「はまづらが全然襲ってこない」  
「……はい?」  
 いつもの病室。いつものお見舞い。  
 そこで絹旗最愛は耳を疑った。  
「超すみません、なんか耳が悪くなったみたいです」  
「だから、はまづらが全然襲ってこないの」  
「……ああ、これは夢ですね、超とびっきりの悪夢なんですね」  
 そう自分に言い聞かせて、絹旗は再び林檎をしゃりしゃりと剥き始める。  
「ねぇ、きぬはた」  
「なんでしょうか」  
「はまづらがね、襲っ」  
「超もういいです! もう言わないでください!」  
 思わず林檎を握り潰してしまった。いけないいけない、最愛ちゃんったら悪い子。てへっ☆  
「ってそうじゃなくて、超どうしたんですか滝壺さん!?」  
「どうしたのきぬはた。今日のきぬはたはなんかおかしい」  
「おかしいのはそっちです! 浜面は超浜面ですよ!? なのになに言っちゃってるんですか!」  
「なにって、ナニ?」  
「超不思議そうにとぼけて言わないでください! あんの糞浜面、滝壺さんに何吹き込んでやがんだあああああ!」  
「きぬはたきぬはた、むぎのが感染ってる」  
「おっといけないいけない……じゃなくて! なんでそういう話が出てくるんですか!」  
「なんでって、はまづらは恋人だもの」  
「そうですよ、浜面は滝壺さんの恋人で……え?」  
 カランと乾いた音がする。可愛い最愛ちゃんはうっかりナイフを落としちゃったのだ。  
「どうしたの?」  
「すみません、これは超悪夢ですよね? 今の言葉は聞こえなかったものとして超処理します」  
「きぬはた酷い。そんなに私とはまづらが付き合ってるのが嫌なの? ……もしかしてきぬはたも」  
「超断じてありません!」  
「……ならいいけど。それできぬはたにお願いがあるの」  
「いやいやそれでも超よくないことがたくさんあるんですけど」  
「はまづらはね、私の身体が心配だってどんなに迫ってもヘタレなの。だから最終手段使う」  
「超スルーですか、もう超スルーなんですね、わかりましたよ。そのお願いとやらを聞きましょう」  
「ありがとう、持つべきものは友、さすがきぬはた」  
「嫌な予感しかしないので聞くだけ対策が練れます」  
「それでね、だからお使いを頼みたいの」  
 
 ということで。絹旗最愛はお使いを頼まれた。  
 なんでも、学園都市の裏ルートで手に入る神経に作用する科学的な惚れ薬と媚薬らしく、結構危ない代物らしい。  
 いかにも怪しそうなバイヤーからスポーツドリンクのラベルが貼られた500mlペットボトルを受け取る絹旗。  
 「君みたいな小さな子がこんな薬をこんな大量なんてねぇ……げへへ」なんてセクハラがましい目で見られたので殴り殺してやろうと思ったが、我慢。  
 だが、これでいいのだ。絹旗は友人の貞操を守るために、これを病院の売店で買った適当なジュースとでもすり替えて渡せばいいのである。  
 
 そうして、ペットボトルを片手に病院に戻る途中、この状況で最悪なものが目に入った。  
 浜面仕上である。  
 あっちも絹旗の存在に気付いたらしく、  
「おーい、絹旗ー」  
 なんぞと言いながら手を振りながら近づいてくる。  
 逃げよう、と思ったが恐らく目的地は一緒だ。  
「なんですか、今日も超浜面ですね」  
 なので、適当にあしらって、病院に行かせないことにした。  
「いやーちょうどいいところで会ったな。今から滝壺のお見舞いに行こうと思ってたんだ」  
「そうですか、私もこれから行くところでした」  
「じゃあ、一緒に行くか」  
「そうですね」  
 と、何も知らない浜面は無邪気についてくる。  
(計画通り! 後は適当な裏路地にでも殴り飛ばしておけば超大丈夫ですね)  
 などと考えながら、黒い笑みを浮かべる絹旗。  
「あ、そうだ」  
 そこで浜面がごそごそと何かを取り出した。  
「こんなものを昔の仲間からもらったんだが、絹旗はこういうの好きだよな?」  
「それは……!」  
 それを見た瞬間、絹旗の目の色が変わる。  
 浜面が取り出したのは、明らかに駄作であろう映画のペアチケット。  
 しかもそれは知る人ぞ知る、上映している場所なんてほとんどないがC級映画好きは一度は見てみたいランキング万年二位の幻の映画のチケットではないか。  
「なんでも結構レアなものらしいんだが……良さがわからないからなあ。滝壺と一緒に後で」  
「超今すぐ見に行きましょう!」  
 絹旗は浜面の言葉を遮って言った。  
 
