今日もいつものように不幸な生活を送ってる少年がいた。その少年は上条当麻。今日の不幸の原因は御坂美琴という少女が原因らしい…  
そして少年は呟く  
「…不幸だー」  
 
遡ること数時間前…  
 
補習を受けていた上条、土御門、青髪ピアスはその帰り道で正午過ぎのギラギラと照りつける太陽の下、街で遊んでいた。そんな中上条はふと呟く。  
 
「明日も補習かよ。だるいな」  
 
「カミやん。せっかく遊んで気を紛らわししてたんやさかい、そないな事言わんといてやー」  
 
「そうだにゃー。嫌な事思い出させないでほしいにゃー。」  
 
土御門と青髪ピアスは、せっかく楽しんでテンションを上げていたが、上条の一言で気分が落ちてしまった。  
 
「わりぃ。なんかふと思ってさー」  
 
「おーい」  
 
そんな話をしていたら1人の少女に呼ばれていた。  
 
「今度飯でもおごってやるから許しくれよ。」  
 
「カミやんが?それは無理やない?」  
 
「おーい!」  
 
少女の声に3人とも気づかない。  
 
「確かに…家にあの暴飲暴食シスターがいる限り無理かもな…」  
 
「おーい!!」  
 
やっぱり少女の声に誰も気づかない。  
 
「カミやんには荷が重すぎるぜぃ。」  
 
「すまん。やっぱり無理だ。」  
 
「おーい!!って言ってんでしょうが無視すんなやこらーっ!!」  
 
その少女が叫んだ刹那雷撃の槍が飛ぶ。上条はとっさに右手を出して雷撃の槍を打ち消した。  
 
(こんな事するやつは…あいつしかいないよな。)  
そして上条は声のする方へ顔を向けた。  
 
「やっぱり御坂か…不幸だ。」  
 
「あんたねー人の顔を見た途端『不幸だ』って失礼じゃない?」  
 
こめかみに薄く筋を浮かばせ、上条に尋ねた少女は御坂美琴。  
 
「あぁすまん。で何か用?用があるなら手短に。…むしろ行っていい?」  
 
「人の事さんざん無視しておいてなんて反応してんのよ!」  
(あぁーいつもいつも無視しておいてこの反応はさすがにくるわね。)  
 
「ん?用がないなら行くわ。じゃ。」  
 
「待ちなさいよ!用があるから話しかけたに決まってんでしょ。ほら。」  
 
そう言って美琴は手に持っていた袋を上条に渡した。  
 
「なんだこれ?」  
 
「それは甘酒と色々な食べ物よ。なんか母親が送ってきたの。せっかくだから一緒に甘酒飲もうと思ってさ。」  
 
「おぉありがとう御坂。早速家で飲もうか。ついでこの食材使って何か作ろう。じゃあ俺の家でいいよな?」  
 
「う、うん。」  
(やった。あいつの家に行く口実ができたわ。思ったよりうまくいって良かったー)  
 
「おまえらも来るだろ?」  
 
「カミやん…また常盤平のお嬢様と…」  
 
「いや俺たちは行かないぜよ。しかしカミやん…明日学校で覚えておけ。」  
 
美琴と上条のやり取りを見て、半ば放心状態の青髪ピアスを土御門がそう言い捨てどこかへ連れて行った。恐らく明日の作戦をたてるのだろう。  
 
それを知らない上条は  
 
「なんだあいつら?せっかく誘ってやったのに。」  
 
と、土御門たちの言動に疑問を持っていた。  
 
その後2人は世間話をしながらゆっくりと上条の寮に向かう。端から見ればカップルにも見えただろう。後日、これが原因で上条はクラスメートに襲われるだろうが、それはまた別の話。  
 
世間話をしながら2人が上条の寮に向かっている途中、上条が話題を変えて美琴に尋ねる。  
 
「ところでさ、今日のこれなんで俺なの?」  
 
「え?」  
(そりゃああんたの家に行くためだけどそんな事言えないし…)  
 
「黒子は仕事が忙しいみたいだからだけど。で、たまたまあんたを見かけたから声をかけたのよ。」  
 
「なんだ。たまたまか。てっきり俺の事を思ってくれたのかと思って少し嬉しかったのになー」  
 
その一言で美琴の頬が朱に染まっていた。  
(えっ何その反応?もしかして期待しちゃっていいの?)  
 
