「ふふふ。この力って意外と便利」  
 
深夜。  
上条当麻の部屋。  
姫神秋沙はこの日のためにピッキングを習得し、堂々と玄関から入ってきた。  
 
姫神は慣れた様子で風呂場へと向かう。  
実際にもう何度も忍び込んでいる。  
「やっぱり。こっちにいた」  
 
風呂場に入ると浴槽に丸まっている上条がいた。  
そっと近寄りその寝顔を覗き込む。  
 
「可愛い」  
 
頬を突いてみる。  
ぅん、と呻き声を上げるが、上条が起きる気配はない。  
 
もっと一緒にいたいが気付かれるのはまずい。  
「また明日」  
スッと立ち上がり、後ろを向いて去って行った。  
 
 
 
 
深夜一時。  
姫神が去った後、その姿を見送る影がいた。  
 
「秋沙、最近よく来るね。私が戸締りしなきゃいけないんだけど……。  
 でもしょうがないかな」  
 
上条のYシャツだけを着たインデックスが姫神に気が付いたのは最近のことではなかった。  
初めて姫神が上条宅に侵入した時、ちょうどトイレに行きたくなり起きたインデックスは物音を聞く。  
カチャッという鍵が開く音がし、何かが部屋の中へと入ってくる気配がした。  
恐る恐る見てみると、姫神秋沙がお風呂場に入るところだった。  
 
ふう、と嘆息したインデックスは困惑したがすぐに理由に気付く。  
「しょうがないなあ」  
インデックスは小さな声で呟いた後、そのままの状態で姫神が去るのを待っていた。  
 
少ししたら玄関の開く音がし、姫神が帰ったのを確認するとインデックスはドアに鍵を掛けて上条の様子を見に行く。  
相変わらず狭い空間で蹲っている上条を見たインデックスは「ふふっ」っと笑い、ベッドへと戻った。  
 
 * * *  
 
深夜三時。  
 
「何で電子ロックじゃないのよ。かなり手間取っちゃったじゃない」  
 
再び小さな影が現れる。  
 
「せっかく苦労して寮から抜け出したのに意味がなくなるところだったわ」  
 
御坂美琴は上条宅に侵入した。  
目的はもちろん上条だろう。  
美琴がキッチンへと入ると悩ましい声が聞えてくる。  
 
あっ、…んっ…、とう、まぁ……あんっ、そんな、ところ、触っちゃダメ……。  
 
聞いたことのある声だった。  
その声はいつもの声とは違い艶がある。  
美琴は同様を隠し切れない。  
 
「な、何なのよ、この声は」  
 
美琴はインデックスが上条の部屋に住んでいることを知らない。  
上条が浴槽で眠っていることも知らない。  
上条がどこで誰とどんな関係を築いているかもわからない。  
嫌な予感はどうしても拭えず、部屋の中を覗いてしまう。  
 
…とうまぁ……ダメだって…。  
 
美琴の瞳に映ったのは一人の少女だった。  
上条と重なっているわけではなさそうだ。  
ベッドの上にただ一人の少女が悶えている。  
 
美琴の額から興奮からかピキッと一瞬電気が弾けた。  
その光で部屋が照らされる。  
一瞬だったがはっきりと見えた。  
ベッドの上で横たわる少女の股の間には一匹の猫がいた。  
その猫が少女に刺激を与えているのだろう。  
上条でなかった安心感からか少女がこの部屋に泊まっているという疑問は吹き飛んでしまった。  
 
美琴が、はあ、と息を吐いた時、パッと電気が点いた。  
 
「あれっ、御坂? 何やってんだ?」  
「あ…えっ? いや、ちょっと…ね…」  
「ちょっとっておまえなあ、今何時だと思ってんだよ?」  
「い、いいじゃない。あたしがいつどこで何をしてても!」  
「お前も女の子なんだから、こんな時間に男の部屋にいたら問題だろ?」  
「そ、そんなことより! なんであの子があそこで寝てんのよ!」  
「あ〜、え〜っと、今日はなんか追い出されたらしくてな。そんでどうしてもって……」  
「あ、あんたはそんなことで女の子を家に泊めるの!?」  
「まあ、しょうがないだろ。上条さんは一人寂しく浴槽で寝てるから問題ないしな」  
「そ、そう。じゃ、じゃあ、あたしが寮の門限に間に合わなかった時にはここに泊めてもらうことにするわっ。じゃあね!」  
 
