魔術師達との戦いを終え、ヴェネツィアから帰国した上条当麻を待っていたのは  
いつものカエル顔の医者と白いベット、そしてその横に立つ──  
 
「意外と早かったわね。 それじゃあ早速罰ゲームの内容を発表するわよ」  
 
常盤台中学のエース、もとい超電磁砲の御坂美琴だった。  
 
「ちょっ、待ってください御坂センセー! 今カミジョーさんは見たとおりの重傷で動くことすらままならないのです!  
  この状態でキャッチボールはもはや公開処刑ですよ!? いや別に最初からできませんけど!」  
「へっ?キャッチボール?そんなのしたいの?アンタ野球少年だっけ?」  
「とにかくこの傷じゃしばらく何にもできないので!医者なら絶対安静って言うぞ!」  
「言っとくけど僕の治療ならこれくらいの傷2,3日で治せるよ?安心しときなさい」  
「現代医学万歳!科学の進歩は不幸をもたらす事を泣きながら実感しました!」  
「……まぁそんな訳だから罰ゲームを発表するわよ」  
「(終わった……父さん母さん……先立つ不幸と食料バキューム娘を残していくことをお許しください……)」  
身に降りかかる不幸に打ちひしがれて、絶望する上条当麻。  
その目の前で腕を組んで仁王立ちしている美琴は、何故か少し目を逸らして言いにくそうにこう言った。  
 
「……あ、アタシの買い物に付き合いなさい」  
                    
へっ?と上条当麻は思わず声に出てしまった。  
「買い物って、そんなのでいいのか?」  
「そ、そんなのとは何よ! アタシだって…その……ホントは…まともなでっ、デー…の一つや…つ…」  
ゴニョゴニョと口ごもりながら御坂は徐々に俯き小声になっていく。  
「もしもーし?どうしたのですか御坂さーん?」  
「な、何でもないわよ! 言っとくけどアンタは荷物持ち兼代金の支払いよ!いいわね!」  
「んなっ!?追加オプションの方がダメージがでかい!?」  
ぎゃあああと顔を青くしながら絶叫する当麻と、やや顔を朱に染めながら俯く御坂。  
 
(やれやれ、処置ナシかな……)  
 
そんな対照的な二人を見守るカエル顔の医者は、どこか教え子を見守る担任のような顔つきだった。  
 
 
予告通り三日足らずで全快した当麻は、家に帰った後インデックスに心配される前にメシをねだられて軽く凹んだり  
埃が堆積した部屋を掃除したりを入院してた間の宿題を寝る間も惜しんでとりかかったりやらで、  
ようやく落ち着いて思考を始められたのは退院して初日の学校であった。  
 
   ───あははははぁお嬢様のお買い物ですかそうですかそれを俺が全部払うんですねうわああああああああ!  
 
朝の賑やかな教室の中で、重く沈んだ顔して浮いているという光景を作り上げている生徒がいた。  
「どうしたカミやん、サイフを落っことしたような顔して」  
今にも泣きそうな顔を上げると、そこには鮮やかな青髪にピアスといった長身の生徒が立っていた。  
「……そうじゃないんだけどそうなりそうなんです」  
「?? よく分からへんけどまあ頑張りや」  
ポン、と軽く肩を叩かれて、当麻はさらに溜息が出た。  
と、ここでふと頭にある疑問が浮かぶ。  
相手の男の答えにはあまり期待できそうにはなかったのだが、一応軽く聞いてみることにした。  
「なぁ、女の買い物っていくらくらい使うと思う?」  
「ん? そーやねー、まぁ品物によるけど服とかやったら3〜4万使う女はおるよ?」  
なっ、と当麻は絶句した。  
(さ、さんまんえん!?うめえ棒(田楽みそ味)を一日30本食べるとしても1年くらいは……ってそんなことはいいけど!  
  人間の性別でそんな大きな価値観の差がつくんですか!? ああ恐ろしやXY染色体!)  
聞く前よりもさらに力が120%ほど抜けた当麻は、最早ピクピクと体を痙攣させ机に突っ伏すしかなかった。  
「けどカミやん、そんな事聞いてどうす……ハッ、まさかカミやん!もしやと思うんやけど  
 明日の休日は女の子と桃色オーラを出しながら仲良くショッピングですか!?くぅーっ、憎い!憎しみで殺してやる!」  
ズブズブと暗黒精神世界へと沈んでいく当麻と、ウアァァンと天を仰ぐ青髪ピアス。  
 
