「だ、だめぇ、………」  
窓一つ無い広い部屋の中に、少女のか弱い声が響く。  
目の前の小さなピンク色の乳首は、まるで自己主張する様にピンと立ち上がりフルフルと震えている。  
その表面は唾液によって艶やかに濡れ、蛍光灯の光を受けテラテラとした光を放っていた。  
乳首だけを口内に含むと、赤ん坊がやる様にチュッチュと吸ってやる。  
「ふあっ……そ、んなに、吸わないで……きゃう、……気持ちい…ん……」  
上条は目の前の巨乳にむしゃぶり付きながら、どうしてこんな状況になってしまったのか考えようとした。  
「ああっ、……そん、んくっ、コリコリ……しないで……くんっ!」  
意識朦朧としながらも、吸い付いていた乳首を歯で甘噛みしていたらしい。  
噛まれた相手は拒絶の言葉を使ってはいるが、その声にはどこか淫靡な響きが含まれている。  
相手の切なそうな吐息が鼓膜に届いて、上条の劣情を更に刺激する。  
「………レロ…レロレロレロ、……ずっ、ずちゅうううう!!!」  
「はぁ、はぁっ……、あっ、あっ、あっう、……くっ、くっうううんんん!!!」  
乳首を舌で捏ね回し、頬張った乳房ごと啜り上げる。  
すると、それに呼応する様に、相手の口からも快楽の嬌声が迸る。  
更に、嬌声を引き出そうと乳房に手を添え様としたところ、その右手が何者かによって遮られた。  
「とうま!短髪ばっかり相手してないで、私の事もちゃんと見てくれないと許さないかも!」  
「(ビクッ!)」  
鋭い犬歯を光らせて威嚇するインデックス。  
頭蓋骨が噛み砕かれるかもしれない。繰り返し日常で体験している恐怖感が、ピンクの靄で霞がかっていた  
上条の意識を一瞬にして覚醒させる。  
「ちゅぽん……」  
「あんっ……」  
貪っていた乳房から口を離し、右手に視線を向ける。  
今、自分の右手には、手に余る程のボリュームを持った乳房が押し付けられている。  
「(モミモミ)」  
「ひゃう、……とうま、…もっと、もっと揉んでぇ……」  
右手の動きに敏感に反応を返し、甘えた声を上げるインデックス。  
そうだ。  
自分の口唇愛撫を乳房に受け、目をトロンとさせ艶めかし吐息を漏らしているのは、御坂美琴。  
そして、自分の右手を抱きかかえる様に、自身の豊満な胸に押し付けて悶えているのは、インデックス。  
更に、自分達の事を潤んだ目で見詰めている、複数の一糸纏わぬ全裸姿の少女達。  
ただっ広い殺風景な部屋の中に置かれた6畳は優に超えるベッドの上で、上条はここに至る迄の経緯を思い  
返してみた。  
 
 
「やけに厚みのある封筒だな……」  
その日の夕方、郵便受けから部屋に持ち帰った封筒を前に、上条はどうしたものかと考えていた。  
一応ひっくり返して差出人名を確認してみたが、当然の如く見当たらない。  
そもそも消印すら無い事から、直接、郵便受けへ差出人本人が突っ込んだ物だろう。  
「あ、怪しい。誰が、どう考えても怪し過ぎる」  
上条の不幸センサーは、ビンビンとMAXを振り切る程の反応を示した。  
「うーん、うーん……やっぱ、開けて中身を見てみない事には始まんないよな」  
そして、何時もの如く、自ら不幸と言う名の死地へと赴く事を決断するのであった。  
「右手に何も反応ないって事は、少なくとも異能の力は関わってないみたいだ……」  
それでも、いきなり爆発する懸念は拭い去る事が出来ない。  
上条は、何時でもダッシュ出来る様に体制を整えてから、へっぴり腰になりながらも開封作業に着手した。  
「あれ?何ともない……」  
何事もなく無事に開封され、出て来た中身は数枚の手紙と長方形の紙箱が2個だった。  
取り敢えず、危険は無さそうなのに安心し、手紙を読んでみる事にする。  
「えっと、なに何、―――――」  
一通り目を通して把握した内容は、ある曲に付いて自分がモニターに選ばれた事。  
発売前に試聴アンケートを取りたいらしく、他言無用との事だった。  
1つの箱には曲が収められたDAPが入っており、もう1つは事前の謝礼らしい。  
曲に付いての感想は、付属のアンケート用紙のチェック項目を塗り潰して送ればOKだそうだが、10日後に記  
載されていた場所に行き、詳しく感想を伝えると豪華商品を貰えるとの事だった。  
まぁ、学園都市には酔狂な研究をしている施設や個人が無数にあるくらいだから、今回の話もそれ絡みだろ  
うと推測された。  
「まったく、暇な連中も居るもんだな。上条さんなんか、貧乏暇なしだっちゅうのに……」  
そうブツブツとボヤキながら謝礼の入った箱を開けてみる。  
「どうせ、大した物じゃねぇんだろ、っと……、何でしょう、この紙の束は?」  
やけに小奇麗な紙の中央に¥1000の文字が印刷されているのが目に入った。  
一枚を手に取り、周りに書かれた文面や裏面の方もチェックしてみる。  
「商品券。どこでも使える大手カード会社系列の物だな。んんっ?……なぁ、何ですとーっ!?」  
慌てて食い入る様に何度も確かめ、紙の束を勘定してみる。  
「……ひゃ、100枚。100枚もある!?」  
暫く呆然としていたが、ある考えに思い至り冷静さを取り戻す。  
「ふっ、偽モンだな。こんなラッキーが、上条さんの元に訪れる訳が無い」  
そう結論付け様としたが、やはり気になるものは気になる。  
「まっ、実際使えるかどうか、試してみればいっか。余計な期待は、落胆も大きいしな」  
そう言いながら、10枚程財布にしまうと、何処かそわそわとしながら近所のスーパーへと向かった。  
1時間後、両手に食料品の入ったビニール袋を抱えた上条が、家路へと向かいながら叫んでいた。  
「神様、ありがとう!こうなりゃ、豪華商品の商品券1000枚ゲットしちゃるぜぇーっ!!」  
 
その遡る事、数時間前。  
インデックスは、何故か顔を隠す様に帽子を目深に被りマスクをした宅配業者から、自分宛の封筒を受け取  
っていた。  
「何だろ、これ?」  
あまり深く考えずに、ビリビリと封筒を破いて中身を確認する。  
中身は上条が見た物と大して違いはなかったが、少々違っていたのも確かだ。  
「ふむふむ、なるほど〜。図解入りで説明してくれてるし、これなら私でも使えそうだね。  
 とうまに聞かなくても何とかなるかも。えっと、こっちの方は謝礼ってなってるけど……」  
上条の商品券とは、異なる紙の束が入っていた。  
「えっと、!?……、た、食べ放題のバイキングの無料招待券!それも、10枚もある!」  
そう叫ぶ彼女の目には、お星様がキラキラと輝き、開いた口からは涎がダラダラと滝の様に滴っている。  
「ひぅ!?詳しく感想を伝えると、さ、更に100枚プレゼント!」  
あまりの幸運に、跪き胸の前で手を組んで、主に感謝の言葉を述べてしまう。  
「天にまします我らが父よ。憐れな子羊は、とうまの甲斐性無しのおかげで、ひもじい思いをしてきました  
 が、これで飢餓状態から脱出できそうです。どうか、100枚手に入れる迄お導き下さい。アーメン」  
深く頭を垂れ祈りを済ませると、スックと立ち上がり、欲望に目をギラギラとさせて叫んでいた。  
「よーし、10日後には、無料招待券100枚ゲットだね!!!」  
 
