「もう佐天さんったら……そんなにパンツが見せたいなら私が見せてあげますよ。  
 ……でも、ただそのまま見せるんじゃ、物足りないですよね」  
「うあ!? う、初春の花から、しょ、触手がっ!ひゃぁああ!?」  
「まずは体中に触手を這わせて――」  
「だ、だめ!そ、そこは……ひゃ!?」  
「絡みつかせて、お花を咲かせて――」  
「だ、だめだよ……うい…はる……!  
 あ……あ、あ、あぁぁぁぁ!? いやぁ……」  
「ああ、もう!目を閉じないで、ちゃんと見ててくださいよ。  
 ほら、お花の蜜がこんなに溢れてきましたよ。  
 パンツもこんなにぐっしょり……。うーん……でも白いのがないといまいちですね」  
「し、しろ…い、の……?」  
「あ、ちょうどいいところに御坂さんの知り合いの……なんてお名前でしたっけ?  
 とにかく、ツンツン頭の方にご協力してもらいましょう。嫌だなんて言わせませんから」  
 
「―――違う。そうじゃないだろっ。  
 友達なんだろ!大事な、大切な、掛け替えのない友達なんだろ!?  
 何が楽しくてそんなことができるんだよ!」  
「楽しいですよ―――楽しいに決まってるじゃないですか!!」  
 花飾りから大小それぞれ二つずつ触手が伸びる。  
 正面から一直線に伸びたそれは上条の体を貫かんとするものだ。  
 だが、上条はそれを真っ直ぐに見据えて対峙した。  
 左半身をわずかに引いて、固く握り締めた右の拳を突き出すと、迫る触手に拳を振るった。  
 最初の一本に拳の甲で払うように叩きつけ、続く三本を拳で殴り、振り下ろし、最後の一本を  
掌をかざして受け止める。  
 そして一瞬の後、全ての触手が引き裂かれるように弾けた。それは初春の花飾りにまで及ぶ。  
 初春は獣の咆哮を聞いた。まるで爬虫類の顎に喰い破られるかのような凄まじさだった。  
 色取り取りの花という花が髪留めを形成していた根ごと粉々になり、霧散した。  
「そ、そんな……私の花が……」  
 初春は愕然とした。  
 少年が歩み寄る。  
「嘘つくんじゃじゃねぇよ。自分の顔を鏡で見てみろ。自分の顔を触ってみろよ!  
 そんな辛そうな顔して泣いてる奴のどこが楽しそうに友達を傷つけてるんだよ……!」  
 
 
 そこで初春はようやく気づいた。  
 頬を伝うものがあった。熱いものが瞳から流れ出ていた。  
 制服の裾で必死に拭う。何度も拭い、結局止まらなかった。  
「違、う、違うの……に」  
 自分が嗚咽していることに初春は驚きながら、何かを吐き出すように言葉を発した。  
「今までずっと、嫌だったんです。すごく、恥ずかしかったんです。  
 佐天さんは友達なのに。友達だったのに!  
 一人で楽しそうに笑って、私は一人だけ辛くって……」  
「そいつは俺に言う台詞じゃねぇよな」  
「……」  
「おまえが言いたかったことを、伝えたかったことを言う相手は俺じゃないだろ」  
 行ってやれよ、と少年は初春の肩を叩いた。少年の掌の固い感触と温かさを不思議に感じつつ、  
初春は少年の顔を見た。  
「花、全部散らしちまって悪かったな」  
 少年は笑っていた。自分の身を貫こうと襲い掛かった相手に笑っていた。  
 気にすんなよ。もうお仕舞いだ。  
 そう言っているように、初春には思えた。  
「じゃあな」  
 そう告げると少年は去った。  
 取り残された少女はほんのわずかに躊躇った後、すぐに行動した。  
 
 
「……初春」  
「―――ごめんなさい…ごめん、なさい……ごめんなさい、佐天さん……」  
「こっちを見なよ」  
「ふぐっ!?」  
「また鼻水垂れ流しだよ。初春らしいけど」  
「でも……」  
「初春ッ!」  
「はい!?」  
「友達、だよね?」  
「―――はい。私達、友達です!とっても大事な、大切な、掛け替えのない人です……」  
「それって愛の告白?」  
「ち、違いますよ!」  
「でも、さっきの人……とんでもなくかっこよかったよね」  
「……はい」  
「惚れた?」  
「そ、そ、そんなこと」  
「惚れるよね……」  
「―――え?」  
 
end  
 

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