 場所は移り変わって映画館。  
 チケットは入手困難、のはずなのになぜか客はほとんどいない。というか絹旗と浜面以外はいなかった。  
 映画が始まってすぐ、絹旗は持っていたペットボトルを隣の席の凹みに入れ、画面に見入ってしまっている。  
 浜面はダウン寸前だ。これから恋人の待つ甘ーい病室へ向かおうとしたところにこんな映画を見せられていてはたまったものではない。  
 ぐでっとしたまま、ただ時間の経過を待っている。  
(喉渇いたな……)  
 そこでふと浜面は思った。  
 考えてみれば、映画を早く見よう早く見ようという精神ばかりが先走って、飲み物も何も買ってないのである。  
 そこで目に付いたスポーツドリンクのラベルが貼られたペットボトル。見るからに未開封だ。  
(絹旗のやつは映画に集中してるみたいだし、後で買ってやればいいか)  
 と判断し、浜面はそれを手にとって開封。  
 新品らしいプラスチックの割れるかちかちという音をさせながらキャップを取り外す。  
 そして、それを飲もうと口に入れると、どろりとした何かだということに気がついた。  
「うわ、なんじゃこりゃ!」  
 思わず浜面は声を上げてしまう。  
「な、何してるんですか!?」  
 それに気がついた絹旗は驚いてそのペットボトルを取り上げた。  
 だがもう遅い。一度口に入った以上、それは思わず嚥下してしまう。  
 そうして、本来は薄めて使うはずの惚れ薬+媚薬の『原液』が、浜面の身体に吸収された。  
「ちょ……これ飲んじゃったんですか!?」  
「ああ、なんかヤバかったか……?」  
「見るからに超ヤバいじゃないですかっ!」  
「あれ……絹旗……?」  
 ぼやーっと焦点の合わない目で絹旗を見つめる浜面。  
「本当に超浜面ですね! 聞いているんです……か……?」  
 その浜面が、絹旗に迫る。絹旗は、大能力者だというのに本能的な恐怖を感じた。  
「ち、近づかないでください!」  
 思わず浜面を突き飛ばす。  
 その力は小さな少女のものではなく、浜面を思い切り吹き飛ばした。  
「きゃあっ」  
 だが、その衝撃で、手に持っていたペットボトルの中の原液が零れ、絹旗自身に降りかかる。  
「な、なんですか……超なんなんですかこれは……」  
 直接飲んだわけでもないのに、絹旗にもそれは効能を示した。  
 身体は熱くなり、まともな脳が霞んだように思考能力が低下する。  
 能力も上手く展開できず、意識が朦朧としてきてしまった。  
 降りかかっただけでこれならば、直接飲んだ浜面は、どうなるんだろう。そこで絹旗は霞んだ思考で思いつく。  
「きぃぬぅはぁたぁあ……」  
 そこにゆっくりと迫る浜面。頭から血を流しながらもふらふらと近づく様はまさにB級ホラーだ。  
「こ、来ないでください……」  
 本格的に危機感を感じた絹旗は後ずさる。だが、浜面はそれよりも早く絹旗に飛びかかった。  
「きゃあっ!」  
 絹旗は映画館の固いコンクリートに押し倒される。背中から打って痛みを感じ、自分の能力が解除されていることに気がついた。  
「なあ、絹旗……気持ちいいことしようぜ……」  
 そこに正気を失った浜面が絹旗のワンピースに手を掛ける。  
「や、やめてください!」  
 拒否を示すが、浜面は止まらない。  
 
