おまけ  
 
(あんなの見せつけられて黙ってるあたしじゃないんだからっ!見てなさいよ・・・)  
 上条当麻のデレ様――本人に言わせれば断固否定するだろうが、黒衣のシスターと赤面  
しながらなにやらアイコンタクトを交わす(ように彼女には見えた)その様を見せつけら  
れて、御坂美琴の心は大荒れに荒れていた。  
 
(絶対、引くっ!)  
 他の少女たちのことなど、この際どうでも良い。自分が王様を引くんだ――御坂美琴は  
決死の思いで二回目のクジへと手を伸ばす。  
 
 
「「王様だーれだ!」」  
 
 
(来たっ!ホントに来たっ!これであいつと・・・)  
 
 チラリと上条の方を盗み見る。何となく微妙な表情?何をさせてやろうか・・・と考えて  
いるうち、ふと顔を上げた上条と目が合ってしまった。  
 ズバッ!慌てて目をそらす。顔が火照っているようだ。気付かれただろうか?  
(・・・っ!あ、あたしなに考えて・・・そ、それに、あいつをち、直接指名出来るワケじゃな  
いし・・・それにしたって、何であいつさっきは命令より先に自分の番号バラしてんのよ・・・  
って、そうだ!)  
 まだ顔の火照りが収まっていないような気もするが、思いついた名案に御坂美琴は顔を  
上げる。  
「あたしが王様よ。さっきは命令より先に自分の番号バラしてるバカがいたけど、今度は  
ちゃんと番号と命令一緒に言うから」  
 
 周囲を見回す。バカ認定を受けた上条がなにやら情けなさそうな顔をしている。周囲の  
少女たちも、美琴の言葉で上条のミスに気付いたのか、鋭い視線を少年に向けている。オ  
ルソラ・アクィナスだけがなにやら余裕を見せているのが美琴には気にくわないところだ  
が、思いついたアイディアが上手く行くと信じて疑わない今、その余裕も今のうちよ、と  
強がってみせられる自分を感じて少しは気も楽だ。  
 
「1番が4番にキスしなさい。ほっぺとかじゃなくって、く、唇にするのよっ」  
(確率的に言ってもあいつに当たる可能性の方が低いんだから!女の子同士でキス・・・さ  
せといて煽っとけば、他の連中も同じような命令をしてくるはずっ!そしたらあいつと・  
・・今回はシスターさんと巫女さんが二人でしときゃいいのよっ!)  
 今回もどちらかに上条が入っているかもしれないことをあえて無視、さらには自分がそ  
ういう状況になったとき、必ず上条当麻と当たるとは限らないということを意識の隅から  
追い出して、御坂美琴は言い放った。  
 
「ええええええーっ、み、御坂、それはマズい!別のになりませんかと上条さんは哀願す  
る次第でありますっ!」  
 悲鳴を上げたのは、銀髪のシスターでも正体不明の巫女さんでもなく――件の少年、上  
条当麻であった。  
「あらあら。1番はわたくしでございますね。困りましたね、わたくしは主にすべてを捧  
げた身でございますから・・・でも、その身を顧みずわたくしを助けてくださった方でござ  
いますし、イギリス清教に導いてくださいましたのもあなた様でございますから・・・あな  
た様にくちづけよ、というのもきっと主のお導きなのでございましょう」  
 片手を、今回は微かにではない――明らかに紅潮した頬に添え、やたら説明的な長台詞  
を呟いたのは、先も(御坂美琴にとっては)見せつけられた黒衣のシスター、オルソラ・  
アクィナスだった。  
 
 
(ちょっと待ってーっ!何でこうなんのよーっ!)  
 御坂美琴の心の悲鳴など聞こえる様子もなく、オルソラが上条のそばににじり寄る。上  
条は真っ赤になってオルソラを見つめている。御坂美琴はと言えば――自分のあまりの迂  
闊さに言葉も出ない。  
 
 重ねて言うが、上条当麻は不幸な人間だ。  
 付け加えると、御坂美琴はその上条当麻にスルーされる運命の、不幸な(?)少女だ。  
 
終わり。  
 

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