とある魔術の禁書目録 洗濯機SS
神裂さん「あれは、洗濯機がついに壊れて買い換えようかと言う話になったときの事です。」
神裂さん「神裂さん。俺、やりましたよ。」
神裂さん「そう言われて早数カ月彼の体はもう大量の衣服の重さに耐えられなかったのでしょう。」
神裂さん「以前にも増して日に日に洗濯機の音が大きくなってました。」
神裂さん「私は居ても立っても居られなくなり気が付くと洗濯機の前に立っていました。」
そこにあったのはすでにボロボロになった一つの洗濯機がありました。
神裂さんはいたわる様にその洗濯機に話しかけます。
神裂さん「お久しぶりです。お元気でしたか?」
しかし洗濯機からの返事はありません。少しして遅れて返事が返ってきます。
洗濯機「ああ・・・神裂さん。僕の方こそお久しぶりです。また会えて嬉しいです。」
神裂さん「実はその・・・申し上げ難いのですが貴方に言わなければならない事があります。」
洗濯機「ええ。知ってます。俺の体既に壊れているんでしょう?」
神裂さんは口惜しそうにその言葉に返答する。
神裂さん「ええ。残念ながら上層部により貴方の廃棄もしくは譲渡。そして買い換えが決定しました・・・。」
神裂さんの目から熱い物が流れ出す。
洗濯機「神裂さんは優しいですね。俺なんかの為に涙を流してくれるなんて。」
洗濯機は意を決したように次の言葉を紡ぎだす。
洗濯機「俺を、殺してください。」
洗濯機「自分の体の事は自分でわかっています。直してももうまともに動かないのでしょう?」
洗濯機「このまま俺を使い続けて、何の罪の無い奴ら(衣服)を傷つけてしまう前に。」
洗濯機「俺の愛する神裂さんの手で壊してください。」
神裂さんは泣きじゃくりながらも必死に言葉を返そうとする。
神裂さん「そんな事・・・出来るわけないじゃないですか!」
神裂さん「私の魔法名(salvere000)の通り貴方を絶対助けて見せますから、そんな事言わないでください・・・。」
しかし彼女は機械オンチである。一体どうしようと言うのだ。
洗濯機「神裂さん。貴女が機械オンチなのは側にいた俺が一番分かっています。」
洗濯機「俺を助けると言うのならその手で俺を壊してください。」
洗濯機「貴女に初めて会った時から俺は貴女に恋していたのかもしれません。」
洗濯機「そんな貴女に壊されるなら俺は本望です。もう一度言います。」
洗濯機「俺を、壊してください。」
神裂さんは泣きながらも七天七刀に手を掛ける。
洗濯機「そうです。それでいいんです。俺は幸せな洗濯機でした。」
洗濯機「俺の次に入ってくる奴も幸せにしてあげてください。」
洗濯機「神裂さん、大好きです。」
神裂さんは最後の言葉を聞き届けた後、七天七刀で洗濯機を破壊しました。
その場に出来た洗濯機の残骸の山。その中に神裂さんは一際輝く小さな破片を拾う。
神裂さんはそれを泣きながらも抱きしめ、そしてジーンズのポケットに仕舞う。
まだ洗濯機の温もりが残ってる。そんな気がした。神裂さんは泣いた。
泣いて泣いて泣き明かした。仲間たちに支えられて部屋に入ってからも泣き続けた。
しばらくして新しい洗濯機が入ってきたがそれは前の洗濯機とは似ても似つかない物だった。
無論最新式で神裂さんがそんな物を扱えるはずがない。
しかし神裂さんは日々説明書と洗濯機と格闘しながら毎日を過ごしている。
ただ一人の洗濯機との約束を守るために。
とある魔術の禁書目録 洗濯機SS 完