 ワンピースをめくると、年相応に可愛らしい白地のショーツが目に入った。  
「可愛い下着だなあ……こっちも、まだ子供だし」  
 そう言いながら、浜面は絹旗の小さな胸を揉みしだく。  
「痛い、痛いです!」  
 乱暴な浜面の手つきに悲鳴をあげる絹旗。だが浜面は止まらない。  
「とか言いながら、こっちは濡れてるじゃねえか」  
 今度はショーツの、割れ目の部分を指でなぞり上げる浜面。  
「きゃぅ!」  
 それに絹旗は敏感に反応する。先ほど降りかかった液体のお陰で絹旗の身体は感じやすくなっていたのだ。  
 それの効能で、恐らくは濡れているのも事実だろう、と絹旗は思う。  
「ちょ、超お願いします……やめてください……」  
 だかこそ、絹旗はお願いする。能力の使えない今、腕力ではただでさえ大人の男で、しかも正気を失った浜面には勝てないのだ。  
「こんなの反応して、お前もまんざらじゃないんじゃないか?」  
「ひぅ!」  
 服の上から乳首の辺りを摘みあげる浜面。絹旗は面白いように反応する。  
「ほ、本当に止めてください……止めないと、滝壺さんに言いますよ……?」  
 涙目になりながら、絹旗は最終手段を繰り出した。  
「滝壺よりか、今は絹旗、お前の方が可愛い」  
「えっ……?」  
 虚を突かれて、絹旗は呆然とした。そこを狙ったように、浜面はワンピースを一気に捲り上げて、脱がしてしまう。  
「ちょっ……浜面っ!?」  
 絹旗の身につけているものが下着だけとなる。ワンピースの下から現れたブラジャーも、可愛らしい無地の白であった。  
「可愛いなあ……絹旗は」  
 そうして両手がワンピースで絡まって抵抗できなくなった絹旗の胸をブラジャーの上から揉む浜面。  
「ひゃあっ……やめっ……」  
「素直になれよ」  
 さらに、首筋にキスをする。  
「――ッ〜〜!」  
 言葉を無くして身を固くする絹旗。そこへさらに浜面は攻め入る。  
 ブラジャーを上にずらし、直接揉みだしたのだ。  
「いやっ! やめてくださいっ!」  
 揉んだり、乳首を摘んだりして弄ばれる絹旗はたまったものではない。だが、悲鳴を上げてもこの映画館では助ける人などいない。  
「きゃああっ」  
 調子に乗った浜面はピンク色の乳首を吸い上げる。  
「硬く勃起してて吸いやすいぞ、絹旗の乳首」  
「そ、そんなこと……っ!」  
 ついでに言葉責めも忘れない。そこで絹旗は浜面の手が下に降りていくのを感じた。  
 だが、気付いたときにはもう遅い。  
「さーて、ここはどうなってるのかなっと」  
 浜面は何の断りもなくショーツの中に手を入れ、秘部をなぞり上げる。  
「いやあああああああああ!」  
 すると絹旗は敏感に反応する。言葉では拒否を示すが、秘部は潮を吹くように、大量の愛液で満たされていた。  
「指、入れるぞ」  
「やめっ……やめてっ……!」  
 浜面は乱暴に指を突き入れる。十分に濡れていた絹旗のそこは、食いつくように浜面の指を受け入れた。  
「おお、絹旗のアソコ、ふやけるくらいにびしょびしょだぞ」  
「あっ……いやっ……いやぁっ……」  
 さらに浜面は指をかき回す。絹旗は身体を浮かせるほど反応し、浜面を楽しませる。  
「いやああぁぁぁっ……!」  
 やがて絹旗は一際大きく痙攣すると、ぐったりとしてしまった。  
 
