コンコン
「は〜い、どちらさん?」
不幸な一日を終えて寝室(風呂場)でくつろいでいた上条が玄関のドアを開くと
そこには奇抜な衣装に身を包んだ幼い少女がポツンと立っていた
「お前、サーシャか?」
とある事件で彼女の別の一面を垣間見ていた上条であったが、サーシャ本人とは面識がない
はて、なぜ自分を訪ねてきたのだろうかと怪訝に思っていると
「解答一。私はサーシャではない、ミーシャだ」
「…………………え゛?」
瞬間、時が止まった
拝啓幸せそうに寝息を立てているインデックスさんへ、不幸な私の一日はまだまだ始まったばかりだったようです
〜〜とある天使の受胎告知〜〜
とあるマンションの一室にて、
神様の奇跡をも打ち消す右腕を持つ男子高校生と、
神の力を冠する四大天使の一角が風呂場で話し合うというシュールな光景が展開されていた
「つまり要約すると、学園都市の女性に受胎告知とやらをするために降臨したはいいが、
学園都市に満ちた妙な力場のせいで上手く力が使えずに困っていた、ってこと?」
「モグモグ。こくん」
上条がご機嫌伺いに差し出したガムを頬張りながら頷くミーシャ
ガムの味が好みだったせいか、思ったより機嫌はいいらしい
「だから俺に協力を要請したいって訳か、でも俺に手伝えることなんて本当にあるのか?」
「解答三。ある、モグモグ」
どう転んでも不幸な事態に陥りそうなので、
上条としては丁重にお断りしたかったのだが、相手が相手なだけに何も言えない
「へぇ、……ぐ、具体的にはどんなことを?」
おそるおそる聞いてみる
「解答四。子作りだ」
「………………はい?」
「解答四をもう一度。子作りだと言っている」
「いや、あの、子作りて……」
どうやら聞き間違えではないらしい
「説明一。今の私に処女懐胎させるだけの力はない、となれば人為的に女性を妊娠させた後
次代の神の子としての祝福を胎児に施すしかあるまい」
「……ずいぶん適当だな、オイ」
「加えて説明二。貴方の右手があれば学園都市に満ちた力場と、原罪の一つたる色欲の悪影響を
最小限に抑えながら女性との行為を遂行できるはず、違うか?」
「…………………………」
どうやらこの天使様は、本気でこの純情な男子高校生に、
そういった行為を強要するつもりらしい
「因みに警告一。私はこの命を果たすまで天上に帰ることができない
天上に帰れなくなった私が以前どのような対応を取ったか忘れた訳ではあるまいな?」
暗にお前が対応を間違えれば人類は滅亡するぞ、と脅迫され
絶望に満ちた顔でうな垂れる上条であったが、彼の耳元に顔を寄せたミーシャは、
小悪魔のような笑みを浮かべながらこう囁いた
「提案一。少年、目ぼしい異性がいるのなら言ってみよ
私も目的を達成するためならば協力を惜しまぬつもりだからな」
その言葉に上条の肩がピクリと反応する
『協力を……惜しまない?
かの大天使様が、この俺に?
俺だけの愛のキューピッドと化してくれるって訳ですか?
ツンツンしていたアノ娘やコノ娘もデレデレのダダ甘って訳ですかァァァーーーーー!!?』
生気の戻った目を血走らせながら不穏な独り言を呟く上条と、
よくぞ快諾してくれたと満足そうに頷くミーシャ
だがそんな彼らの元に、寝惚けた足取りで接近する人影が一つ……
「ん〜?誰と話してるのとうまー?お客さんかなぁ?」
その後、突然の乱入者出現により、上条当麻の不幸(?)は本当の意味で始まったのだった
Fin or 続く