ここはイギリスのランベスにある必要悪の教会(ネセサリウス)が管理するの女子寮。  
 その建物の一室、共有の部屋のひとつで1人熱心に雑誌を読みふけっている者がいた。  
「ふむふむ」  
 テーブルの上に雑誌を広げて、紙面の文字を指でなぞっている修道女姿の三つ編みの少女、名はアンジェレネと言った。  
 そんな彼女に背後から声を掛けた人物がいた。  
「お? そんな所でこそこそ雑誌なんか読んで何してんですかいシスター・アンジェレネ?」  
「あ、シスター・アニェーゼ。おはようございます」  
 シスター・アニェーゼと呼ばれたアンジェレネと同じ年頃と見られる赤毛の修道女は、独特な形状をした厚底靴の靴音を響かせながらゆっくりとアンジェレネの側に近付いた。  
「おはようございますシスター・アンジェレネ。で、何ですかいその雑誌」  
「ああ! これはですね、美容と健康に関する事が書いてあるんですが……」  
「へぇ、私はまた新しいドルチェの店でも載ってるかと思いましたよ」  
「確かにドルチェも捨てがたいですが……、私が見ていたのはこの記事です!」  
「うわっぷ!? ち、近すぎますぜシスター・アンジェレネ……。で、えぇーと何々……『貴女もこれで望みのバストサイズを手に入れられる』ぅ?」  
 やっと視点が定まる程度雑誌が顔から離れた所で、アニェーゼはアンジェレネが指差す部分を読んで目を丸くする。  
「そうなんです! で、特に興味深いのがここ!」  
「ん……『同じ生活圏に胸の大きな女性がいる場合、高い確立で胸が大きくなる事が統計で判った』ってええっ!?」  
 思わずアンジェレネから雑誌を奪い取り食い入るように眺めるアニェーゼに、アンジェレネは両の拳を握り締めて事の重大さをアピールした。  
「そうなんですよシスター・アニェーゼ!」  
「『このバストサイズがうつると言う現象はスキンシップとの関係が重要だと考えられる』って、何かうそ臭く無いっすかこの記事?」  
 アニェーゼは雑誌から顔を上げると、何とも神妙な顔をして見せた。  
 その顔を見たアンジェレネはせっかく出来たと思われた同志を失って落胆の色を濃くする。  
「えー! そうですかぁ? 私この記事結構信じてたんですよぉ?」  
 そんなアンジェレネにアニェーゼは笑顔を見せると、  
「ははは。なぁに、私たちはまだまだ育ちますって。きっとシスター・ルチアやシスター・オルソラや、神裂さんみたいになりますよ。いや! きっとなってみせる!」  
「も、燃えてますねシスター・アニェーゼ!」  
 段々と熱を帯びてくるアニェーゼの言葉に、アンジェレネも思わず頬を  
「これが燃えずにいられますかってんですよ。我々の成長期の凄い所みせつけてやりましょーぜシスター・アンジェレネ!」  
 そんな2人の背後から水を差すような冷ややかな言葉が投げかけられた。  
「何を朝から盛り上がってるんですかシスター・アニェーゼ」  
「お、シスター・ルチア。おはようございます」  
「おはようございますシスター・アニェーゼ」  
 シスター・ルチアと呼ばれた長身の修道女はアニェーゼに深々と頭を下げるとゆっくりと2人の元に歩み寄った。  
 ところが、  
「あ、シスター・アンジェレネ! 貴女はまだそんな本を読んでいたんですか!」  
「ひゃ!?」  
 テーブルの上に置かれた雑誌を見つけるやいなやまなじりを釣り上げて駆け寄って来ると2人の間に割って入り雑誌を取り上げた。  
「あぁ私の雑誌……」  
「私の雑誌では有りませんよシスター・アンジェレネ! 美容だの健康だのをそのような下賎な書籍に頼るなんて言語道断です! 私たちは神にお仕えする身なのですよ? 日々の修行の一つ一つが己を磨いてゆくのでわひゃあああああああああああ!?」  
 
