平日の朝、上条家。  
「んじゃ、いってくるわ」  
黒い学生鞄片手に言う上条当麻。  
「いってらっしゃい、とうま」  
挨拶を返し、見送るインデックス。  
―――ガタン  
金属製のドアが閉じる音が狭い部屋に響く。  
(早く帰ってきてほしいかも……)  
彼女は閉まったドアを見つめ、内心そう付け加えた。  
「う〜ん、何しようかなぁ。ねぇ、スフィンクス?」  
と、インデックスはいつの間にか隣に来ていた猫に尋ねてみる。  
が、猫は直ぐに踵を返し日の当たる窓辺へと移動してしまった。  
「なんだよぉ……」  
つれない猫の後姿に向かって、つまらなそうに呟く。  
これからインデックスは、上条が学校から帰るまで時間を一人で過ごさなければならない。  
(どうしようかな?)  
何をするか考えつつ、ベッドに腰を下ろすインデックス。  
(スフィンクスは……)  
見れば、猫はひなたぼっこをしながら昼寝をしていた。  
その姿を見て、自分も、コテン、とベッドの上に身を倒す。  
「とうま……」  
彼女は枕に顔を埋め、そのまま大きく深呼吸する。  
微かに、ほんの微かに残る上条の匂いを、枕の奥深くから感じる。  
『んん……』  
枕越しに、くぐもった甘い声をもらす。  
(こんなコト……いけないのに……)  
頭でそう考えても、彼女は自らを慰める行為をやめる事はできなかった。  
 
「はぁ…、はぁ…はぁ…」  
呼吸を荒くし、濡れた下半身を丸出しにした少女が、ベッドでぐったりとしている。  
(とうま……)  
白い霞掛かる頭で、漠然と一人の少年を思うインデックス。  
いつからだったろうか、彼の事を思って自らを慰めたのは、  
初めて自慰をしたその時から、彼に隠れ、中毒のように行為に耽っている。  
「片付けないと……」  
自らの手と丸裸の下半身を見てそう呟くインデックス。  
彼女は洗面所に行って手を洗い、ティッシュを濡らして、それを自分の秘所に宛がった。  
「んっ……っ…」  
下唇をかみ締め、少し鼻にかかったような声をもらす。  
「…っ…フ、ん…」  
(こんなこと、してたら…、また、ぬれちゃう、よぅ……)  
小さな身体を震わせ、自らの濡れた秘所を拭うインデックス。  
彼女は、かなり敏感な体質で、未だ絶頂後の余韻が残っているようだ。  
「んぅ……っ、ん…?」  
ふと開け放たれていた風呂場に視線が行く。  
すると、空の浴槽には一枚の毛布が乱雑に置かれていた。  
(とうまの毛布……)  
「だ、め…っ、ん…」  
ビクリ、と身体を震わせるインデックス。毛布を見て条件反射的に考えた事を否定する。  
「…ぁぅ、ぅあ、…ふ、んんっ…」  
もはや、それは喘ぎ声だった。  
股を拭う為に水で濡らしたティッシュは、彼女の秘所でヌメリ気を帯び、更に濡れていた。  
「とうまぁ」  
フラフラと浴槽に入り、毛布を抱き寄せるインデックス。  
(とうまのにおい……)  
顔に付けず近くで嗅ぐだけで、口内に唾液が溢れ思考が蕩けた。  
 
インデックスが本日二回目の絶頂を迎えるのに、そう時間は掛からなかった。  
「ひっ!イっ、あっ、あああああっ!」  
甲高い声を上げ、身体を強張らせる。  
「はぁ…ぁっ、はぁ、くっ…ぅぅ…、はぁ…」  
急に脱力し、余韻からか甘い声をもらし、小さな身体を時折跳ねさせるインデックス。  
(ま、た…、しちゃっ、た……)  
と、インデックスは朦朧とする意識で思った。  
額には珠の汗が浮かび、全身が上気している。  
彼女は自分でも気付かぬ内に、純白の修道服を脱いでいたようだ。  
涼しげな光を放つ銀髪も、汗で湿った身体に張り付いていた。  
「はぁ…はぁ…はぁ…」  
まだ息は荒いが幾分か落ち着きを取り戻したインデックス。  
(でよ……)  
下着と修道服を持ち、だるい身体と頭を動かし風呂場から出た。  
「!」  
インデックスは洗面所備え付けの鏡に映った自分の姿に驚いた。  
(うう……これじゃ変態なんだよ……)  
丸裸に、頭に白いベールだけ被っており、おまけに股間や内腿は濡れている。  
「ううー……」  
羞恥に真っ赤になるインデックス。  
彼女は逃げるように洗面所を後にしようとした。が、しかし、  
「っ!!」  
(だ、だめ!だめなんだよっ!それだけは――)  
インデックスは発見してしまったのだ。洗濯籠に入れられた上条の下着を――  
 
「イっ!ひぃっ!ああっ!ぅあああああ〜〜っ!!」  
殆ど悲鳴に近い声を上げ、本日三回目の絶頂を迎えた。  
「あぅっ、はーっ、はーっ、んんっ」  
インデックスは、整った眉をたわめ、小さな唇を戦慄かせ、辛そうに息をつく。  
上条の下着は、彼女の秘所に宛がわれたままである。  
(さんかいも……)  
日に三回もするのは初めてだった。  
(かたづけないと……)  
彼女にとっては相当な体力を使った為か、急に眠気が襲ってきた。  
(か、たづけ……)  
指一本動かせない。  
「すぅ……」  
インデックスから静かな寝息が聞こえてきた。  
彼女は結局、素っ裸のままベッドの上で大の字になって寝てしまった。  
唯一の救いは、びしょ濡れの秘所が下着で隠れているという事だろう。  
例えそれが、隠しておきたい相手の下着だとしても。  
その下着がびしょ濡れになっていたとしても。  
 
上条は、またしても、己の預かり知らぬ所で、一人の少女に救いをもたらしたのだ。  
 
 

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