「はぁ……」
どんなに科学が進歩しても乙女の悩みは消える事はない。
それが恋する乙女なら尚更だ。
それは外の世界より数十年は科学が進歩している学園都市、その学園都市3位の実力者であっても変わらない。
御坂美琴は、上条当麻を愛している。
それは先日美琴が気が付いた大きな事。
愛のカタチにも色々有り、例外も存在するが、愛しているなら気持ちを伝えたいと思うのが一般的考えである。
そして想いは思っているだけでは伝わらない。ならば行動を起こすべきなのだがそれが簡単にいく様なら苦労はしない。
生来の性格もあるし、何より彼の周りには女性が多くなかなかその機会がない。
家は土御門舞夏から聞いて知っている。携帯の番号だって知っている。
だから家に行く事が出来るし、電話で呼び出す事だって出来る。
機会がないなら作ればいいのだが、その機会を作る勇気がない。
相手の方からしてくれるというのが理想なのだが、そういった面は期待できそうにない。
それ故に溜息。今日だけで何回したか分からない。
「はぁ……」
美琴は、このまま何もないまま時が過ぎるのは望まない。
ならどうするか。考えた出した答えは、とりあえず会ってその場の勢い次第というあまり褒められたものだった。
(とりあえず家に行ってみますか)
丁度家の近くまで来たとこで上条を見つけた。都合のいい事に、一人でこっちへと歩いて来ている。
いつものように見かけ、いつもとは違う気持ちを抱きすれ違いざまに声を掛ける。
「ね、ねぇ」
しかしいつものようにスルーされた。
望ましい事ではないが、これは予想できた事なので気にせず離れていく背中へとまた声を掛ける。
「ちょっといいかな?」
しかしこれまたスルーされた。
いつもならもうとっくに電撃を出していた所だが、そこは抑えた。
「待ちなさい!!」
それでも声が大きくなるのは抑えられなかった。
しかしそれでも上条は、スルーした。
何やらぶつくさ言ってる所を見ると考え事中なのだろう。
上条にも色々と事情があるは知っている。考え事をするのもいいだろう。
それでも自身が悉くスルーされるのは納得できるものではない。
事情により電撃は控えると決めていたがいい加減限界だった。
「こっちをむけぇー!!」
叫びと共に美琴の気持ちを表すかのように無意識的に放たれた電撃は上条へと向かう。
「ん!うおっ!おお!」
そこでようやく振り向き、美琴の存在に気が付いた上条はいつものように、右手で防ごうとして――
「あっ……」
空振りをした。
いつものように放たれた電撃なら本能で防げたが、無意識のうちに放たれた電撃はいつものように防げなかったようだったのだ。
上条はわけも分からぬまま体中に痺れを感じ意識を閉ざした。
「んっ……あっ」
目が覚めた上条が最初に見たのは、美琴の顔だった。
上条が状況の確認をしようと声を出そうとして――
「なぁ――」
「大丈夫? 私の事覚えてる?」
その前に美琴の声が出た。
一目見て分かるくらいに必死の問いに上条は?だった。
「はぁ? 覚えてるに決まってるだろ」
お前は何を言っているんだという上条の顔を見て美琴は安堵の声を漏らした。
美琴は上条が記憶失った時の事を知らない。
それでも上条が精神的にも肉体的にも記憶を喪失してもおかしくない怪我をおったという事は知っている。