多少の時間のずれがあったとは言え、その日の内に封筒を手にした者が、他にも何名か居た。  
「はん、何なのよ、この胡散臭さ満載の手紙は。こんなもんに騙される美琴さんじゃないっつーの。  
 謝礼って、どうせ大したモンでもないんでしょ、…………!?」  
何気なく開けた箱から転がり出た物体に、美琴の目が釘付けになり、真ん丸に見開かれる。  
そして、絶叫とも呼べる大声で叫んでいた。  
「げ、げこ太!!!」  
箱から出て来たのは、カエルをモチーフにした一体のフィギュア。  
ワナワナと震える手を伸ばして、それを手に取ると、美琴の口からは感嘆と賞賛の言葉が漏れる。  
「なっ!?何と言う精緻でラブリーな造形美。まさに神の御業って奴ね。ああ〜っ、げこ太……」  
思わずスリスリと頬擦りしてしまう。  
暫し、うっとりと感触を堪能していた美琴だったが、箱の中に紙が入っているのに気付き、取り出して折り  
畳まれた紙片を広げてみて目を通す。  
「ふんふん、豪華商品は以下の写真の物になりますって、……」  
パサッと、その手から紙が滑り、床に舞い落ちた。  
「ふっふっふっ。待ってなさいよー、げこ太。美琴さんが10日後には必ずゲットして、毎晩ベッド抱っこし  
 て可愛がってあげるから!!!」  
そう決意に燃える美琴の体からは、バッチン、バッチンと紫電が迸っていた。  
その余波を受けた紙が床から舞い上がり、印刷された写真画像が照らし出される。  
ベットに横たわる等身大(150cm程)?の、げこ太ぬいぐるみが……。  
 
この日、学園都市のあちこちで同様な叫びや決意が行われた。  
「各種サプリメント詰め合わせ1年分―――――」  
「人気者になれる魔法少女7点セット―――――」  
「最新携帯モバイル、Aランクアクセスコード付き―――――」  
          ・  
          ・  
          ・  
人通りの無い路地の奥で、宅配業者は携帯を取り出すと誰かに電話を掛け始めた。  
「ふぅ、任務は完了した。これで、良いんだな?」  
それに答える様に、無機質な声が返ってくる。  
「問題ない。次の任務に着手してくれたまえ」  
「地下射撃場の改装か……、今度は何を企んでる?」  
「君には、関係無い事だ」  
「おい、もしも彼女達の身に何かあったとしたら―――」  
「心配するな。彼女達に危害が及ぶ事な無い。むしろ、彼女達の願望を叶える利益になる事だ」  
「………………」  
一方的に回線が切られ、会話は終了した。  
宅配業者は、手にした携帯を睨みつけた後、溜め息を吐いた。  
「カミやん……、今度も面倒な事になりそうだぜい」  
そう呟きながら携帯を仕舞い、その場を後にした。  
 
その日から、律儀に曲を聴いていた面々だったが、曲に関しての感想自体はそれ程変わりはなかった。  
旋律に独特なクセはあるが、綺麗な曲であると……。  
上条などは早々に飽きてしまい、うっちゃってしまっていたが……。  
そんな事より、重大な問題が女性陣には訪れていた。  
聴き始めて、何となく心と体に違和感を感じた敏感な者も居た様だが、3日目には誰もが自覚する事態とな  
っていた。主に体の面で……。  
「わわっ、少し胸がおっきくなったかも♪」  
「あれ〜?ちょっとブラがきついわね。ひょっとして、成長した♪」  
「むっ、不味いわね。これ以上大きくなったら、可愛いブラの選択肢が無くなるわ」  
「おお〜っ。巨乳への第一歩♪」  
「はやぁ〜、ブラがきつくなっちゃいましたけど、こっ、これがばれたら佐天さんの攻撃が胸まで……」  
          ・  
          ・  
          ・  
各々、感想は悲喜交々ではあったが、バストアップしているのは間違い無かった。  
しかし、そんな彼女達に悠長に構えている余裕は無くなってしまった。日増しに成長するバストの為に。  
急激に成長するバストは、張りを訴えズキズキとした痛みをもたらした。  
それに、せっかく買ったブラも翌日にはきつくなる始末だった。その出費も馬鹿にならない。  
周りの視線も、始めは好意的な物だったが、だんだんと奇異な物を見る様に変わって行く。  
もう、この頃には、全員が自分に苦しみを与えた元凶が何であるかを正確に理解していた。  
血気盛んな者(約一名)は、指定の場所に猛然と特攻を仕掛けてみたのだが……。  
しかし、そこにあったのは無人の廃ビルで、人っ子一人見当らなかった。  
そんな、地獄の様な苦しみに耐えていたが、バストの痛みは1週間で突然、嘘の様に消えてしまった。  
皆、首を傾げたが、後に残されたのは、元のサイズに対して、4〜5ランクアップされたバストだけだった。  
バストだけ成長した為か、自分の物とは思えない程、綺麗に整った形の良さを見せ付けている。  
お風呂上りに鏡に映る自分の上半身にウットリとしながら、『良し。これなら行ける』と一人の男子学生の  
姿を脳裏に思い浮かべてしまうのも全員同じだった。  
そう、バストの痛みがある時からおかしいと感じていたのだが、ツンツン頭の少年の姿を見ているだけで、  
心拍数が上がり胸の鼓動を抑え切れなかった。  
痛みが治まる前は恥ずかしくて、目を逸らしたり逃げ出す行為に及んでしまっていた。  
だが、痛みが治まり鏡に映る生まれ変わった自分なら話は別だ。  
成長したバストは、何時も抱いていたコンプレックスを吹き飛ばし、女としての大いなる自信を少女達に与  
えていた。元々、そんなコンプレックスとは無縁だった約一名を除いては……。  
決行の日は何時にしようかと、そこはかとなく乙女心の純真さで迷っていた時、其々の元に手紙が届いた。  
差出人の名前はなかったが、だからこそ誰からの物かは明白だった。  
思わず破り捨てようとした者もいたが、良く考えてみて今の自分があるのは誰のお陰なのかに思い至った。  
取り敢えず、内容を確認してみようと中の便箋を読んだ全員の目が、記された文面に釘付けになった。  
『今回、参加して下さる皆様には、事前にお知らせ頂いた豪華商品を進呈致します。  
 尚、当日は参加者によるコンテストも開催いたしますが、奮って御参加下さい。  
 優勝者には、貴女の想い人をプレゼント致します。  
 審査員も想い人である彼一名のみの予定に為っております。かしこ』  
そこから推測される事は、容易に理解できた。  
最近、自分と同じ様に急にバストが大きくなった者が何人か目撃していた。  
何となくお互いに尋ねる事が出来なかったが、同じ境遇に陥っている事だけは理解していた。  
そして、彼女達が今回の参加者の面々に名を連ねているのに間違いはないだろう。  
『ライバル』その言葉が脳裏に刻み込まれる。  
コンテストに参加しないと言う選択肢は、もはや頭の中には無かった。  
これはピンチであると同時に、最大のチャンスでもあるのだ。  
会場に彼が来る。優勝商品であると同時に審査員も兼ねて。  
これで優勝すれば、『ライバル』の目の前で、自分が彼の一番であり、彼は自分の物だと宣言出来る。  
少女達は、心の中で闘争の炎をメラメラと燃やし決戦の日に思いを馳せるのだった。  
……優勝商品、兼、審査員にされているとは、これッぽっちも知らされていない上条を置き去りにして。  
 
