「いいかねーちん! カミやんへの借りは最早並大抵の侘びや感謝じゃかえしきれないんだにゃー!」  
ある日、神裂が仕事を終え土御門の部屋に伺った時の会話である。  
玄関で顔を合わせるなり土御門が吠える。戸はあけっぱなしだ。  
「なんですかいきなり。大声をだすのならせめて部屋に上がってからでも」  
「そもそもねーちんは借りを返す気があるんですか!?」  
神裂の声を無視し話を進める土御門  
「貴様がどうやって借りをかえしましょーなんぞ言っている間にカミやんは他の子と進展を遂げているんだぜい!」  
「はぁ……進展ですか」  
「なんだその他人事のような態度はぁ!」  
そんな事を言われてもと愚痴る神裂。  
対して土御門はそんなねーちんにプンプンしていた。  
「このままではかみやんは近い将来、大量に立てたフラグのうちのどれかを回収してしまう。  
 では想像してみましょう、自分以外の女とカミやんがエロイチャしているところを」  
神裂さん、言われたとおり想像。  
茶髪ショートの中学生が腕を組んで楽しそうに買い物をしている姿が浮かんだ。  
 
いらっときた。かなりいらっときた。  
 
「あせっただろう、ねーちんがカミやんに好意を抱いているのはわかっている。  
 そこでこの親切な俺は、ねーちんに機会を与えるぜよ」  
戸を開けっ放しにした玄関に神裂を放置し、部屋の奥に戻る土御門。  
放置されて呆然とするねーちん。  
「好意ですか」  
隣の部屋の住人の部屋を見る。  
 
……伺ってみましょうか。  
特に用事もないのだが、無性に彼の顔が見たくなった。  
というか今の土御門の大声に反応しないところを考えるに不在だろうか。  
そうだ、もしいなければここで待ち食事を作ってあげるというのはどうだろう。  
すでにワクワク気分だった。  
 
「ねーちん、これは俺からのプレゼントだにゃ」  
「……これは?」  
いつのまにか目の前にいた土御門が神裂に玉手箱のような箱を持たせた。  
「カミやんに関係することで困ったときに開けるといいぜよ」  
「いや、これの中身はなんですかと私は訊いているのですが」  
「それではグッドラック。あ、ちなみにカミやんは今在宅中ぜよ」  
「ちょ、話をききなさい!」  
そのまま部屋から追い出される神裂。  
扉をバタンと閉じられポツンと一人になる。  
「……と、とりあえず挨拶だけでもしておきますか、そう挨拶だけでも」  
顔を赤くして玉手箱を片手に隣の部屋に立つ。  
そのままインターフォンを押す。  
ドキドキと胸が高鳴る。  
そのまま数秒たった後、部屋の中から足音が聞こえ扉が開かれる。  
「はいは〜い、って神裂さんじゃないですか」  
彼女が訪れるのは珍しいのか、素直に驚く上条さん。  
 
「その、近くを寄ったので挨拶にと」  
極めて冷静な態度で挨拶をするが内心乙女しているねーちん。  
「あ〜、タイミング悪かったな。インデックスなら今ちょっと出かけてるんだ」  
「あ、いえ。あの子にではなく貴方に合いに来たのですが」  
「……俺なんかのためにわざわざ寄ってくれるなんて……上条さん不覚にもちょっと感動した」  
上条当麻、父親いわく昔は彼自身の不幸体質のせいで友達ができなかったらしい。  
それを聞かされていた彼は今の自分は良い友人がいるんだなぁと感涙。  
「そうだ神裂、ちょっと寄っていけよ。ケーキでもご馳走するぞ」  
気をよくした当麻はニコニコ顔で神裂を部屋に誘う。  
彼女も断るわけがなく、  
「それではお邪魔させていただきます」  
勤めて冷静だが内心は  
 
ぃよしっ!  
 
と似合わないガッツポーズをとっていた。  
 
突然だが神裂はさっそく困っていた。  
ケーキをご馳走になり、その礼に当麻にマッサージをしていた。  
それも終わり積もるほどでもない会話を1時間ほどしたあたりだろうか、  
すでに彼女のネタはもうなかった。もともと二人とも饒舌ではない。  
普通ならこれで帰宅するところだが、もうちょっとここにいたかった。乙女心である。  
しかしもう話題もない、さてどうするかというところで自分の横に置いた玉手箱に気づく。  
そうだ、土御門は言っていた。困った時に開けろと。今まさに開け時ではないか。  
早速玉手箱を膝の上において紐を解き蓋を開ける。  
……即座に蓋を閉じた。  
「ん?その箱何がはいってんだ?」  
「いえ、何も」  
入っていたのはコンドームと一冊の本だった。  
とりあえず当麻に気づかれないように再び開けて本だけ取り出した。  
『たまごクラブ』  
唖然とする。  
「何を見てるんだ……え、あ、いや。えぇ!?」  
体を乗り出して取り出したものを覗かれた。  
しかも盛大に顔を赤くして勘違いをしている。  
「神裂さん、おめでただったんですね。上条さん気づきませんでしたよ」  
「違うんです!これはあの馬鹿から渡された本で私が買ったものでは!」  
「あの馬鹿って土御門のことか?そっか、アイツは前から気づいてたって事か〜……」  
俺って鈍感だな〜と頭をボリボリ掻く上条当麻。  
「ですから貴方は根本から勘違いしていますっ。これを見てください!」  
慌てて玉手箱から残っていたコンドームを机に叩きつける。  
すでに恥もかなぐり捨てている。  
「コンドーム?妊娠してるのに?」  
「ですから妊娠などしていないと……ちなみに勘違いされては困るので言いますが、これも土御門から渡されたものです」  
「そっか。上条さんの勘違いだったんですね。良かった良かった」  
当麻の独り言にピクリと反応する。  
 