美琴は顔を真っ赤に染め、焦って早口になりながら言いたい事だけ言うとさっさと帰ってしまった。  
変な言い訳が通じたことに違和感を覚えたが、なぜか誤魔化せたようだ。  
 
「はあ、なんだったんだ…?」  
 
トイレに起きただけの上条はインデックスがスフィンクスに何をされているかは気付かず再び浴槽で眠る。  
 
 * * *  
 
次の日、インデックスは小萌の家へと泊まりに行った。  
久しぶりに上条はベッドの上で眠れると考えているとドンドンと玄関のドアを叩く音がする。  
右手で頭を掻きながら欠伸をする上条はドアを開けると、顔を真っ赤に染めた美琴が立っていた。  
 
「きょ、今日、門限に遅れたから帰れないの! と、泊めてもらうからね!」  
 
美琴は一言だけ声を掛け、さっさと部屋の中へと入っていく。  
あっけにとられている上条は大きく溜息を吐き、めんどくさそうに美琴の後を追った。  
 
 
上条の部屋に入った美琴は動揺してしまい上条の顔が見れない。  
いつもならもう寝てもおかしくはない時間だが、そんなことを考える余裕はなかった。  
 
「ちょ、ちょっと、汗かいたから、しゃ、シャワー借りるわよっ!」  
 
緊張しているせいで少し語尾が強くなってしまう。  
いつも反省はしているがどうしても直せなかった。  
 
美琴はタオルを借り、服を脱ぐ。  
「あいつはいつもここで……」  
ち、違う!  
あたしはそんなこと考える変態じゃない!  
そう自分に言い聞かせるがどうしようもなく興奮してしまう。  
男の部屋で、それも思いを寄せる上条の部屋で裸になっているという事実が美琴の体温を上昇させ、ただでさえ真っ赤になった身体をより濃く紅潮させた。  
その火照りを冷ますように少し温めのお湯で身体を流し、綺麗になるまで身体を洗う。  
なぜかいつも以上に神経質に身体を洗ってしまうが、そんなことを気にしている余裕はなかった。  
 
ここに来るには大きな決意が必要だった。  
それは自分の身体を上条にまかせてもいいと思う程の決意だ。  
美琴はまだ早いと思いながらも股の間を入念に洗っている。  
その行為はこれから起こることに、いくばくかの期待を込めているようにも見えた。  
 
「ふう、さっぱりした」  
 
風呂から出た美琴はピンクの可愛らしいパジャマを着ている。  
シャワーで温まったのか身体はさっきよりも赤い。  
赤いというよりもピンクに近く、可愛さを何倍も引き出していた。  
パジャマと同じような薄いピンクで、それが妙に色気を漂わせている。  
上条は戸惑ったが、それを表に出すといいように突っ込まれそうだったので、いつも通りに振舞うことにした。  
美琴は上条の存在を気にせず、寝る準備に取り掛かっている。  
鞄から歯ブラシを取り出し水を含ませ、磨き始める。  
 
「あんたもう歯は磨いたの?」  
「いや、これから」  
「じゃあこっち来て歯を磨きなさい」  
「あ、ああ」  
 
上条は美琴の指示に従い歯磨きを始める。  
冷静なフリをしている美琴だったが心臓が悲鳴を上げそうなほどドキドキしていた。  
上条が寝る準備を済ませたのを確認すると美琴はベッドの上へと移動した。  
そしてどこかへ行こうとする上条を呼び止める。  
 
「あ、あなたの部屋なんだからちゃんとベッドの上で寝なさい!」  
「でもお前がベッドを使うだろ? 俺は風呂場寝てくるよ」  
「さっき私が使ったばかりだから濡れちゃうわ。そ、そしたら風邪引いたりして面倒だし……い、いいからベッドの上で寝なさい!」  
「あぁ、わかったよ。じゃあ、お前は何処で寝るんだ?」  
「も、もちろん、ベッドよ」  
「何言ってんだ!? 一緒に寝るってことか?」  
「そうよ。文句ある?」  
「いや、でもよ……」  
「あたしがいいって言ってるのよ。だから早く寝なさい」  
 
