時は当麻たちが学園に在籍していた頃から十数年後。  
 
場所はアメリカにあるとある石造りの要塞。  
 
その要塞の中心部に、男たちは居た。  
 
中心部には窓は一つもなく、室内全体の色は黒で統一されたていた。  
 
夜のように暗い室内をランプの淡い炎が照らす。  
 
ランプに照らされたのは、百を超える男たちだった。  
 
ゆうに百人は入る室内は、異常なほどの人間の密度により棺に閉じ込められた様な錯覚をさせるほど狭かった。  
 
敷き詰められた男たちは、とり憑かれたかのように上空を見上げていた。  
 
 
「くいへと・けそす・いすげぼと・ないあーらとてっぷ。ずい・るもい・くあの・どぅずい・くせいえらとる……」  
 
 
男たちの視線の先に、彼は居た。  
 
蝶のように華麗に空中を舞う青年。  
 
金の髪と瞳、百八十をゆうに超えた背丈を持つが、どこか東洋人を思わせる顔立ちをした彼が、この集団のリーダーだった。  
 
 
「はがとうぉす・やきろす・がば・しゅぶ=にぐらす。めうぇと、くそそい・うぜうぉす……」  
 
 
羽織った黒いローブを羽のように揺らし、右手にとった偃月刀を宙に滑らせる。  
 
青年は空中で演舞を踊り、青年に従った者たちは静観する。  
 
「…………イグセンプタス」  
 
 
いつまでも続くと思われた演舞は、一人の男が発したその言葉で中断される。  
 
 
「…………なんだ。フィロソファス」  
 
 
イグセンプタスと呼ばれた青年は、呪文を演舞を中断し、呼んだ男、フィロソファスの頭上へ移動した。  
 
 
「外部からの連絡が入りました。どうやら我々の計画が上条勢力に察知されたようです」  
 
 
フィロソファスの言葉を聞いて、イグセンプタスは関心の念を息と共に吐いた。  
 
 
「秘密裏にやっていたのだがな…………」  
 
 
「お言葉ですが上条勢力を完全に欺くのは不可能…………ここまで秘密裏にできた事こそ行幸かと」  
 
 
報告を聞いたイグセンプタスは再び上空に舞い上がる。  
 
しかし、演舞の続きは行わなかった。  
 
 
「あと一日、あと一日時間が欲しいところだが……稼げそうか?」  
 
 
「不可能です。よくて半日が限界です」  
 
 
『そうか』と言う言葉と共に、イグセンプタスはため息を吐く。  
 
イグセンプタスは偃月刀を無造作に振り上げる。  
 
 
「これだけは絶対にしたくなかったんだがな……」  
 
フィロソファスの『イグセンプタス。何を』と言う言葉に耳を向けず、彼は偃月刀を振り下ろした。  
 
最初は淡い光が振り下ろされた偃月刀の軌跡から発せられる。  
 
軌跡の光は次第に煌々と輝き、人を飲み込める大きさになっていた。  
 
 
「皆は出来るだけ時間を稼げ。私は…………」  
 
 
一瞬、イグセンプタスの言葉が詰まる。  
 
ほんの少し、わずかな時間ためらった後、イグセンプタスは続きの言葉を発した。  
 
 
「私は直接過去に出向いて、白井黒子を始末してくる」  
 
 
言葉が終わると同時に、イグセンプタスは光の中に飛び込んだ。  
 
 
「イグセンプタス!」  
 
 
フィロソファスの言葉が室内中にこだまする。  
 
 
光に包まれたイグセンプタスは、優しく微笑みながら言葉をつむいだ。  
 
 
「心配するな、この私にぬかりは無い。皆も決してぬかるなよ?」  
 
 
イグセンプタスは室内にいる全員に言葉を残し、光と共に消えていった。  
 
この瞬間、イグセンプタスは過去に行ったのだ。  
 
攻めてきた勢力、上条勢力がまだ今ほどの力をつける前に時代へ。  
 
 
「イグセンプタス……」  
 
 
現代に残されたフィロソファスは、失望にも似た吐息を漏らす。  
 
 
「ぬかっているのは…………貴方だ」  
 
 
その言葉を吐くと同時に、フィロソファスをはじめとする室内にいる男たちが武装する。  
 
イグセンプタスの命を忠実に守るために………………  
 

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