「俺の家計の苦しさを知ってのちょっとした援護かと思ったんだけど…ん?お前顔赤いぞ?熱でもあんのか?」  
 
(やっぱりあんたはそういう奴よね…)  
 
「なんでもないわよ!」  
 
期待を裏切られた美琴は若干不機嫌気味ながら答えた。  
 
「なんで御坂さんは怒ってるんでせう?上条さんには原因がわからないんですが…」  
 
「なんでもいいでしょ!それよりさっさと行くわよ!!」  
 
そして数分後、2人は上条の学生寮に着いた。  
 
「へー普通の学生寮ね。」  
(ここがこいつの家か。よし!ちゃんと記憶しとくぞ。)  
 
「まぁな。どっかのお嬢様高とは違って普通の学校だからな。」  
 
そう言いながら上条は自分の家に入った。続いて美琴も、  
 
「おじゃましまーす」  
 
とよくある台詞で上条の家に入った。  
 
(あれインデックスいないのか?書き置きがある。…なるほど小萌先生のとこか。まぁでもいなくて良かった。冷静に考えたら御坂にインデックスを見られたらやばかったな…)  
 
(男の独り暮らしにしては思ったより片付いてるわね。思えば男の部屋って初めてなのよね…緊張する。まぁこいつに限って何かあるわけないし大丈夫か。でもこいつなら…って何考えてんのよ私は!!)  
 
それぞれ安堵と緊張の対極の感情を抱きながら2人の時間が始まった。  
 
インデックスの書き置きを見るなり上条は料理の支度をした。  
 
「御坂ー。今からもらった食材でなんか作るから、終わるまで適当にくつろいでろよ。」  
 
「わかったわ。」  
(やっぱり独り暮らしだから料理とかできるのか。  
ん?独り暮らしってって事は今私達に何かあっても誰も助け…邪魔は入らないのよね?  
って何考えてんのよ私は!?邪魔とか…)  
 
美琴は頭をブンブンふって危ない思考を取り除いた。  
でも一度考えた事はなかなか消えない。そしてまた頭をふって落ち着かせる。  
そんな事をしてるうちに料理ができたらしい。  
どうやら長い間この一連の動作を繰り返していたらしい。  
顔を真っ赤にしながら。そんな美琴の変化に上条は気づいた。  
 
「…ん?顔赤いぞ?やっぱり熱あるのか?」  
 
「だ、大丈夫。ね、熱なんてないから。」  
 
上条に見透かされたのかと焦っているのか呂律が回っていない。もちろんそんなわけないのだが、さっきまでの考え事により少し正常な判断ができなくなっていた。  
 
「そうか。大丈夫ならいいんだけど。まっ冷めないうちに飯食っちまおうぜ。」  
 
「う、うん。」  
 
「「いただきます」」  
 
その後は料理の話やたわいのない世間話をしながら食べた。そうして食事を済ました2人は、休憩を入れた後甘酒を飲む事にした。  
 
「この甘酒の箱、なんか高級品の匂いがしますよ。」  
 
「なんかどっかの特別な甘酒らしいわよ?おいしいんじゃない?」  
 
「上条さんはこんな高級品を飲んだらばちが当たりそうで怖いです。」  
 
「何言ってんのよ?さっさと飲むわよ。」  
 
「お、おう」  
 
上条は恐る恐る口にしていた。そして2人とも一杯飲み終えた時、上条は美琴が何かおかしい事に気づいた。  
 
「あれれー?なーんか楽しくらってきたー」  
 
(…こいつ。もしかして酔ってる?)  
 
「もしかして御坂さん酔ってらっしゃいますか?」  
 
「私が酔ってるぅー?あははそんなわけないりゃないよー」  
 
呂律の回らない美琴を見て上条は疑問が確信に変わる。  
 
「どうして甘酒で酔ってんだこいつは?」  
 
「なんか言っらー?」  
 
酔ってはいるが何か怖いオーラを出し始める美琴。そんな美琴を見た上条は、  
 
「いえいえ何も!酔ってるわけないですよねあはは…」  
(おいおい。どうなんってんだよ。  
普通甘酒で酔うか?本人は否定してるけどもう呂律回ってないし雰囲気違うじゃん!!  
やっぱり高級品に手を出したばちが当たったのか…)  
 
酔っているのが確定的でも怖くて何も言えなかった。  
 
「ねぇ当麻ぁ当麻ぁ」  
 
美琴はぐいぐいと上目遣いで上条の袖を引っ張る。  
 
(上目遣いなんて反則行為だ!つか御坂ってかわいいんだな。  
って今はそれどころじゃないだろ!早く酔いを覚まさないと。)  
 
「?当麻ぁどうしたのぉ?」  
 
「い、いや。な、なんでもないよ?」  
 
焦っているのか上条も呂律が回らなくなり、パニックに陥っていた。  
 
(やばいって。やばいって。あれ酔ったやつには何が有効?  
いや今はそれどころじゃないだろ!!御坂がかわいいって事だろ?  
あれ違う?名前で呼ばれてる?いやこれも違うか?)  
 