上条は有無を言わせない迫力を纏い始めた美琴に言われ、ベッドの上へと移動した。  
上条に続いて美琴もベッドへ寝転がる。  
 
歯ブラシやパジャマを持っていることを考えると、美琴は初めから上条の家に泊まるのが目的なんじゃないかと思わせるほど用意がよかった。  
 
「なあ、御坂。お前本当に門限に遅れたのか?」  
「ど、どういうことよ?」  
「だって用意がしっかりしすぎてねえ? 初めから泊まるのが目的みたいだな」  
「な、なに言ってんのよ! これは全部さっき買ったばかりなのよ!」  
「それにしては使い込んでる気がするけど……」  
「そんなことはいいから! 私の質問に答えてくれる?」  
「ん? なんだ?」  
「どうしてそんなことになったの?」  
「どうしてって、お前が突然やってきたからだろ?」  
「そのことじゃないわよ!」  
「じゃあ何のことだ?」  
「記憶よ」  
「ああ、そのことか」  
「そのことかって、大事なことじゃない。だからこっちは誰もいないような時間に訪ねてきたっていうのに」  
 
もちろんそんな理由からではないのだが、昨日自分が犯した失態を誤魔化すためにそれらしい理由をこじつける。  
 
「まあな。俺が記憶喪失だっていうことを知ってるのはお前の他にはもう一人だけだ。  
 それは誰にもバレちゃいけないことだから秘密にしといてくれよ」  
「もちろんよ。あたしはあんたの嫌がることはしないわ」  
「お前、会う度に超電磁砲撃ってる相手によくそんなこと言えるな」  
「あんただから大丈夫っていう確信があるからしてるだけじゃない。気にすることじゃないわ」  
「まあなんとかなってるけど、もし失敗したら俺、死んじゃうからなあ。気にしてくれよ」  
「そうね。これからは少しは気をつけるわ。で、いつからの記憶がないの?」  
 
上条は覚えていることを全て話した。  
なんだかんだ言っても美琴はいつでも上条の味方をしてくれる。  
天使になった風斬氷華の元へ行くときには身を挺して敵を足止めしてくれた。  
それなりに心配もしてくれているようだし、カエル医者同様にどんな時でも信用できる人物だと思っていたからだ。  
巻き込むようなことは極力避けるが味方が増える方が誤魔化し易い。  
上条は美琴が記憶をなくす前の自分を知っているかと期待もした。  
その期待はほとんど空回りに終わったが、それでも味方ができたのは心強かった。  
 
「怖くは、なかったの?」  
「ん? どうだろうなあ」  
「どうだろうって、あんた……」  
「ただ違和感はあったな。みんな今の俺じゃなくて、記憶をなくす前の上条当麻の知り合いなんだ。  
 俺だけが赤の他人な気がしてな……」  
 
美琴は横になり上条の方へ身体を向ける。  
上条は相変わらず天井を見ていた。  
こころなしかその瞳は暗く、寂しそうに見えた。  
いつもの面倒そうな態度ではない。  
上条自身に起こった現実に向き合い苦悩してきた欠片が見えた気がした。  
 
「こっち向きなさい」  
 
一言だけ声を掛ける。  
上条は珍しく美琴の言葉に従った。  
美琴は上条の頬を両手で優しく包み、自分の胸へと引き寄せる。  
上条の頭を撫でながら、  
 
「これからはどんどんあたしを頼りなさい。どんなフォローでもしてあげるわ。  
 だから一人で抱え込まないで……」  
 
囁くような小さな声だったが、上条の耳にはしっかりと届いた。  
上条は甘えるように顔を上下に動かす。  
むにむにと柔らかい感触がした。  
その感触を楽しむことはできず固まっていると美琴が少しだけ離れた。  
少し下にズレて改めて上条と向き合った。  
 
いつもなら顔を真っ赤にして、逃げてしまうような状況だけど、今はなぜかそんなことをしようとしない。  
頭の中は熱いながらも冷静で、何を考えているかはわからないが真っ白ではない。  
 