 早速アンジェレネへの説教モードに突入したルチアだったが、その声は自身の悲鳴でかき消された。  
 と言うのも――  
「ん―――――。これが将来私の胸にもつくんすねぇ。中々の感触です」  
 アニェーゼの両の指が彼女の修道服を内から持ち上げるふくよかな胸に半ばまで食い込んでいた。  
 実は、ルチアが2人の間に割って入った瞬間からアニェーゼは背後に回りこんでこの瞬間を狙っていたのだ。  
「あっ! ん、な、何ですかシスター・アニェーゼ!?」  
「あ―――――!? シスター・アニェーゼ。さっきは信じてない様な事言ってたのに!」  
 驚きと刺激に身をよじるルチアと、一転置いてけぼりを食らったアンジェレネの叫びが交錯する中、アニェーゼはルチアの肩越しに猫のように目を細めながらにんまりと笑った。  
「何事も実践っすよシスター・アンジェレネ。ま、大体上手く行かなくたってだぁれも困らないんすからいいんじゃないっすかね」  
 まるで他人事のような物言いをするアニェーゼの指は相変わらずルチアの胸を弄ぶように柔らかく、時には指先が見えなくなるほど強く揉みしだいていた。  
 その度になまめかしく身をよじるルチアの姿に、アンジェレネは思わず生唾を飲み込む。  
「いやっ!? 止めてくださいシスター・アニェーゼ! アンジェレネも見ていなひあっ! そ、その卑猥な指使いを止めきゃん!」  
「卑猥? おかしいっすねぇ。私はただシスター・ルチアの恩恵にちょこっとあやかろうと思ってるだけですぜ? 卑猥に感じるのは……ブラ越しにここを固くしてるシスター・ルチアにこそやましい気持ちがあるんじゃねーですか?」  
 アニェーゼは意地悪そうな笑みを浮かべると言葉通りに固くしこったものを指先でこね回した。  
 すっかりサドモード全開のアニェーゼに、こちらはすっかり弱気になったルチアは抵抗する声も動きもすっかりなりを潜めてしまって今や成すがままの状態だ。  
「あんっ、そ、そんな事はぁ……」  
「おやおやおやぁ? 何ですかいその弱気な態度は。ここはひとつ――シスター・アンジェレネ」  
「了ぉ解」  
「ひっ? シスター・アンジェレネまでなんきひゃ!? シ、シスター・アニェーゼ!?」  
 両の指を動かしながら近付くアンジェレネ。  
 それに気を取られていたルチアは胸に何かが直に触れて来た事に驚いて悲鳴を上げて犯人であろう人物の名を叫んだ。  
 すると、それに答えるように名を呼ばれたアニェーゼは露わになった白いたわわな膨らみを直にその手に取って搾るように揉んだ。  
「あっ、そんな強く……」  
「いやぁ、何、ちょおーっとシスター・ルチアをじかに堪能……いやいや、我慢強さを2人で確かめようと思いましてねぇ」  
「そうですよシスター・ルチア。これは神が与えた試練ですよ」  
「そ、その割には……はぅ……ふ、2人とも妙に楽しそうですが……?」  
 アニェーゼの責めに息も絶え絶えなルチアは愉悦と羞恥の涙で霞む目で2人の拷問官の顔を眺めた。  
 そんなルチアの姿に、嗜虐の美酒に酔った2人はさらに笑みを深くするのだ。  
「何々、シスター・ルチアの気を和らげようと思ってのことですよぉ」  
「そうですそうです。ホぉントは私たちだってこんな事したくないのですよ」  
 そんな2人を目の前にして何故だか泣きたい気分になったルチアは、それでも辛うじてその気持ちを抑えると、  
「うんっ。そ、それなら試練を許して頂けると助かるのですが……?」  
「それは無理っすねぇ」  
「諦めてくださいシスター・ルチア」  
 2人の言葉にルチアは天を仰ぐと一筋時大きな涙を流した。  
 それから消え入りそうな声で神に赦しを請うた。  
 すると、それを合図にアニェーゼとアンジェレネとルチアはお互いもつれ合うように床の上に倒れて行った。  
 
 
 