(うんうん、やっぱり若いっていいことですねー)  
 
そんな対照的な二人を見守る担任の月詠小萌は、どこか退院した患者を見守る主治医のような顔つきだった。  
 
 
いつも通りの朝が来る。  
そしていつも通りの時間に上条当麻は目を覚ました。  
「ふぅぁ……さて、着替えてインデックスが起きる前にメシ作るか」  
瞼をゴシゴシと擦りながらバスタブから出た当麻は、ふと視界に写ったカレンダーを見た。  
(あー……そういや今日は休日か…この時間に起きるべきじゃなかったな)  
テレビでも見てようかな、と思った当麻は、ふとカレンダーの今日の日付に赤い丸がしてあることに気が付いた。  
そしてそれを見て数秒思考を巡らせた後、カッと目を開き机の上の時計を見た。  
──やっぱりこの時間に起きるべきじゃなかった。  
 
 
結果、瞬間的に意識が覚醒した当麻は  
シュババッ!と着替えてサラサラッ!とインデックスに書置きを残してダダダッ!と家を出ようとする時  
ガツンッ!と角に足の小指をぶつけてギャアアッ!と絶叫するハメになった。  
 
 
とある朝の学園都市の通りを、上条当麻が走る。  
美琴と約束した場所は、買い物をするデパートの前、つまり現地集合だった。  
少しばかり走ったところで、当麻は右手に着けた安物の腕時計を見た。  
(まぁ、この時間なら大丈夫だろ)  
少し安心した当麻は、安堵にも似た息を吐き、徐々にスピードを落としていく。  
すると  
 
「あれー?上条ちゃんなのですかー?」  
 
背後から聞き覚えのある声を掛けられ、当麻は後ろを振り向いた。  
そこにいたのは、どうみても10歳前後にしか見えない当麻の担任である月詠小萌と、  
 
「相変わらず。何かと忙しい人だね。君は」  
 
普段見慣れない私服を着た姫神秋沙だった。  
 
「あれ?こんな朝っぱらから二人してどうしたんですか?小萌先生」  
この二人の組み合わせは別段珍しいことでもないのだが、とりあえず聞いてみる。  
「それは。こっちのセリフ」  
それに対し少しムッとしたように姫神が返す。  
「えーっとですねー、今から向こうのデパートへちょっと買い物に行くんですよ」  
「おお、ちょうど俺も今からデパートに買い物の用があるんですよ」  
強制的だけどなー、と心の中で付け足しておいた。  
「へぇぇー奇遇ですねー!私たちは姫神ちゃんの服を……」  
 
と、言いかけたところで何やらハッとなって声を止めた。  
「……ふむふむ」  
そしてそのまま後ろを向き何やらブツブツと呟き始める。  
「あのー小萌センセ?一体どうしたんでせう?」  
何かを考え込んでいる表情は、ただの可愛らしい担任のものではなく、  
将来の地球環境を必死で考える自然科学者のような真剣なものだった。  
 
「……そうですね、やっぱりここは二人の仲を縮めるというのを優先して…」  
もしもーし? と当麻が呼んだところで月詠小萌はバッ振り返りいつもの顔に戻った。  
「いえいえ何でもありませんよ?さぁさぁみんなで一緒に行きましょー」  
そう言って微笑みながら二人の背中をグイグイと押していった。  
しかし10歩も歩かない内に、突然当麻の後ろで「むむむっ!?」と声が聞こえてきた。  
振り返ると、携帯電話を取り出している少女の姿が目に映る。  
「はいもしもし小萌です。 ……えぇーっ!?それは大変です!すぐ行きましょう!」  
どことなく台本を読み上げるようにそう答えた後、パタンと電話を閉じて、ポツンとしている二人に向かって  
 
