声で言った。  
 
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜  
 
『――5、6、7、9……、あららぁー? 女教皇(プリエステス)様やっぱり足りませんよ、おっかしいですね……』  
 と五和はあっけらかんとして言い放った。  
 その五和の指は今、人差し指から薬指までが神裂の尻の穴の中に吸い込まれていて、神裂に『ブゴッ! ウ゛ゴッ!』と悲鳴を上げさせていた。  
 ここまで神裂は、何度も失敗を繰り返しては五和に玉をねじ込まれるを繰り返していた。  
 やっと、失敗しないでここまで来たのだが、どうやら最後の一つがどうしても出てこないようだ。  
 
『指にも触れませんし、これはもしかするとS字結腸の入り口に吸い付いちゃったんでしょうか?』  
 んー、と思案の声を上げつつも、相変わらず神裂の秘穴への責めは止まらないようだ。  
 
『拳はまだ無理でしたから……、えーっと……、そうですね、いい事を思いつきました』  
 五和は神裂から指を抜く。  
 すると、ドサッという音と共に神裂の上体が砂の上に投げ出される。  
 激しく上下する背中が、その責めの激しさを物語っているかのようであった。  
 スピーカーからガサゴソと音が続く間、映像には神裂の高々と上げられた尻と、真っ赤に充血して開ききった尻の穴、物欲しそうにひくひく蠢く秘所がドアップが映し出され続けた。  
 
『ヨシ、出来ました』  
 そんな映像も五和の声と共に手に握られた白い棒状のモノが映し出された事で終了を迎えた。  
 一見すると『おしぼり』なそれに、これはスキンを被せてあるのだろうか?  
 それを神裂の尻の穴や秘所に擦りつけながら、  
 
『女教皇(プリエステス)様いいですか? 私が今おしぼりで即席のディルドーを作りました。これで女教皇(プリエステス)様のお尻を刺激いたしますから一生懸命息んでください』  
 でわ行きますよぉー、と五和は尻の穴や秘所から掬い取った粘液でどろどろになったおしぼりディルドーを神裂の尻の穴に押し付けた。  
 そして、ぐりぐりっと捻る様にして尻の穴にねじ込み始めた。  
 尻の穴にディルドーが飲み込まれる毎に『グゥー』と苦しそうにうめき声を上げる神裂に、  
 
『頑張って下さい。まだこれからですよ』  
 と五和は明らかに心のこもらない励ましの言葉を与える。  
 
 神裂が『ウグッ』と悲鳴を上げた所で、おしぼりディルドーが先に進まなくなる。  
 すると五和は、  
 
『さぁーいきますよぉ』  
 と掛け声と共にディルドーを激しく秘穴から出し入れし始めたのだ。  
 五和がディルドーを動かすと、『オ゛オ゛ッ!! オ゛オ゛ッ!!』と叫び声が上がる。  
 
『お尻の穴がめくれて来ました……、もうすぐです……、いきますよ……、それぇ!』  
 掛け声と共に五和はディルドーを力強く一気に引き抜いた。  
 『ズポン!!』とありえない音と共に、ぶしゅーっと尻の穴と秘所から派手に液体が吹き上がる。  
 そしてついに、尻の穴から最後の白い玉が勢い良く飛び出してきた。  
 玉が飛び出した直後、五和が言うように秘穴がめくれたのか、神裂の尻に一瞬紅い花が咲いて消えた。  
 あまりの刺激に失禁したのか、ジョロジョロとおしっこを漏らし始めた神裂に、  
 
『出ましたよ女教皇(プリエステス)様。これだけ元気ならきっとこのコは男のコ……、あ、あれ?』  
 
 五和が『女教皇(プリエステス)様、女教皇様?』とお尻をディルドーで叩きながら呼びかけても、神裂は、ただびくびくっと痙攣を繰り返しているばかりで起き上がる気配が無い。  
 
『もしかして……』  
 
 カメラが神裂の頭の方に回りこむと、また画面の端から伸びてきた手が、片手で器用にマスクの紐を解く。  
 そして、バクっとマスクの後ろ頭を開くと、乱暴に髪を掴んで神裂の頭を持ち上げた。  
 ずるりと、マスクの中から神裂の本来の顔が現われる。  
 美しく端整な顔は汗まみれでびしょびしょで、鼻からは透明な粘液が太い筋を引いて滴り落ちる。  
 口には穴の開いたボールのようなものが噛ませてあり、その穴からもだらだらと涎が垂れていた。  
 半開きの瞳には全く生気が無くどろりと濁っている。  
 
『んー……、どうやら「プリエステスウミガメ」は産みの苦しみから失神してしまったようです』  
 
 ここで初めて、五和の顔が映像に映った。  
 二重まぶたが印象的な女の子の顔が、今まで見たことの無い妖しい笑みを口元に浮かべて神裂の頭を掴んで掲げていた。  
 五和は神裂の口に嵌められているボールに舌を這わせると、そのまま口を押し当てて神裂の唾液を音を立てて啜った後、器用に神裂を抱きかかえると、  
 
