家に帰ると大きな雛壇に飾り付けをしている天草式十字凄教教皇代理、建宮斎字と  
その様子を見ながら、ひなあられをスゴイ勢いでボリボリ食べているインデックスがいた。  
 
「…人の家でなにやってんの建宮?」  
「おう、お帰り上条当麻。なにって雛祭りくらい知ってるよな?  
 せっかく日本にいるんだから禁書目録にも日本の風習に触れてもらおうと思ってよ」  
 
「あっお帰りなさい。台所借りてますね」  
台所からエプロン姿の五和が顔を出す。  
「禁書目録さんも女の子なんですから桃の節句のお祝いをしないといけないと思いまして」  
飾りつけが終わったのか一息ついている建宮に向かってインデックスが疑問をぶつける。  
「ねぇねぇ建宮、この人形、なんか魔力を感じるんだけど?」  
「あーそれはな、雛人形を人形(ひとがた)に見立て穢れを集めるわけよ、  
 日本の神道と陰陽道の技よな」  
「ふーん、生贄や身代わりを模した人形ね。それにしては大掛かりな仕掛けにみえるよ。  
 まるで何かの結界みた…」  
「ほらほら、ちらし寿司が出来ましたよ。禁書目録さん味見しますか?」  
引き続き疑問を建宮にぶつけていたインデックスだが台所から小皿を持ってやってきた五和の  
言葉にインデックスは建宮に向けた疑問を放棄する。  
「するする、味見するー」  
なぜかほっとした様子を見せる建宮斎字、そして確認するように上条に言う。  
「そういうことだから上条当麻、おまえさんはこの雛人形に触っちゃいかんのよ。  
 人形自体の配置にも魔術的な意味があるから動かすのもいかんのよ」  
「それは無造作に動かすとトラップ作動ってことですか!?上条さんの不幸さを舐めてもらっちゃ困ります、  
 直ちに片付けてください」  
「まぁまぁ、そんなこと言うなよ。さっきも言ったけど穢れを集めるって事はおまえさんの  
 不幸も払う効果もあるかもしれんのよ。俺らが回収にくるまでこのまま飾っていて欲しいのよ」  
そんなこと言われてもなぁ、と抗議を続けようとしたが、台所から五和が料理を運んでくる。  
「お待たせしました。ちょっと早いかもしれませんがご飯にしましょう」  
テーブルにちらす寿司、鯛の焼き物、蛤のお吸い物等が並ぶ。  
 
並べられた料理に待ちきれない様子のインデックスに五和は強い意志を込めた声で確認するように言う。  
「禁書目録さんも約束ですよ、私たちが片付けに来るまであの雛壇には触らないでくださいね?  
 約束できない人にはこの料理は食べさせません」  
「うん、約束する、でもって頂きます!!」  
 
五和の返事も待たず食べ始めるインデックスをにこやかに見つめる五和。  
あれ?『にこやか』っていうより『ニヤニヤ』って感じがするのはなんでだろう…ってインデックスさん、  
それは俺の分の皿じゃないですか!?せめて自分の皿を片付けてから人の皿に手をつけましょうよ!  
 
 
 
 
――――数時間後、上条宅をあとにした建宮と五和は夜の学園都市を並んで歩く。  
 
「何とかごまかせませたよな」  
「流石の禁書目録さんも天草式十字凄教の秘伝は知らなかったようですね」  
「あぁ、10万余冊を記憶する禁書目録も神道と陰陽道と民間信仰を応用した  
 天草式十字凄教秘奥義『雛人形飾りっぱ=婚期が遅れる』“コンキオクレールの結界”は判らんかったようよな」  
「うふふ、これであの部屋にいる女性、つまり禁書目録さんは恋愛運を人形(ひとがた)に吸われ続けるわけですね。  
 こっちはこれで当面は大丈夫と。あとは女教皇をどうするか…ですね?」  
 
建宮は五和の笑みに少々ビビりながら答える。  
「我ら天草式は全員お前の味方よ、万事任しておけよな」と……  
 

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