「上条当麻。こ、これ……」
「ん? 何だ神裂この箱……?」
「バ、バレンタインのチョコ……」
「は? 俺に?」
「他に誰が居るのですか?」
「そうだよな。悪い悪い――わざわざ義理チョコ一個にここまで悪いな。サンキュ」
「ぎ、義理ッ!? か、上条当麻、貴方は何――」
「開けていいか神裂?」
「え? あ……、こ、ここでですか?」
「駄目か?」
「い、いえ。問題ありません」
「そか。じゃ……おおッ!?」
「上条当麻。先に言いますが私の手作りです」
「すっげーなー。プロ並み……いやプロを超えてるよ……」
「そ、そんな事は……」
「いやいやこの仄かに香るカカオの香りなんか最高だぜ!?」
「そ、そうですか?」
「義理でこれなんだから本命貰う奴が羨ましいぜ……」
「ッ!?」
「食べていいか?」
「だから貴方はさっきから義理義理と……え?」
「だから食べていいか?」
「ここで?」
「駄目?」
「ッ!! だ、だめではないです……」
「そ。では早速……」
「…………」
「ン!?」
「!?」
「ンンンンンンンンンンンンンンンンンンンン……」
「ど、どうしました?」
「ンマいッ!!」
「ぇ?」
「何ですかこの旨さはッ!? 香り苦味甘味が絶妙にマッチしているのもさる事ながら、何かこう説明出来ない懐かしい感じがして――もう一個いいか?」
「え……? ええ。それはもう貴方の物ですから……」
「そうか!? それじゃ遠慮無く……クウウウウウッ!」
(色々納得行きませんがこんなに喜んで貰えて正直ホッとしました……)
「な、神裂」
「はい。何ですか?」
「このミルク味な……」
「!!」
「やっぱ懐かしい味すんだよな……ングング……やっべ止められね……どうやって……ングング……だしたんだこの包まれるみたいな奥深さ?」
「し、知りたい、ですか?」
「ん? うん、まあ」
「そうですか……」
「そうですかって言いながら何故上着……そう言やお前が上着なんて……な、何だ、そのシャツ胸が濡れて……?」
「ああ……こうしてパットを当てても染みて来てしまいましたね……」
「なに……が……?」
「母乳です」
「ぼ、にゅう?」
「すぐに止まるなどと土御門の言葉を安易に信用した私が馬鹿でした……」
「はあ?」
「『ねーちんも体を張らなきゃカミやんと釣り合いが取れないにゃー』などと言われてつい……」
「つい?」
「乳腺の働きを活発にする薬を少し……」
「の、飲んだのか?」
「(ええ……)」
「じゃ、これ……」
「上条当麻ぁ……」
「んなッ!? 神裂ぃ……」
「胸が……胸が苦しいのです……」
「え、おい……」
「吸ってください……ここには上条当麻……貴方への思いが沢山……」
「いや、詰まってんのは母にむぐううううう……」
「飲んで……ああ……満たされます……上条……と……ま……」