『ふはぁ……、貴重な「プリエステスウミガメ」をこのままには出来ませんので保護したいと思います。そちらに送りますから、上条さんよろしくお願いしますね』  
 
 五和はカメラに向かってにっこりと微笑んで見せた。  
 
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜  
 
 上条は映像が途切れても浴槽の中で動けなかった。  
 どぎつい映像の数々は、健全な男子高校生の心を何処かに吹き飛ばすだけの威力を持っていたのだ。  
 
 ようよう暫くして、自分の股間の辺りから気持ち悪い感触が伝ってくると、  
 
「あ……、あ……」  
 と上条はまるで阿呆にでもなった様に呻きながら自分のズボンのウエストを引っ張って、  
「く……そ……、パンツの中に……出しちまった……」  
 と言って、浴槽の淵に手を掛けてやっとの事で起き上がるが、浴槽の淵を跨ごうとした所で足が縺れて派手に洗い場に転げ落ちる。  
 
「いつっ……、ち、ちくしょー、ふ、不幸だぁー……」  
 そして這うようにしてユニットバスから脱衣所に出ると、尻餅をついたまま汚してしまったズボンとパンツを一緒に脱いで脱衣籠に放り込んだ。  
 そして、「あっ、ぐぞ……ォ、ケツまでべたべた……」と朦朧とした意識で自分の状態を嘆いていた。  
 すると横から「よ、よかったら……、おしぼり……」とおしぼりが差し出されたので上条は「あ、サンキュ、五和……」とごく自然に受け取った所で、  
 
「い、五和ッ!?」  
「は、ははは、はい! 五和です!」  
 上条の叫び声に五和は正座したまま器用にぴょんと跳ねた。  
 対する上条は咄嗟に尻擦って狭い脱衣所内で出来るだけ五和と距離を取ると、もらったタオルで大事な場所を隠す。  
 
「お、おま……、五和……、だよな? 何で日本に? ってか何でここにっ!? それにあのDVDは一体!!?」  
「え? えええ、えぇーっと、そのあのそのあのそのあの……、あああ、あなたにちょっとご用がありまして……」  
 上条の質問攻めに五和はしどろもどろになりながらも、要点をすっかり飛ばして自分の用件を伝える。  
 
「おあっ!? 俺の質問全部すっ飛ばしやがって! え? で用って……?」  
「と、ととと、取り合えずこちらにっ!!」  
 質問を殆ど無視されて憤る上条を、五和は強引に手を引いて脱衣所から連れ出した。  
 
「おわっ!? ちょ、待て五和っ!! お、俺、下何にも履いて無い……」  
 抵抗も虚しく引き摺られて行く上条。  
 そのまま、五和に部屋まで引き摺られてゆくと、部屋の中は一変していた。  
 まず、床一面とベッドを覆うように敷き詰められたブルーシート。  
 そして、部屋の中央には大きなスーツケースが横にして置かれていた。  
 
「おい、五和、これ……」  
 スーツケースを指差して説明を求める上条に、五和は「開けてみて下さい」とだけ言ってにっこりと微笑んだ。  
 その笑みも、スーツケースも何だか不幸の前兆にしか見えない上条は、  
 
「カミジョーさん的直感が申しますには、全身全霊全力で拒否したい訳だがッ!?」  
 と力強く拒否しようと試みるが、五和は先程と同じく「開けてみて下さい」とだけ言って再びにっこりと微笑んだ。  
 その瞬間上条は背中に冷たいものを感じつつも、「その前にパンツを履くとか、そ――」と最後の抵抗を試みようとしたが、「開けて下さい」と言う五和の一言に、小さく「――ハイ」とだけ答えるとスーツケースに近づいた。  
 
 そのスーツケースは既に鍵は外してあるようで、後は蓋を開くだけのようだ。  
 上条はスーツケースに手を掛けると、ごくりと生唾を飲み込み、  
(くぁ……、死体とかそー言うもんじゃねーよな? ってか悪い想像しか思いうかばねぇーってどーなのよ? 俺、五和に何かしたか?)  
 上条がちらっと五和の方に視線を投げると、にっこりと微笑み返された。  
 その笑顔に上条は、諦めたかのようにはぁーっと深いため息をつくと「おりゃ!」と掛け声と共に一気にスーツケースをあけた。  
 
「う、あ……、か、んざ……き……」  
 
 そこには、先程見たDVDと同じスクール水着を来て口にガムテープを貼られた神裂が膝を抱えるようにして入っていた。  
 上条はその無残な姿に生死を危惧したが、体が小さく動いている事と、うっすらと目が開いた事で、一応生きている事は確認できた。  
 全身汗か何か判らないものでびっしょりとなった神裂は窓から入る光を反射して怪しい生き物のようにぬめぬめと光っていて、時折寒そうにふるふると体を震わせる。  
 この状況を見た上条は気が動転しつつも、  
 
