2月8日(水) バレンタインまであと7日
「あーねむてー。昨日あんまり寝てないからなー」
言わずと知れた上条さんはいつも通り学校が終えて公園を歩いていた。
「上条さんは刺激が欲しいです」
毎日ヤッていればどんなことでも飽きてくる。上条さんもマンネリし始めてきた性活に新しい刺激を欲していた。
「インデックスのやつはバレンタインのチョコ修行に出たし………バレンタインか。まぁ今回は大丈夫だろう、課題だしたし」
バレンタインのひとつ前のイベント。年末年始にかけて行われたおせち料理を思い出した。あれは文字通り地獄だった。
総合計50段を超えるおせち料理、それの3分の一を一人で食わされた。
それを思い出すだけで吐き気を催し、背中に冷たい汗が流れ出た。
「んー。野外も全員したし、露出も羞恥もやったしな〜。あとは何が残ってるんでせうかね」
「ツンツン頭発見!!ってミサカはミサカは後ろから抱きついてみる」
「うわぁっ、誰だ?」
「だーれだ?ってミサカは意地悪な質問をしてみたり」
「んー一応突っ込んでおくが、ミサカって自分で言ってるからな。みさかけの誰かってのは分かるぞ」
「おもわぬヒントを与えてしまった。ってミサカは落胆してみたり」
「その口調は打ち止めだな」
「うぅ、ミサカはばれてしまったってとうまを開放してみたり」
「元気そう?だな」
「元気だけど元気だけど、あまり元気がなかったりするってミサカは肩を落としてみたり」
「んーなにかあったのか?ってかあいつは一緒じゃないのか」
「うん。料理を作ろうって頑張ったら、失敗して怒られたってミサカは正直に言ってみる。でもあの人もあそこまで怒らなくてもいいのに」
「失敗って何したんだよ?」
「えーと、お鍋爆発ってミサカは一部しか語ってみなかったり」
「全部話せよ。まぁいいけど、で結局失敗しまくって台所を戦場にして一方通行に怒られて、家から出てきたわけか」
「あう、全部あたってるってミサカはたじろいでみる。でもどうしたらいいんだろう」
とまぁ打ち止めとの出会いはいつもこんな感じ、だが相手が本気で困っている以上、答えるのが男の役目ってやつだ。
「どうしたらって、何か料理しないといけないあれでもあるのか」
「あるってミサカは即答してみる。それにもう時間がないの」
「……もしかしてバレンタインデーか」
「おおっミサカは心を読まれたって驚愕してみる」
「バレンタインデーか、一方通行は知ってるのか?」
「多分知らないと思う、夕ご飯のことと勘違いしてるってミサカは推測してみる」
「なら、打ち止め。俺の寮で練習してみるか?」
「へ、いいの?ってミサカは突然の申し込みに驚いてみたり」
「バレンタインで、あいつにやりたいんだろ。なら一生懸命頑張って作ればいいじゃん。もう一週間しかないじゃなくて、まだ一週間もあるんだし」
「やった!!ありがとうってミサカはミサカは最上級の笑顔でとうまの手を握って早く行こうって促してみる」
「おっおお……そうだな、その手があったか」
その時打ち止めは気づかなかった。少年が新たな刺激を手に入れたことを。少年がかの有名な錬金術師さえも精神的不安に追い詰めた、背筋をも凍るような冷たい笑みで微笑んだことを。
「インデックスのやつはいないから気にしなくてもいいぞ」
「うん、おじゃまーしまーす。いえぇーい!ってミサカは他人の家ではしゃいでみる」
「おいおい、上条さんの家は一応下にも住人がいるわけなので勘弁してください」
「はーい」
「んじゃ、待たせるのもあれだし。はい、まずこれを着る。インデックスの予備エプロンだから、多分合うはずだぞ」
「早速着てみるってミサカは急いでエプロンを手に取ってみたり。おぉーかわいいなってミサカはうなずいてみる」
興味津津の様子でエプロンを着始める。だがここで問題発生、首からかけるタイプであれば打ち止めも簡単に着ることができたのだが、生憎首の後ろと腰の後ろで結ぶタイプだったのだ。
「これをこおして、んむぅってうまくできないってミサカはミサカは憤慨してみる」
「おいおい、その程度で怒るなよ、ったく後ろ向いてみろ」
「うん」
「……ほらできたぞ」
「ありがとうってミサカはミサカはくるりと回りながら遠回しに似合ってるって言ってほしいな」
「ああ、可愛らしいぞ」
「そこで似合ってるって言わないところ辺りがあの人とは違うってミサカはミサカは感心してみる」
「はははっ、あいつはあれだ、ツンデレちゃんだからな。よし、んじゃ手洗って待ってろ」
「はーいってミサカは元気いっぱいに返事をしてみる」
そんな打ち止めを見ながら思わず笑みが漏れる。少し考えてからキッチンへと足を向ける。
今後の予定はすでに決まった、より刺激的な、より味のある日々に進化させるための予定が。
「それじゃぁ打ち止め。今後の予定を話すぞ、よく聞けよ」
「うん」
「まずは最短コースは1日でマスターできるぞ」
「うん、それでいいよってミサカは早くお料理を始めた言ってせかしてみる」
「てい、人の話は最後まで聞きなさい」
「いたっ!!うぅいきなりチョップするなんてひどいってミサカは頭を押さえて一応続きを聞いておく」
「一応って……まぁいいか。普通コースはバレンタインデーまでの期間に家庭的なことを覚えて、家庭的なちょっと大人の女性にクラスチェンジだ。当然土日を抜かした5日間で覚えられるぞ」
「おぉ、大人の女性、それは今のミサカに足りないものってミサカは深々と考えてみる」
「で最後の最長コースは男性の気持ちに応えられるような素敵な女性に。そう新妻のような家庭で男性をリードできるようになれる」
「おおおぉ!!すごいすごいってミサカはミサカはまるで夢のような話だねっておどろいてみる」
「だがなこれが夢じゃないんだよな。で打ち止めはどれを選ぶ」
「ちょっとまってってミサカは考える時間をもらってみる」
「ああ、いいぞ」
鬼畜な少年がいた。すでに戻ることのない少年がいた。健気に少年を信じ、ついてきた少女はすでに狼の……いや、魔の手につかまっていた。
