『他の女に取られるくらいなら』
「あの方が他の女に寝取られそうになったなら……?
その場合、ミサカ達は強硬手段を取らざるをえません。
具体的に言えば無理矢理犯―――」
「い、一○○三二号の目の焦点がまったく定まっていません……、とミサカ一九○九○号は
ミサカネットワーク内で参加希望者の数が全妹達の七割を超えていることを報告します。
中には先手を打とうとしているミサカも……」
「あなたも私と同じ設定の目をしているはずです、とミサカ一○○三二号は突っ込みを入れておきながら
戦闘準備を始めます」
「……ミ、ミサカも」
「何ですか、とミサカ一○○三二号は強攻型フルアームズパック装備に換装しながら問いかけます」
「ミサカも、同行していいですか?とミサカ一九○九○号は電子戦型装備を手に頭を下げてお願いします……」
「……早くしなさい」
「あの人が他の女に寝取られそうになったら、どうするかですか?」
「そうなのよ。はっきり言って強敵揃い、しかも敵の数は日増しに増えていってるのよね」
「どうするかなんて……そんなの決まってるじゃないですか」
「……五和?」
「あの人を徹底的に守ります。女の方は蜂の巣みたいな穴だらけにしてぐちゃぐちゃのぐちゃぐちゃになってもらって
引き取ってもらいますから大丈夫です」
「…………」
「でも、そういう女の人がたくさんいるんですよね。できれば今すぐにでも片付けておきたいんですけど、
切りがなくて……。あ、でもこれって、あの人がまだ誰とも…その……寝ていないからなんですよね。
だったら、誰かがあの人と一緒に寝てしまえば誰が手を出そうとしても……その人のものということですよね?
後から手を出してもただでは帰さないつもりですけど。
そうとわかれば善は急げ、ですね。建宮さん」
「な、なんなのよ、五和」
「ちょっとお出かけしてきますね。あと、この間こっそり購入してた超精霊チラメイドってどこですか?」
「もし他の女に取られたら……か」
―――他の女があいつと。あるいはあいつを無理矢理……。
「何でかしら。気に入らないのよね。すごく気に入らない。
何だか変な胸騒ぎがすんのよねー……。あー、私なんであいつの部屋に向かってんのかしら。
あいつに会ってどうしたいんだろ。他の女がいたら……まあ、とりあえずまとめてぶっ飛ばすとして。
……あいつが一人だったら」
―――他の女に取られるくらいなら。
「……私は」
―――いっそのこと。
「―――私、が……」
無理矢理にでも。
「私の……」
美琴は悪魔のようなの囁き声に耳を傾け始めていた。
その悪魔の声は美琴と同じ声だった。
この悪魔はきっと、自分と同じ姿をしているだろうと美琴は思った。
終。