僕の名前は「スフィンクス」……らしい。  
よくは覚えていないけどお母さんはもう少し違った名前だったんだけど、僕を拾ってくれた白い飼い主さんが付けてくれた名前だもん。まぁ満足してる。  
ツンツン頭の飼い主さんは違う名前の方がいいと言ってくれてたけど変えてはくれなかった。  
飼い主二人の力関係が分かるな。うん。  
 
どうやら今日は僕独りで留守番らしい。  
「小萌のところに行って来るから良い子にしてるんだよ。スフィンクス」  
と白い飼い主さんが言うから  
「行ってらっしゃい」と言ったんだけど、「う〜ん。一緒には行けないんだって。ゴメンネ、スフィンクス」と言う事らしい。中々言葉は伝わらない様だ。  
僕はある程度分かるのに不便だね、飼い主さん。  
 
 
猫である僕は特にする事も無いし遊び相手もいない。この前せっかく黒くてちょろちょろ動く友達を見付けたんだけどツンツンの方が「ゴキブリめー!」と言って追い払ってしまった。  
「やめてくださーい!」って言ったんだけど「餌なら後でやるからあんなの喰うんじゃねぇ」ときた。  
言葉の壁は思ったより厚い様だ。僕には友達を食べる習性は無いんだけどな。  
もう今日は寝るしかないか。うん、どうやら窓際は心地良さそうだし、ぐっすり出来そうだ。  
 
 
せっかくウトウトとしてきた所だったのに、ピンポーン!と何かが鳴った。知ってるよ。コレは呼び鈴と云うピポピポピポピポーンンンン!!!……随分と押し捲る人間も居るものだ。  
しかもこの人間と来たら、「ちょっと居ないのーー!!」と言ってズンズンと部屋に入って来たじゃないか。  
「まったく。せっかく私が尋ねて来てあげたってのに留守ってどういう事よ!」  
……本当に人間の言葉は難しい。  
「突然押し入ってきてソレは無いんじゃないかな」と注意はしようと思う。猫として言う事は言うべきだ。  
「あら?お留守番はアナタ独り?ふふ、いらっしゃい」  
う〜ん。どうも「ニャ〜」だけでは意志の疎通は難しいな〜。でもなんだろう……この人ってちょっと…てかかなり傍に居ずらい!  
 
思わず逃げ出しちゃったけど……「……ごめんね」てなんかこの人がしょんぼりしてる。  
きっと僕達猫の事、この人って凄く好きなんだと思う。でもなんでだろう、この人の周りって凄く居ずらい。  
「ごめんなさい」って言ってるのに「ほら!」ってなんか色々投げてくれる。僕と遊んでくれようとしてるんだね。  
……よし!  
「いいよ。僕は大丈夫だから」って言っても通じないだろうけど、僕はこの人に抱かれ様と思って膝に乗っかってあげた。  
「!あんた」ってビックリしてたけど「いいよ」って言ったら微笑んで優しく抱きかかえてくれた。やっぱりなんか変だけど、すごく嬉しそうにしてくれてるから、我慢しよう。  
 
「ほんとは辛い癖に、あんたもあんたの飼い主と一緒ね…ほんと、バカなんだから…」  
どっちの飼い主だろう?でもバカ呼ばわりはなんともな〜。僕は白い飼い主さんの事はすっごく好きだからツンツンの方と思っておこうっと。  
 
「アンタの飼い主ってね?すっごくバカで、訳分かんなくて、無自覚で無意識で、ほんと!はた迷惑な奴なんだけどさ」  
うん。奴って事はオスだよね。やっぱりあのツンツンはバカだったのか。  
「でもさぁ…やっぱり私は、アイツの事が好きみたい。ほんと、こんなのって全然私らしくないんだけどさ」  
う〜ん。どうにもこの人の言ってる事は難しいんだけど、どうやらツンツンの事が好きなんだね。でもだったら直接言えばいいのに。  
窓向いてるから気が付かないのかな?ツンツンの飼い主さん、さっき帰ってきてるのに。  
 
「いや、別にお前らしく無いって事もないんじゃないか?誰の事かは分かりませんが」  
「ひゃひぇ!?」  
 
いや、ツンツンの飼い主さん?「だから貴方の話をしてるんですよ?」て言って上げてるのに「よ!ただいま、スフィンクス」……うん。この人はバカだ。  
 
「ああああああああんた何時から居居居居居居たのよ!!」  
「ん?でもさぁ…やっぱり、位からかな?ってどうしたんだ?俺に何か用ですか、御坂さん?」  
 
うん。僕もビックリなくらい真っ赤になっちゃったね…あれ?……って!なんかビリビリってーーーー!!  
 
「こんのぶぁぁぁかあああああ!!!」  
 
 
生きてるって素晴らしい。何やら部屋は焦げ臭くなったけどどうやら僕は生きてるみたいだ。  
あの人はビリビリと覚えておこう。うん。これからは決して抱かれないようにしよう。  
 
「ただいま〜。とうま〜お腹空いたかも〜」  
「おかえり。白い飼い主さん」て出迎えたら「うん!ただいま!スフィンクス」  
こうして偶に意志の疎通が出来てる感じがするのが、この白い飼い主さんの不思議なところだ。  
でもゴメンネ。さっきのビリビリさんの所為で何時も食べ物を入れている白い箱が壊れたとツンツンが言ってたんだ。  
 
「と〜〜う〜〜ま〜〜〜〜〜!!お腹空いたお腹空いたお腹空いた〜〜〜〜!!ガブリィ!!」  
「僕だって空いたよ〜〜〜〜!!ガブリィ!!」  
 
二人でツンツンにかじり付いたら「不幸だ〜〜〜〜!!」て叫んでた。  
 
どうにも僕は賑やかな場所に拾われて来てしまったみたいだけど…楽しいよ?毎日が。  
さぁ、明日は何があるのやら。  
 

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