一度記憶を喪失しており、さらにその後も喪失してもおかしくない怪我をおった。
今は、問題ないように見えるがその実、限界が来ていてもおかしくはない。
だというのに電撃を浴びせられたらどうなる?また記憶を失う。そうなってもおかしくはない。
無論これは美琴の推測であり、真実とは異なる。それでも知らない美琴にとってはそれが事実のようなもの。
だからいつものように電撃を出すのは控えていたのだが、それでも無意識に出てしまった。
先程の自分の行為が記憶喪失のきっかけになってしまったのではないかと恐れていたのだ。
また記憶を失うのは上条としても望む所ではないだろう。
そして何より美琴が自分の事を忘れられるのが嫌だった。
自分が嫌な事を自分のせいで招いたかもしれないのだ。
その為に美琴の落ち込み具合は、半端じゃなかった。
(こいつの力になりたいと思ったのに駄目だな私)
涙は瞳を零れ頬を伝い垂れている。
その様は、いきなり電撃を浴びせられ気絶させられているにも関わらず上条の方が悪く思ってしまう程だ。
事情はどうあれ自分の事を心配してくれているのだ。
というより乙女の涙に勝てる男はいない。
「何だかわからんが大丈夫だって。上条さんは、この程度の事には慣れてますから」
言いながらも慣れてしまっている自分の不幸さに上条は、少し凹んだ。
上条の言葉にも美琴は、立ち直る事は、出来なかった。
今回は、大丈夫だった。それでも次は分からないのだ。
「そう……ならいいんだけど」
「いや、本当気にすんな。あの程度で記憶失ってたら、上条さんもう何回なってるかわかりませんから」
「そうね」
言葉は納得のものではあるが、そうでないと事は上条にだって分かる。
インデックスは、幸か不幸か小萌先生の所に行っているのでいない。
「あーここ俺の部屋だよな。連れて来てくれたんだ悪いな」
「うん」
「つか俺の部屋知ってたんだな。誰かから聞いたのか?」
「うん」
一応会話にはなってはいるがこれは違う、上条は思った。そして黙った。
二人共に続く言葉もなく沈黙が訪れる。
「あー、ところで何か用があったんじゃないのか?」
「えっ! あ、うん……そうね」
上条としては、この現状を打破する為に話題を振っただけなのだが、何故か効果は抜群のようだ。
美琴は、先程までの様子が嘘のように慌てふためいている。
(怒ったり、落ち込んだり、慌てたりと忙しい奴だな)
「ま、まあ、それは後でいいとして……うん。とりあえずお茶でも入れてくるわ」
(不幸だ……)
年頃の少女と自分の部屋でテーブルを挟み向かい合い二人きり。
青少年なら胸を躍らせ喜ぶ状況に置かれながらも上条は、不幸だった。
美琴が入れてきたお茶を飲みながらも二人は言葉を交わす事なく、室内は沈黙。
耐え切れず話すよう催促してみる上条だったが、帰ってくるのは沈黙。
重たい空気だけが部屋を包み込み、時折上条がズズッとお茶を啜る音だけ部屋に響く。
上条は、この状況を喜べるような人間ではなかった。
「テレビでもつけるか?」
沈黙に耐えられず先に動いたのは上条。
「待って!!」
静止の言葉に思わず動いていた体が止まる。
何だと思い見ると美琴はスッーハァーと深呼吸している。
傍から見ても分かるくらい気合を入れている。
つまりそれだけの事を言おうとしているのだ。
(俺、何かしたっけ?)