「えっと、じゃぁ最長コースってミサカはミサカは不安を隠しつつ言ってみる」
「えらいぞ。一方通行を二人で驚かせて感動させようぜ」
「うん、頑張ってあの人のことをぎゃふんっていわせてみたいってミサカは意気込んでみる」
「最初に今日の夕飯一緒に作ろうぜ」
「夕飯ってミサカはチョコレートじゃないんだってミサカは驚いてみる。」
「ああ、打ち止めの話を聞いてると、まずは包丁とか鍋とかの使い方から学んだほうが効率が良いだろ」
「なるほど」
可愛らしくもぽんっと相槌を打ってうんうん頷いている。食べたくなるぐらいにその仕草は可愛かった。
例えロリだと言われようと、上条当麻はやり遂げる自信と度胸をもっている。
「今日の夕飯のメニューは無難にカレーライスでいいだろ」
「やった、ミサカの大好物の一つだってミサカはミサカは大はしゃぎしてみたり」
「まず打ち止めにやってもらうことは、冷蔵庫の中にある野菜を洗って皮をむいてくれ」
「はーい………えーっと何を出したらいいのか分からないってミサカはミサカは首を傾げてみたり」
「打ち止めがカレーで食べたことのある食材を出したらいいぞ」
「んー、おにくぅ、じゃがいも、にんじん、たまねぎ……かなってミサカはミサカは黄泉川が作るカレーを思い出して言ってみる」
「そんなもんだろ、んじゃ流し台で皮をむいてくれ」
「よいしょっと」
「っていきなりまてぇい」
「うわっ危ない!ってミサカはミサカはとうまのちょっぷをさけてみたり」
「まったくお前は袋から出しすぎだって、俺と打ち止めの二人だけなんだからたくさんだすなよ。二人分だからな、よく考えろよ」
「うん……あれってミサカはなんで当麻は私の手を握ってるのって不思議がってみたり」
「ミサカネットワーク使おうとしただろ?」
「あっ!!バレテしまったってミサカはとうまの勘の鋭さにびっくりしてみる」
打ち止めは気づいていない、手を握ってほくそ笑んでいる悪魔に。悪魔は思った、小さくて柔らかい、まだまだ成長しきっていないこの可愛らしいこの身体を早く堪能したいと。
「自分で考えるんだ」
「うぅ、わかった……じゃがいもはとうまと一つずつで、ニンジンは大きいから一個かなってミサカは考えた結果をとうまに話してみる。でも玉ねぎは皮むいたりしないといけないからよくわからないって言ってみる」
「えらいぞ、よく考えたな」
「んんっっ、くすぐったいってミサカは頭を撫でられて嬉しいって喜んでみる」
「玉ねぎはだな、半分だけ使うからな。玉ねぎは皮をむいてから、ジャガイモとにんじんは先に水洗いして皮をむく」
「うん、ミサカは頑張る!!って張り切ってみる」
「ああ」
流し台でジャガイモを皮むき器、カウンティングピーラーを使い剥いていく。当麻のほうは調味料やらカレー粉やらを戸棚から出していた。
「とうま、出来たよってミサカは終わったことを告げてみる」
「よし、んじゃ皮をむいた野菜を次は切るか。包丁は危ないからな打ち止めは使わないほうが良いと思うんだが」
「でもミサカは大人の女性みたいに包丁を使いたいってお願いしてみる」
「んー……分かった。ほら包丁だ」
「やったってミサカはミサカは早速切ってみる」
多少危ないような気もするが、『まぁ大丈夫だろう』と安易な気持ちで打ち止めに包丁を渡す。しかし打ち止めは斜め上を言っていた。
振りかぶって包丁を振りおろそうとしているのだ。流石の当麻もぎょっとして慌てて止めに入る。
「うをぉい、危ねーだろが」
「思わずテンションが上がってしまったってミサカは反省してみたり」
「しょうがないな。ほら一緒に切るぞ。これなら大丈夫だろ」
「おっ後ろから操作されるってミサカはロボットみたいなってみたり」
「野菜と肉をカレー粉で煮ているうちに米を仕込むか」
「うん」
「上条さんちの米はここにあるから、一人一合とちょいだから。二人で三合もあれば大丈夫だろ。この計量カップで三杯すくってこれに入れて」
「いーち、にー、さーんってミサカはミサカはきちんと計って入れてみる」
「米が流れないように気をつけながら洗えよ」
「うん」
「やばっ混ぜねーと焦げ付く」
「んしょっんしょってミサカはミサカは一生懸命米を洗ってみる」
掛け声は背伸びをしている打ち止めから発せられる。背伸びをしないと米を洗えないのだ。こぼれないように自分で考えながらやっていた。この分ならすぐに上手になるな、と思った。
「それくらいでいいぞー。炊飯器の使い方は―――」
「それは大丈夫。炊飯器の使い方をマスターしてるってミサカは威張ってみる」
「頼むぞ」
「スイッチオンってミサカは強く押してみる」
ピーという音と共にスイッチが入る、あの機械音痴のインデックスとは違い、手慣れた様子で炊飯器を操作した。人の家の炊飯器をこうもたやすく操れるとは感心してしまう。
「さて早く混ぜないとカレーが焦げるぞ」
「今行くってミサカは走ってそっちに行ってみる……あれ、あれれ、来たのはいいけど、全く背が足りないってミサカはつま先立ちになりながら言ってみる」
「それはつま先立ちじゃねーーーー。台所では飛びはねるな」
「いたっさっきからチョップばかりされてるってミサカは頭を押さえてみる―――っていきなり持ち上げられてる」
「こうしたら打ち止めも混ぜやすいだろ」
「それはそうだけど、それはそうだけど。いいのかなってミサカはすこし不安がってみる」
「不安がる必要はないって、俺がいるだろ?」
「うん、そーだけど。何かが違うってミサカはミサカは首を傾げてみたり」
っち、少し攻めすぎたが、やはり好感度と親密度が全く足りてないようだ。しょうがない、多少強引だが軌道修正をかけるか。時間がないからもう少しテンポを早くする必要があるな。
少年の両手は打ち止めのお腹をホールドしていた。本来は両脇のほうが良いのだが、両脇だと混ぜる作業に支障をきたすために、
「傾げてる場合じゃないぞ。早く混ぜないと焦げるって当麻は促してみる」
