その日、学園都市のとある場所で科学と魔術が交差した。
それは偶然か必然か、はたまた運命の悪戯だったのかは定かではない。
ただ二人の人間が出会った。その事実が未来の歯車を回す。
「私。■■■■」
「プリンセスゴッドのラブオータム、ですか―――良い真名です」
「………。貴女は」
「神裂火織と申します。……できれば、もう一つの名は語りたくないのですが」
「もう一つ?」
「魔法名、ですよ」
ある程度予想していたとはいえ、■■は思わず一歩前へ進んだ。
「………。堕天使メイド」
「ッ!?」
思いもよらぬ言葉の斬撃を受け神裂の体がよろめく。
■■は、更に一歩進み言葉を重ねた。
「堕天使エロメイド」
「ぐはぁぁっ!?」
神裂はもんどりうって地に伏し、荒い息を吐きながら思考を巡らす。
(なぜ一部の関係者しか知らない筈の情報を!? ハッ! もしや学園都市中にその事が!?)
自らの恐ろしい想像に捕らわれ、体の自由を奪われてしまう。
わなわなと震える神裂を視界に収めた■■は、無表情のまま暢気に近付いて行き、
「……あの。大丈夫?」
そっと手を差し出した。
「私も格好良く、ゴッドスレイヤー・ファイヤークロスと名乗ってみたかったのに――」
ぶつぶつと意味不明な台詞を呟いていた神裂は、その手を不思議そうに見詰めた。
数刻の時が流れ、二人は固く手を取り合っていた。
「同じゴッドの真名を冠し、長髪黒髪の貴女には人の縁を感じます。
共に力を合わせ、もう一人のゴッドを篭絡しましょう」
「………。(こくん)」
神裂の真摯な熱い言葉に、■■は静かに頷く。
二人の間にどんないきさつがあり、心の交流を交わしたのかは、最早重要な事ではない。
ただ言えるのは、この異色のコンビ結成がもたらす影響が、
一人の少年の運命を大きく左右するであろう事が、確実に定められたと言えるのみである。
そんな二人の様子を、完璧に気配を断ち物陰から伺っている者がいた。
「あっちゃー、何か大変な事になってるぜい、カミやん。
こりゃ早いとこ覚醒して神の上に行かないと、確実に殺(犯)されちゃうんだにゃー。
……こうしちゃおれん。オレっちも早急に行動開始だぜい」
足音も立てず、その場を離れ走り出す。
そして、ぐんぐんと速度を上げながらもその口元からは、
「くっくっく、ねーちんに新コスチュームが必要なんだぜい。
おっと、巫女服にも斬新なデザインも必要だな。忙しくなって来たんだにゃー」
楽しげな声と、面白い物を見付けた子供のような笑みが漏れ出ていた。