疑問に思うが答えは、出るはずもない
そして答えを知る少女はなにやら拳を握りさらに気合を入れている。
今までの経験からこういうときはいいことはないのは分かっている。
(不幸だ……)
上条が不幸を感じている中、それとは反対に美琴は、幸運だと思っていた。
(今しかない)
きっかけは最悪のものであったが部屋に二人きりという最高の状況なのだ。
美琴は今しかないと感じた。
言いたくても言えなかった事を言おう。
やりたくてもやれなかった事をやろう。
美琴は、その気持ちを抑える理由など持ち合わせていない。
そして相手は、目の前にいる。
ふぅと一呼吸置くと上条の胸の中に飛び込み、両の手を背に回し抱きつく。
「えっ」
上条としては突然の行為。今されている行為を理解できずに呻き声をあげるだけだ。
だが美琴としては当然の行為。今している行為を理解し気持ちを告げるだけだ。
「私は、あんたが好き」
言葉は消え入りそうに小さく、届かなそうな程短い。
それでもそれが全てだ。御坂美琴が上条当麻を想う凝縮された言葉なのだ。
だから届かないはずがない。
顔は真っ赤に染まり熱を持っているのが自分でも分かるし、胸の鼓動は高まる一方だ。
答えは期待する反面、拒絶されたらという想いがある。
聞きたいが聞きたくない。相反する感情がある。
後は待つだけ。その答えを。
上条当麻にとって御坂美琴の言葉は予想外過ぎた。
嫌われているとは思っていなかったがここまで好かれているとは思っていなかった。
無論嫌ってなどいない。かつて魔術師に語った答えに嘘なんて微塵も含まれていない。
今まで恋愛の対象としては見ていなかったが、改めて考えるとどうだろう。
(俺は……)
考えると答えは、すぐに出た。そして自分自身の出した答えに驚きを覚えた。
嫌いなはずはないがここまで好きだとは思ってもいなかった。
そういったものに縁がなかったので考えないようにしていたのかもしれない。
記憶を失う前に彼女がいたかもしれず無意識にそうしないようにしていたのかもしれない。
色々あるが気持ちは決まった。ならばそれを告げよう。
美琴は胸の中に埋まり顔を見られないようにしている。
背中が震えている。
答えが不安なのだろうか。もしかしたら拒絶される思っているのだろう。
密着する身体から胸の鼓動が聞こえる。息を呑む音が聞こえる。
言いたい事がある。人を気絶させて告白ってどうなのよ。
聞きたい事がある。何でまた俺を。
だけどその全てを飲み込んだ。
そのどれもが今この少女の望んでいるのものではないから。
いくら女の気持ちに疎くともこの状況ならそのくらいの事は分かる。そして今自分がする事も分かる。
微かに震えながらも、それでも離さないという意思を込め抱きついている美琴。
上条は、その身体を強く抱き締め返し、答えを告げる。
「俺も……好きだぞ」
上条の言葉が合図だったかのように、美琴は動いた。
先程までの離れるのを恐れるような抱きつきではなく身体全体で喜びを表現するかのように抱きついた。
「とうまとうまとうま」
我を忘れたかのように上条の名前を連呼する。
匂いをつけるかの様に擦り付いてくる。そのどれもが喜びと甘えの動作。
美琴は、今まで出来なかった事をするかのように甘えが凄かった。
唖然、上条の心情を一言で表すとこれだった。
けれども潤んだ美琴の瞳に見詰められるとどうでもよくなった。
胸の鼓動、微かな息遣い、暖かい体温、全てが美琴を感じさせてくれる。
「ずっとこうしたかった」
「み、御坂さん」
思わず御坂さんと呼んでしまう辺りに上条の動揺が伺える。
「美琴」
「えっ?」
「美琴って呼んで」
やはりこういう関係なら名前で呼ぶべきなのだろう。天然馬鹿と言われる上条だってそれくらいの事は分かる。
しかし改めて名前で呼ぶとなると照れる。それが期待を込めた眼差し向けられているのなら尚更だ。