「うっうんってミサカは急いで混ぜてみる」
「おっおい、足をぶらぶらさせるなよ。バランスがとりづらいって」
その返事は「あはははっ」と無邪気に笑った声だった。その声を聞いた当麻の心はさらに黒くなり打ち止めの頭に自らの顎を乗せた。
この行為は極めてきわどいラインなのだが、幸い打ち止めは全く気にせずにカレーを混ぜている。
「よしあとはご飯が炊けるのを待つだけだ」
「どきどきってミサカは今の気持ちを擬音語であらわしてみる」
「待ってる間、なにするかな。打ち止めは何かしたいことあるか?」
「うーん。これはなにってミサカはミサカはとうまに聞いてみる」
「ああ、これか。これはゲームのコントローラーだ。ちょっとまってろよ」
立ち上がりTVをつけて、打ち止めが手にしていたゲームのコントローラーの電源を入れる。すぐにTVの画面が切り替わり車が映し出される。
流石学園都市製と言うこともあり、グラフィックスがとてつもなく凄い。デモが始まり、有名なスポーツカーが走っていた。
「おおっ、凄い凄いってミサカは初めて見るゲームに驚愕してみたり。これしたいってミサカはミサカはお願してみる」
「いいぞ。えっとだな」
あらかた説明を終わると早速フリーモードでレースが始まる。TVの前でちょこんと座り、コントローラーとTVを交互に見ながら操作している。むむむっと言いながら難しそうな顔をしつつも楽しそうだった。
ひとまず火をつけているカレーの様子を見に行く。ふたを開け良い匂いが鼻にかかる。
炊きあがったご飯を混ぜあげて、打ち止めのところに戻る。
そこで思わず吹き出してしまう。レースゲームに連動して、身体が傾いていたのだ。右へ、左へと。順位はちょっと残念な結果だが、見ているだけで楽しくなる。
「あぁああー。負けたってミサカはミサカは憤慨してみる」
「おいおい、ゲームでそんなに負けたぐらいで怒るなよ」
「でもでもっ、勝ちたかったってミサカは地団駄を踏んでみたり」
「あー、だから下には住人さんがおられるって当麻は当麻は打ち止めを引き寄せてみたり」
「とうまのあぐらの中にジャストフィットってミサカはミサカはとうまの上でじっとしてみる」
「よしんじゃ、今度は一緒にやろうぜ。ほらコントローラーを持って」
胡坐をかいた当麻の膝の中に打ち止めはすっぽりおさまっている。もう兄妹かと、問いたいぐらいだ。コントローラを操作してもう一度レースが始まる。
先ほどの相違点は打ち止めが膝の上に座っていること。それからコントローラーを握っている手が重ね合わせられていること。打ち止めの頭の上に顔が乗せられていること。
「あっ、さっきはここで事故したんだよってミサカはミサカはまだ一回もぶつかってないって嬉しがってみたり」
「打ち止め、もっと早く行こうぜ」
「うんっ一位になるってミサカはアクセル全開にしてみる」
楽しい声が聞こえてくる。学生寮の一室から。普段は全く別の声が聞こえる部屋から。
幸いにも右隣の人は帰っていない。当麻が学校の帰り際に小萌先生につかまっているのを確認している。
レースは終盤に向かい、打ち止めの手にはさらに熱が加わる。少女はとても真剣な眼差しでコントローラーを握りしめて膝の上で身体を上下に動かしている。
「やったぁーー、勝った。勝った、勝ったってミサカはミサカは大喜びしてみる。とうまのおかげで勝てたよ」
「ありがと。んじゃそろそろ腹減ってきたし、飯食おうぜ………あーその前に家に電話しとけよ。一方通行を驚かせたいなら、料理作ってるとかいったらだめだからな」
「分かった。ミサカは携帯で黄泉川の家に電話をするってミサカはミサカはなんて言うか考えてみたり―――――あっ、ミサカだよってミサカは自分の名前を言ってみたり。反応が冷たいってしょげてみる」
どうやら一方通行が出たようで、携帯からそれらしき荒い声が聞こえてきた。どうやらどこにいるか聞かれているようだ。
「だからミサカはお友達の家にいるから帰りが遅くなるってミサカはミサカは遠回しに夜ご飯がいらないことを伝えてみる。うん、もうすぐ帰ってくるよってミサカは安心させてみたり。うん、うん、じゃぁねってミサ―――あ。切れた」
「終わったか」
「うん!!良い匂いってミサカはミサカはカレーライスの匂いに引きつけられてみる」
「これは打ち止めの分、でこれは俺のっと。ほらそっちに座って」
「はーい。早く食べたいってミサカはミサカはせかしてみる」
カレーライスをテーブルに乗せて打ち止めとは向かいのほうに座る。すでにフライング気味にスプーンを持ってカレーライスを食べ始めようとしていたので制止する。
「ほら、いただきますが、先だろ」
「うん。えっといただきますってミサカは感謝しながら言ってみる」
「いただきます」
「とうまが作ったカレーおいしい!!ってミサカはミサカははしゃいでみたり」
「違うだろ」
「えっ?」
「打ち止めと俺の二人で作ったカレーだ。ほら、打ち止めの切ったジャガイモ。んっ、おいしいぞ」
「ありがとうってミサカは喜んでみる。とうまのいためた肉も美味しいよ」
「ありがと。なっ二人で作ればできないなんてことはないんだぞ」
「共同作業で効率アップ!ってミサカはミサカは難しい言葉を使ってみる」
「共同作業……ああ、二人だけの共同作業だ。ほら打ち止めそんなにがっつくから―――ほらここにご飯粒ついてるぞっと」
「んっ。でもほんとにおいしいってミサカはミサカはおかわりしてみる」
「ああ、俺もちょうど食べ終わったし、もう一杯ずつはあるだろ」
「もっと食べたいってミサカは駄々をこねてみたり」
「打ち止めも女の子だからあまり言いたくないが、ここは言わないとなるまい……太るぞ」
「うっそれは嫌だから、これが最後ってミサカはミサカは決意を新たにしてみる」
楽しい食事の時間はあっという間に過ぎていった。少しの休憩をはさみ、一緒に後片付けをする。本当にあっという間に時間が過ぎた。
「んじゃもうすぐ7時になるし、家に帰る時間だぞ」
「ほんとだ。早く帰らないとあの人が心配するってミサカは急いでみたり」