「んんっ?このビルで、間違いない……ん、だよな?」  
人通りの無い寂れた雰囲気の漂う裏路地で、古い雑居ビルを見上げながら上条は疑問符を浮かべていた。  
2日前に届いた手紙、そこに記されたビルの名前はここで間違い無い筈である。  
何度かビルの壁面に貼り付けられた薄汚れた金属プレートと照らし合わせて確認もしてみた。  
「ホントに、大丈夫なんかよ……」  
 
手紙には、主に、こう言う内容が記されていた。  
『今回、参加して下さる貴方には、事前にお知らせ頂いた豪華商品を進呈致します。  
 更に、特別企画に御参加頂くと、貴方の将来の幸福をお約束する素晴らしい方達をプレゼント致します。  
 是非、貴方の薔薇色の未来の為に御参加頂きますようお願い致します。かしこ』  
「お、おっ、おおーっ!!!何て、太っ腹なスポンサー様だ。  
 商品券1000枚をただでくれる上に、その上ラッキーチャンスに素晴らしい商品をプレゼントとは。  
 上条さん、世知辛い世の中に現れたメシア様に、感謝感激の雨あられです。  
 思わず閉じた瞼から、随喜の涙が溢れてしまう程に……。  
 さぁー、どんな企画だろうが、バッチ来い!不幸慣れした上条さんに不可能は無い!  
 これで素晴らしい商品もゲット……って、あれ?……何だ、この『方達』ってのは、……誤植か?  
 う〜ん、……まぁ良いや。単なる打ち間違えだろ」  
あまり深く考える事なく、そう結論付けた。  
何故なら、上条の脳裏には、貧乏からの脱出の光明が差し込んでいたからである。  
「待ってろよー、薔薇色の未来!!!」  
 
手紙に記された内容と、目にする現実との大きなギャップに不安を覚えながらも、一歩踏み出す事にした。  
古ぼけたエレベーターで3階に上がると、通路に並ぶドア番号を見ながら一番奥の部屋を目指す。  
予想通り、目的の部屋は一番奥の部屋だった。脇にあるインターフォンを押して、相手の応答を待つ。  
暫く待っていると、インターフォンから女性の声が聞こえて来た。  
「……お待たせしました。上条当麻様ですね。  
 今、ドアのロックを解除致しますので、そのまま中にお入りになって、テーブルの上を御確認下さい」  
そう告げると、ドアの蝶番の辺りから『カチャ、カチャ、カチャ、ガチャン』と音がした。  
(何だぁ?えらく複雑なロック施してんだな。こんなボロビルなのに……。  
 それに、一言も喋って無いのに俺が分かるなんて、どっかに監視カメラでも設置してんな)  
予想外のセキュリティの高さに軽く驚きを覚えつつ、指示通りドアを開け部屋の中へと入ってみる。  
ドアは厚みの割りにスッと開き、中へ入って手を離すと元通りにと閉まって行く。  
ガランとした広い部屋には、中央に来客用らしい革張りの応接セットがあるだけだ。  
テーブルの上には、手紙と紙袋、それに1枚のカードキーが置かれていた。  
上条は椅子に腰掛け、封筒の中の便箋を取り出すと内容を一読して確認してみた。  
(何々、紙袋には事前にお知らせ頂いた豪華商品っと、カードキーは部屋の奥にあるエレベーター用っと。  
あっ、ホントだ。何で部屋ん中に、最新式みたいなエレベーターがあんだ?金持ちは良く分からん。  
で、地下5階に下りるっと。……いいっ!?地下5階?何で、そんなにあんだよ。  
もしかして、学園都市の支配を企む秘密結社のアジトか何かか?此処って。  
まさか、そんな馬鹿な事ありえ……、えっと、……つうか、そんな事って十分ありえるな。  
いやいや、そんな事くらいで、薔薇色の未来を諦めてなるもんか。俺は幸せを掴むぞ。  
んっと、それから正面のドアを開けて中のソファーで暫くお待ち下さいっと。オシ!)  
気合を入れて立ち上がると、手順通りの行動を開始した。  
 
「うわっ、暑っちいな。空調壊れてんのか?それに、何だぁこの匂い、お香でも焚いてんのか?」  
そうボヤいた上条に対し、  
「御不便をお掛けして申し訳ありません。少し前から、温度設定が不調に為りました。  
 御香の方は、リラクゼーションの一環だとお考え下さい」  
「うおっ!?い、いきなり声を掛けられるとは、……って、声だけ?」  
「部屋に設置されましたスピーカーからの音声です。音声だけで、御不快でしょうが御了承お願いします」  
「まぁ、そんな事気にしねぇけど。それより、一体何すりゃ良いんだ?時間とか、どん位掛かんの?」  
「準備に暫く時間が掛かると思いますので、用意が出来ましたら御呼び致します。  
 お部屋が暑いのでしたら、服を脱いで涼しい格好を為さって頂いても構いません。  
 ソファーの脇の冷蔵庫に、お飲み物も御座いますので御自由にお飲み下さい。  
 左手のドアの向こうは、トイレとシャワールームと為っておりますから、こちらも御利用下さい」  
「なぁ、1つ聞いて良いか?」  
「何でしょうか?」  
「ソファー、って言ってるけど、俺には馬鹿でっかいベットにしか見えんのだが?」  
「ソファーです」  
「いや、だから、誰がどっからどう見ても……」  
「ソファーです」  
どうあっても、ソファーで押し通すみたいだった。  
「………………」  
「それでは、御呼びする迄、気楽に御寛ぎ下さい」  
そう告げると、音声が途絶えた。  
ハァーと、溜め息を吐きながら冷蔵庫を開けてみる。  
中には、同じ種類の瓶入りジュースがぎっしりと詰まっていた。  
「見た事ないジュースだけど、美味いのかこれ?」  
冷蔵庫の棚に置いてあった栓抜きで蓋を開けると、取り敢えず飲んでみる。  
「おっ!?結構いけんな、これ」  
瞬く間に飲み干すと、もう一本に口を付ける。  
ついでにトイレとシャワールームを確認しようと、ジュースを飲みながら左手のドアを開けた瞬間、  
「ブッオォォォ―――――ッ!!!」  
上条の口から、ジュースが毒霧攻撃の如く噴出した。  
「ゲホッ、ゴホッ、……なな何ちゅう趣味しとるんだ……」  
中に入ると、サニタリールーム広がっていた。  
大理石製のシックな色合いや、金メッキされた金具なんかで統一された高級ホテル風の作りだった。  
洗面台が2個並んでる。これは普通にあるだろうし珍しくも無い。  
同じくトイレも2台あるが、何故間仕切りも無く仲良く並んでいるのだろう?おまけに丸見えだ。  
右手に広がるのは、シャワールームなんて呼べない。  
10名様は楽勝です、と自己主張する大理石製のバスを奥に控えた、巨大なバスルームが見える。  
そう、見えるのだ。天井迄も届かないガラス製の間仕切りを通して。  
写真や画像でしか知らないラブホのサニタリールームを、数段グレードアップした作りだった。  
些か目眩を感じ、虚脱状態になりながらも、近くに備え付けられた棚からタオル1枚を取って、自分が飛び  
散らせたジュースを拭き取る上条だった。  
 
