衣替えが完了し、もはや夏服を着た学生はいなくなった学園都市。
季節はすっかり秋になっていた。
どこからか鈴虫の鳴き声が聞こえてくるなか、
とある学生寮の一室では、一人の少年が机の上にノートを開き、そこに書かれた数字を見て、なにやら深刻な表情を浮かべていた。
その少年ーー上条当麻は、開いた家計簿の数字をもとに、異能の力なら何でも打ち消す右手で、電卓を打っていた。
そして、表示された数字を見て、驚きの表情に変わる。
「・・・なっ!?食費が先月の倍以上になってやがる!
インデックスのヤツ、いくら食欲の秋だからといって限度ってもんがあるだろ・・・」
そう言って、本来自分の物のはずのベッドで眠る銀髪少女の方を見る。
「このままだと一週間後には食費が尽きてしまう・・・何とかしなければ!!」
そう宣言し奮い立つものの、時刻はすでに2時を過ぎている。
突然やって来た睡魔に勝てず、上条は瞼を閉じた。
ーー上条は夢を見ていた。
目の前には花畑が広がり、真ん中辺りに、天から光が差し込んでいた。
その光景を眺めていると、光の中から、
堕天使メイド姿のかんざきかおりじゅうはっさいがあらわれた!
そして、神裂は、
「私はあなたに恩を返すためにやって来ました。何でも言って下さい。きっとあなたの願いを叶えてみせます」
「な、何でも?じゃあ、インデックスの食欲をどうにかしてくれ」
「残念ながら、あの子の食欲はどうにもできません」
「えぇっ!?何でもって言ったじゃん!!」
「ーーうるっせぇんだよ、ド素人が!!」
あまりの剣幕に呆然と立ち尽くす上条に、神裂は、
「確かに、あの子の食欲はどうにもできませんが、解決法はあります。それはーー」
ーーそして、朝が訪れた。
目を覚ました上条は、半信半疑で、夢の中で神裂の言った方法を試すことにした。
「・・・ん、おはよう。とうま」
インデックスが目を覚ます。すると、案の定空腹を全力でアピール。
「とうま、とうま!わたしはすっごくおなか減ったんだよ!!
朝御飯はまだなのかな?」
すると、上条はインデックスに向けて、手のひらを差し出す。
その上には、銀色の紙に包まれた、小さな四角い物が乗っていた。
「・・・?これは何かな、とうま?」
「ふっふっふ、・・・これは学園都市製の味が無くならないガムなのです。
騙されたと思って食べてみなさい」
インデックスは上条の手のひらからガムを摘み取り、銀紙を外して中身を口に運ぶ。
「ぱくっ。・・・とうま!」
「!?・・・な、なんでしょうか?」
「おいしいかも、これ。たしか、味が無くならないんだよね。いつまでも食べれるなんて幸せかも」
(やった!いろんな種類の味を買っておけば、食費がだいぶ浮くぞ。
ありがとう、夢の中の神裂さん)
その後、インデックスがすぐに飽きてしまい、結局元に戻ってしまったのは秘密。
終わり