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜  
 
 
 乱れた修道服と髪を整えたアニェーゼとアンジェレネは、先に適当に服を着せて椅子に座らせたルチアを振り返った。  
 そのルチアの方はと言うと意識があるのか無いのかテーブルに突っ伏したまま目を閉じている。  
 髪がほつれて汗ばんだ額や紅い頬に張り付いている。  
 そして着崩れた修道服は肌に張り付き本来隠すはずの体のラインを浮かび上がらせいるばかりか、所々肌蹴て白い肌を露出させていた。  
 その姿を見た2人は先ほどの情事を思い出して、目を見合わせて頬を赤らめる。  
「堪能しましたねシスター・アニェーゼ」  
「そうっすねシスター・アンジェレネ」  
「で、これからどうします?」  
 アンジェレネが何とはなしにこの後の事をアニェーゼに聞いた。  
 するとアニェーゼは口元に笑みを浮かべると、  
「ふふ。今更そんな事聞くんですかいシスター・アンジェレネ?」  
「じゃあ……」  
 期待に瞳を輝かせるアンジェレネに、アニェーゼは右手に拳を握ると胸の前に引き寄せた。  
「今更こんな面白い事――いやもとい! 今更この実験を止める訳にはいかねえんですよ。体を張って協力してくれたシスター・ルチアの為にも……」  
 そんな勝手なことを言いながら2人はルチアを振り返る。  
 その瞬間、ほんのちょっとだけルチアの眉がピクリと動いたが2人は気が付かずに話を続ける。  
「そうですね! じゃ次は……?」  
「もちろんシスター・オルソラですよ!」  
「私がどうかしましたかシスター・アニェーゼ?」  
 アニェーゼがオルソラの名を口にした途端、背後から何者か……と言うのもおこがましいが、ゆったりとした口調でオルソラに声を掛けられて飛び上がった。  
 飛び上がったのはアンジェレネも一緒で、2人はぜんまいの切れ掛けたおもちゃのようにぎこちなく声のした方向を振り返った。  
「「シスター・オルソラ!?」」  
「おはようございます皆さん。ふわぁ……」  
 2人に名前を呼ばれたオルソラは深々と頭を下げて朝の挨拶をしたのだが、その後にあくびが出てしまってあまりしまりの無い結果に終る。  
 ところが本人は至って自然で、あくびが引っ込むや否や再び深々と頭を下げた。  
「お見苦しい所失礼いたしました。昨夜は夜更けに部屋の模様替えなど始めてしまったもので……いけませんねああいうのは。気になると中々止められないものでございますね。気が付いたら日が昇っていたのでございますよ。ふわぁ……」  
「そ、それは大変でしたねシスター・オルソラ」  
「テーブルを北に、ベッドを西に……いえ、ベッドを東に、椅子を南に……でしたでしょうか? どちらに置いて良いのやら大変苦労したのでございますよ」  
 身振り手振りまで交えて事の次第を話しだしたオルソラに、既に毒気を抜かれた格好になったアニェーゼとアンジェレネ。  
 アニェーゼはすっかり自分の世界に入ってしまったオルソラに必死に視線を合わせると、  
「まだ続きますかその話?」  
 極力……極力笑顔でそう確認してみた。  
 しかし――  
「それで気が付いたら鎧戸の隙間から日の光が差し込んで来ましたので、これはもしやと思ってわたくし扉をえいやっと開けてみたのでございます」  
「はあ」  
 アニェーゼは気の無い返事を返すと共に、やっぱり続くんだこの話とがっくりと肩を落とした。  
 そしてそんな様子などお構い無しにオルソラは喋り続ける。  
「やはり就寝前の読書に『あなたも幸せになれる実践風水学入門』は摘していない様でございますよ? ふわぁ……」  
「そ、そうなんですか」  
 再び口元に手を当ててあくびをするオルソラに、撃沈したアニェーゼに変わってアンジェレネが相槌を打った。  
 ところが、  
「あの時鎧戸を開いた時のわたくしの驚きときたら、それはそれは大変なものでございました」  
「「…………」」  
 オルソラの話が戻ったことに2人は無言で見詰め合った。  
 既に先ほどの熱意など忘れかけていたその時だった。  
「ところで先ほどからシスター・ルチアは如何されたのでしょうか? わたくしと同じく朝まで部屋の模様替えでもなさっていらしたのでしょうか?」  
 オルソラの言葉にアニェーゼとアンジェレネの落ちていた肩が今度は大きく跳ね上がった。  
 3人3様の視線がルチアに集中する。  
 すると、そこからまず先に動いたのはオルソラだった。  
 