「あーもう暗いな。ほら、いくぞ」
「えっ?どうしてとうまもくるのってミサカはミサカは不思議がってみる」
「こんな時間に女の子を一人で帰せるわけないだろ。家まで送っていくにきまってる。打ち止めも遠慮はするなよ、これは男の特権なんだから」
「えっと、ありがとうってミサカは感謝を述べてみる。あの人もここまで優しかったらいいのに」
「いくぞ」
「うん。うわっ外は寒いってミサカは外に出たことを後悔」
「確かに寒いな」
そのまま公園まで行くと流石に風が強くなってきて、寒さが身体にしみてきた。身体が冷え始めて、先を歩いていたはずの打ち止めも風をよけるかのように当麻の後ろを歩いていた。
立ち止りダウンジャケットを脱いで打ち止めの肩にかける。軽装備だった打ち止めにとってはとても嬉しかった。しかし自分のせいでとうまが薄着になるのが申し訳なかった。
「このままだとダメ。とうまの身体が冷えるってミサカは少し考えてみる。そうだってミサカはおもいついたようにとうまの手を握ってみたり、これならとうまもあたたかいでしょ?」
「ああ、打ち止めの手は暖かいな。それに柔らかい」
「そんなに強く握ったら痛いってミサカはミサカは注意を呼び掛けてみたり」
「すまんすまん。そうだ、打ち止め。明日も教と同じ時間に公園で待ってろよ」
「うん。分かったってミサカは明日は何を作るのか興味を示してみる」
「内緒だ」
打ち止めが住んでいるという、まぁ居候しているという黄泉川先生のマンションの前に付き、ダウンジャケットを返してもらう。このまま帰っても良かったがバレンタイン計画に基づいて今のうちにやれることをやっておく。
「それじゃぁ、俺はここで帰るな」
「送ってくれてありがとうってミサカはミサカは感謝を述べてみる」
「ああ、おやすみ――」
『ちゅっ』打ち止めの額の髪の毛を掻きあげて、そこにキスをする。周りから見れば、兄妹、父娘。にしか見えなかっただろう、一部の人には恋人同士に見えたかもしれない。
打ち止め本人も流石にここまでくれば分からないはずもなく、処理落ち気味になっている。口をあけたまま固まって……再起動した
「突然何をするのってミサカはミサカはあなたに失望してみたり。こんなことはいけないんだよってミサカ憤慨してみる」
「なにがいけないんだ?」
「あの人が悲しむってミサカはミサカはこの前の昼ドラの台詞を言ってみる」
「あははっはっ、打ち止めもおませさんだな。だがこれは練習だから問題ないんだぞ」
「練習?よくわからないってミサカは説明を求めてみたり」
顎に手をやってから首をかしげている。ここがこれから発展できるかどうかの正念場である。一言でも間違えれば、二人の仲は発展することは絶対にないだろう。
当麻も手を休めて、打ち止めにも分かりやすく説明する。
「えっとだな。打ち止めは長期コースを選んだだろ?」
「うん、あの人を見返してやるんだってミサカは思い出してみる」
「そこでだ、俺が打ち止めの相手になって予行練習をやるんだよ。そしたら一方通行との本番もスムーズにいくだろ」
「なるほどってミサカはミサカは感心してみる。でもあの人は悲しまないかな」
「大丈夫だろ。俺たちは練習してるだけだから、別にしてはいけないことをしてるわけじゃないんだし。逆にあいつのために俺と打ち止めは頑張ってるんだから喜ぶはずだぞ」
「なるほど。問題ないってミサカはミサカはあの人が喜ぶ姿が頭で浮かんでみたり」
「だが、あいつには本番になるまでは何一つ言ったらダメだからな。驚かせないといけないからな」
「うん、分かったってミサカは声を低くしてみる」
「それじゃぁ俺は帰るからな。おやすみ打ち止め」
「うん、おやすみ〜。とうまってミサカは手を振ってみたり」
彼女は分かっていなかった。少年が言った全ての言葉は誘導催眠だったことを、無意識のうちに罪の意識を、やってはいけないということの意識を下げさせたのである。簡単に言うなら防御力を下げたのだ。
この誘導催眠は女性と壁を作らない人間、女性のことをよく知っている人間。女性に積極的になれる人間、など限られてくる。しかしそれらすべてを満たした当麻に敵はいなかった。
「さて、明日は打ち止めに何の料理作らせようかな……チョコケーキでも作るかな。よし、そうと決まれば買い物していくか」
2月9日(木)
今日も放課後に担任の先生に捕まり説教を食らっていたが、それを切り抜けて打ち止めとの待ち合わせ場所に向かう。待ち合わせ場所のベンチにはすでに少女の人影があった。
「おい、まだ早すぎだろ。まだ約束の時間まで30分はあるぞ」
当麻はベンチに向かいながらそう呟いた。打ち止めはベンチで足をぶらぶらとしていた。
打ち止めはこちらの様子に気づいていないようだったので、こっそりとベンチの裏から奇襲することにした。昨日は自分がされたので今回は復讐なのである。
そろーりと、足音をたてないように、鼻歌をうたっている少女に向かって歩いていき、一気に目と口を塞いだ。
「おとなしくしろ」
「んんー?!!むぅー!!んっんんんー!!!」
「いいな。静かにするなら口だけは解放してやる―――よし」
「ぷはっ、もっももも目的は何ってミサカはミサカは内心怯えつつ聞いてみる」
「俺が誰だかわかるか?」
「わっわからない。手をどかしてくれた分かるかもってミサカはミサカは言ってみる」
「俺は優しいからな。ひとつだけ一つだけヒントを出してやろう。ヒントは初めての共同作業だ」
「きょっ共同作業?まっまってってミサカは懸命に考えて見る」
本当に必死に考え込んでいるようだ。ミサカネットワークは俺の右手が打ち消しているために使えない。文字通り自分で考えないといけないのである。
だがどんなに考えても焦るばかりで考えがまとまらない。ネットワークがあれば助言等が得られ、かつ救助の要請もできるのだが………。
学園都市最強の少年が知らない場所で少女は狼に襲われる。狼はあらゆる意味で変貌する。落としてあげる。そのとき人は最ももろくなる。