上条に遅れる事30分程して、次々と女性陣もボロビルに集結していた。  
本来は、其々時間をずらして指定していたのだが、恋する乙女達にそんな物は通用しない。  
まぁ、それを見越して、上条に指定した時間との開きは2時間はあったのだが……。  
「参加者は彼女で最後になります。本日のコンテスト参加者は、以上の合計5名と為ります。  
 暫く準備に時間が掛かりますので、時間が来る迄の間、冷蔵庫のジュースでも飲みながらお待ち下さい。  
 それでは皆さん優勝を目指して頑張って下さい」  
そう女性の声が告げ終わった後で、御坂美琴は睨み合ってた『ライバル』達から視線を外し、最後に仲間入  
りした敵を見遣る。  
「えっ!?貴女、確か初春飾利さんだったわね。どうして貴女がこんな所にいるわけ?」  
「え!?ああっ、御坂さんだ。どどどうしたんですか、その水着は!?」  
「うんっ?あぁ、これ、ね。コンテスト参加者用の衣装らしいわよ。  
 テーブルの上にナンバー書かれた紙袋置いてあって、その中に入ってたわ。  
 後、コンテストの進行手順の説明もあったわね。  
 ……ったく、私がナンバー3だなんて、オチョクッテんのかしらね……」  
「さあ、それはどうなんでしょうねえ?それより、あのう、恥ずかしくないんですか?」  
「ハッ、今さら恥ずかしいもヘッタクレもないわ。絶対、アイツは私の物にしてみせるんだから。  
 てっ、そういや貴女も『ライバル』の一人だったわね」  
美琴の初春を見遣る目に、剣呑な光がちらつく。  
「あわわわわ、私は、あれ?そうですね。宜しくお願いします」  
『ペコリ』と頭を下げられ、何となく闘争心が狂わされる。  
「うっ、まあ……、あのバカが好きな同志には違いないんだから、いがみ合ってるのも不毛かもね。  
 それより、私、すっごく喉渇いてんだけど、初春さんもジュース飲む?」  
「あ、はい頂きます。この部屋暑いですもんね」  
ジュースを取って来ようと冷蔵庫の方を振り向いた美琴は、少し意表を付かれた。  
(なっ、何なのよう、コイツら。さっき迄、睨み合ってたのに……)  
冷蔵庫の前に置かれているテーブルでは、インデックス、姫神、吹寄の3人が仲良く座ってジュースを飲ん  
でいる光景が繰り広げられていた。  
呆れた事に、インデックスの前には、空の瓶が5本も置かれているのに、まだ飲み続けている始末だった。  
「うまうま、ぷはーっ」  
「ふー。癒される」  
「なかなか美味しいわね。中にどんな成分が入ってんのかしらって、なによラベルも無いじゃない」  
先程までは、各々の武器をちらつかせて威嚇し合っていたはずなのに。  
美琴は、何時もの様に体から電気を、バッチンバッチンさせて……。  
インデックスは、何故か歯磨きしながら泡だらけの歯を、ガッキンガッキンさせて……。  
姫神は、魔法のステッキ(スタンガン)を素振りして風きり音を、ビュンビュンさせて……。  
吹寄は、持参のスポーツバックから500mlのペットボトルを取り出したが、役者不足と感じたのだろうか、  
新たに電気マッサージ器(振動式)を取り出して、ブルブルいわせていた。  
そんな状況からの急展開に、美琴は脱力しながら、初春を呼んで一緒にテーブルでジュース飲む事にした。  
 
「……ったく、何時まで待たせる気だ?もう、2時間近くも経ってんぞ」  
上条は、少し苛立った様に呟いた。  
空調が直ったのか、部屋の温度は快適と呼べるまで下がっていた。  
しかし、脱いでいた上半身の服を再び着ようとする気が起きなかった。  
何故なら、感じる不快感には、それ程変わりがなかったからだ。  
その理由は、感じる『暑さ』が『熱さ』に取って替わられていた。  
体表面に感じる暑さは快適で問題ないが、体内に感じる熱さが異常に上がってしまっていたからだ。  
それも、その熱さは下腹部の方に集中していた。  
上条の肉棒は窮屈なズボンの中でそそり立ち、まるで、それ自体が別な生き物の様に、ドクドクとした脈動  
を発している。  
(……ふざけやがって。間違い無く、ジュースの中に一服盛られたな。  
これから問い詰めて、返事が無かったり、はぐらかす様なら、此処とはオサラバしてやる)  
そう決意して、口を開こうとした瞬間、突然、照明が落ちた。  
暗闇の中、呆然としていると、天井にあるスポットライトの1つがともり、一条の光が自分の事を暗闇の中から照らし出して、浮き立たせる。  
そして、スピーカーからは、朗々とした男性の声が大きく響いて来た。  
「レディース&ジェントルマン、大変長らくお待たせしました。  
 只今より、審査員、上条当麻による『巨乳コンテスト』を開催致します。ゲートオープン」  
そう告げると同時に、部屋の奥の壁が下方に沈み込み始めた。  
(なっ……、何だ、何が起こってるんだ!?)  
事態に付いて行けない上条を放って置いて、シナリオは進行して行く。  
壁が完全に沈み込み、床と一体化したところで、再度、男性の声が響く。  
「それでは、コンテストに出場下さった素敵なレディー達の御紹介です。  
 一名づつの御登場で御願い致しましょう。  
 まずは、エントリーナンバー1番、吹寄制理」  
軽快な音楽が流れ出し、壁が無くなった向こう側の薄暗い空間に、一条のスポットライトが浴びせられた。  
そこに浮かび上がったのは、名前の通り上条のクラスメイトである吹寄。  
(あ、あれ?……吹寄?……顔は確かに吹寄だよな。えーっと、何だあ?この違和感は………)  
視覚情報に脳内処理が追い付いて行けないと感じ、目を閉じて深く深呼吸してから再度見てみる事にする。  
撮影開始。上条ビジョンのフォーカスを顔に合わせ、徐々に下に移動し、足元反転して再び顔に移動。  
最後に、倍率を下げて全身像をフレームに収める。撮影終了。そして、瞬時にデータの脳内処理完了。  
その結果、上条の下顎がカクンと落ち、更に運動機能と思考能力の両者を、ピシッと凍結させた。  
吹寄が上条に向かって歩き出した。  
その動きに合わせる様に、スポットライトの光も追従する。  
吹寄はソファー(ベッド)に腰掛ている上条の目の前まで進むと、そこで立ち止まった。  
その場で、ファッションモデルよろしく数種類のポーズを披露すると、元の場所へと戻って行く。  
それと交差する様に、もう1つスポットライトがともり、女性の姿を浮き上がらせる。  
「続きまして、エントリーナンバー2番、姫神秋沙」  
上条は、唖然として固まったままだった。  
        ・  
        ・  
        ・  
「以上を持ちまして、参加者全員の御紹介が終了致しました。  
 後は、審査員による審議の結果発表に拠って、優勝者が確定致します。  
 皆様、ドンドンと気の済むまで審査員にアピール為さって下さい」  
スピーカーからの音声がそう締め括ると、音楽が途切れ、照明が一斉に点いた。  
光の奔流が、上条の意識を覚醒させた。  
そして、横一列に並んでいる女性陣に向け、思わず叫んでいた。  
「ナンちゅうエロい格好しとんじゃ、おまいらはぁああああああ!!!!」  
 