「残念ですが先生は急な用事が入っちゃったのです! ──そういうことで悪いけど上条ちゃん、姫神ちゃんをお願いしますね?」  
 
ハイ?と目を点にする当麻に「姫神ちゃんの好きなものを買えばいいんですよー!」と小柄な少女は小走りに去って行く。  
「ちょ、小萌センセー!?こっちはふたっ…!」  
言い終わらぬうちに向こうの曲がり角を曲がってしまった。  
「……」  
「……。」  
後に残された二人の間を、朝の肌寒い風が吹き抜けていった。  
 
 
しばし呆然としていた当麻は、痺れを切らしたのか横にいる少女に話しかけた。  
「……えーっと、とりあえず行こうか」  
どこか落ち着かない当麻とは対照的に、ぼんやりした調子で姫神が答える。  
「そうだね。何も行動がないよりはマシ」  
そして二人は目的の地へと再び歩き始めた。  
 
 
「ところで、買い物って一体何買うんだっけ?」  
黙っているのもアレだと思い、トボトボと歩く当麻が口を開いた。  
「私服。言っておくけど。巫女装束じゃない」  
「ああ、服か。 ……カミジョーさんは服なんか選べませんよ?」  
「大丈夫。選ぶのは私。君は感想を言ってくれるだけでいい。  
 恐らく小萌もこれを考えてあなたに任せたのだと思う」  
「そっか、まぁ異性としての服の感想くらいなら言ってやれるが」  
「そう。君は見てるだけでいい」  
(……けど。小萌が考えてるのはそれだけじゃないはず)  
口には出さず、現在ここにはいない担任兼保護者の心うちを想像する。  
そんな姫神を見て、当麻はふーんと曖昧な返事をした。  
「でも、そんな考えて服選ぶ必要なんてあるのか?」  
その言葉にややカチンと来た姫神は、ジトーッとした目で当麻の顔を見る。  
「君は。私がどんな服を着ても。同じと言いたいの?」  
少し怒りが包まれている視線を向けられた当麻は  
さも当然といわんばかりの顔で何気なくこう答えた。  
 
「だって、姫神だったら何着ても似合いそうだし。実際その服だって似合ってるぞ?」  
 
その瞬間、姫神の歩みがビデオの静止ボタンを押したように止まった。  
「? どうした?」  
やや斜め後ろで硬直している少女に声を掛ける。  
「……ありがと。 それと。何でもない」  
姫神はそう答えて再び当麻と並び始めた。  
「そっか。 …そういえばもうそろそろ着くころだな」  
そう言って当麻は視線を前へと移す。  
 
「……」  
その当麻の横で姫神はやや俯きながら歩いていた。  
(……素直なだけなのか。それとも確信犯?)  
「……やっぱり。ずるい」  
「ん?何か言ったか?」  
何も、と答えた姫神の頬は、朝日にあたり赤く染まっているように見えた。  
 
 
やがて、二人の視界に目的の真新しいデパートの姿が入ってきた。  
「お、見えてきた。 思ったより混んでるっぽいな」  
デパート横の駐輪場や駐車場には、今にも誘導員が『満車』のプレートを掲げる準備をしている所だった。  
「そういえば」  
と、ここで先刻まで沈黙していた姫神が口を開いた。  
「ん、何だ?」  
「君。小萌と分かれる時に何て言おうとしたの?」  
「ああ、こっちは二人だって……」  
あっ、と当麻は思わず声に出る。  
それはデパートの入り口が見えてくると同時だった。  
 
 ──アイツのことをすっかり忘れてたぁああああああああ!  
 
口をあんぐりと空けたまま当麻はその場でフリーズした。  
(ええとこういう場合カミジョーさんはどうすればいいんデショ?  
  あいつとは破れない約束だしかといってこちらは小萌センセーのお願いだし  
 でもあっちは単に荷物持ちなんだからしかしこっちも付いて回らないとああああああああ!)  
当麻の脳内で大型熱帯低気圧『ビリビリー』と『ヒメガミー』がぶつかり合い被害を拡大していく。  
冷や汗まで噴出してきた当麻を、姫神は不思議そうに見ていた。  
「顔。青い」  
「いえいえ全然全くこれっぽっちも大丈夫ですよ!?ほらこのとーり圧力鍋が今ならたったの19800イェン!って高ぇええええ!」  
自分でも意味不明な事を言いながら顔を上げる。  
すると、ようやく自分が今立っている場所に気が付いた。  
デパートの入り口。  
すなわち約束の場所。  
そして  
 