 ゆっくりと歩み寄りながら自身の肩に掛けてあったカーディガンを脱ぐとルチアの背中に掛けたのだ。  
「夏とは言えこのような場所で眠って風邪など引いては大変なのでございますよ。今朝は大変寒うございましたし。さ、シスター・ルチアお休みになるのでしたら――」  
 とルチアを抱き起こそうとした。  
 するとそれを阻止せんとアニェーゼとアンジェレネが割って入った。  
「いやっ!? シスター・オルソラそれにはおよびやせん。シスター・ルチアはちょっと激しい修行が祟ってお休み中なんすよ!」  
「そ、そうなんです! 火照った体をクールダウン中なんです!」  
 そうして2人は必死に「いいんです」「大丈夫なんです」を繰り返した。  
 するとオルソラも何が合点いったのか、右手で拳を作ると左の掌をポンとひとつ叩いて、  
「確かにそう言われて見ればお顔が赤こうございますね。流石シスター・ルチア、己を磨く事に熱心なのでございますよ」  
 オルソラはそう言いながら何度もうんうんと頷く。  
 そのオルソラの様子にアニェーゼとアンジェレネはホッと胸をなでおろした。  
「激しい鍛錬だったのでございましょうね。こんなに修道服が乱れて……汗で体に張り付いて中々艶かしいのでございますよ」  
「「はは……、ははははは……」」  
 一々鋭い指摘に乾いた笑いを上げる2人を置いてオルソラは胸の前で両手を組み合わせると、  
「わたくしいたく感動しました。ついてはシスター・ルチアが目覚めた時の為に着替えやお風呂の準備などして差し上げたいと思うのでございますよ」  
 オルソラはそう言ったかと思うと見た目よりも軽やかな動作で踵を返すと部屋を出て行こうとする。  
 と、その背中にアニェーゼは慌てて声を掛けた。  
「ああっ! それなら私たちも手伝いますぜシスター・オルソラ。ね、シスター・アンジェレネ」  
 急に自分の名前を呼ばれたアンジェレネはドキッとしてアニェーゼに視線を送ると、彼女からはウインクが帰ってきた。  
(これは……!?)  
「は、はい! 私もお手伝いしたいです!」  
 その事に何かを察知したアンジェレネもアニェーゼに同意するように高々と右手を上げた。  
 その2人の姿にうれしさ半分困惑半分の表情のオルソラは、  
「え、わたくしはただ着替えやお風呂を用意しようと思っただけなのでございますけれど……?」  
「いや何、私はそんなシスター・オルソラに感動したって訳ですよ。ね、シスター・アンジェレネ」  
「はい! 感動したんです!」  
「そうでございますか。では皆で出来る事をいたしましょうか?」  
「「おお!」」  
 そして意気投合した3人は部屋を後にした。  
 後に残るのは先ほどからテーブルに突っ伏したままのルチア1人――とそのルチアが急に身を起すと大きく溜息をついたのだ。  
「ふぅ。皆行ってしまいましたね」  
 出口の方を振り返ってそう言ったルチアはもう一度テーブルの上に突っ伏した。  
「シスター・オルソラには申し訳ありませんが……私の信仰心ではあの2人の蛮行を止める事は出来ません。願わくばシスター・オルソラに神のご加護があらんことを」  
 そう呟くとビクンと体を震わせてから、勢い良く状態を起こしたルチアは悔しそうにバンバンと両手でテーブルを叩く。  
 そしてテーブルを叩きながらアニェーゼとアンジェレネの文句を上げ連ねのだが、  
「ホント何を考えてるのでしょうかあの人たちは!! 下劣です!! 恥知らずです!! 父なる神への冒涜です!! 己の欲望の為にこ……こ……こんな……」  
 その声は段々と小さくなり、声と共にその身も所在無げに縮めたルチアは、まだ微かに余韻の残る自分の体を抱きしめて艶かしい溜息をつくとテーブルに手を付いて支えにしながらゆっくりと椅子から立ち上がった。  
「はあ……。私も人の事は言えませんね。今日は自室で反省する事にしましょう。ああ、我らが父よ――」  
 ルチアは十字を切って小さな声で神への祈りの言葉を捧げると、ゆらゆらと頭を揺らしなが夢遊病者のようにおぼつかない足取りで部屋を出て行くのだった。  
 
 
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜  
 
 
 先頭を歩くオルソラの後ろを、アニェーゼとアンジェレネは肩を寄せるように歩いていた。  
 その内アンジェレネの方が更に顔を寄せると、何事かをアニェーゼに囁く。  
「(シスター・オルソラは何処に行くんでしょうか?)」  
「(多分風呂っすよ)」  
「(お風呂、ですか)」  
 アニェーゼの言葉にアンジェレネは視線をオルソラに向ける。  
 