だが言わなければならない。上条は、美琴の気持ちに応えると決めたのだから。
「み……み、美琴」
「当麻」
自分はこんなに苦労して呼んだのに、そっちはあっさり呼ぶなんて酷いと上条は、思った。
「こんな私は……いや?」
「嫌じゃないです」
美琴の問いに上条は、即答だった。
勿論美琴の変わりように驚いてはいる。
美琴自身その変わりように、自分でも驚いている。だからこそ上条が受け入れてくれるかと思い聞いたのだ。
しかし上条が女の子に甘えられて悪い気がするはずもなかった。
「だったら……」
美琴は、顔を上げると上目遣いで上条を見詰め、目が合うと瞳を閉じた。
上条は、美琴の要求している事がすぐにわかった。
美琴の顎を掴みそのまま口付けようとして――
「いたっ」
こつんと歯が当たり失敗した。
「ははっ、格好つけて慣れない事をするもんじゃないな」
「ばかっ」
上条は笑った。美琴も笑った。
先程までの甘い雰囲気は崩れて、いつもの雰囲気になってしまっていた。
だけどその雰囲気が心地良く感じられる。
だからする事は変わらない。
今度こそはと慎重に行動し、成功した。
ちゅっ触れるだけの口付け。
唇と唇をただ付けあう。技巧も何もあったものではない。
舌が押し入ってきた。戸惑ったがすぐに受け入れた。
舌が入る度に見も心もこじ開けられていくようだと美琴は感じていた。
名残惜しげに唇が離れ、唾液が糸を引き橋を引き甘い溜息が漏れる。
「いいか?」
何をとは上条は、言わない。言わずともこの状況で聞く事など一つしかない。
一番の問題のインデックスは、今日は帰って来ない。
つまり物理的な問題は解決されている。ならば後は気持ちだけの問題。そして二人の気持ちは既に決まっている。
上条の問いに美琴は、無言で頷いた。
体に当たる胸の膨らみ、女の子の匂い。そのどれもが上条の雄の部分を刺激する。
正直言って上条は限界だった。自分を慕う美少女が、身を任せてきているのだ。
これで何も思わない男がいたら、その男は不能者か男色家だろう。
そして上条は、そのどちらにも当てはまらない男だった。
美琴の了解を得た上条は、右手で肩を抱くと左手を膝裏に回し持ち上げた。
乙女の憧れお姫様抱っこである。
「ちょ、ちょっと」
これに慌てるのは、美琴だ。
自分の気持ちに素直になったといっても恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
しかし口だけの抗議なのは、上条の首に回された手から明からだった。
(嫌じゃない、ううん、嬉しいんだけどそんないきなり)
上条としては繊細な乙女心までは分からない。
しかし本気で嫌ならもっと抵抗するだろうと思いそのままベットへと運び、壊れ者を扱うようかのようにベットにそっと寝かせる。
美琴は、居心地悪そうに佇まいそこでふと、気付いた。
「この布団、あんたの匂いがしないのね」
「あっ……ああ、布団干したばかりだからな」
美琴としては上条の匂いがしないのをちょっと残念に思った為の発言なのだが、上条はギクリとした。
何せその布団を使っているのは自分ではなく、今横たわっている少女とは別の少女なのだ。
幸いな事に布団は干したばかりだが、いつもならインデックスの匂いが染み付いていただろう。
決してやましい事などないのだが、自分の布団で他の女が寝ているというのを美琴はよくは思わない事は間違いない。
というか同棲している事が問題なのだが、そこには気付いていない。
というより美琴を前にして上条はそんな事を考える余裕もなかった。
「脱がすぞ」
「自分で脱ぐわよ」
「いいからいいから。こういう時は男に任せなさい」
「……うん」
羞恥の気持ちはあるが、上条に見詰められたら美琴は、断れない。
流されるがままに美琴は、脱がされていった。
上条は、美琴のブレザーを脱がし、ブラウスへと手を掛けていく。