「おい五和っ!! これ……い……」  
 と五和に状況を問いただそうとしたのだが、その言葉も五和の姿を見てしぼむ様に消えてしまう。  
 
 五和は、上条が再度こちらを振り向くのに合わせて自分が着ていた作業服のようなつなぎを脱いだ。  
 因みに、五和が着ていたつなぎは、良く見ると先程の配達員が着ていたものと全く同じだったのだが上条は気がつかない。  
 バサリと音を立てて服が落ちた。  
 すると、その下から現れたのは無残に皮ベルトで拘束された五和の裸体であった。  
 ベルトの間から窮屈そうにはみ出した乳房や太ももが汗やそれ以外の何かで妖しく滑っている。  
 そしてほっそりとした彼女には不釣合いな不自然にせり出したお腹が目立った。  
 そんな五和は夢見心地のように、  
 
「どうでしょうか? 私にも似合いますか?」  
 と上条にはにかんで見せた。  
 
「ある親切な方が私たちに素直になる方法を指し示してくれたのです。既に女教皇(プリエステス)様は、あなたに女教皇様ご自身の覚悟を示されました」  
 そして「次は私の番です」と言うと、大きく一歩、ずいっと上条に近づいた。  
 そんな五和から少しでも離れようと上条は立ち上がろうとするのだが、  
 
「う……、ぐはっ!?」  
 立ち上がろうとした上条に背後から何かがのしかかって来た。  
 服を通して背中から湿り気が伝わってくる。  
 そして鼻腔には、脳を痺れさせるような背徳の香が漂って来る。  
 
「か、神裂ッ!?」  
「上条当麻、五和の覚悟を見届けてあげてください」  
 いつの間にか背後から密着して来た神裂は、万力のような力で上条の自由を奪いつつも、上条の首筋に舌を這わせながらそう言った。  
 そして五和の方を向くと優しく微笑みながら  
 
「それにしてもすごいですね五和。いくつ入れたのですか?」  
「15個です。頑張りました」  
 いとおしげにお腹をさする五和に、神裂は「それはすごいですね」と目を丸くして驚きの声を上げた。  
 
「オイ! お前ら! 俺にも判る様に説明してください!! 一体全体これはどーいう天草式びっくりドッキリ体験ですか!?」  
「上条当麻、これは私たち二人があなたの所有物になる覚悟を示しているのです」  
 上条の必死の叫びに、神裂は静かに、だが驚愕の事実を告げた。  
 ただその後に「本当は別の道もあったのかも知れませんが……」と神裂は未練とも取れる言葉を口にした。  
 それには上条も「いやむしろ俺は別の道に行って欲しいと思うよ」と逃げの口実にと、その言葉に乗ろうとしたのだが、  
「「もう戻れません」」  
 と言う2人の前には、すごすごと引き下がる他無く、しかしそれでも諦めきれず、  
「あ、あの……、所有権放棄とかクーリングオフとかそー言うのは……」  
 と言ってみたが、  
「「ありえません」」  
 と2人に口をそろえて言われてしまうと黙るしか無かった。  
 
 そうして会話が途切れた所で五和が、「では、私の覚悟を見てくださいね」と言ってくるりと上条たちに背を向けた。  
 そして、両の手を自分の尻の割れ目に当てると皮ベルトごと左右に大きく割り開いた。  
 五和の大事な部分が全て上条の目の前にさらけ出された。  
 
 そんな五和は、「ン……、い……きま……す」と苦しそうに言った。  
 そして――。  
 
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜  
 
「どぅおあッはぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!」  
 
 上条は浴槽から跳ね起きると、「ゼェゼェ」と荒い息を吐いた。  
 そうして息が整うまで暫くじっとしていたが、動悸が落ち着いてくると今度は「はぁー」と深いため息をつく。  
 それから今度はおもむろに洗い場に置いてあった一冊の本を手に取る。  
 その本の表紙には『肛虐調教学園』と題名がつけられていて、スク水を来た少女が縄で縛られてお尻を高く持ち上げた絵が書かれていた。  
 そして、ぺらっと表紙をめくると、そこには2枚の写真が……。  
 一枚は上条のトラウマともなった堕天使エロメイド姿の神裂をよりにもよって下から撮影した何とも形容しがたい写真と、もう一枚は手ブラのみで真っ赤な顔をした五和の臍下ギリギリのサービスショットだった。  
 
「くそっ!! 久々に毛色を変えて冒険したのが間違いだった!! ぬぁぁぁぁああにが『後学の為にもお奨めだにゃー、カミや〜ん』だッ!!」  
 うっがー!! と上条は盛大に雄叫びを上げると、どすどすと足を鳴らしながらユニットバスを出て部屋まで戻ってきて、  
 
「お……い……」  
 部屋に敷き詰められたブルーシートと、ブルーシートの中央に並べるように置かれた二つの大きなスーツケースを見て愕然とする。  
 
 そして上条の見ている前でスーツケースの蓋がゆっくりと開いて……。  
 
 
 
END  
 
 

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