 一方のアニェーゼは小さくガッツポーズをすると、  
「(こりゃ大チャンスですぜシスター・アンジェレネ。あそこはどんなハプニングが発生してもおかしかありやせん。シスター・オルソラには申し訳ありやせんが水でも引っ被って貰って……)」  
 アニェーゼの言葉に段々と熱がこもり始めた所で、オルソラが振り返った。  
「どうかしましたかお2人とも」  
「い、いえ、何でもありやせんぜ」  
「そ、そうですとも」  
「そうでございますか?」  
 明らかに怪しい2人なのだがオルソラは気がつかない様子だ。  
 その内この女子寮自慢の大浴場に到着すると、オルソラたちは躊躇無く中に入った。  
「さ、お風呂に到着したのでござますよ――あら? あらあらあら。誰か先客がいらっしゃるようでございますわ」  
「え?」  
「確かに……」  
 3人が注目する場所――脱衣所のロッカーが2つ使われていて、1つの籠には綺麗に畳まれたTシャツとGパンが、もう1つの籠にはごちゃごちゃに放り込まれたネグリジェが見えた。  
 その状況にアンジェレネが残念そうにオルソラを振り返る。  
「どうしますシスター・オルソラ? 出直しますか?」  
「まぁ、浴槽のお掃除は出来ませんが他にも出来る事はございますし……よろしいんじゃないでしょうか」  
「そんなもんっすかね」  
 オルソラの決断にアニェーゼも何となくそんなもんかと思っていると、その目の前ではオルソラが、  
「それでは――」  
 いつの間に腰のベルトを緩めたのか、一気に修道服を脱ぎ捨てた。  
 その潔さにアニェーゼもアンジェレネも言葉を失った。  
 とそんな2人を置いて、オルソラは修道服に続いて躊躇無くブラも外す。  
「っ!?」  
「はわっ!?」  
 アニェーゼとアンジェレネが驚きの声を上げる前で、大きな2つの膨らみが締め付けから解放されてふるふると柔らかそうに震えた。  
 そのショックからいち早く立ち直ったアニェーゼは、  
「ぬ、脱ぐんですかい?」  
「その方が何かと便利なのでございますよ」  
「そ、そんなもんすかねぇ……」  
 こう言う事に疎いアニェーゼは、とりあえずオルソラに従うことにした。  
 大体ここまで来ては後に引き下がれないのだ。  
(あの胸こそ私の理想とする所なんすよ。ここまで来て逃がしてなるもんですかい)  
 そうして心の中で気合を入れなおしたアニェーゼは、隣でまだ呆然としているアンジェレネを促すとオルソラを見習って服を脱いで行く。  
 その間も2人の視線は目の前でゆれるオルソラの胸に釘付けだ。  
「(やっぱりこうして改めて生で見ると中々の迫力っすねえ)」  
「(シスター・ルチアとはまた違う感じですねっ、ね、ねっ)」  
 小声でそんな事を言い合う2人にふと気が付いたオルソラは、  
「私の胸、どうかいたしましたでしょうか?」  
 その一言に2人は飛び上がって驚いた。  
 特にオルソラと視線がばっちり合ってしまったアンジェレネはしどろもどろになって、  
「シ、シスター・オルソラのオッパイがあまりに立派だからびっくりしたんで……」  
「(あっ!? シスター・アンジェレネ)」  
 慌ててアニェーゼが止めようとするが、焦ったアンジェレネはさらに、  
「はわっ!? こ、これはち、違うんです! な、何が違うのかって言われても答えられませんが全然違うんですってば!!」  
「?」  
 目の前で「あの」「その」と身振り手振りで言い訳するアンジェレネを前にオルソラはただキョトンとするばかり。  
 その一方アニェーゼは顔に手を当ててがっくりと項垂れていた。  
(もう少し言い訳のしようもあるでしょうにこれで計画は失敗っすねえ……かくなる上は強行突入で……)  
 などと些か物騒な方向に気持ちをチェンジしようとしていた。  
 ところが、  
「はい、なのでございます」  
 オルソラがアンジェレネに向かって両手を広げて見せた。  
 
