とある噂の巨乳御手(バストアッパー)
20XX年、春。学園都市にとある噂がまことしやかに囁かれる。
――曰く、"巨乳御手"は"幻想殺し"と対になっている、と。
「巨乳御手とやらは超気になりますが、手がかりが無くてはそんなの超どうしようもありません」
「胸なんか大きくなったって、肩が凝って邪魔なだけよ。それに、そんな噂よりもこの通販で売ってる……」
多くの者達にとっては現実味の薄い噂だった。"彼"を取り巻く一部の者を除いては……。
――"幻想殺し"が彼の右手であるのなら。"巨乳御手"とは彼の左手ではないだろうか。
ここに、彼を取り巻く乙女達は二つに分かれ、血で血を洗う争いが始まろうとしていた。
「イギリス清教を代表して、しばらく貴方を保護しに参りました」
彼を護り己の立ち位置を守ろうとする者と。
「な、何なのよそのエロ女はーー!! やっぱ左手!? 左手なのね!? い、いやそれはどうでもいいから、さっさと私に付き合えーー!!」
彼の左手の恩恵に与らんとする者。
「噂の真偽を確かめるためデータの収集に協力願います、とミサカはその左手にドキドキしながらにじり寄ります」
「残念だけど。お姉さんにはボウヤを追跡不可能な所まで逃がしてあげなきゃいけない仕事があるのよね」
「どうして貴女まで"巨乳御手"に手を出そうとしてるんですか!? 建宮さん達だって脚線美がどうのって褒めてるじゃないですか!!」
「どうせ、隠れ巨乳とか呼ばれていい気になってる貴女には分からないのよ!!」
「なんなんですかこの状況はーー!? 何で皆様わたくしめなぞを追いかけてらっしゃるのでしょうか!?
右を向けば<妹達>(シスターズ)!! 左を向けば修道女達(シスターズ)!! あっちもこっちもシスターズ!!
そして上からは腹ペコシスターが降ってきたーー!! 逃げ場が無い! 逃げ場が無い!! ふ、不幸だぁーーーー!!」
数多の乙女達の思いが錯綜・衝突する一大スペクタクル巨編が、今――
「あの。私の場合。どちら側につけば。」
――幕を開けない。