とか本来考えるべき事を考えて、それを否定するあたり相当焦っているみたいだ。  
 
「ねぇ当麻ぁ。目つむってー」  
 
「ん?あぁこれでいいか?」  
 
焦った上条は言われるがままの状態になっていた。  
 
「いいよー。」  
 
今はちょうど正午過ぎくらいなので、部屋を太陽が照らしていた。そこには2つの影があった。  
 
「いくよぉ当麻ぁー」  
 
何がいくんだろうと上条が思った時には遅かった…  
2つあった影は今、重なり合い1つの影となった。  
 
何が起きたか理解するのにたっぷり10秒かかった。  
少し気持ちを落ち着かせ、冷静さを取り戻した上条は尋ねた。  
 
「わかってる上で一応聞きますが…あのー今何をしたんでせう?」  
 
「何ってキスだよー」  
 
「そんな平然と言われましても…っていうかそうじゃなくて。いきなり何してんだよ!?」  
 
「何?私とじゃ嫌だったの?」  
 
美琴は酔ってはいるが悲しみに涙を浮かべていた。それを見た上条は、とりあえず否定の色を示す。  
 
「いやそんな事はありませんよ。むしろ嬉しいのではありますが…」  
 
「ホント!?良かったー私初めてなのにもし嫌がられてたらって不安だったんだからねー」  
 
安堵したのか、涙を浮かべた暗い顔から一気に明るくなる美琴。  
 
「そうだったのか…ごめんな御坂。」  
 
そんな美琴とは対称的に、目の前の子を不安な気持ちにさせてしまった後悔からか、上条は暗い顔になりとりあえず謝った。  
だが美琴には1つの不満が生まれていた。  
 
「むぅー。…名前で呼んでよ。名前で呼んでくれなきゃやだよ。」  
 
(名前?美琴って呼ぶのか?恥ずかしいけど、またあんな表情をさせるわけにはいかないよな…)  
 
上条は深呼吸して彼女の名前を口ずさんだ。  
 
「み、美琴?」  
 
「ぅん。良くできました〜当麻ぁだぁい好きだよ♪もっといっぱいキスしよ?」  
 
そして酔ってる美琴はたくさんキスをしようと迫り、美琴の  
「もっといっぱいキスしよ?」  
という言葉を聞いて、思考を停止し沈黙した上条はされるがままになっていた…  
 
何度目かのキスを終えた美琴は、酔っているので顔は真っ赤なのだがその顔をさらに朱にそめてボソッと呟く。  
 
「私、ファーストキスだったんだから責任取ってよ?」  
 
「あぁ」  
 
最早上条はただそこにいて、ただ返事をしているだけだった。  
 
「ありがとう当麻。大好きだよ♪当麻なら…当麻にならキスじゃない、私の初めてを捧げてもいいんだよ?」  
 
その言葉を聞いて上条の意識は復活した。  
 
(はっ!今俺はとても危なかったのでは?)  
 
「御坂目を覚ませ!お前はまだ中学生だし俺たちはそんな事する「くー」って…寝てるし。」  
 
上条の隣で美琴は静かな寝息をたてていた。  
 
(………ふぅ色々と危なかった。嬉しいような悲しいような気がするけど。  
とりあえずこいつには甘酒といえど今後酒は飲ませてはいけないな。  
でも悲しいって思ったって事は俺はこいつの事が好きなんだろうか?  
さっきあいつの不安そうな顔を見て、またあんな表情にさせたくないと思ったあたり、きっと好きなんだろうな俺は。  
今までは年の差とかで対象にしてなかったけど、改めて考えたら俺は美琴が好きだったんだな。  
うん俺は美琴が好きだ)  
 
上条は自分の思いに気付き、その対象となる美琴を布団まで運び寝かせた。  
 
(俺も疲れたし、ちょっと寝るか…)  
 
 
数十分後  
 
美琴は目を覚ました。  
 
(あれ?私何してたんだっけ?)  
 