「───へーーぇええええっ。 そりゃアタシは別に一人で来いとは言ってないけど、ねぇ?」  
 
ビクゥゥッ!と脊髄反射で体の全細胞が『恐怖』というサインを出した。  
「にしても女の子と来るなんて、どぉぉゆぅぅことなんでしょうかねぇぇぇ……」  
ピクピクッと顔を引きつらせ、パチパチッと静電気が弾ける様な音を立てて、御坂美琴はそこに立っていた。  
 
「何。知り合い?」  
ややいつもより沈んだ声で、姫神は後ろから当麻に尋ねる。  
当の本人は、もはや立ったまま失神しそうな状態だった。  
 
 
(まるで……不幸のバーゲンセールだ……)  
 
 
「──それで、その担任の先生に頼まれたって訳ね」  
「仰る通りでございます……」  
「君は。女の子と関わるのがそんなに好きなの?」  
「言い返す言葉もございません……」  
 
仁王立ちで構える美琴に対し、恐々とした様子の当麻。  
先刻までデパート前に落雷を落としそうな美琴であったが、どうにか話を聞いて落ち着いてきたようだ。  
「それで……えーっと、姫神さんだっけ? あなたも服を買いに?」  
と、横の姫神に話しかける。  
「そう。私は上条君に意見をもらうだけでいい。そっちの買い物の邪魔にはならないと思う」  
「ふぅーん……まぁ私は別に構わないけどね」  
(……別にいいのならなにゆえ私めは睨まれているのでございますか?)  
訳も分からぬまま美琴に横目で威圧され縮こまっている。  
それは最早視線だけで人を殺せそうな勢いだった。  
(というか何で御坂はあんなに機嫌悪いんだ?  
 確かに一人連れてくるってのは予定外だろうけど、買い物が中止になるわけでもないし  
 支障を来たすわけでもないんだからいいと思うんだがなぁ……)  
そう思いながら、姫神と会話をしている美琴をぼんやりと見ている。  
「な、ナニよ。私の顔に何かついてるワケ?」  
こちらの視線に気づいたのか、少し慌てた様子で美琴が尋ねる。  
「別に。 それよかこんなところでも何だし、とりあえず店ん中に入らねーか?」  
「うん。外で立ってるよりはマシだと思う」  
「そうね、とりあえず中に入りましょう」  
そして、三人は並んで自動ドアをくぐった。  
 
このデパートは、学生たちが夏休みに入る前───つまり、上条当麻が記憶を無くす前にできたまだ新しいものだ。  
地上7階に地下2階の駐車場を持つそれは、大型と言っても過言ではない。  
どこにでもありふれた外見をもつデパートであるが、中身は勿論学園都市特有のものだった。  
食品から家電まで、言わば学園ブランドと言われるそれの目の前では  
外からの大型メーカーや名のある老舗など、影にすらならなかった。  
入り口横のフロアマップを見ると、パッと見ても50店以上あろう店が、自然に迷路を作り上げていることが分かった。  
むろん記憶の中では当麻はここに来るのは始めてである。  
(……つっても、何故か本屋へのルートが分かるってことは来た事ある場所なんだな)  
場所は知っていても思い出にはない、記憶喪失特有の症状。  
そんなどこか不思議で複雑な気分に浸りながら、当麻はボンヤリと案内板を見ていた。  
「───っとアンタ。聞いてんの?」  
(食品コーナーも結構広いなー……でもやっぱり品質が良い分、高いんだろなー)  
「……こんなとこ来てまでスルーはないでしょうがッ!」  
バチィッ!と美琴の前髪から(相手の)保身なき零距離射撃が敢行される。  
「うぉったぁ!? あ、ああアブネーだろうが! 建物内での携帯電撃、並びに超電磁砲の使用はご遠慮くださいッ!」  
もちろん、零距離からでも冥王星からでも当麻の右手によって電撃は埃のように飛び散っていく。  
「君は。鈍いというよりも。むしろ断線してるかも」  
「まったく、今日くらいはちゃんと見ててよ……ってそうじゃなくて!さっさと三階に行くわよ」  
三階?と思い後ろの案内板に振り返ってみる。  
「三階にある。服の総合店。そのマップの右上」  
目で追うと、確かに三階の三分の一ほどを占める大きな店があるのが分かる。  
店には行った事はないのだが、何度か見たことのある名であった。  
「そーゆーこと。 ほら、さっさと三階上がるわよ」  
 