「時間切れだ」
「まっまって、もう少しってミサカはミサカは嘆願してみたり。あと少し時間ちょうだい」
「俺はすぐに分かったのに、打ち止めは分かってくれないなんて酷いな」
「もっもしかして、とうまってミサカは自分の勘を信じてみる」
「ああ、正解だ」
「うっうぅっ、ひどいっ。ひどいってミサカは安心してみる」
「ごめんな。ほら泣くなって、悪かったな」
「泣いてないもん、でも怖かったんだよってミサカはミサカは頬を膨らませてみたり」
「ああ、ほんとにごめんな。機嫌直してくれよ」
本当に怖い思いをした打ち止めは涙目になり、頬を膨らませて当麻に背を向けていた。自分のせいなので、どうするか考えた結果、すこしばかり強引な手を使うことにした。
「うーん、お姫様これでご機嫌を御直しください」
「ひゃ、いきなりなにってミサカはミサカは状況についていけなかったり」
「お姫様がどうしても機嫌を直してくれないので、お姫様だっこで家のほうまでお送りしようかと」
「お姫様だっこ、恥ずかしいからダメってミサカはミサカは周りの目を気にしてみる。あの人に見られたら、大変なことになるって焦ってみたり」
「じゃぁ打ち止めは機嫌直してくれるか?」
「なおすっ、なおすからってミサカはあせって降りてみる。ふぅ危なかった」
「さて行くか。ほらお姫様だっこは駄目でも手を繋ぐぐらい大丈夫だろ?」
「それくらいなら、大丈夫かなってミサカはミサカはそっととうまの手を握ってみる」
二人はそのまま公園を後にした。地獄から引っ張り上げることができると言うことは、逆に言えば落とすこともできると言うことである。
「ほら、エプロンできたぞ」
「うん、今日は何作るのってミサカはミサカはわくわくしてみたり」
「ケーキだ。この前舞夏に教えてもらった、ガトーショコラって言う奴なんだけどな」
「うん、うん、最初は何をすればいいの?ってミサカは早速行動に出てみる」
「メレンゲって聞いたこと……ないよな。メレンゲってのは滑らかさを出すためのものだ。作り方は卵の卵白、白い部分をかき混ぜたらできる、冷蔵庫から卵もってこい」
「はーい。えっとたまご、たまごってミサカは両手いっぱいに抱えて持ってきてみる」
「落とすなよ。ただえさえ、上条さんのところは家計が火の車なんですから、食べ物を粗末になんて許しません」
「分かってる!!ってミサカは慎重にテーブルの上に置いてみたり」
それからはあっという間にケーキが出来上がる。途中当麻も分からないところがあったが、舞夏の分かりやすいレシピを見ることで解決した。
そんなこんなでたったいまレンジのオーブンモードでガトーショコラが甘い匂いを立てて、焼けていた。
その待ち時間に昨日と同じようにゲームを始める打ち止め。特等席と言わんばかりに胡坐をかいた当麻に座りこむ。
そこでひたすら身体を左右に揺らしている。何気にその行為が上条当麻の理性をくすぐっているとも知らずに。
もってくれ、頼むから持ってくれ、俺のジャスティス。我慢しろ、我慢だ。
そっ素数を数えるんだ。計画を台無しにするわけにはまだいかんのだよ。
「ほら、打ち止めそんな風に身体を揺らすなよ」
「ふぁっ。いきなりなに?ってミサカは驚愕をあらわにしてみたり」
「身体をそんな風に揺らしたら3D酔いするぞ。だから俺が身体が揺れないように支えててやるよ」
「それは名案ってミサカは納得してみる」
手が一か所で止まることはなく脇腹のあたりから臍のあたりへと行ったり来たりしている。白いワンピースを着ているために直接肌を触られているわけでもなく、胸を触られているわけでもない。
打ち止めは汗をかき始めてきた、当麻のやっていることをどうするか、ゲームをしているのだが、頭の中はどうしようと言う考えでいっぱいだった。
意を決して、『これはあの人に申し訳ないから、止めて』と言おうとした瞬間、耳元で当麻が囁いた
「これは練習だから」
「―――うん。それなら仕方ないってミサカミサカは頷いてみる」
「あっ、そこそのままだとカーブ曲がりきれないからその標識から少しブレーキ踏むといいぞ」
「わかった……おおっ、さっきは曲がれなかったのに、曲がれたってミサカはミサカは感謝してみたり。あっそっちだけはダメってミサカは制止してみる」
「ああ、ごめんごめん。それにしても打ち止めもゲームうまくなってきたな」
「えへへっ」
「いつか、俺とインデックスと打ち止め、それに一方通行も呼んで4人で対戦しようぜ」
「それはいい考えかもってミサカは賛成してみる。そのときは協力する」
「ほんとに打ち止めは良い娘だな」
「頭はくすぐったいってミサカはミサカは運転に集中できなかったり」
「上条さんは良いことを思いついたんでせうが。ちょっと打ち止めゲームをしないか?」
「えっ?ミサカはもうゲームをしてるってとうまの言ってることが分からなくて不思議がってみる」
「まぁ簡単だ。俺は今から打ち止めの集中力を乱すから、それでも打ち止めがレースでビリにならなかったら、打ち止めの勝ち。だけどもしビリだったら俺の勝ち。な、簡単なゲームだろ」
「うん。勝ったら何かあるの?ってミサカはミサカは遠回しに何か欲しいということを伝えてみる」
「ああ、そうだな。ネックレスはどうだ」
「うん、ミサカも少しはおしゃれをしたいってミサカはミサカははりきってやってみたり」
「んじゃスタートだな」
当麻の甘い甘い言葉に騙されて、これからレースが終わる5分間の間、地獄が始まった。先ほどと同じように脇腹から臍にかけて撫でられ、特に臍のあたりを重点的に責められ始める。
さきほど打ち止めが嫌がった下腹部への侵入はしなかった。
さすが変態紳士、きわどい当たりを責める。しかもそれだけではなく、首筋に“ふぅ〜”と息を吹きかける。
「んっ、あははっくすぐったいってミサカはミサカは―――あっ抜かれたってミサカはピンチだって焦ってみたり」
「『弱点一か所み〜つけ』」