横一列に並んでいる女性陣は、同じ衣装を着けていた。  
古今東西の美人コンテストの定番、お馴染みの水着審査と同様に水着を。  
ただし、彼女達が着ている水着は、そう簡単には、お目に掛かる事が出来ない類の物だった。  
鋭い角度を描く白いビキニパンツは、Vゾーンをやたらに強調し、白いハイヒールを履いた足先迄の脚線を  
更に長く、美しく見せている。  
ビキニブラは着用しておらず、その代わりとばかりに、ビキニパンツからは幅5cmも無い様な極細の白い  
布地が2本、乳輪を隠す様に胸を通り肩に伸びている。  
こんな水着の呼び名は、一つしかなかった。その名とは、スリングショット。  
巨乳化(約一名爆乳化)した彼女達が着用すると、そのエロ度の破壊力は凄まじい物だった。  
「むっ、何かこの水着に文句があるって言うの、上条当麻」  
「上条君が好きって書いてあった。この水着」  
「アンタ、この美琴さんがこんな格好してやってんだから、もっと喜びなさいよ」  
「私だってこんな水着着れちゃうんだから。見て見てとうま、谷間も凄い事になってるかも」  
そう言って、腕を前でキュッと絞るインデックス。その胸には、深い谷間が出来ていた。  
(くっ、こいつら全然悪びれてないじゃねえか。これで当然、みたいな事を平然と言いやがる。  
 つぅーか、マトモな人間はいねえのか?……おや?……おおっ、一人発見!)  
「コラ!そこでモジモジしてるオマエ!オマエは、ジャッジメントの風紀委員だろうが。  
 何、自ら風紀を乱す事に加担してんだ?今すぐ、理由を言ってみろ!」  
「は、はひっ!……えっと理由ですか?それは、その……、貴方を手に入れる為、ですかね?」  
「はあっ!?……俺?……何で俺が、手に入れられなきゃならないんだ?」  
「それはですね……」  
「ああっ、まどろっこしい。アンタ、さっさと決めなさいよ!」  
「こうなったら腕ずくで……って、姫神さん!?何してるのよ?」  
「埒が開かないから。アドバンテージ作戦」  
「ちょっとぅ、それはズルイわよ。こうなりゃアタシだって……」  
「わ、私だって負けないんだから。とうまには、前に一度見られてるから平気。  
 むしろ、成長した今の私を見て欲しいかも」  
「わかったわ。私も脱いで、この爆乳で上条を虜にしてやる」  
「み、皆さん落ち着いて下さーい。あわわッ、私も脱ぎます」  
全員ハイヒールを脱ぎ捨て、水着を脱ぎ始めた。  
「むむっ。アドバンテージ作戦U」  
全裸になっても、皆が同じでは意味が無い事に気付いた姫神が、上条に向かって特攻を仕掛けに走り出す。  
「抜け駆けなんてさせないわよ。体育会系を見くびらないで……」  
普段の乱闘で培った運動神経を発揮し、水着を脱ぎ捨てた吹寄がダッシュする。  
「負けないもん」  
意外と器用に水着を脱いだインデックスが、天下一品の逃げ足の速さを発揮して駆け出す。  
「ちょ、ちょと待って、待ちなさいってば、……」  
そして、変な所で不器用さを発揮した美琴が、足に絡まった水着をなんとかしようと悪戦闘していた。  
「まっ、……マッテって、言ってんでしょうがァあああああ!!!」  
思わず、電撃の槍が前髪から迸った。  
「「「……キャウン……」」」  
「あ、ゴメン」  
(それ程、強くはないから、一時的に体が麻痺してるだけよね。直ぐに動けるはずだけど、……ゴメンね)  
ピクピクと痙攣している3人に謝りながらも、何とか水着を脱ぎ捨て上条の元に向かう。  
上条は、あまりの事態の進行に顔を真っ赤にし、金魚の様に口をパクパクとさせていた。  
「やっと捕まえた。アンタ、観念しなさい」  
美琴はそう言って上条の頭をガシッと両手で掴むと、その顔を自分の胸へと押し付けた。  
 