しばらく見つめあっているとどちらからともなく近づき、距離がなくなった。  
二人の唇は重なり合う。  
美琴も上条も初めてのキスだった。  
 
あとは流れのままに動いていく。  
 
上条は恐る恐る美琴の胸に指を這わせた。  
それほど大きくはないが張りのある乳房を揉みながら、美琴の口内に下を差し込む。  
遠慮がちに触っているのが良かったようで美琴は、あっ、と呻いてしまう。  
キスをやめ、恥ずかしそうに頬を染める美琴が可愛く思え、上条は美琴を強く抱き締める。  
お互いの背中に手を回し、強く感じる。  
 
そして――  
 
二人が行為を済ませ眠りについた。  
 
 * * *  
 
その行為を覗いていた影がいた。  
それは――  
 
 * * *  
 
御坂妹Ver.  
 
「お姉さまとあのお方がこのようなことになっているとは……ミサカは何が起こっているのか理解できず、困惑してしまいます」  
 
御坂妹は病院を抜け出してはよく上条の家に来ていた。  
玄関から入ることは出来なかったが、今日始めて勇気を出して鍵を開け、入っていたのだった。  
そして音もなく部屋に入ると上条と美琴の声が聞こえてくる。  
聞いたことのない悩ましい声は徐々に大きくなり、それを消すために上条の唇で美琴の口を塞がれていた。  
嫉妬という感情よりも羨ましいという言葉が頭の中に思う浮かぶ御坂妹はそのまま二人の行為を熱心に見ていた。  
 
行為が終わりしばらくすると寝息が聞こえてきた。  
二人とも寝たようで、御坂妹が近づいても起きることはない。  
上条の隣にいる美琴は見たこともない満足そうな顔で眠っている。  
自身がそこまで感情豊かではないからか、美琴のクローンである御坂妹にはそんな顔は出来ない。  
 
ベッドの脇に座り込み考える。  
「これはチャンスです、ミサカは今立てた作戦を早速実行してみます」  
御坂妹は行動に出た。  
街にいるシスターズを何人か呼び寄せ、裸の美琴を外に運ぶ。  
さすがにこのまま外に置くのは良心が痛み、寮の部屋へと連れて行くことにした。  
 
それを見届けた御坂妹は裸になり、上条の横に寝転ぶ。  
胸を上条の腕に当てながら身体を密着させると、ん?と上条が目を覚ました。  
御坂妹は上条と会話をする前にキスで口を塞いだ。  
上条の舌が御坂妹の口内へと入ってきた。  
優しく身体を抱き締めながらキスをする上条に身を任せる御坂妹。  
上条の愛撫を受けていると気持ちが良くなりわけがわからなくなっていく。  
上条は御坂妹の秘部が濡れているのを確認すると御坂妹の上に乗り、自身のモノをあてがい一気に突っ込んだ。  
御坂妹は声を出さずに痛がるが、上条の好きにさせる。  
ただ強く抱き締め、上条のことを感じることに集中した。  
 
 * * *  
 
朝。  
上条と御坂妹はもう一度身体を重ねた。  
 
 * * *  
 
「あっ、見つけた!! ミサカはミサカは嬉しそうに、はしゃいでみる」  
「何やってンだ? こんなとこで」  
「ちょっとだけお願いがあるの……ミサカはミサカは昨日読んだ本の通りに恥ずかしがりながら言ってみる」  
「オレはお前に用はねェよ。早く帰れ」  
「ちょっと屈んでくれればすぐ帰るからっ……ミサカはミサカはちょっと拗ねた可愛さを全面に出して――ま、待って――」  
 
一方通行はラストオーダーを無視して歩き始めるが、ちょこちょこと付いて来るラストオーダーを捲くことはできなかった。  
 
「はあ、屈めばいいのか? ほら…っておい!!」  
「へへっ……ミサカはミサカはキスした嬉しさで飛び跳ねて――痛いっ」  
「てめェ、何してンだ!」  
「好きな人とキスすると健康にも良いし気持ちも良いってって教えてもらった。ミサカはミサカは人のせいにしてちゃっちゃと逃げちゃおう」  
 
杖を突いたまま一方通行は唖然とし、走り去って行くラストオーダーの後姿を見送った。  
 
 
とりあえず終わり  
 

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