脱がしている最中にも衣服の上からでも分かる柔らかい感触が上条を誘惑をしてくる。
それを直に味わいたいと思うのは男なら正常な反応だろう。
ブラには少々梃子摺ったが脱がすのには成功した。
露になった胸は、母性の塊と呼ぶには些か小さいが、それでも上条は充分に女を感じていた。
思わずじっくり見てしまう。
「やっぱりダメ?」
上条は、純粋に見とれていただけなのだが美琴はそうは思わなかったようだ。
「そんな事ない。いいぜ」
「なっ……だ、だって、あんた大きいのが好きだと思ってた」
「なんでだよ?」
「前に大きい人の揉んでたから」
「はっ?…………ああ」
上条は、少し考え五和との事を言っているのだと気が付いた。
「いやあれは事故というものでして。そこに上条さんの意思というものは介入されていないわけでして」
「言い訳くさいんだけど」
言っている事は、事実なのだが、嫌ではなく嬉しかっただけに言い訳くさくなるのは必然と言えた。
「やっぱり大きい方がいいんだ……」
「いや、俺は、お前の胸がいいんだ」
「え、ええっ……うん」
この言葉には、言った方も言われた方も赤面した。
「じゃあ、するぞ」
「うん」
そっと微かな膨らみを示す胸へと手を伸ばす。
「んっ」
びくっと本能的に身体が震えたものの美琴は、抵抗をせず上条の手に身を任した。
抵抗がないのでそっと伸ばされた手は大胆な動きへと変わっていく。
上条の手でぐにぐにと形を変える二つの果実は、吸い付くような肌触りと瑞々しい弾力で誘惑しているかのようだった。
果実の先端にある桜の色の突起を指先でしごけば、白い肌はさらに熱を発し掌に吸い付いてくる。
上条は、美琴にのしかかる様にして、美琴の乳房の感触を楽しんだ。
「んあっ」
胸を手で堪能し尽すと、今度は舌で堪能する為に真っ白い肌、桜色の乳首、と自らの唇で印をつけていく。
「や……跡できちゃうでしょ」
「隠れるだろ」
美琴の言葉で止まれる程に上条は冷静でなかった。
己を刻み付けるかのように口付けを止める事はない。
ちゅっと吸って、離れ、後には赤い印が残る。
「はぁ……んっ……ねぇ?」
いいようにやられている美琴は、疑問を抱いた。
「なんか当麻妙に手馴れてない?」
言外に経験者?と美琴は、尋ねている。
少なくとも今の上条当麻の記憶にある限りでは経験はない。
尤も今時の高校生らしくそれなりの知識は有り、それを活かし頑張っているのだけである。
どうやらそれを美琴は手馴れていると感じたらしい。
つまりそれだけ感じてくれているという事でもあり、それは上条としては嬉しい事なのだが、
見えない相手に嫉妬するお嬢様には、困ってしまう。
返事がないのを肯定と受け取った美琴は、ジト目で上条を見詰める。
本気で怒ってはいないが、ある意味本気で怒っているより性質が悪いもので、電磁砲を向けられるより何倍も辛かった。
上条は、ふぅと溜息をつき、答えた。
「昔の事は分からないけど、今の俺の初めてはお前だ。それじゃあ駄目か?」
その答えに美琴は愕然とした。
そうだ。上条当麻は記憶喪失なのだ。気持ちが通じたという喜びで忘れていた。
そして記憶喪失だという事も忘れ、嫉妬の入った疑問を持ってしまった事を恥じる。
さらに相手は、自分のそんな感情を気にせず、こちらの事を想った発言までしてくれているのだ。
返す言葉もないとはこの事だ。だから答えの変わりに、口付けた。
「ちゅっ、んっ……ぷちゅっ……」
美琴自身、些か強引な誤魔化しだと思っているのだが、存外上条も満更ではなさそうだった。
順々にしていく口付けとは違い、最初から舌を絡ませ唾液を交換していく。
先の時には精神的充足で一杯で感じる事は出来なかったが、口付けというのは肉体的にも気持ちいいものだった。
男の唾液を飲むなど想像にもなかったが、今では当たり前のように飲んでいる。