インデックスの胸を揉みながら今迄の事を思い返し、さて、これからどうしたモンか?と考えていた上条  
は、上から降って来る声に現実に引き戻された。  
「アンタって、アンタってやつは、こんなとこでもアタシをスルーするか……」  
顔を上げた上条の目に、前髪から紫電がバチバチと漂い始めている美琴の顔が映った。  
「ひッ!?」  
思わず身を竦める上条、しかし、意外な所から救援の手が差し伸べられた。  
「ふぁ!?」  
美琴がそう声を上げると、前髪から紫電が綺麗サッパリ消え去っていた。  
良く見ると、インデックスの胸を揉んでいた右手が、何時の間にか美琴の股間の方に移動している。  
「えっと……、俺の右手は、何時この位置に移動したんでしょうか?」  
「とうまは、そのまま短髪を右手で触ってて、そうしたら短髪は力を使えないから」  
上条の疑問に答えたのは、インデックスだった。  
さすがは禁書目録、咄嗟に電撃封じの為に自分の胸にあった上条の右手を使ったらしい。  
上条は自分の右手に感じる感触に、目眩を覚えそうだった。  
指先には、どこまでも柔らかい感触が熱い火照りを伝え、更に、微かに濡れた感触も伝えてくる。  
手の平には陰部を覆う柔毛のしっとりとした感触。上条は、その感触にのめり込みそうになる。  
「とうま!」  
ビクッと、声のした方を振り返ると、自分を睨むインデックスの顔が見えた。  
「まったく。とうまは、どんな時でもとうまなんだね。あっちへふらふら〜、こっちへふらふら〜」  
「い、いや、インデックス。人をタンポポの綿毛みたいな言い方するのは、どうかと思うぞ」  
「いただきます」  
そう言ったかと思うと、インデックスは上条の唇に自分の唇を重ねた。  
「!?」  
驚きに上条の唇が僅かに開く。  
その隙間を抉じ開けるかの様にインデックスは、自分の舌を上条の口内に捻じ込んで来た。  
インデックスの柔らかく甘い舌先が、上条の口内を彷徨う。  
そして、上条の舌の感触に気付くと、それを必死で絡め取ろうとする。  
インデックスの両手が上条の頭に巻き付く様に回され、拠り深い口付けが始まった。  
二人の口付けが拠り深まるたびに、上条の右手が振るえ美琴にも快感をもたらしていた。  
「あっ……うっ……くぅん……んんッ……」  
美琴は、両手を上条の右手首に伸ばして掴むと、更に手の平が自分の濡れそぼった陰部に強く押し付けられる様にギュッと力を込めた。それは、更に深い快感を味わおうとする、女の本能の動きだった。  
美琴の電撃を警戒しベッドの周りで様子を伺っていた3人だったが、真っ先に動いたのは初春だった。  
流石に日々情報分析しているだけあって、美琴が完全に無力化された事を把握したのだ。  
ベッドに上がり込み、上条の膝の上に体を捻じ込み横座りとなると、剥き出しの胸板に舌を這わせ始める。  
更に、左手はズボンに浮き上がった肉棒を擦り上げ、右手を使ってズボンのベルトを外し始める。  
胸板に這わせていた舌を乳首の方に向かわせ、ペロペロと子犬が舐める様にし出した。  
乳首が舐め上げられる度に、上条の体が微かに震える。  
完全に出遅れた吹寄は、慌ててベッドに上がり込んだが、先行した3人を見詰めながら歯噛みする。  
力ずくでも引き剥がしたいところだが、それも何だか大人気無く感じられたし、負けた様に感じる。  
取り敢えず、ベッドの上で膝立ちに為り、フリーの左手を両手で掴むと手の平を自分の股間に宛がい、太腿  
をギュッと締めて固定する。  
そうして腕を固定して置いて、自らのメロンを超えた小さなスイカ程もある爆乳の間に、二の腕を挟み込む  
と、腕へのパイズリを敢行し始めた。  
「さあ、上条。私の胸の感触をタップリ味わいなさい。貴様も左手を動かして、私を感じさせるのよ!」  
最後に残された姫神は、暫くの間ボーっとベッドの上を眺めていたが、ある結論に到達したのか、ポンッと  
手を一つ叩くと、いそいそとベッドに上がり込んだ。  
「前がダメなら。うしろ」  
そうポツリと呟くと、上条の背中に回り込み膝立ちに為ると、ベタッと自分の体を背中に押し付けた。  
そして、体を大きくくねらせグラインドしながら、胸や股間を背中に擦り付け始めた。  
上条は、5人から与えられる刺激に、全身が沸騰しそうに為っていた。  
何もしていなくとも熱くなっていた体に、この刺激である、とても耐えられる物では無い。  
それに、少女達から立ち上る甘い体臭が、部屋に焚き込められた御香と混じり合い、上条の理性を蕩けさせ  
て行き、男としての本能を目覚めさせて行く。  
とうとう限界に来たのか、スローモーションの様に、上条の体が5人を巻き込みながら後に倒れて行く。  
そして、これが性の饗宴の始まりの合図となった。  
 
壁に設えられた複数のモニター画面で、事の一部始終を眺めていた男は、『パチン』とモニターのスイッチ  
を消した。そう広くも無い部屋は、空調の音だけが微かに聞こえるだけになる。  
男は携帯を取り出し、登録された番号へと電話を始めた。  
コールホーンが、1回鳴り止む前に相手との回線が繋がる。  
「見てたんだろう。これで満足か?」  
土御門元春は、吐き捨てるように呟いた。  
 
『巨乳御手(バストアッパー)』  
シスターズが持つ電気的ネットワークに、木山春生が開発した『幻想御手(レベルアッパー)』。  
2つの持つ特性を分析して作られた、全く新しい脳波リンクネットワーク。  
今回が、『巨乳御手』の初めての実地テストであり、その被験者に選ばれたのが上条達だった。  
 
『第一陣のデータ結果は既に収集が完了した。君は第二陣の準備に入ってくれ』  
「第二陣だと……?お前は他にも『巨乳御手』を使うつもりか?」  
『もう既に仕込みは済んでいる。後は、彼女達をここに連れてくれば済むだけだ』  
「学園都市に居る『幻想殺し』に関わる被験者達は、今回の7人で全員だったはずだ」  
『そうだ』  
「それじゃ……いや、お前まさか、……イギリスにも?」  
『イギリスだけではないがな。第一陣と同時期に手元に届く様に手配した』  
「お前は正気か、アレイスター。魔術師が、超能力を使えばどうなるか……」  
『君は何か勘違いしている様だな。『巨乳御手』は、超能力とは関係無い』  
「何だと……?」  
『私は『幻想御手』が持つ共感覚性に注目した。世間ではテレパシストにばかり注目するが、シンパシスト  
 と呼ばれる者達がいる。お前は彼らを知っているのか?』  
「シンパシスト、……何だ?」  
『言葉の通りだ。シンパシーとは同情、共感、共鳴等の意味合いがある。それらが強い者達を称して呼ぶ。  
 彼らは他者の強い感情に共鳴する。超能力開発に必要な五感とは別物だ、謂わば回路が違う』  
「お前は第三の回路を創ったと言うのか……」  
『人間が誰でも持っている他者を思いやる感情、情動に明確な筋道を付けただけだ』  
「感情の共鳴、……ネットワークに取り込まれた人間は超能力では無く、感情を増幅されるのか」  
『そうだ』  
「それは……、一種の洗脳と同義だぞ」  
『君はまた勘違いしている様だな。今回ここには来なかった被験者2名、彼女達を見れば分かるはずだ』  
「……………………」  
土御門は、来なかった被験者2名を思い出す。  
『月詠小萌』、そして検体番号20001号『打ち止め(ラストオーダー)』の2名を。  
こんな所で、名前が挙げられているなどとは露程も知らない2名は、其々の自宅で物思いに耽っていた。  
月詠小萌は、大きな胸に手を当てて、イギリスの方角を向いて、煙草を上下に揺らしながら……。  
打ち止めは、なかなか帰って来ないあの人を吃驚させようと、胸を強調するポーズの練習をしながら……。  
(更に強く想っている相手がいれば、そちらに向かう寸法か。それじゃ、……あの娘は?)  
「初春飾利はどうなる。彼女は『幻想殺し』との接点が、それ程でも無かったはずだ」  
『真っ白な状態ならば何も影響は無い。『巨乳御手』はその時点で一番気になっている異性、その者に対す る感情を増幅しているに過ぎない。彼女が一番気になっていた異性が『幻想殺し』、唯それだけだ』  
(好きの段階に至っていない相手でも、ネットワーク上に同じ相手が好きな女性がいれば、それに共鳴して  
増幅される。その結果が、ああなる訳か……。………、それより、もっと重要な問題があるな……)  
「もう一つ分からない事がある。『巨乳御手』が感情を増幅する物なら、何故、胸が巨乳化する?」  
『それは開発中に判明した副産物だ。彼女達は情動を刺激され、女性ホルモンが過剰分泌されるのだ。  
 名も付けずに開発した物だからな。身体的特徴から分かり易く、『巨乳御手』と名付けた。不服か』  
「当たり前だ!お前はとんでもない物を創ったんだぞ!」  
『これを使用すれば想いを告げる手助けになるが。胸にコンプレックスを持つ女性も自信が出るだろう』  
「ああ、恋する乙女の後押しになるのは認める。だが、オレはこれを使う事は認めんぞ!」  
『何が不満だ』  
「こんな物を使われたら、ロリぺタが絶滅するだろうが!」  
『………、君は何を言っている』  
「そんな事も分からないのか、アレイスター。全世界に散らばる同志達を代表して、オレが言わせて貰う。  
 ロリこそ至高の美!これにぺッタンコが加われば、まさに無敵の存在へと昇華するのだ!  
 お前の行いは、ロリぺタを愛する我々への死刑宣告に等しい。オレは、断固として使用を阻止するぞ」  
 
