住宅街。  
平凡な一軒の平屋。  
その平屋の居間。居間は電灯が消えており、薄暗い常夜灯だけが点いている。  
響いてるのは古い振り子時計の音だけ。  
「……」  
 
薄暗い居間のちゃぶ台の前で正座しているのは姫神秋沙。  
いや、今では姓が変わり上条秋沙である。  
 
秋沙は和服の上につけた割烹着の胸元に手を当てる。  
その左手には銀色に光る指輪がある。  
秋沙はその固い金属に触れ、その固さを確かめるように、自分の左手をぎゅっと握った。  
 
ちゃぶ台には茶碗といくつかの皿が並んでおり、その上に布巾がかけられている。  
その家の主人はまだ帰ってこない。  
「……はぁ」  
秋沙は小さくため息をつく。  
夫の帰りが遅いのはいつものことだ。  
 
どこに行っているのかはだいたいわかっている。  
夫には夫の付き合いがあるのだろう。  
当麻は夜な夜な、お酒の匂いをさせて帰ってくる。  
時には耳や頬に歯形をつけて。  
時には電撃でも喰らったかのように頭髪をチリチリにして。  
秋沙は何も言わず、そんな当麻に絆創膏を貼ったりチリチリになった髪を梳かしたりする。  
そんなとき、夫当麻は「ありがとう」とだけ言って頭を撫でてくれる。  
腰を抱き寄せて抱きしめてくれる。  
秋沙にはそれだけでよかった。  
夫である当麻がたとえ外で何をしていようと、許せた。  
いや、秋沙にとっては許すなどということですらない。  
自分を救ってくれた上条当麻という人が、自分のことを好きになってくれたというだけで望外の喜びだった。  
何分の一かでもいい。自分のことを好きでいてくれれば。この家に帰ってきてくれれば。  
それだけでよかった。  
 
柱時計が時を打つ。八回。九回。十回。十時を回っても、当麻は帰ってこない。  
今日はもしかして――  
そう秋沙が思った瞬間、玄関に靴音がした。  
 
秋沙は瞬時に立ち上がると、蛍光灯の紐を引く。  
グローランプが煌き、居間が暖かい光で満ちる前に秋沙は玄関に三つ指を突いている。  
膝を付き頭を下げながら最愛の夫を迎えていた。  
「お帰りなさい」  
 
 
秋沙の愛する世界でただ一人の男は、妻に優しげに声をかける。  
「おう。ただいま」  
多少疲れた顔の当麻は、妻の顔を見ると笑顔になり、コートを脱いで無造作に渡す。  
 
そのコートをハンガーに掛けながら秋沙は問いかける。  
「お風呂。それともご飯。それとも――」  
最後まで言わせずに当麻は、最愛の妻の唇を自分のソレで塞いだ。  
 
わずか数秒で秋沙は割烹着の紐を解かれ、着物の肩をはだけられ、袴をずり下げられて  
当麻に組み敷かれていた。  
 
寛げられた襟元からまろび出た乳房は透き通るような純白で。  
しみ一つない肌からツンと高く盛り上がった小山はその内側の青い静脈を透き通らせて夫の掌を誘っていた。  
 
キスされながら。玄関で組み伏せられながら。秋沙は身体を夫にまさぐられていた。  
夫の舌の感触に、身体の奥底で熱い温度が高まっていく。  
最愛の男性の掌の感覚。それで触れられた肌が融けそうなほど熱くなり、女の子の芯がズキズキと高鳴る。  
魔法の手。  
私の呪いを解いてくれた掌。  
たいせつな人。  
私を、救ってくれたひと。  
涙が勝手に瞳の淵に盛り上がり、視界の中の夫の像が歪んでいってしまう。  
 
上条当麻の掌で乳房を揉まれるたび、薄い毛しか生えていない女の子の園を弄られるたびに  
 
夫がベルトを外し、その熱く滾った怒張を露出したとき。  
秋沙の中で何かが生まれた。  
 
「あ、あなた」  
 秋沙が改まってそう呼びかける。  
 当麻は「え?」という顔でその声に応える。  
 
 言いにくそうな言葉を、秋沙は口にする。  
「あ。あの。お口で。して差し上げます」  
「へ?」  
 
 秋沙との夜の営みの最中、今まで何度も頼んでその度に怒られていたコト。  
 男のナニを、女の子のお口でソレして貰えるという夢。  
 当麻のそんな壮大でささやかな夢がたった今、叶おうとしている。  
 
 
 その真っ白な顔をほのかに朱に染めた秋沙。  
 興奮しているのか、羞恥なのかいつもは怜悧なくらいに隙の無い美貌が紅潮している。  
 
 
 これからしばらくはしなければならない、行為。  
 それはしてあげたい、行為になった。  
 
 自分の口で、自分の唇や舌で愛するひとが幸せになってくれるということ。  
 それはきっと、とてもシアワセな事。  
 
 玄関の板の間に正座した秋沙は、床に腰を下ろした当麻の股間に屈むように近づくと、  
その薄桃色の唇を開き、天を指している剛直をその中に招き入れる。  
 
 
 にゅるっ  
 ちゅぷっ  
 ふうっ  
 
 最後の吐息は当麻のものであり秋沙の鼻息でもある。  
 夫に唇でご奉仕しているという幸福感が秋沙の両足の間の器官を熱く炙りたてる。  
 肩に置かれた掌が、幻想殺しの掌が、秋沙をただの、一人の女の子にしてしまっているようだ。  
 
 忘れたい過去に、させられていた行為。  
 度し難い欲望の発散方法だと思っていた行い。  
 
 違っていた。秋沙は今まで完全に勘違いをしていた。  
 大好きな男の人に、ソレをしてあげること。  
 最愛の人を、口で幸福にしてあげること。  
 それは、愛の形のひとつなのだった。  
 
 息を荒くして後頭部や首筋に手を這わせてくれる夫の愛撫。  
 口の中、舌の上。口腔の粘膜で直接感じられる亀頭の熱さ。硬さ。  
 自分の名を呼んでくれる夫の、疑いようもなく快楽に震える声。  
 
 秋沙の乳首はズキズキと固く立ち上がり、脱がされかけの肌着に擦れて全身に白い快楽電気を流す。  
 共感の地鳴りのような光悦が膣の裏あたりに発生し、それが秋沙の脊椎を駆け上り全身から力を奪っていく。  
 
 腰だけを高く上げ、上体を床に押し付けるような体勢で秋沙は夫の、最愛の男子のシンボルに奉仕を続けている。  
 
「くっ…あ、秋沙っ」  
 そう言いながら秋沙の髪を優しく撫でる当麻。  
 その当麻の指に、掌に、秋沙はたまらない快楽を感じてしまう。  
 脳が揺さぶられ、頭皮が白熱してしまう。  
 
 
「秋沙っ…で、出るっ」  
 
 そう叫んだ当麻の言葉も、秋沙の耳には意味を成さない音としか捉えられない。  
 
 唇の間で、口の中で、熱い脈動が爆発している。  
 生臭い、夏草の匂いのする男のエキス。  
 結婚して以来、子宮で何度となく生で感じたその液体の味。  
 秋沙はその熱さとほろ苦さを舌の上に感じ、同時に女の子の部屋の中をどろどろに熱しながら、絶頂に達した。  
 
 
 
 

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