「はい?」  
「?」  
 それに訳も判らずキョトンとするアンジェレネと、その様子を伺うアニェーゼ――するとオルソラは、  
「えい! なのでございます」  
 オルソラはアンジェレネの手を掴むとぐいっと自分の方に引き寄せた。  
「ひゃ!?」  
 素っ頓狂な悲鳴を上げたアンジェレネは、オルソラにされるがまま引き寄せられ――そして、  
「え?」  
 気が付けがオルソラの胸の谷間に顔を埋めていた。  
「わたくしの胸、如何でございましょう?」  
「え? え?」  
「何か感想を頂けるとたいへんうれしいのでございますが」  
 目の前でオルソラがにっこりと微笑むと、その笑顔にそれまで混乱していたアンジェレネは我に帰って、  
「え、は、はいっ! 柔らかくて気持ちいいです」  
「そうですか……気持ちが良いのでございますか」  
 アンジェレネの返事にオルソラは一瞬キョトンとするが再び笑顔を返す。  
 すると今までその状況を黙って静観していた――と言うよりも状況に付いて行けずに凍り付いていた――アニェーゼが口を開いた。  
「ど、どど、どうしたんすかシスター・オルソラ?」  
 動揺を隠し切れないアニェーゼにオルソラは、  
「わたくし常々考えていたのですけれども、この胸で……何か人を幸せにする事が出来ないかと考えていたのでございますよ」  
 そして何故か遠い目をするオルソラ――とこちらはこれから始まるであろうオルソラの話に向けて気合を入れるアニェーゼとアンジェレネの姿があった。  
 ただオルソラに抱きしめられている分若干アンジェレネは集中を欠くようで、視線はちらちらとオルソラの顔と目の前にある膨らみを行ったり来たりしている。  
「わたくし以前に必要悪の協会(こちら)の土御門さんから『挟んで擦ると大概のヤツは喜ぶにゃー』と言われたのですけれど……」  
「『挟んで擦る』っすか……」  
「『挟んで擦る』?」  
「1人で試してみても今ひとつ加減が判らないもので……」  
「「なるほど……」」  
 アニェーゼとアンジェレネは声をそろえて頷くが実の所……  
((挟んで擦るって何を?))  
 それは2人にとって未知の領域だったようだ。  
 一方、そこまで夢見がちに話していたオルソラだったが急に顔をアニェーゼたちにの方に向けると控えめに視線を投げかけてきた。  
「な、なんですかい?」  
「どうしましたかシスター・オルソラ?」  
 2人の言葉にオルソラは一瞬躊躇った後に、  
「あの、もしよろしければお2人に練習の協力をお願い――」  
「「喜んで!」」  
 2人のあまりに早い了承の言葉にオルソラは最後まで喋る事が出来なかった。  
「ありがとうございます」  
 そう言ってうれしそうに微笑むオルソラを前に、アニェーゼとアンジェレネは心にちくりと走った痛みにそっと右手を自分の胸に添えた。  
 
 
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜  
 
 
 脱衣所に立つ3人の裸体。  
 それだけなら特に何も不思議な事は無いのだが、内2人が真剣な面持ちで向かい合っているともなればちょっと事情は変わってくる。  
「準備はよろしいですか?」  
 オルソラがそう言うと、向かい側に立つアンジェレネはこくりと頷いた。  
「私はいつでも……一向にかまいません!」  
 まるで一騎打ちでも行うかのように力いっぱいに答えた。  
 するとその言葉を合図にオルソラがアンジェレネに近付いて行く。  
 そして近付きながら自分の乳房に下から支えるように手を添えると、その柔らかい塊を持ち上げて谷間を大きく広げた。  
 
「では、いくのでございますよ」  
 そう言ってオルソラは……。  
「わぷっ」  
 アンジェレネの顔を持ち上げた自身のやわ肉で両側から挟みこんだのだ。  
 頬から伝わる柔らかい感触と、オルソラの体臭なのか甘い香りに包まれてアンジェレネはすっかり夢見心地になった。  
 しかもオルソラが自身の胸の上から強弱を加えて乳房で顔を圧迫してくるのが気持ちいい。  
 顔は半ばまでオルソラの胸に隠れてしまい表情はうかがい知ることは出来ないが、桜色に染まった肌と脱力した手足が、アンジェレネの今の気持ちを如実に表している。  
 しかしオルソラは本人の口から直に気持ちを聞きたかったのだろう。  
「んしょ……んしょ……。い、如何でございますか?」  
「ふわ……ぽわぽわして柔らかくて暖かくてきもちいいですぅ」  
「そ、そうでございますか。それはよろしゅう……」  
 自身桜色に染まった頬に笑みを浮かべた所で、オルソラはふとある視線に気がついた。  
 それは口をへの字にまげて仁王立ちで腕組みしていたアニェーゼだった。  
「ん? シスター・アニェーゼ、如何なさいましたでしょうか?」  
 オルソラの問い掛けにアニェーゼは、  
「ぬるい」  
「「え?」」  
「ぬるいって言ってんですよ」  
 そう言うと2人の元に大股に歩み寄ってきた。  
 そしてアンジェレネをオルソラから引き離したかと思うと、  
「こんな立派なもん持ってんですから――もっとこう、してっ」  
 オルソラの胸の中で唯一固い部分――ピンク色の乳首をつまみあげたのだ。  
 両の乳房を乳首を掴んで宙吊りにしたアニェーゼは、逃がさないようにしながら人差し指と親指の腹で器用に乳首を転がす。  
「ほぉら固くなってきたじゃねえっすか」  
「あっ、んっ。ちょ、ちょっと激しいのでございますよ」  
 恥ずかしそうに声を上げるオルソラにアニェーゼは上気させた頬に笑顔を浮かべる。  
「まだまだこれからっすよシスター・オルソラ。これでシスター・アンジェレネのぉ」  
 とアンジェレネを自分とオルソラの間に引き込むと、  
「「きゃ?」」  
 2人の固くなった乳首がぴったりと合うように押し付けたのだ。  
 2対のしこりが互いを刺激すると、オルソラもアンジェレネもその刺激に身をよじる。  
「シスター・アンジェレネも逃げねえでくださいよ。これはシスター・オルソラの大事なお努めの練習なんすから」  
「き……は、はいっ」  
 アニェーゼからそう言われた2人は胸から走る疼きに身を固くして流されないように耐えた。  
 オルソラは自分の胸で人を幸せにする為に、アンジェレネは少しでもオルソラに触れて恩恵をもらえる様に。  
「し、しかし、こんな事で皆さんお喜びになっていただけるのでございましょうか?」  
 オルソラの疑問はもっともである。  
 言い出したのは自分とは言え、こんな悪ふざけとも言える行為に何の意味があるのかと――しかしアニェーゼは、  
「まあまあ、百聞は一見にしかずってことわざもあるじゃないですか」  
 どうやらこの行為を止めるつもりは無い様子だ。  
 それどころか、  
「ん? ちょっと待ってくださいよ……」  
 などと勿体つけてオルソラの胸を自分の顔の方に持ち上げて難しい顔をする。  
 当然引っ張られる格好になるオルソラは、不安そうに眉根を寄せる。  
「は、はい、なんでございましょう?」  
「うーん……」  
「ど、どうかしましたか?」  
 唸るばかりで何も言わないアニェーゼに不安を募らせるオルソラ。  
 ところが、  
「これは確かめてみるしかないですねえ」  
 そう言うとアニェーゼはオルソラの胸の頂を口の中に含んだ。  
 