『土御門、前から思っていたのだが君は病気だ。治したいなら良い医者を紹介するが』  
「オレはこの病気を、墓場まで持って行く覚悟だ」  
『………、良いだろう。この手順が済めば封印してもかまわない。元々世間にばら撒く気も無いしな』  
この時、この瞬間、土御門は、ロリぺタを愛する全世界の同志達のメシア足りえたのだが、この事が世界に  
伝えられる日が来る事は永久に無かった。  
「……しかし、解せんな。お前は何故、吹寄制理を被験者に選んだ?彼女は元々巨乳だったはずだ」  
『巨乳化するにしても形の良い胸の方が良いはずだ。貧乳ばかりでは具体的にイメージ出来ないからな』  
「貧乳を馬鹿にするな!」  
『………、歪みの補正の為には、胸が少し足りない者以外に、実際に巨乳を持つ者がネットワーク上に必要  
 不可欠だ』  
「なるほど……、それで彼女が選ばれた訳か。しかし、お前が『巨乳御手』を創った目的は何だ?  
 恋する乙女の後押し、などと言う平和的な理由のはずが無い」  
『なに、『幻想殺し』の成長の為だ。これによってプランが短縮される。理由はそれだけだが?』  
(プランの短縮、か。またカミやんを使って、何か企んでいるってのか……)  
『不特定多数を守るだけでは不安定だ。やはり特定の相手が必要だろう』  
「すでに特定とは言えん状況だと思うんだがな……」  
土御門は、モニターに映っていた上条の様子を思い浮かべながら、想像してしまった。  
(……カミやん、その歳で腎虚なんて笑えんぜよ……)  
『大切なのは自己認識する事だ。曖昧な理由で不特定を守るのでは無く、特別な存在として守る事が重要な  
 のだ。あの手のタイプはそれで飛躍的に成長する』  
「それなら尚更、一人に絞った方が良いだろう?」  
『君は分かっていないな。『幻想殺し』が一人で治まる訳が無いだろう。無自覚から自覚する事が重要だと  
 言ったばかりだ。自覚する相手が居れば良いだけだ。それも居ればいる程、成長が促される』  
「……数が多ければ良いなら、シスターズを使えば済む事だ」  
『シスターズは数が多すぎる。それに別な用途に支障を来たすしな』  
「電気的ネットワークで繋がった『打ち止め』を、被験者にしたのは何故だ?」  
『あれは特別な固体だ。『巨乳御手』を使用しても、シスターズに影響ない事は予測出来ていた』  
「なるほど、それで第二陣のご登場か……」  
土御門は、イギリス清教『必要悪の教会』の精鋭達を思い浮かべながら、想像してしまった。  
(……カミやん、絞り取られ干からびてミイラになっても、即身仏として祭ってやるにゃー……)  
「ん?ちょっと待て。お前はさっきイギリスだけじゃないと言ったな?」  
『君には関係ない事だ』  
(カミやんの成長だけが、目的の全てじゃ無いって事か。……何を考えている、アレイスター)  
土御門は、アレイスターの考えを推測しようと、思考の海に沈み込んだ。  
アレイスターの目的は全てAIM拡散力場、虚数学区・五行機関に繋がる筈だ。今回も例外では無い。  
『巨乳御手』には、どんな意味が隠されているのか?  
これは感情を共鳴・増幅するものだ。男に効かないのは、女とは脳の造りが違うかららしい。  
それでは風斬氷華に対しては?……影響を与える確率が高い。  
それでは今の状況に彼女が加わるのか?……実体化出来るのだから可能だろう。  
今の状況が進めばどうなるか?……近い内に、カミやん二世の誕生かにゃー。それも大勢だぜい。  
風斬氷華は?  
(待てよ。……彼女は謂わば異界の者だ。そんな事が可能なのか?)  
異界の者と交わり子を成す事はある。想像妊娠による神の子などがそうだ。  
聖人とは、謂わばその余波を受けた亜種みたいなものだろう。  
このケースは、人間の女性が異界の者の子を産むが、その逆のケースはあるのか?  
そんな者に実際お目に掛かった事はないが、世界中に散らばり残る伝承は、枚挙に暇が無い。  
伝承には歪曲した物が多いが、全て偽者だとは限らない。  
(界が違う者同士による異種交配。それも今まで存在しえなかった界、AIM拡散力場の集合体である彼女  
との、………)  
「アレイスター……、お前はまさか、全く新しい人類を創り出すつもりか!?」  
『さてね。馬鹿馬鹿しい妄想を膨らませるな』  
アレイスターはそう告げると、回線を切断した。  
巨大なガラスの円筒の中で逆さに浮かぶ男は、うっすらと笑いながら一人呟いた。  
『ふ。馬鹿馬鹿しい妄想か。彼女の方は手順通り、順調に動き出した様だな。  
 さて、もう一つの鍵である彼女は、一体どんな幻想を見せてくれるのか』  
 
 
その頃、学園都市行きのチャーター機は、日本列島の上空を飛んでいた。  
ロシア成教『殲滅白書』のメンバー、サーシャ=クロイツェフは、窓寄りの座席に座って、右手に握り締めた金槌をシゲシゲと眺めていた。心なしか、その顔の表情はどこか嬉しそうに見えた。  
「第四の解答ですが、素晴らしい威力でした」  
そう呟くと、左手の指先で愛しそうに金槌の打撃面を撫でる。  
「補足説明しますと、あのワシリーサのクソ野郎が一撃で泡を吹くとは思いもしませんでした。  
 あの日、これが匠の鍛えた業物なのだと確信しました」  
サーシャは、あの日の事を思い出していた。  
 