今ベッドで寝てて、下には上条が座りながら寝ている。それを見て美琴は思い出した。酔っていたので断片的ではあるが何があったか思い出した。とたんに顔を赤らめ叫んだ。  
 
「あぁー!!」  
 
その声を聞いて跳び跳ねるように上条も目を覚ました。  
 
「なんだ起きたのか?」  
 
「ねぇそんな事よりも何があったか覚えてる?」  
 
恐る恐る聞いてみた。とはいっても酔っていない上条なので答えは聞くまでもない。  
 
「…あ、あぁ。まぁ気にするなよ。忘れるからさ。」  
 
その一言を聞いて美琴が寂しい表情になるのを上条は見ていた。  
 
「責任…取ってくれるんじゃないの?」  
 
上条はその表情を見て、言葉を聞いて覚悟を決めた。  
 
「御坂がそう言うなら。」  
 
とたんに美琴の顔が明るくなるが、何かに気付き暗くなる。  
 
「美琴…でしょ?」  
 
「そうだよな。美琴。」  
 
「うん。当麻♪」  
 
美琴は深呼吸をして、顔を赤らめながらも精一杯の勇気を振り絞りボソッと言葉を洩らす。  
 
「続き…しよっか?」  
 
壮絶な爆弾を乗せた、【言葉】という名の戦闘機が発進していた。  
 
「えっ!!」  
 
上条は思わず叫んだ。  
 
「あのー美琴さん?今なんて言ったんでせう?もしかしてまだ酔っていらっしゃいます?」  
 
「酔ってないわよ!…責任取ってくれるんでしょ?だから…当麻になら…」  
 
「それとこれとは違うような気がしなくもないんですが…」  
 
「何?私とするのが嫌なの?中学生とじゃやだ?それとも妹がいいの?」  
 
再び涙を浮かべ、目を赤くする美琴は上条に疑問をぶつけた。  
 
「いやそういう訳じゃなくてだな。今日美琴の気持ちを知って、俺もその…好きって思ったけどまだそういうのは早いと思って。」  
 
「早くなんかない!私は当麻が好き。当麻は私が好き。それならいいじゃない。求めるのは自然な事でしょ?」  
 
涙を浮かべ叫んだ美琴。  
 
「確かにそうだけど…」  
 
そう言いながら上条は美琴の涙を見て本日二度目の覚悟をした。  
 
「本当にいいんだな?」  
 
「責任取ってくれるんでしょ?」  
 
「あぁ。」  
 
「なら…来て当麻。私当麻の事考えてたら…もう我慢出来ないよ。私を当麻の色でそめて…女にして。」  
 
そして2人はベッドに入り、抱き合いながらさっきまでのキスとは違う大人のキスを始めた。  
 
「…ん…はぁ、当麻ぁ当麻ぁ好きだよ。大好きだよ。」  
 
「俺もだよ美琴…」  
 
そして上条がキスをしながら美琴の服に手をかけたその瞬間…  
 
ガチャ  
 
「「「………」」」  
 
急に扉が開いたと思って、そこを見ればインデックスがいた。2人はインデックスを見て絶句し、インデックスは今まさに服に手をかけてる上条と、美琴の2人を見て絶句した。そしてしばしの沈黙が流れたがそれを破ったのは上条だった。  
 
「ず、随分とお早いお帰りで…」  
 
背中に冷たいものが通りすぎる上条。額には汗が流れ始める。  
 
「ねぇ当麻。なんで短髪がいて、抱き合ってて、なおかつ服に手をかけてるのかな?詳しく説明してほしいかも。答えによっては…」  
 
インデックスはそう言いながら歯をガチンガチンとならしている。  
 
「い、いやーほら色々あって、ね?いや待て。歯をちらつかせながらこっちに来るな!待て、冷静になれインデックス。ほら美琴もなんか言ってくれ。よ?」  
 
「…」  
 
助け船を求めた上条だったが、思い切り赤面して思考を停止している美琴に、上条の言葉は届かなかった。  
 
「美琴?あれ?当麻と短髪はいつから名前で呼ぶように仲になったのかな?そこらへんも教えてほしいかも。」  
 
そう言いながらインデックスは歯を鳴らしながら上条に迫り噛みつく。そして冒頭に戻る。  
 
「…不幸だー。ぎゃー!」  
 
インデックスに頭を噛みつかれた上条の悲鳴が鳴り止むまでに果たしてどれくらいの時間が経過するのだろう?  
そして頭蓋骨が砕かれそうになった上条と、少し冷静になったインデックス、思考停止した美琴が現実に戻って口論を始めるのはまた別の話。  
 
 

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