「ひゃぅ、耳に息を吹きかけたらダメ!力が抜けるってミサカはミサカはそれでもしっかりとコントローラを握りしめてみる」
「ほら、どうしたんだ?打ち止め。このままだとビリになるぞ」
「んふっ、耳はやめてってミサカは集中力がおち、んふぁぅ」
「あ〜あ、壁にぶつかった。ああ言い忘れてたけどビリになったら罰ゲームだからな」
「それはっ、初耳ってミサカはミサカは抗議してみる」
「抗議はレースが終わった後にしたほうが良いと思うぞ。ほらラスト一周、後一代抜かれたらビリ決定だからな」
「このままだと負けてしま、首筋もくすぐったい……ってミサカはミサカはこのままだと負けるから急いでみる」
打ち止めは猛攻に耐えて、必死にコントローラーで操作する。いつの間にかビリになり、このままでは確実に罰ゲームになってしまう。
一生懸命頑張っている、肩が上下して息も乱れ始め、頬も紅潮している。
ただ撫でられているだけなのに、身体が熱くなり始めてくる。最初はくすぐる感じだけだったのに、いつの間にか疼いてきたのだ。
「あーあ、これは罰ゲーム決定だな。残り直線だけだから、どうやっても勝てないぞ」
「はぁ、はぁっ、とうまの手がいけないってミサカは責任転嫁してみる。そっちのほうばかりに意識がいって、まったくできなかったり」
「それが目的なんだからな。さて罰ゲームだ」
「うっ、とうまの眼が怖いってミサカはミサカはきょうふしてみたり」
「罰げ――――――先にケーキを見に行くぞ」
そこで当麻の声はオーブンが音をに遮られた。ガトーショコラが完成したことを告げ、罰ゲームを後に回して、レンジを見に行く。途中からすでに甘い香りが鼻につき、とてもおいしそうだった。
「もうすこし余熱で焼いたほうが良いな。よし打ち止め罰ゲームだ。俺が良いと言うまで目を瞑ってろ」
「うぅっ何をされるのか、分からないから怖いってミサカはミサカは不安がってみる」
「ほら、目を瞑れ」
「分かった、でも変なことをしたらダメだよってミサカは念を押しておく」
「変なことはしないさ」
そう言って当麻は本棚にある袋からネックレスを持ってくる、立ったまま目を瞑っている打ち止めの首にそれをかけて、似合っていることを確認した。
「もういいぞ」
「えっと……罰ゲームは何ってミサカはミサカは恐る恐る聞いてみる」
「首にかかってるネックレスだ」
「ふぇ?おっこれはなにってミサカはミサカは手に持ってよく見てみる」
「ネックレスだ。まぁ正確には銀状のプレートだがな」
「でもでも、これは勝った時のものだってミサカは思い出してみる」
「だからそれをつけっぱなしにしておくことが罰ゲームなんだよ」
「なるほどってミサカはミサカは納得してみる。でもなんでプレートなの」
「ああ、御坂……美琴も御坂妹も持ってる。だから御坂姉妹の繋がりみたいでいいだろ」
「おおっ、姉妹お揃いなんだってミサカはミサカはとうまの優しさに感激してみたり」
「大事にしてくれよ。これには色々な思いが込められていくんだから」
「分かった。大事にするってミサカは手のひらで包み込んでみる」
何も書かれていない一枚のプレート。ネックレスと言うには少しほど遠いが、それでも打ち止めにとっては大切なモノになった。
「よし、そろそろいいだろ。レンジから出すぞ」
「うん。はやく食べたいってミサカはミサカは涎を垂らしてみる」
「おいおい、お行儀が悪いぞ。とっと、熱いから気をつけるよ」
「良い匂いってミサカはミサカは我慢できなくなってみたり」
「こらっ、それ以上やるならケーキはなしだぞ」
「うっ。おとなしくするからケーキを食べたいってミサカはミサカはおとなしくしてみる」
「よし、良いこだ。んじゃ切るぞ。よし、ほらこれは打ち止めの分だ」
「むむっそっちのほうが大きいってミサカはミサカは大きいほうを要求してみたり」
「分かった、分かった。座って食べろよ」
「うん。それじゃぁいただきまーすってミサカはミサカは一口食べてみる。んんんっおいしいっ。格別の味がするってミサカは喜んでみる」
「ん。確かにおいしいな。4等分したうちの二つは今度来た時に食後のデザートにするかな。ってそんなにがっつくとのどに詰まらせるぞ。っていわんこっちゃない」
あまりにも勢い良く食べすぎたせいで、のどに詰まらせてしまう。変な声を苦しみ出していた。
すぐに立ち上がり向かいに座っている打ち止めの背中をさする。
お茶を飲んで、のどに詰まった異物を流し込む。ようやくとれたのか盛大に深呼吸を始める。涙目になっており、荒い呼吸音が聞こえる。
「はぁっはぁはぁ、死ぬかと思ったってミサカミサカは深呼吸をしてみたり」
「ったく、ケーキはお預けだ」
「やだっ。こんどは急いで食べないからってミサカはお願いしてみる。食べたいってミサカはミサカは甘えてみたり。……ダメ?」
「仕方ないな。少しずつ俺が食べさせてやるよ。ほら、あーん」
「えっと、あっあ〜んってミサカはミサカは羞恥心に耐えながら口を開けてみる。あ〜ん。……うんっおいしい、もっと食べたいってミサカはミサカはねだってみる」
「打ち止めばかりたべて俺食べれてないんだが。そうだ、今度は打ち止めが俺に食べさせてくれないか?」
「ミサカが?良いよってミサカはミサカはケーキを食べさせてみたり。はい、あ〜ん」
「ああ、あーん。んんっうまいな」
最後の一口になるまで二人は食べさせあいっこをした。その行為が普通の友達や親友のカテゴリではやらないことなど打ち止めの知る由もなかった。
徐々に彼女の心は偏り始めていく。このくらいまでなら大丈夫と言う……ケーキのように甘い考えに。
「んじゃ送っていくぞ」
「ありがとってミサカは感謝を述べてみる」
昨日とは違い最初から手を繋いでいる。打ち止めがはぐれないようにもあるのだが、本当の目的は、“互いをしっかり確かめあうように手を繋ぐ”こと。相手の優先順位を少しずつ弄っていくのだ。
「一方通行にはなんて言って来てるんだ?」
「えっと、お友達の家でお勉強教えてもらってるってミサカはミサカは隠蔽してみたり。あの人はまったく気づいてないみたい」
