学園都市の一角には、窓のないビルがある。その中にいるのは、学園都市統括理事長、アレイスター。  
巨大なガラス容器の中で逆さまに浮かぶ彼は、珍しくため息をついていた。  
「全く、あのおてんばめ。この私ですら読めない行動をしてくれる」  
そんなことを言って、画面に映し出される女性を見ていた  
街を歩くのはローラ=スチュアート。イギリス清教のトップであるアークビショップだ  
その美貌と背中に束ねられた長く美しい髪に、誰もが振り返る  
「日本も良き所ね。日本語を覚えたりて正解だったわ」  
しかし『日本語』という言葉は暗い。そもそもローラが日本に来た理由の一つが、『自分の日本語は変ではない』と言うことを証明するためなのだ  
(おのれー!ステイルもアレイスターも、さに私の日本語を変だ馬鹿だと言いおってからにー)  
怒りを心で留めつつも、コンビニの前に立ち止まるローラ  
「ちょうど小腹も空きたる所。ついでに私の日本語の正しさを見せつけたるわよ」  
そう言ってコンビニへ入っていった  
 
その日、上条はコンビニへ買い物に来ていた。インデックスと言う名の災害に、冷蔵庫内が壊滅していたからだ。  
「ったく、インデックスのやつ、勝手過ぎるんだよ。食うもん無くなったら無くなったで小萌センセーのとこ行くしよー」  
そんな独り言をブツブツ言いながら食べ物をカゴに入れていく。  
「こんなもんか。当分は小萌センセーのとこに居てもらう予定だから足りるよな」  
そしてレジへ並ぶ。考え事をしていたため、前にいる不思議な女性に気付くのに遅れてしまう。  
 
なにやらレジが騒がしいようだ。  
「だから、なにゆえドルが使えぬと?」  
「ですからお客様、当店ではドル紙幣は扱っておりません」  
「ええい!そんな言い訳を訊くと思うてか!」  
文句を言っているのはローラだ。ポンドではないところを見ると、多少なりとも配慮はしているようだ。  
上条はかわいそうな店員だなとか思いつつ、関わってはいけないと離脱を試みる。  
が、ローラは辺りを見回している。いかにも助けを求めている素振りだ。すると彼女は上条を見て目を止める。  
彼女は上条の顔を知っていたらしく、気付くやいなや手を掴んだ。上条はビクッと反応する  
「いけなし!こんな仕打ちを受けたる私を捨て置きけると!?」  
両手を握り、悲痛の眼差し(上目遣い)を送るローラ。上条は半歩下がる。  
「お、俺にどうしろと?」  
「後で払いたるから買って欲しいにつきよ」  
上条は頑張ったが、結局断れなかった。  
「だーちくしょー」  
あげくの果てにはローラの分も持って歩く羽目に陥ってしまう  
「あのー、あなたの家はどこですか?コレはいつまで持てばいいのでしょう」  
「何を言いたりけるの?あなたの家までに決まりているじゃない。上条当麻君。」  
上条は二つのことに驚く。一つは名前を知っていたこと。もう一つは家に来ること。  
「ちょ、ちょっと待ってください!なんで俺の家に!?それになんで俺の名前を!?」  
「あら、ステイルや神裂から私のことは聞きてない?」  
「あいつらの知り合い?と言うことは魔術サイドの人間?」  
少し警戒する上条。対してローラは無防備だ  
「安心するにつきよ。私はイギリス清教たりしだから、貴方たちの味方でありけるのよ」  
「うーん、そう言えばロンドンで見たような・・・」  
微妙に記憶が薄れている上条だが、少しずつ思い出す  
 
そんな会話をしつつ歩く二人。結局、寮についてしまった。  
少し小走りになり、先に部屋に入るローラ  
「なんと狭き部屋!」  
「あのですねー、人の部屋に上がって最初の台詞がそれ?」  
ローラはハッとしたように  
「いや、つい本音が出たりしけるわ。いけなし、いけなし」  
上条は買い物袋を机に置きながら、そして触れてはいけないことに触れてしまう。  
「あのーつかぬことをお聞きしますが、その日本語は変じゃないですか?」  
ビギリッとローラのこめかみの血管が浮き上がる。  
もはや現地の人間にまで言われてしまい、完全に弁明できなくなってしまったのだ。  
もちろん、その怒りは上条へは向いていない。どこにいるやも知れぬ馬鹿を思い出しているからだ。  
そして俯きながら、これは何にせよ土御門が悪いのだとかブツブツ言い始める  
「あのー」  
「黙りていろ!おのれ土御門!ついに日本人にまで言われてしもうたわ」  
ローラの髪が光る。物凄く光る。  
これはまずい!と上条は悟る。  
「魔術も暴走すんのかよー!!」  
次の瞬間、輝きが更に増す。と同時に、上条の右手がローラの髪へ伸びる。  
そして右手が触れた途端、輝きが無くなる。もちろんそれに焦るのはローラだ  
「馬鹿な!何が起きたりしけるの!?」  
ローラは幻想殺しを知ってはいるが、怒りで周りが見えなくなっていたのだ  
「あぶねーあぶねー」  
「そうか!その右手。私の力まで消したるとは・・・」  
「消さなきゃ俺が消えてましたけどね」  
げんなりする上条。そこへ空気の読めない馬鹿の声が聞こえてくる  
「カミやーん!さっきの光はなんだったんだにゃー?」  
となりのベランダから首だけ出す土御門。ローラと目が合う。殺意が立ち込める室内。  
「にゃー?ローラ?」  
 