「ひゃ!? シ、シスター・アニェーゼ?」  
「ふぁんえふ? わはふわふほはひんふへほ?」  
「あふっ、そ、そのまま喋られると響きます」  
「ぷはっ。ちょっと我慢してくださいよシスター・オルソラ。これも『貴女のため』なんすから」  
「も、もうしわけござ……きゃん!?」  
 オルソラの言葉もそこそこに再びアニェーゼは乳首を口に含むと丹念に舌で転がし始めた。  
 そんな2人の姿を間近で見ていたアンジェレネの背中に冷たい汗が流れる。  
(わわっ!? シスター・アニェーゼの悪い癖が全開に出て来てるじゃないですか。ど、どどど、どうしましょうかこれ?)  
 自分が元凶たなどと言うのは既にはるか過去の出来事らしい。  
「さ、シスター・アンジェレネもぼおっとしてないで、こっちをお願いしますよ」  
「あ。は、はい!」  
 アンジェレネは考えることを諦めた。  
 彼女はアニェーゼが指し示すままに、毒を喰らえば皿までと言わんばかりにオルソラの乳房に吸い付くのだった。  
 
 
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜  
 
 
 そんな3人の狂態が繰り広げられる脱衣所をそっと覗いている者がいた。  
 それは、褐色の肌をした美しい金髪の女性、シェリーだった。  
 普段は全身何処もかしこもすすけた彼女も、元の素材が良いだけあって風呂上りの姿は見違えるように輝いている。  
 シェリーは全裸に中腰の格好で扉の隙間から脱衣所の様子を伺っていたのだが、  
「何やってんだあいつら?」  
 そう言うと後ろを振り返った。  
 するとそこには短いタオルで必死に胸から下を隠している神裂の姿があった。  
「さ、さあ?」  
 神裂は短くそう答えると、これもやっぱり短いタオルの裾を引っ張って足の付け根とお尻を隠している。  
 それについては先ほどシェリーが突っ込みを入れたのだが、『お、女同士と言えども恥じらいがあります!』とか何とか言って頑なに拒むので放って置く事にした。  
 実の所そうしていると、前かがみで胸の谷間が強調されたり、ミニスカート特有の見えそうで見えない感じが非常に卑猥だったりするのだが、  
(こいつは恥らう部分を何か勘違いしてんじゃねえか?)  
 シェリーからすれば呆れるばかりだった。  
 そんなシェリーは1つ溜息をつくとまた扉の隙間から中を覗く。  
「それにしてもさっきから子供みたいにオルソラの胸に吸い付いて……。ははっ! ほら見てみなさいよ神裂、あのオルソラの間抜け面ったら見ものだぜ?」  
「け、結構です」  
 シェリーの指差す先をちらりと見てしまった神裂はあっと言う間に顔をゆでだこのように赤くする。  
(わ、私はただ朝稽古の汗を流そうと思ってお風呂を使っていただけですのに何でこんな目に……!?)  
 神裂はついていない自分の境遇をほんの少しだけ呪った。  
「しかし困ったわね。これじゃ風呂場に缶詰だぜ?」  
「そ、そうですね」  
 またも短い神裂の返事にシェリーの目が半眼になるが、それどころではない神裂はその変化に気がつかない。  
「おい神裂」  
「何ですかシェリー」  
「貴女ちょっと行って止めて来てよ」  
「な、何で私が!?」  
 シェリーの言葉に神裂ははじけるように振り返り、顔を真っ赤にして視線を外す。  
 そんな神裂にシェリーは、  
「聖人の力でチョチョイのちょいだろあんなの」  
「ち、力で解決しろと言うのですか?」  
「他に手は無いだろ? 私は生憎ここでは無力なのよ」  
 どうやらシェリーは彼女たちを排除してでもここから出たいらしい。  
 しかし、神裂にはあの状況に割って入る勇気は皆無だ。  
「も、戻りましょうシェリー。湯船につからなければのぼせることもありませんし」  
 神裂がそう諭すように言うと、シェリーは近場の洗い場に座り込んでしまう。  
 
