雲一つない青空が浮かぶ日だった。
とある学園都市の通りを、シスター(注・貧乳少女、ここでは食欲を抑えないものだけを指す)と並んで男が歩いていた。
男はTシャツに長ズボンというラフな格好をしている。先ほど貯金を下ろしたばかりのサイフは、あるはずの厚みを失っていた。
しばらく男と歩いていたシスターは、視界にクレープ屋が入ってくると、首をぐるんと横に向け男に喋りかけた。
「ねぇねぇとうま」
「……ナンデスカ、インデックスサン」
当麻と呼ばれた男が、ぐったりとしながら答えた。
「やっぱり食後のデザートは必要だよね。あ、私はアイスクリームでも構わないよ?」
「先ほどファミレスで4000円分を召し上がっておいて何おっしゃいますか!?
こんなことなら家で済ませればよかったぁあああああ!!」
頭を抱える当麻に、インデックスと呼ばれた少女が答えた。
「まぁまぁとうま、食事は悪いことじゃないんだよ?
それに"食えば五万の金がトぶ"って言うでしょ」
「……"会えば五厘の損がゆく"?」
「そうそれ」
「まだ食う気なんですかこのお嬢さんはっ!?」
結局、少女の手にクレープが握られることになった。
「ふむふむ、やはり新しい地には発見があるものだね。 一度遠くへぶらりと食べ歩く必要があるのかも」
「インデックスさーん? ポケットを叩けばお金が出てくるもんじゃないのですよー?」
「びんぼーしょー」
「アンタが言いますか! "働かざるもの食うべからず" くらい覚えてね!?」
いつかお菓子の家を食べたいとか本気で言い出しそうな少女は、徐々にその幻想を膨らましていく。
このときばかりは、上条当麻の、すべての異能の力を―たとえそれが神の奇跡と呼ばれるものであっても
―無効にする右手、イマジンブレイカー(注・イマジンブレイカーとは幻想殺し、この場合は無力)はただサイフの厚みを確認するしかなかった