「とうまは『ほら、シャキっとしなさい』って言ってくれる人がいいんだって」
インデックスが『どういう意味だか分かる?』という目で美琴を見る。
しかし美琴も―非常に珍しいことだが―きょとんとして首を傾げる。
(ああ!! いいですわ! そんなお姉様も可愛らしくてもうよだれが止まりませんの!)
うっとりしていた白井がはっとする。
よだれをハンカチで拭うと、どこからともなくデジカメを取り出して構える。
すると美琴が素早く反応して、白井の額に手刀を叩き込む。
ついでにデジカメも取り上げて中のデータを確認する。
「……で、黒子はどういう意味か分かる?」
「うう……あのチビが言っているのは、あの殿方の女性の好みですわ」
「好み? 『シャキッとしろー』って言われるのがそんなにいいの?」
「背中を押して支えてくれるような女性――お姉様のような方が
『好み』というわけですわ」
「……えっ!? そ、そうなの? そうなんだ。ど…どうしよう……」
「もちろんお姉様のことではなく一般的に言う『姉』のようなという意味で
――って頬を赤らめて何をお考えですの!?
あの殿方の好みに合うから何ですのお姉様!!」
「あ、あいつは私がこ…『好み』なのね。ふ、ふうん。そうにゃのねー」
「嬉しさのあまり棒読みになられてついには私の声も届きませんの!?」
ふにゃー、と美琴の思考が遠い世界へ旅立つ。
白井が夕陽に向かって『あの類人猿がぁぁあああ!!』と吼える。
お腹減ったから帰るね、とインデックスがてくてく歩き出す。
この日。顔のにやけが止まらない美琴が常盤台女子寮で多々目撃される。
白井が大量の五寸釘と藁人形を購入したのは翌日のことである。
……続かない。