ニヤッとローラの口が動く。やっと会えた仇を見る様に、歓喜に満ちる  
「ここで会いたりしは100年目!死にていろー!土御門ー!」  
上条は真っ青になる  
「ぎゃー!部屋で暴れるなー!」  
後ろからローラを羽交い締めにする上条。  
「何をする!離せ!この恨み!土御門で晴らしたらねばならぬのじゃー!」  
土御門は、ローラの怒りが自分に向いていると悟ると  
「なんかヤバそうなんで逃げるぜい!後は頼んだカミやん!」  
そう言ってベランダから飛び降りる。  
7階でありながら飛び降りる度胸はやはりプロである。  
とは言え、流石に地上まで飛び降りれるはずもなく、下のベランダ、そのまた下のベランダへ降りつつ進んでいく  
「ええい!離せ!」  
「誰が離すか!魔術師が暴れたらロクなことがないんだよ!」  
そう、絶対にダメだと記憶を失う前の上条が告げている  
そうこうしているうちにベッドに倒れ込む二人。そんなことも気にせず、上条は馬乗りで押さえ付ける。  
しかしローラはその事態を把握する  
「な、ななな何を!?」  
顔を真っ赤にするローラ。首だけ左右に振りつつ、やめろと言わんばかりに必死に叫ぶ  
「離せ!離すのじゃ!」  
「だから暴れるなよ!」  
ますます力が強くなる上条。魔術が使えないただの女になってしまったローラは涙ぐむ。  
その瞬間全ての力を抜くと、上条を見つめて  
「やめ・・・て・・・」  
と言った。負けを認めてしまったのだ  
 
上条はその言葉にハッとして、ローラの上から飛び退く  
「あ、その・・・すいません・・・」  
ローラはベッドで仰向けのまま動かない。  
そう、恐かった。  
自分の思い通りにならないことは初めてだった。  
支配される恐さを思い知った。  
目に涙をためながら放心状態になる  
「あ・・・ぁ・・・」  
心配した上条は、やはり鈍感なので  
「だ、大丈夫ですか?」  
そう言って覗き込んでしまう  
「ひっ!」  
ローラは掛け布団を体に巻いて、ベッドの隅へ逃げる。  
上条は物凄くヤバい雰囲気に変な汗が出てくる。  
ここは話をすり替えるしかないと思い  
「じゃ、じゃあご飯作ってきますんで・・・」  
キッチンへ避難した上条。  
適当に晩飯を作り、コトッと机に皿を置いていく  
「ど、どうぞ・・・」  
食事を勧めるも、なかなかベッドの隅から動かないローラ。  
ごめんねとは謝ってくるので、自分にも非があるとは思っているらしい。  
上条も責任の半分は自覚しているようで  
「いや、さっきのは俺が悪かったんだし・・・」  
そんな言葉に少し調子を戻して、彼女もベッドから少しずつ動き出す  
その時、上条は皿を並べるために少しばかり移動していたのだが、床まで伸びたローラの長い髪を踏みそうになり、慌てて足をあげる。  
当然バランスを崩し、ベッドに倒れ込んでしまう  
すると、どうなるかなど言うまでもなく、二人は重なりあってしまう。  
「なっ!?」  
猛烈に顔を赤くして驚くローラ。もはや『抵抗することなどできない』という観念が存在してしまっているため、抵抗の意思はない  
恥ずかしさもあり、真っ赤な顔を横に向けて、上条を直視しないようにもしている  
(もう・・・私はこのまま・・・)  
彼女はもう諦めていた。もうこの少年には何もできないと  
 
その時ドアがバタンと開く  
「とうまー!こもえが上条ちゃんが心配するから帰りなさいって・・・」  
言葉が止まる少女、インデックス。目に飛び込んで来るのはベッドで抱き合う二人  
上条は首だけグルンと回すと  
「い、いいいいインデックスサン!?これは違うのです!そう、説明すればわたくしの無実は晴れるはずで・・・」  
静かなる怒りが立ち込める  
「とうまぁ!何事にも限度があるんだよ!その頭がいけないの!?」  
「い、いやその上条さんはノーマルモードであって、決して異常などないのでご安心」  
「あんッ!」  
なにやらアブナイ声が聞こえて来たので口が止まる。  
上条がゆっくり下を向くと、ローラが更に顔を赤くしている  
言い訳に焦る上条は、手をあちらこちらに動かしていた。  
その過程で、やはりその不幸な右手はあらぬところにムニッと触れてしまう。  
そう、ローラの胸だった。それを見るや否や、少女のささやかな歯止めは消えさる。  
その瞬間、思考をコイツコロスに移行。上条は確信する。俺は食糧になると  
上条はそのホーミングから身を守るため、全てを回避に捧げる  
「不幸だぁー」と叫びながら、ベランダから土御門方式ダイブ  
それは学園都市全てに届きそうな絶叫だったという  
そんな中、ローラは高鳴る胸を押さえつつ、遠い目をしていた  
(上条当麻・・・またいつか・・・)  
 
一方、窓のないビルの中、巨大なガラス容器の中で微笑むアレイスター  
「フッ、アークビショップを襲った男・・・か。久々に面白かったな」  
そう言って彼は画面を閉じたのだった  
 

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