無論どの男でもいいというわけではなく上条当麻だからだ。
「ちゅ…んくっ、ごくっごくっ……」
喉を鳴らし飲み込む度に、唾液が媚薬のように染み渡り体が熱を持っていくのが分かる。
夢見心地な気持ちでこのままずっとこうしていたいと思う。
実際このまま永遠に続いていくかのように感じられた。
「んっ……あっ」
夢見心地は、自らのスカートへと上条の手が触れた事により終わりを告げる。
驚き声が出る。これからされる事を想像し戸惑う。
それと同時にこんな事になるなら短パンは止めておけばよかったと後悔をした。
「お風呂……入ってきていい?」
「悪い。我慢できない」
美琴は、今更ながらに綺麗にしときたいと思ったのだが、ここまで来てそんな提案は受け入れられるはずがなかった。
身を捩り微かな抵抗をしてみるが、上条を止める事などできず、手はスカートを外し下にある短パンまで伸びた。
短パンを脱がしそこまできたところで。
「ちょっとあんたけだものすぎ」
美琴の制止の声が入った。
ここまで来たからには、覚悟はしている。
だから構わない。構わないのだが少しぐらい待って欲しいという乙女心である。
「男は、好きな女の子の前ではけだものなんだよ」
「なっ……す、好きって、そ、そりゃあ私だって……」
好きでなくともけだものになる男もいるがそこは言わないでおく。
実際上条は、美琴の事を好きだから言葉に嘘はない。
何より好きな女と言われて赤く染まっていた顔をさらに赤くし止まり隙だらけな美琴を見逃す上条ではなかった。
短パンと下着を一気に脱がすと隠すものなく秘所が露になった。
「いやぁ……」
上条の手によって露にはなった秘所とは反対に、顔が隠された。
羞恥から美琴が自らの手で顔を隠したのだ。
そんな美琴の気持ちとは裏腹に、秘裂はひくつき、愛液が流れ太股まで垂れていた。
「これって……」
「なな、な、なんでもないわよ!」
「なんでもない事はないだろ?」
「ああ、もう! 普段はスルーするくせに何でこんな時だけ!」
「こんなになってるのにスルー出来るわけないだろ」
美琴の秘裂は、ひくひくと男を求め震えている。そしてその男とは自分以外いない。
上条は、この状況でスルー出来るような男ではない。
「あっ」
美琴の秘裂に指で触れるとくちゅと音を立てすんなりと受け入れてくれた。
そのまま指で押し広げ開かれた秘裂へと、ちゅっと口付ける。
「んあっ、ちょ、ちょっと、なにしてんのよ」
「うまいぞ」
愛液は、美味しいわけがないのだが美琴のものだと思うとうまいと上条は、感じた。
「そ、そっそんなわけないでしょ……それに汚い……」
「汚くなんかない。綺麗だ」
「なな、そんなこと……」
使い古された言葉ではあるが、それは効果が抜群だからこそ使い古されているのだ。
美琴にも効果が抜群だ。
仄かに香る少女の匂いが鼻を刺激し男の部分が反応する。
もっともっと吸いたくなる。じゅるじゅると卑猥な音を立て、全て飲みつくすかのように吸う。
「だめぇぇぇ」
美琴は、上条の頭を抑え抵抗するが、最早抵抗ではなく自ら押し付けているかのようだった。
美琴自身この行為がどちらの意味でやっているのか分からなくなってきていた。
そんな美琴の気持ちなど気にする事なく上条の舌は、止む事ない。
上条の舌が触れる度に、美琴は、羞恥と快楽でまるでそこだけが熱を持ったかのように熱く感じる。
乱れに乱れた美琴に、上条自身は大きく膨れ上がり、先走りを出し限界だった。
美琴も上条の愛撫に、もう限界だった。
共に限界の二人が次へと進むのは必然と言えた。
上条は、下を脱ぎ、準備万端なモノを取り出すと美琴の秘所に先端を添え、軽く擦り最後の確認を取る。
「いくぞ」
「……とっととしなさいよ。こっちはずっと待ってるのよ」
言葉の通り美琴はずっと待っていた。この時からではなく、ずっと前から、気持ちを自覚してから、する前から。
