「とうま」  
「なんだ?」  
「もし……もしもの話だよ」  
「どんな話だ」  
 言ってみろよ、と上条は促す。  
「私が、とうまのことを忘れちゃったらどうする?」  
「……記憶が消えるとか、そういう意味か」  
 インデックスが小さく頷く。  
「私は一年以上前のことを何も覚えてないんだよ。  
 完全記憶能力があって、10万3000冊の魔道書を記憶してても  
 他の事はほとんど覚えていないんだよ」  
「……だから?」  
「もしも、突然記憶が消えちゃったら……私がとうまのこと忘れちゃったらどうする?」  
 
 
 それは、二人の立場を置き換えてみれば分かることだ。  
 
 
 もしも、インデックスが記憶を失ったとき。  
 その少女の目に、上条当麻という存在はどう映るだろう。  
『私達って、知り合いかな?』  
 そんな言葉を真っ白な少女が口にして。  
『私、学生寮で暮らしてたの?』  
 成り行きの説明に、無垢な声で問い返して。  
『ごめんね』  
 親しみを込めて、どれだけ名前を呼んでも届かなくて。  
『かみじょうとうまって、誰?』  
 そんな残酷な言葉がすべてを壊す。  
 
 しかし、インデックスという少女がすべてを忘れてしまっても。  
 少女の心は消えることはない。  
 インデックスの心は、インデックスという少女のままだろう。  
 以前と同じように一緒に暮らしていけるなら。  
 上条当麻は――目の前のインデックスを受け入れて接するだろう。  
 二人の生活も今までとそう変わらないだろう。  
 たぶん、同じように話しかけて。  
 お腹を空かした少女に食事を用意して。  
 何気なく触れ合って。  
 その一つ一つの中にある優しさが、少女に重く圧し掛かる。  
 上条に分からないはずがない。  
 
 
 だが。  
 仮にそうだとしても、上条当麻の答えは一つだ。  
 
 
「――どうもしないんじゃないか」  
「同じ、かな。……今と、変わらないかな」  
「ああ。『もし』なんて仮の話は好きじゃないけど、きっと同じだ」  
 同じだと、信じ続ける。  
 上条にはそれしかできないだろう。  
 インデックスにとってそれがどれだけの重荷になろうとも。  
 
 
 今、目の前にいる少女が上条を信じているように。  
 『君』は『君』だと信じ続けたい。  
 
 
 それが救いになるか、上条にはまだ分からない。  
 それでも、いつの日か上条にも向き合うときが来る。  
 あの真夏の小さな嘘と。  
 もしかしたら、この少女はすでに――  
「とうま、今日のご飯はなんなのかな」  
 もしかしたら、そう不安に思わなくてもいいのかもしれない。  
「さあ、なんでしょう。帰ってからのお楽しみだ」  
 上条当麻は、今もインデックスと二人一緒にいられているのだから。  
 
 

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