「それならいいぞ。まだバレンタインまでは結構日にちがあるからな」
「うん、あの人が喜ぶ姿が目に浮かぶってミサカはミサカは笑みが漏れてみたり」
「そう言えば打ち止めは他に服は持たないのか?」
「あの人と買い物に行ったときに同じものしか買ってもらえなかったってミサカは意気消沈してみる。他にも可愛いのがたくさんあったのに」
「もし、今度のバレンタインが成功したら俺が勝ってやるよ」
「えっ良いのってミサカはミサカは確認をとってみる」
「ああ。いいぞ、だがたくさんは買えないぞ」
「うん、ありがとうってミサカはミサカはますます力が入ってみたり」
手を握る力が強くなる。思わず少し強く握ると、打ち止めが立ち止ってさらに力を入れてくる。何気に顔が赤くなっているが、どうやら力みすぎているようだ。
そんな打ち止めを見て思わず笑みが漏れだす。もしてを離しでもしていたら、確実に帯電していたことだろう。
「打ち止めは力が強いんだな」
「えへへっ、ミサカは褒められてとても嬉しいって喜んでみる」
「よし、じゃぁ今日もここまでだな。明日は学校終わるのが早いから三時ぐらいに来いよ」
「うん分かったってミサカはミサカは元気よく返事してみたり」
「打ち止め。また明日な」
「うん……。んっ」
可愛い。正直言おう可愛い。昨日と同じようにキスを額にする。その時に目を瞑って何気なく背伸びをしている。言葉では表せないほどの可愛さだ。
「最後に打ち止めがしてくれないか?」
「えっと、これも練習なの?ってミサカはミサカはおそるおそる尋ねてみたり」
「ああ、といっても頬に軽くやってくれるだけでいいんだぞ。嫌なら別にしなくてもいいんだが」
「ミサカはあの人のために頑張るって羞恥心を捨ててやってみる。んっ、んちゅっ」
背伸びをして当麻の頬に唇が当たる。触れただけだがその一瞬だけで確かに打ち止めの温かさを感じた。それだけでも進展があったのでよしとする。
「がんばったな、打ち止め。それにありがと。練習とは言え、女の子にキスしてもらったから嬉しかったぞ」
「うん。とうまは優しんだねってミサカはあの人も素直になってくれたら嬉しいって言ってみる」
「なるさ。打ち止めがこんなに練習してるんだから。そうだろ?」
「うん。それじゃぁまた明日ねってミサカはミサカはとうまに別れを告げてみたり」
「ああ、また明日」
2月10日(金)
「と言うわけで、今日は肉じゃがを作ります」
「なにが、と言うわけなの?ってミサカはミサカは聞いてみる。今日は肉じゃがは家庭的な料理の一つってテレビで言ってたよ」
「まぁそこは気にするなって。今日は家庭的な肉じゃがと男の魅了の練習をするけど、覚悟はいいか」
「ごくりっミサカはミサカは緊張してみる。でも頑張るって意気込んでみる」
「いいぞ。最初が肝心だからな、そのためにストーブと入れておいたんだから」
「ストーブ?ミサカは暖かいよって言ってみる」
今日もやってまいりました。打ち止めの花嫁修業in上条宅三日目の幕が上がった。これまで当麻は練習という名目の名のもとに手を繋ぐ。
頭を撫で、身体全体を撫でまわし、そして額にキスをし、頬にキスをさしてきた。その行為も今からさらにスピードが増して過激なものになってくる。
「いやいや、服を脱いだ時寒いだろ?」
「服を脱いだ時?ってミサカミサカはなんで服を脱ぐのか分からないでみたり」
「そりゃぁ裸エプロンするためだろ」
「ふぇっ?はっ裸エプロン?ってミサカはこんがらがってみる」
「あー裸エプロンってのは、裸でエプロンをして料理を作って男を魅了する方法なんだ」
「でもそれだったらミサカは裸にならないといけないのってちょっと不安がってみる」
「練習で慣れとかないといけないだろ」
「それはそうだけどってミサカはミサカはとうまの前で裸になるのに抵抗を覚えてみたり」
流石の打ち止めも躊躇いを覚えてしまう。だがその躊躇いもすぐに払拭されてしまうことになる。当麻の巧妙かつ、優しすぎる言葉によって。
「はっははっ。俺はお前ら妹たちのお父さん的存在だぞ。血は繋がってはなくても、俺はお前ら全員を思っている。だから打ち止めが“一方通行と一緒にいる”と言った時も俺は止めなかった。
そんな俺が娘の裸を見たぐらいで――――まさか、俺は打ち止めに信用されていないのか?」
「それは違うってミサカは全力否定!!えっとその恥ずかしいってミサカはミサカは年頃の娘の心境を味わってみたり」
「そこを乗り越えてみんな大人になるんだ。嫌なら別にしなくてもいいんだぞ」
「するってミサカは即答してみる。でもまだ心の準備ができてないからって」
「ああ、俺は肉じゃがの準備をしてるから、準備ができたら呼んでくれ、エプロンつけてやるから」
「うん」
肉じゃがに必要な材料を冷蔵庫から出してまな板の上に準備をしておく。ちょうどその時、後ろで『ぴたぴた』と音がしたので振り向くと打ち止めが自分の頬を叩いて気合を入れてるようだった。
ゆっくりと服を脱ぐ、ワンピースなので肩ひもを外すとすとんと服が落ちる。やはり恥ずかしいのか、胸の部分を隠している。
「準備できたよってミサカはミサカはドキドキしてみる。えっととうまその笑わないでって先に言ってみたり」
「大丈夫だって、俺は絶対に笑わない」
「うん」
「………」
「なっなにかを言ってくれないと沈黙が重たいってミサカはミサカは青ざめてみたり」
「すまん、ただな。打ち止めの身体が綺麗だったからな思わず、見惚れただけですよ。本当に綺麗だぞ、打ち止め」
「あっありがとうってミサカは素直にお礼を言ってみる。初めてそう言うこと言われたんだよ」
「じゃぁ下も脱いだら後ろ向けよ。エプロンつけるから」
「えっ?下も脱ぐのってミサカは確認をとってみる」
「ああ、裸エプロンだからな。全裸じゃないといけないだろ」
「うん、でも下はあの人以外見られたことがないってミサカはミサカはうしろめたかったり……。やっぱり脱がないとダメ?」
