・ロシアで逃避行中だよ
・二人とも戦闘でボロボロだよ
・戦うたび一方さんの黒翼は完成に近づいてるよ
・黒翼は何かの制御装置的アイテムでしたよ
・黒翼が完成しないと打ち止めは助からないよ
・でも黒翼が完成すると一方さんは死んじゃうよ
という自分でもよくわからない捏造のもと
※フィーリングで読んでね!矛盾まみれだよ!
微グロ注意
芯まで冷えた手と手を合わせ、かじかんだ指を絡ませる。ゆっくりと、せめてゆっくりと。
あとほんの少しでも、一緒に居られる時間が延びればいい。
この手を離してしまったら、もう二度と逢えないと知っているから。
けして手の届かない場所へ、昇り詰めてしまうことに気付いているから。
さよならの時間が永遠に来なければいい。
絡ませた指をもう一方の手のひらで包み、そっと指でなぞった。
冷えすぎたそれに、もう感覚はない。体温も感触もわからない。ただ優しい、気持ちだけを感じ取ることは出来た。それで充分だった。
「ねぇ」
「……なンだ」
打ち棄てられた粗末な教会の、ステンドグラスの下。
殆ど割れてしまっていたが、かつては美しいマリアがそこに居たと確かに窺わせる硝子の欠片たちに光が通り、凍り付いた地面に色を落としている。
「ミサカはね、あなたのことが…好きなのよ、って…ミサカはミサカは告白してみたり」
「……くっだら、ねェ」
――そんなこと知ってる。とっくに。ずっと前から――
打ち止めの瞳に泪が浮かんでいたかどうか、定かではない。何故ならもう、一方通行には何も見えはしなかったから。
視覚はとうに死んでいた。冷たい地面に横たわり、赤い視線を虚ろにさ迷わせる。
傍らに打ち止めがいる。彼女も無事とは言い難く、あちこちに血が滲み磨りきれた服が風にはたはたと揺れた。
そして、右手の肘から先は何処かで引き千切られたまま、気温の低さに救われいまだ腐敗はせず、ただどす黒く血の塊に覆われていた。
一方通行は顔の周りに散らばっていた硝子の破片を震える手を無理矢理に動かし、手探りでひとつ手に取った。
絡ませていた打ち止めの指を引き寄せる。
「おやゆび、ひとさしゆび、なかゆび」
「どうしたの?」
「…くすりゆび。左手の薬指」
「――あくせられーた、」
指の付け根に硝子を這わせ、くるりと一周。
「…ごめンな、指輪なンて、持ってねェから」
「あくせら…れー、た、ミサカは……ッ」
それは赤いリング。いつか消えてしまう、儚く頼りない愛の証。
「ミサカはッ!もっとずっと一緒にいたいよ!どうしてさよならしなくちゃならないの?ってミサカはミサカは涙声が収まらなくてっ、
あなたと離れることでしかミサカ達が助からないのなら、ミサカはいっそこのまま二人で消えてしまいたいのに!
ミサカはあなたに、大人になってから口づけと一緒に指輪をもらう予定だったのに!
ミサカは将来、あなたに新婚さんの三択台詞を言う日々を夢見ていたのに!
ミサカはっ、」
「打ち止め、。」
「ミサカは…それでもこの指輪を大切にするから、ってミサカはミサカは、。」
割れたステンドグラスから吹き込んだ吹雪は勢いをなくして二人に優しく降り注いだ。
一方通行の身体を黒い翼が侵蝕してゆく。もう止まらない。
それに比例して打ち止めの脳にネットワークが復旧してゆく。
この漆黒が彼を完全に包み切ったとき、一方通行は人でも天使でもないモノに堕ちて、ただ世界を廻す触媒と成り果てるのだろう。
もう、留められない。怖くないとは言わない。不幸だと思うし、悔しさは無限に溢れる。
それでも一方通行は、ほほに触れたくちびるの感触に気付けたことを幸せに思った。
そしてそこにドアをバーンと勢いよく開きながらとある顔面刺青(マッド)な狂科学者(サイエンティスト)がやってきた
「アハギャは!俺に黙って死ぬなんて許さないんだからね一方通行ッ!
これは学園都市の技術の粋を集めて作った『黒翼抑制ミックスジュース』!ちなみにこっちが『最終信号専用かいふくのくすり』!!
お前を殺すのはこの俺だァッー!だからこれで一旦完治しろそして完治してから俺に殺されろ」
ピュリファ!ぐびぐびっ。一方通行の状態異常はきれいさっぱりなくなった。げんき。
「ひゃははは!じゃあこれが日本への飛行機のチケットだ。表に車があるから吹雪が収まったら帰ってきなさい!じゃあの」
白衣の刺青野郎は帰っていった。二人は助かった。良かった。あとにはただ唖然とする二人だけが残された。マリア様は2828しながら全部見てる。
車はBMWだった。駐車ナビがついてた。ラッキー。一方通行は暖房の効いた車内を幸せに思った。
〜トゥルーエンド〜