 そして近くにあった石鹸を手の上で弄びながら、  
「何だよ神裂ぃ。私はもう風呂はいいんだよ。飽きたんだよここはよぉ」  
 その姿はまさしく拗ねた子供のようだ。  
「こ、子供みたいな駄々こねないで下さい!? と、とにかく私はあれに関わりあうつもりはありませんから」  
 これ以上話しても埒が明かないと感じた神裂は、シェリーに背を向けると浴槽へ向かった。  
(少し体が冷えてしまいました。一度湯船に使って体を温めましょう。それからストレッチでもして、それからそれから……)  
 などと脱衣所の事もシェリーの事も頭の中から消し去ろうとしていた時だった。  
 神裂は迂闊にも洗い場で足を滑らせたのだ。  
「うわっ!?」  
 聖人たるものこの程度の事で取り乱してはと言うことなかれ。  
 既にこの時神裂の頭の中は、桃色の世界でいっぱいだったのだから。  
(しまっ!?)  
 タオルで必死に体を覆っていたのでバランスも悪かった神裂は、簡単に足をすくわれるとお尻からまっ逆さまに洗い場の固い床に――  
「おっとぉ」  
「!?」  
 落ちなかった。  
 すんでの所でシェリーが背後から抱き止めてくれたのだ。  
「あ、ありがとうございますシェリー」  
 神裂は素直に礼を述べると共に内心シェリーを疎ましく思っていたことを詫びた。  
 だがしかしシェリーは……、  
「礼は言わない方はいいとおもうなぁ」  
 その笑いを含んだ声に神裂は一抹の不安を覚え――それは現実のものとなる。  
 神裂はシェリーの指がふとももやわき腹を這う感触に鳥肌を立てる。  
「シ、シェリー!?」  
「芸術の為よ。ゲ、イ、ジュ、ツ、の。聖人様の体ははたして私たちとどう違うのかってね」  
 気がつけばタオルも足元に落ちている。  
(迂闊っ!? だがっ)  
 神裂は瞬時に身をよじるとシェリーから離れようとした。  
 ところが、  
「あれっ!?」  
 神裂の体はシェリーの腕の中でくるくると回るばかりで逃げ出せない。  
 ならば押しのけようとするのだが、これもつるつると滑って、まるでうなぎでも掴もうとしているかのようだ。  
 足元も非常に滑るような状況で、神裂といえどもバランスを取るのがやっとの状況だ。  
「こ、これは!?」  
 肩越しにシェリーに鋭い視線を向ける神裂に、シェリーはことさらおどけた表情を見せた。  
 そしていつの間にか手に持っていた白い固形物を神裂の目の前に突きつけた。  
「これはまさか!?」  
「判るだろ? 石鹸だよ、石鹸。付け焼刃だけど案外上手く行くもんだね。ま、こんな悪ふざけくらいにしか使えねえけどな」  
(石鹸!? シェリーは石鹸を支配して……)  
 神裂は石鹸1つで自分をここまで追い詰めたのシェリーに戦慄を感じた。  
「んじゃ、種明かしもしたし、おとなしく軍門に下っちまいな。ま、悪いようにはしないわよ」  
「こ、これ以上何か悪いことでもある――」  
 神裂の苦し紛れの一言に、シェリーは満面に笑みで答えると、神裂の体を優しく撫で回し始めた。  
「い、いやシェリー。判りました! 私急に脱衣所に行きたくなってきゃ――――――――――!!」  
 湯気に煙る大浴場に神裂の黄色い悲鳴が木霊する。  
 そして神裂は『時既に遅し』と言う言葉を身を持って体感するのだった。  
 
 
 
END  
 
 

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