「え?あれ、いや。何がよかったんだろう?」  
自分の言ったことに自覚がないのか首をかしげる。  
「もしかして、私が妊娠していなかったことがですか?」  
神裂の問いに答えかねる当麻。  
「多分そういう意味で言ったのだと思います……」  
自分でも自覚がないので自身なさげだ。  
対して神裂は顔を蒸気させつつ更に質問を出す。  
「それはつまり私に対して独占欲があったと解釈しても?」  
苦い顔をしてうつむく当麻。  
「黙っていてはわかりませんよ、正直に言いなさい」  
ほら早く。どうしたのです、さぁ。  
と数分間まくし立てられて上条さん噴火。  
「――――うるっせえんだよ、ド素人が!!」  
「え、ちょ」  
「そうですよ独占欲感じましたよ!ジェラシーだよ!けどな、お前だって非があるんだぜ!  
 そんなセックスアピールしまくったウェスタンガールしやがって。この痴女!この痴女!」  
「この服装はそんなセックスアピールを意識してたわけでは……というか痴女とは失礼な」  
「お前がどう考えてようが俺からしたらそうみえるんですよ!  
 16歳思春期ど真ん中の上条さんの前でそんな衣装で現れやがって、  
 もう私はリビドーの限界なのですよ!」  
言いたいことを言い切った彼は荒れた呼吸で肩を揺らす。ねーちんポカーン。  
「神裂、今日は帰るんだ。一緒にいると八つ当たりしそうだしさ」  
「その、最後に聞かせて欲しいことが」  
「まだあんのかよ」  
え〜、と露骨に顔をしかめる。  
「貴方は私に対して独占欲があるというのはわかりましたが、それは愛情からでしょうか?」  
「え〜……」  
これを答えならねばならないのだろうか。  
こういう質問は一番困る。  
付き合ってもいない好きな子に『私の事好き?』と流れで言われるようなものだ。  
これで素直に答えたときに断られた時の悲惨さといったらない。  
「そうだよ、上条さんは貴方に惚れてますよ」  
悪いかと逆切れする。  
しかし神裂からの返答はない。盛大に気まずい。  
上条、へタこいた気がしなくもない。  
「不幸だ……」  
もう振られた気である。  
「上条当麻、私は知っての通り堅物です。それに私自身が責任ある立場に置かれています」  
「ああ、知ってるよ」  
「仮に私達が交際することになったとします。  
 私はきっと貴方に心労疲労を強いる事になるでしょう。それでも貴方は笑っていられますか?」  
雲行きが若干晴れに向かっているような気がする。  
当麻はそれに気づかずナチュラルに返答。  
 
「互いに好きで付き合ってるんだ。そんな幸せな時の苦労なんて殆ど苦痛に感じないんじゃないか」  
実際機嫌が最高に良いときは多少の不幸なんて笑って済ませれる。  
しょっちゅう不幸に苛まれる彼こそその精神状態を理解していた。  
「しかし。その幸せな時が永遠に続くと、貴方は確信できるのですか?」  
「そりゃどっちかが死んじゃったりしたら壊れちまう幸せだと思うけど。  
 けどな、俺は振られても死別したりしても絶対に後悔しないと思うぞ」  
「その理由は?」  
「自分で選んだ選択肢だからにきまってんだろ」  
当然といわんばかりに即答。  
気取ったわけでもなく、考えて選んだ答えでもない完全な飾りのない素の答えだ。  
神裂はその迷いのなさに言葉を詰まらせる。  
「神裂さん、その。この状態で沈黙は大変気まずいのですが」  
困ったようにオドオドする当麻の姿をみてつい笑いがこぼれてしまう。  
「上条当麻、私とお付き合いをしていただきませんか?」  
すでに互いにためらいはなかった。  
「俺の不幸体質は半端じゃありませんよ?」  
「私の幸運体質も半端ではありません」  
二人は笑って握手した。  
 
 
 
「で、このコンドームどうするの?」  
「……一応もらっておきます」  
「使う予定は?」  
「もう少ししたら、ですかね」  
二人とも他人事のように言うが内心ドキドキであった。  
 
「それでは、あの子もそろそろ帰ってくるでしょうし私はこれで」  
「ああ。次はいつ来れそうなんだ?」  
「今はわかりませんが、予定があいたら連絡します。では」  
「じゃあな、っておうぁ!」  
靴を履いている神裂に歩み寄ろうとした瞬間足をつって転びかける上条。  
だが床までは倒れず、痛みの代わりにポヨンとした感触が顔全体に広がった。  
おっぱいで受け止めてもらったのだ。おっぱいで。  
「全く、気をつけてください。これでは離れている間貴方が心配で仕方がありません」  
「できるだけ怪我しないように頑張ります」  
「そうしてください。しかしこれは、私としてはついてるというべきか……」  
足がつってこけたのは不幸だが、神裂にとっての幸で逆にラッキースケベ状態となった。  
災い転じて福となす。言葉の使い方が違うが、そんな言葉を思い出した上条当麻であった。  
 

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