勿論不安は、ある。だけど待ち望んでいたのだ。だから怖くない。
美琴の言葉に上条は、言葉ではなく行動で返す。先程まで擦り付けていた先端を秘裂に当てると一気に突き刺した。
「んっ!はああぁぁぁぁんっ!」
途中純潔の証である抵抗を感じたが一息に貫いた。
破瓜の痛みに、瞳を涙で濡らし声をあげる美琴。
「いたい……」
美琴は、待ち望んでいたモノは、痛みが伴う事は知っている。
だから覚悟を決め声をあげず耐えようと思っていたのだが無理だった。
痛みで声が漏れた。繋がっている所は、熱く、痛い。
それでも一つになれたという喜びの前では、大した事がない。
涙が出るのは痛みからのものではなく嬉しいから。だから、
「んっ……と……うま……」
当麻の好きにしていいよと言おうとしたが、それだけの事がまともに言えなかった。
自分の気持ちが相手に伝わらないのが悔しい。
せっかく伝わったのにこんな事でまた悔しい思いをするなんて思っていなかった。
今の美琴には、その悔しさを受け入れる事しか出来なかった。
「美琴」
美琴は、息も絶え絶えで何かを言おうとしているのは分かるが何かまでは上条には、分からない。
だけど上条には分かる。言葉は分からなくとも、この状況でやらなければいけない事は分かる。
「ほら」
上条は、美琴の頭を抱えると子供にするように撫でてやる。
幻想を消す右手でも痛みを消すことなんて出来ないけれど、美琴を落ち着けるには充分だった。
(こうされただけで落ち着けるなんて、惚れた弱み……かな)
弱みだが、こんなにも心地良い弱みは、受け入れよう。
今の美琴には、素直にそれをする事が出来た。
「とっとと動きなさい」
「分かった」
涙目で顔をしかめながらも美琴の意志だけは揺らぐことない。
だからそれに上条は、応える。せめて優しくしながら。
じゅぶじゅぶ、という音を出しならが膣をかき回し、ぱんぱんと腰を打ち付ける。
まだ硬く幼さの残る膣壁は痛い程に締め付けるが、それでも気持ち良さが勝っている。
だから優しく口付け、胸を愛撫したりして少しでも痛みを和らげようとする。
上条は自分が気持ちいいのに相手が痛いだけというのは許せるような人間ではないのだ。
上条が出し入れする度に肉と肉のぶつかりあう音が響き、その度に、痛みと少しの快楽が美琴を襲う。
幾度かの律動で美琴も快楽を感じてきたのだ。
そして次第に痛みは薄れ、快楽が濃くなっていく。
「ああっ!」
あげられた声は、嬌声だった。普段の美琴から想像もつかないくらい艶やかで、淫らだった。
美琴は、懸命に快楽の声を抑えようとしているが、それでも声が漏れる。
一突き毎に気をやりそうになり、自分を保つので精一杯で声を抑えきる事などできないのだ。
それでも感じている声を聞かれたくないという羞恥の想いから、自らの指を咥え耐えようとする。
「声聞きたい」
しかしそれも叶わず、上条により手を押さえられる。
首を振り抵抗の意を示すが、上条は、気にする事なくさらに腰の律動を早める。
「んああっ! うああっ……ん」
上条の肩に唇を付け声を噛み締めた。
それは、手を抑えられている美琴に出来る儚い抵抗。
「やあっんっ」
それでも抑えきれない声が漏れてしまう。
むしろ抑えようとすればする程、大きくなるような気さえする。
「とうまぁとうまぁ」
だってこんなに心地良いのだ。我慢なんて出来るわけがない。
美琴には、肉体だけでなく心も繋がっているように感じられた。
それは、錯覚に過ぎない。けれども今だけは、美琴にとっては、真実。
「ああぁぁ! んっ、ちゅっ……とうまぁ」
そして上条も同じような気持ちを抱いている。
もっと繋がっていたいという思いから二人は、我武者羅に口付け合う。
「はぁっ……ちゅちゅう……んちゅぅっ……ちゅぷ」
唾液交換も満足に出来ず、唇の端からは、唾液が零れる。