「第一の質問ですが、私個人宛に学園都市から荷物が届く理由が見当たりません。これは罠でしょうか?」  
その日、サーシャは学園都市からの荷物だと言う、細長い段ボール箱を受け取っていた。  
首を傾げながら、宛名を見ると確かに自分の名前が記されている。  
サーシャは机に置いた段ボール箱を、魔術探査(スキャン)して調べてみたが感知出来る様な危険は見当たら  
なかった。  
「第一の解答ですが、開けてみない事には分かりません。補足説明しますと、科学サイドの罠が仕掛けられ  
 ている可能性がありますが、私には探知出来る手段が無いからです」  
サーシャはそう言いながらも、何処か楽しそうに開封し始めた。  
「更に補足説明しますと、ニコライ=トルストイ司教様以外から、私個人宛に荷物が届くなんて滅多に無い  
 事です。一体何かな?と、内心楽しみで仕方が無いと感じている訳ではありません」  
中から出て来たのは、上条達と似た様な物で、違うのは謝礼の品が40cm程の長方形の紙箱だった事だ。  
サーシャは手紙を読み終えると、少し呆れた。  
「第二の質問ですが、曲をモニターする事は分かりましたが、意味があるのかと考えます。  
 補足説明しますと、日本とロシアの距離を考えると、とても正気の沙汰とは思えません。  
 続けて第三の質問ですが、謝礼の品とは何でしょう?」  
色々と疑問もあるが、取り敢えず説明書を見ながら曲の試聴をする事にする。  
「第二の解答ですが、なかなか良い曲ですね。けれども、私に聞かせてどうするのでしょう?  
 補足説明しますと、曲の感想を言う為だけに、日本に行くのはありえない事です」  
そう呟きながら、謝礼の品が入った紙箱を手に取る。  
紙箱の割りにズッシリとした重量感を感じる。それもその筈で、紙箱を開けると木箱が入っていた。  
材質は分からないが、無垢の木肌が高級感を漂わせている。  
サーシャは少し戸惑いながら、木箱の蓋を開いて中身を確認してみた。  
中身も木箱に劣らず高級感を漂わせ、深い色合いのビロード生地が敷き詰められている。  
それに固定される様に、一本の金槌が納められていた。  
サーシャは、金槌を手に取ってみる。  
その握りはまるでサーシャの手の大きさに合わせたかの様にしっくりと馴染む。  
次いで、数度揺らして全体のバランスを図ってみた。  
今まで体験した事が無い程の絶妙なバランスと重量感に、サーシャの目が大きく見開かれた。  
「第三の解答ですが、一体何と表現して良いのか分かりません。  
 補足説明しますと、まるで無くしていた体の一部が戻って来た、その様に感じます」  
「第四の質問ですが、これを魔術強化すればどれだけの威力があるのでしょう?  
 補足説明しますと、居ても立っても居られません。早速、開始します」  
そう宣言すると、サーシャは思い付く限りの魔術強化を金槌に施し始めた。  
 
サーシャが金槌に施術を始めてかなりの時間が経った頃、サーシャの直接の上司であるワシリーサが、  
部屋にコッソリと忍び込んで来た。サーシャに気付かれない様に、細心の注意を払いながら、………。  
「(あらあら?サーシャちゃん。真剣なお顔なんかして、なーにしてんのかしらぁ?んんっー、そんな凛々  
  しいお顔もとってもキュートっ!これはまさに絶好のチャーンス到来、ってやつかしらぁー)」  
ワシリーサは、サーシャに気取られない様に背後に近付いた。  
そして、サーシャが大きくフーっと溜め息を付き、全身から力を抜いた瞬間、セクハラ攻撃を開始した。  
「サーシャちゃぁん♪」  
そう声を掛けると同時に、背後から腕を回して抱き締めると耳に息を吹き掛けながら囁いた。  
「そーんなに疲れたんならーマッサージしてあ・げ・る・わー。もー体のスミズミまで余すところなんか、  
 これっぽっちもないくらいブッギャアアア―――ッ!!!?」  
ワシリーサは、自分の腕の中から抜け出したサーシャが、振り向き様に工具を振るうのを眺めていた。  
サーシャの力では、自分の魔術障壁を破る事など出来ない。ダメージを喰らう事など絶対に無いのだ。  
この後どんなセクハラをしようかと色々考えていた時、側頭部に凄まじい衝撃を感じ意識が途切れた。  
 
サーシャは、突然セクハラ攻撃を仕掛けたワシリーサに、手元にあった強化したばかりの金槌を振るった。  
そして、ワシリーサが振り抜いた方向へピンポン玉の様に弾け飛ぶのを見て唖然としていた。  
宙を舞ったワシリーサは、壁に激突し、そのままズルズルと床に倒れ込む。  
その音を聞いて、サーシャは慌ててワシリーサの元へと駆け寄る。  
ワシリーサは床に仰向けに倒れ込み、口から泡を吹いて全身をピクピクと痙攣させていた。  
床に屈み込んでワシリーサの状態を調べたサーシャは、単に気絶しているだけだと結論付けた。  
スックと立ち上がると、右手に握った金槌とワシリーサを交互に見比べ、大きく一つ頷く。  
そして、机に引き返しロープを探し始める。  
その途中、金槌が入っていた木箱の蓋の裏に、折り畳まれた紙片が貼り付けられているのが目に入る。  
紙片を剥がし取り、広げて内容を確認してみる。  
そこには、次の事が書かれていた。  
『尚、今回、会場に参加して下さる貴女には、釘抜き、ノコギリを始とした、工具一式を進呈致します。  
 日本が生んだ伝統工芸、関の刀匠達が魂を込めて制作した至高の工具達。  
 市販の量産品のナマクラでは、決して味わう事が出来ないその素晴らしさを、  
 是非、この機会に手にして味わってみて下さい。かしこ』  
読み終えたサーシャは、紙片を元の状態に戻すと再びロープを探しだした。  
ようやくロープを見付けると、ワシリーサの元へ行き、その体を俯けに転がす。  
両手両足を背中の上に一纏めに縛り上げると、何処に吊るそうかと天井を見上げながら、ポツリと呟く。  
「第二の解答ですが、私は必ず日本に行き、工具一式を手に入れてみせます」  
 
サーシャは、あの日の回想を終えると窓の外を眺めた。  
目的地が近付いて来たのか、飛行機は高度を下げ雲海の中に入って雲しか見えない。  
瞼を閉じ、工具一式の事を思い浮かべる。  
もうすぐだ、この熱い鼓動を受け止め、静めてくれる場所に辿り着くのは。  
どの様な素晴らしい出会いが待っているのだろう。  
雲を突き抜けたのか、閉じた瞼に眩しい光を感じた。  
そっと瞼を開き、遠くに見える景色を瞳に刻む。  
学園都市。  
サーシャは、拘束服を押し上げる大きな胸に手を当てた。  
 
 
 
    Fine.  
 
 

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