雲ひとつない見渡す限りの青空。  
そんな今日はバレンタインデー  
 
製菓会社の陰謀と思う者もいれば、今日チョコを渡そうとする者もいる。またそれを欲しがる者もいる。それぞれ期待や不安、絶望といった感情を持ちながら今日はやってきた。だが、ある少年だけは違った…  
 
 
その少年が学校の自分のクラスに着いた時、異様な光景を見た。そこには男子が机を空にしたり、確認したり挙動不審な者もいた。その光景に思わず独り言を呟いた。  
 
「なんだこれ?」  
 
その少年は上条当麻。この少年は今日がバレンタインデーという事を知らない。  
 
土「なんだこれ?じゃないにゃー。今日はバレンタインぜよ。」  
 
彼の独り言を聞き取り返答したのは土御門元春。この2人はここにいないもう1人を合わせて「三バカ【デルタフォース】」と呼ばれている。  
 
「そうだったか?まぁ私上条当麻には関係のない話だな。いつも通りただの1日ですよ。」  
 
当麻はこの言葉の後にクラスの男子から殺気を感じ取った。そして後ろを振り返れば、クラスの男子が何やら各々武器を持っている。  
 
「あのー皆さんそれはなんでせう?」  
 
そう言った刹那、クラスから出て全力で逃げる当麻。そしてそれを追いかけるクラスの男子。  
「この旗男がー」などと叫びながら。クラスの男子は、立てたフラグは四桁を越えたなど様々な伝説を持ち、さまざまな女性とフラグを立てた上条のあの言葉にキレていた。  
そして生死を賭けた鬼ごっが始まった。とは言え鬼はクラスの男子から上条を引いた全員だが…  
それは夕方まで続いた。あり得ない話だが続いた。もちろん皆無断早退になり説教をくらうのはまた別の話。  
クラスの男子は今日を忘れ追いかけるのに必死だった。もはや自分からチョコ貰う事をできなくした事にも気づかずに…  
そんな中上条の体力は限界に近づいていた。それもそのはず。約20人に朝から追いかけられ、はさみうちにされてはそこからなんとかして脱出したりと無理をしていた。  
そして今まさに捕まりそうなところで救いの手が差しのべられた。  
 
?「こっち!!」  
 
その人に手を引かれ狭い路地に身を隠した。  
 
男「どこ行ったんだ?ってもうこんな時間!?疲れたし俺は帰るわ。」  
 
クラスの男子の1人がそう言うと、1人また1人と皆帰っていく。それを見て当麻はほっと胸を撫で下ろした。  
 
「どなたか存じませぬが助かりました。ありがとうございました。ってビリビリ!?」  
 
ビリビリと呼ばれたその人は少し頬を膨らませ、帯電し始めばちばちならしている。  
 
美琴「あんたねー助けてあげたのにビリビリって何?こんどは私が追いかよっか?」  
 
「すいません。すいません。御坂美琴お嬢様がいなかったら私上条当麻は死んでました。本当にありがとうございました。」  
 
その人は御坂美琴という少女であった。学園都市に7人しかいないレベル5の超能力者の第3位。  
 
美琴「死ぬとか大げさね。つか普通に名前で呼びなさいよ!」  
 
「あぁすまん。」  
 
美琴「で、何があったの?」  
 
事の顛末を話した当麻。  
 
「なんでこうなるんだろうな?不幸だ…」  
 
疑問をぶつける当麻だが美琴にはなぜそうなるか理解していた。  
 
美琴「まぁそれはアンタにも原因あるでしょ?」  
つか、あんたが新しい女の子とどんどん仲良くなってそんな事言ってるからじゃん。そのせいで私は…  
 
「なんだよそれ。」  
 
美琴「まぁいいじゃんとりあえず助かったんだし。あっ!そうだ!!はいコレ。」  
 
そう言って頬を朱に染めながら当麻に渡したそれは、きれいにラッピングされていた。  
 
「もしかしてこれはそのアレですか?」  
 
美琴「勘違いしないでよ?ただアンタが疲れてるみたいだから、甘いもの食べるといいと思って、余ってたチョコ渡しただけだから。」  
あぁなんで私ってば素直になれないのかな…  
 
「なんだ。ちょっと嬉しかったのに残念だな。まぁありがたく頂くよ。?これ手作り?」  
 
美琴「そ、そうだけど?」  
 
嬉しいという当麻の言葉に動揺しながら美琴は答える。  
 
「そうかそうか。」  
見た目は普通だが味はどうだろう?なんたってお嬢様が作るチョコだからな〜ましてや料理などしそうもない御坂だからな…まぁ食べてみるか。  
 
「…ありえねぇ」  
 
美琴「もしかして不味い?」  
 
「いや。すごく美味い。」  
 
美琴「そ、そう。あ、ありがとう。」  
 
照れたため噛んで呂律が回っていない。  
 
美琴「?じゃあ何がありえないのよ?」  
 
「いや美味いのがありえねぇ。」  
 
美琴「アンタ私をどういう風に見てんのよ!!」  
 
ばちばちと帯電する。  
 
「いや誤解するな。お嬢様は料理はできないと思ってたからさ。完璧に見えてもどこか抜けてるみたいなさ。」  
 
美琴「何それ?よくわかんない。」  
 
「まぁ気にするな。それよりありがとな御坂。」  
 
美琴「うん。どういたしまして。」  
 
「それより意外だな〜。御坂がチョコ作るなんて。好きな奴でも出来たか?」  
 
鈍感を極めた当麻ならではの発言である。もっともこの2人の関係上当麻がこう言いたくなるのは普通かもしれない。とは言え「妹達」や海原の件、罰ゲームなどがあっても気づかないのはあれだが…そしてそれを聞いて帯電し始める美琴がいるのは当たり前の事かもしれない。  
 
美琴「アンタねー…いい加減にしろー!!」  
確かに私の行動に問題があるかもしれないけど、少しは察しなさいよ…でも、今は喧嘩でもいい。アンタのそばにいれるなら私は…  
 
「えぇっ!?なんでそうなるんですか?」  
おいおい俺が何したっていうんだよ。不幸だー  
 
それぞれ正反対の感情を抱きながら2人だけの鬼ごっが始まった。  
 
 
その鬼ごっも終わり当麻は家に着いた。  
 
「ふぅ今日は散々な1日だったな〜疲れた。そういえば、御坂に追いかけられて食えなかったからチョコ残ってたよな?疲れた時は甘いものだったな。」  
 
そしてチョコを食べ終わると、下に何か紙が入ってることに気づいた。そして当麻はその紙を開くと文字が書いてあり読みはじめた。  
 
その頃常盤台女子寮の一室で少女は物思いにふけっていた。  
 
あいつ読んでくれたかな?むしろメッセージカードの存在に気づかなそう…勇気出してチョコ渡したら  
「好きな奴でも出来たか?」  
だしな〜さっきは喧嘩でもいいからそばにいれるならとか思ったけど、鈍感な癖に次々と新しい女の子を引っかけるから、焦ってあんな事書いたカード入れたけど、仮に読んでいても意味をはき違えてそう…  
美琴「まっなんとかなるか!!」  
 
美琴の心もまた青空だった。ところどころに雲はあるが晴れというには申し分ないものであった。  
 
だが当麻は意味をはき違えたりしてはいなかった。  
それからというもの当麻は美琴をスルーしたりする事もなくなり、互いに意識し始めたのはまた別の話。  
 
 
END  
 

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