零れた唾液に構う事なく、口付けは止まない。
止まる事ないのは、上の口だけでなく下の口でも同じだ。
ただひたすらに腰を押し付けてくる上条。そして答えるように美琴も足を上条の腰に絡め押し付ける。
「美琴!好きだ!」
「私も!」
交わすのは身体だけでなく言葉もだ。
そして身も心も深く繋がったまま互いに絶頂を迎えた。
「くぅ!」
繋がったままでいる美琴自身が吸い付きさらに、上条から搾り出そうとしてくる。
上条がそれに逆らう事などするはずもなく、出来るはずがなく美琴の中で何度も陰茎を脈打たせ、限界まで自身の精液を流し込んだ。
子宮に収まりきらなかった精液と破瓜の血が混じり合った液体がこぽっと零れた純白のシーツを汚した。
互いの乱れた呼吸音だけが部屋に響き、事後の甘い空気が充満していた。
美琴にとってこの行為は、決して良い事だけではなかった。それでも上条となら、上条の望む行為なら好きになれそうだった。
痛みと疲労と快感で指先にも力が入らない中、美琴はそんな事を考えていた。
しかしそんな美琴とは、反対に上条は盛っていた。
「あの、御坂さん」
「なに……よ」
せっかく名前で呼んでくれていたのになんで苗字なのよとか思った美琴だったが、次の言葉でどうでもよくなった。
「もう1回よろしいでしょうか?」
「は? あんた……」
言葉と同じように美琴の中に入ったままのモノは、大きいままで本人以上にさらにするのを望んでいるのが分かる。
美琴は、呆れた。けれども拒否する気にはなれなかった。
好きな人に求められる事、求められ与える事。その甘美さを知ってしまったから。
「仕方ないわね」
美琴は、優しくね、と言い愛する男へと口付けた。
「はぁ……」
美琴は、今日何度目か分からない溜息をつく。
あれから上条は、続けて2回もしてきた。
今は、ようやく行為を終えて二人で寝ているという所だ。
確かに美琴自身、痛みも薄れ気持ちよくなり自分から求めたりもした。
それでも初めてなのに連続3回もさせるのは、酷いと思った。
「ふふっ」
だから不満はある。しかし自らの枕を見れば不満も解消された。
美琴の枕は上条の右腕。つまり乙女の憧れ其の弐、腕枕をされているのである。
腕枕だけでなく、もっと上条を感じていたいと思い美琴は、右手に頬擦りをした。
頬に伝わる上条の体温が心地良く頬だけでなく心も暖かくなるようだった。
「この右手……」
幾度も美琴の電撃を打ち消してきた右手。幾多もの幻想を打ち破ってきた右手。
その右手は、美琴の『自分だけの現実』を打ち壊し、今までの自分を覆すような感情を曝け出した。
美琴は、その感情に抗う事無く、身を委ねた。その結果が――
「ごらんの有様だよ」
自らの現状を省みて、思わず自嘲的に呟く。今の自分は、前の自分からは想像もつかない事になっている。
だけどそれは嫌ではなく、嬉しい。
そして美琴を変えた張本人はというと。
「ああー、不幸だー」
夢の中でも不幸な目に遭っているのか魘されていた。
美琴は、せめて今だけでもゆっくりして欲しいと思い――
「インデックス――」
即座に、かぷっと頬擦りをしていた右手に噛み付いた。
事後だというのに他の女の名前を呼ぶという上条の愚行に美琴の取った行動は、間違っていないだろう。
「ううっ、やめてください。これ以上噛まれたら上条さんは……」
他の女にフラグを立てまくっており、今も他の女の名前を口走る上条の事。
上条の周りの女や黒子に知られたらどうなるのだろうという不安。
乙女はいつだって悩みが一杯だ。
そして、その悩みは増えてゆくものである。
一つの悩みは解消されたが、また悩みは増えていく
それでも、それでもいいと美琴思えた。これは前の悩みとは違い、嬉しい悩みだ。
そして何より前までの一人での悩みとは違う。二人でなら何の問題もないと信じられる。
それは決して間違いなんかじゃないから。