[──只今1階の食品店で朝のタイムセールを行っております。どの品も大変お安くなっておりますので──] 〔神奈川からお越しの──〕  
 「樹脂から胴まで切れる『万能包丁改』。只今より店頭販売を──」 {……子のお知らせです。に、20001号ちゃんの保護者様、2階の…}  
 
三階へと向かうエスカレーターの上で、三人は流れてくる音にボンヤリと耳を傾けていた。  
少し気になるのもあったが、すぐに頭の中から消し去る。  
しかし、それらのアナウンスの中の『安売り』という言葉が、少しだけ当麻の意識を覚醒させた。  
「あのー、御坂センセ? つかぬことをお伺いしてもよろしいでショウカ?」  
おずおずと一段上にいる美琴に話しかける。  
「ナニよ? 言っておくけどアンタの買い物は後にしなさいよ」  
「そうじゃなくて。……どのくらいお金をお使いになるご予定で?」  
「ああ、安心しなさい。アンタが裕福な生活を送ってないことくらい分かるから、多くとも1万円以内で許してあげるわよ」  
「ありがとうございますッ! 正直死を覚悟して食費削ろうかと思ってました!!」  
「……情けなさよりも。嬉しさの方が大きいっていうのは。どうかと」  
やれやれ。と姫神が溜息をつくのと同時に、彼女等は三階の床を踏んだ。  
 
でかい、というのが当麻の最初の感想である。  
エスカレーターの前に現れた店は、まさしく大規模と言っていい店だった。  
見渡す限りの服、服、服。 三、四メートル以上ある天井にも、所狭しと服が掛けられている。  
「えーっと、女性服コーナーは……」  
キョロキョロと周りを見渡す美琴の横で、当麻と姫神はただただ呆然としていた。  
「……まるで。密林」  
「服に対する情熱が結晶化したらこうなるんだな……」  
「ちょっとー? つっ立ってないでさっさと行くわよ」  
服のジャングルの茂みから、御坂がヒョコっと顔を出す。  
「うぉっ!猛獣かッ!? ……なんだ、猛獣じゃないか」  
「……なぁーんーでーイチイチ気に触ること言うのかなこのバカはッ!」  
「ちょっ!? 周りの服焦げますよイイんですか御坂センセッ!」  
ピタッ、と寸前で止まった。  
あと一秒遅かったら放電していたであろうその髪は、「父さん、妖気を感じるよ」というところで硬直している。  
「くぅぅ……まぁいいわ、とにかく行くわよ」  
そう言ってぷいっと振り返り、二人を導く密林ガイトに徹した。  
「君はもしかして。 そういう趣味があるの?」  
ジトーッとした目で、横に並んでいた姫神が投げかけてくる。  
「そ、そんなことありませんよ? ここにいるのはいたって普通の高校生カミジョーさんですッ!」  
「普通の高校生は。不幸にも女の子に関わる事件に。何回も巻き込まれない」  
「うっ!? いや確かにそうですけどもっ!」  
(……やっぱり何度も首突っ込んでるのねこの馬鹿は)  
はぁ、と美琴は何も言わず溜息をつく。  
正直ここまで来ると、もはや偶然というより漫画の名探偵なみの事件遭遇率である。  
「けど、まぁ──」  
と、不意に当麻が落ち着いた調子で話す。  
 
「──俺は後悔してないぞ? それでソイツが助かったのなら、俺だって嬉しいしな」  
 
ピタッ、と前を歩く美琴と横の姫神の動きが同時に止まる。  
急に停止した美琴にぶつかりそうになり、「っと?」と歩みを止める。  
「? どうしたんだお前ら」  
「なっ、「何でもない。」 わよ! ほら!シャキシャキ歩く!」  
「あ、ああ……」  
はて? と思ったが、大して気にせず再び歩み始めることにした。  
 
大して気にしなかったため、二人の顔が赤みがかっているのも分からなかった。  
 

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