「よし、これなら、大丈夫だな」  
 そう言って、浜面はぐったりとした絹旗のショーツを降ろす。そして、足を開きやすいように片足だけショーツから抜く。  
 次に足を開かせ、浜面は自分のそれを絹旗の入り口に押し当てた。  
「……今ならまだ超間に合います……やめてください……」  
 ぐったりとしたまま、絹旗は言う。  
「そうは言っても、止まらないんだよなあ」  
 だが、浜面は腰を推し進める。少しずつ、浜面の巨大なそれが、絹旗の小さな穴に埋まっていく。  
「やめてください……! それ以上進んだら、滝壺さんが超悲しみますよ……!」  
 そこでぴくりと浜面の動きが止まる。効果有りだ。  
「まだ、ここでやめたら今日のことは秘密にします……! だから、お願いですから……」  
「……ここまでやっておいて、合わせる顔なんかないよなあ」  
 その声に絹旗はぞくりとした。浜面の声に悲痛の色と、覚悟の色が混じっていたからだ。  
 そこで絹旗は自分で浜面の、最後の良心の呵責を打ち砕いてしまったことに気がついた。  
「スマン、滝壺、絹旗」  
 その言葉を合図に、浜面は一気に腰を推し進めた。  
「痛ああああああああああああああい」  
 処女を破られた痛みに、絹旗は大きな声を上げる。  
 だが浜面は止まらない。処女の血をさらなる潤滑油として利用し、激しいピストン運動を開始したのだ。  
「やめてくださいやめてください痛いです超痛いですだからやめてくださいあああああああああ」  
 いくら言っても浜面は止まらない。  
 むしろ、悲鳴を上げる度に浜面の動きは加速していくばかりだ。  
「絹旗の中、キツくて、気持ちいい……!」  
 浜面はそんなことを言いながら、さらに動きを加速していく。  
「痛い痛い痛い痛い! お願いしますもうちょっとゆっくりに!」  
 さらに加速。  
「痛いです痛いです!」  
 さらに加速。  
「もう許してくださいぃっ!」  
 絹旗は涙を流しながら言うが、正気を完全に失った浜面には届かなかった。  
「で、射精そう……!」  
 そこでふと、浜面が漏らした言葉に絹旗は新たな危機を覚える。  
「や、やめてください! 膣内はダメです超ダメです!」  
 だが、浜面は聞かない。  
 まるでラストスパートをかけるかのように、さらに動きを加速した。  
 絹旗はこの後を予感して、恐怖する。同時に、もしかしたら膣外に出してくれるんじゃないかとも、楽観的に考える。  
「射精すぞ、膣内に射精すぞっ!」  
 浜面は絹旗の最後の希望も容易く打ち砕いた。  
 さらに一段と強く腰を打ち付けると、浜面は絹旗の膣内に己の欲望を放出する。  
「う……そ……」  
 さらに何度か、どくんと脈打つ感触がして、絹旗は浜面が膣内に出したことを実感する。  
 絶望に精神を苛まれ、絹旗の意識は限界を迎えてそこで闇に落ちた。  
 
 
 
「起きて、きぬはた」  
「ん……?」  
 絹旗が目を覚ますと、そこは病室だった。  
 目の前にいるのは滝壺。  
 今までのことを思い出して、しかし今の状況に絹旗は目をぱちくりした。  
「あれ、私は超眠っていたのですか?」  
「そう、眠ってた」  
「……なんだ、超夢だったんですね」  
 その言葉に絹旗は心から安堵した。  
 だが、次の瞬間、申し訳ない気持ちで一杯になる。夢とはいえ、この友人を裏切るような行為をしていたのだから。  
「な、なんか私にできることがあれば超やりますよ!」  
 償いをしよう、と思い立って絹旗は明るく振る舞って言う。  
「じゃあ、ケーキを作る準備をしてほしい」  
 滝壺は指を立てて提案する。  
「ケーキ、ですか?」  
「もうすぐクリスマス。みんなでパーティ」  
「なるほど、そうとわかれば善は急げですね」  
 よっし、と絹旗は立ち上がる。その瞬間、絹旗はふらりとよろめいた。  
「大丈夫?」  
「超大丈夫ですよ。無理な体勢で寝てたせいか、少し身体が痛むみたいですけど」  
「そう。よかった」  
 絹旗の言葉に安心した風の滝壺。  
 そうして、言葉を続ける。  
「はまづらが映画館で寝ちゃったって言って連れてきたときは驚いたけど」  
「え……?」  
 その言葉に、絹旗は固まる。  
「そういえば、お使いのあれはどこにいったの? はまづらは持ってなかったみたいだけど……ってどうしたのきぬはた?」  
 絹旗は何も答えられなかった。  
 同時に、湿り気を感じる、太股。  
 
 絹旗は、今度こそ、ふらりと力を無くして崩れ落ちた。  
 

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