「俺は脱いで欲しいぞ、打ち止め」
「分かった。でもあまり見ないでってミサカはミサカはお願いしてみたり」
パンティを脱いでいく。これで打ち止めが身に纏っているのは、昨日当麻にプレゼントしてもらったネックレスだけになった。
打ち止めの身体は柔らかな曲線でできており、肌は白く、強く抱きしめると壊れそうなほどきゃしゃだった。
胸はまだまだ発達しておらず、当然下の毛も生えているわけがなかった。
すぐに自分の大切な部分を隠して、顔を赤くし俯く打ち止めに対して、頭を撫でた後にエプロンを着けてやる。なんと言うか全裸の時よりエロい。親父と言われるかもしれないが、エロいとしか言いようがない。
エプロンからちょびちょび、と見える打ち止めの乳首。後ろからは可愛らしいおしりが顔を出しているのだ。
「似合ってるぞ、打ち止め。本当に綺麗だぞ」
「あっありがとうってミサカはミサカは感謝してみる。なにかすーすーしてくすぐったいな」
「風邪をひく前に作ってしまうか」
「うん」
さきほどまで顔を赤くしていたのに、今は笑顔に頷いて喜んでいた。羞恥心はあったが、当麻のほうが全く気にした様子がなかったので、自分が恥ずかしがる必要がなくなったのだ。
「ほら、打ち止め。カレーを作った時みたいにここにある野菜の皮をむいて」
「うん、分かったってミサカはミサカは思い出しながらやってみる」
「そうそう。上手になってきてると思うぞ。流石上条さんの娘でせうな」
「えへへっ。娘……良い響きだなってミサカはミサカはとうまの娘で良かったって言ってみる」
「俺も打ち止めが俺の娘になってくれて嬉しかったぞ」
「えへっ。うん」
「そうだな。今のうちに打ち止めの綺麗な身体を写真に収めるか。打ち止めが将来お嫁さんになった時に寂しくなるからな」
「お父さんは気が早いってミサカは笑ってみたり」
「ほら打ち止め、首だけ振り返って」
「うん」
可愛い顔とおしりがフレームインする。どこからどう見ても変態的な写真なのだが、少女は全く気にした様子はない。それどころか、当麻の言われるポーズをどんどんとしていく。
「肉じゃがだから、ジャガイモは少し大きくてもいいぞ」
「じゃぁこれくらいにするってミサカはミサカは大きめに切ってみたり」
「ちょうどいいかな。んじゃ俺は肉をいためるから、その間にそこに置いてあるレシピを覚えること」
「はーい、ってミサカは速攻即答。いえーい」
そんな感じで料理を作っていく二人。まだ愛おしい人にすら見せてない裸エプロンをかつての恩人に見せていた。これは裏切りではなく、練習。そう言われてしまい、そう信じるしかなくなった少女。
「よし、あとは弱火にしてっと、20分ほど煮込めばいいかな」
「やったー。それじゃぁゲームをしたいってミサカはミサカはとうまに提案してみる」
「ああ、いいぞ。ほら今日も上条さんの膝の上に座れって」
「うん、よいしょっと。今日も一位になれるように頑張るってミサカはミサカは意気込んでみる」
「俺も手伝ってやるからな『小さい子は疑うことを知らないと言うが、打ち止めの場合は俺を信用しきってるな。全裸で俺の膝に座りやがって、上条さんの理性は爆発寸前なのですよ。
本当にやばいな、まだ手を出す段階じゃないんでせうが、どうしたものか』」
「うん、お願い。でも今日はゲームしないのってミサカはドキドキしながら聞いてみる」
「!!!?あっーえー、するかな?。ああ、するぞ。今日もゲームするぞ。ルールは昨日と一緒、罰ゲームは内緒だ。
『誘ってんだよな?ならいけるところまでいってやるさ、日常不幸の上条さんはこんな時にこそ幸運を回収しないといけないんですよ』」
父と血の繋がっていない娘のゲーム。それは禁じられたゲーム、やってはならないゲーム。それが今、レースの信号が変わると同時にスタートする。
父の……かつて死ぬだけに生み出された“妹達”に生きる理由を与えてくれた、生みの親の手がエプロンの隙間から侵入して身体を這いまわる。
「どうしたんだ?打ち止め。コントローラから手を離して俺の手なんか握って、また負けるぞ」
「んでもっお腹がくすぐったくてってミサカはあなたの手を押さえんふっ」
「ほら、我慢しないともっとひどくなっていくぞ。そうそうコントローラもって、せっかく1位なんだぜ。頑張れ」
「んんっ、ふぅっそっそっちはだめぇってミサカは……んくっ咎めて、みる」
「何がダメなんだ。俺は打ち止めが早く大人になるように手伝ってあげてるだけだぜ、打ち止めもいいって言っただろ」
「そうだけど、胸は、んんっ、あの人が悲しむってミサカはミサカはあふっ」
「あー、抜かれたぞ。どうしたんだ、打ち止め?身体をもじもじさせて、そんなにくすぐったいのか?」
「ちがうってミサカは、んっミサカは、言ってみる」
「降参するなら。参りました、どんな罰ゲームでも受けます。って言うんだ」
胸を触ってはいるが、決して乳首を触っているわけではない。無い乳房をちょっと暴力的に揉んでいるんだ。
流石の打ち止めもこればかりは意識せざるをえない状態で一度はコントローラに戻した手を再び自分の乳房を揉みほぐしている当麻の手に重ね合わせて、止めさせようとするが、
力が抜けてしまっているために思うように抵抗ができない。
「こっ降参するってミサカは、みさ、っんくっかは敗北、宣言を……してみる」
「よし、降参したな。じゃぁ罰ゲームを決めようか」
「はぁはぁっ、なにをっするのってミサカはミサカは息を整えながら聞いてみたり」
「俺がしてほしい時にキスをすること。ってのはどうだ?」
「う〜ん……そっそれくらいならってミサカは大丈夫と思ってみたり」
「俺も打ち止めともっとたくさんといたいんだぜ。打ち止めのこともっと知りたいのに……こんなダメな親でごめんな」
「そっそんなことないってミサカはミサカは否定してみる。とうまは、優しくてミサカのことをいつも思ってくれてるから。ミサカを応援してくれて嬉しいんだよ」
「本当にいい子だな。打ち止めは」
膝から立ち上がって、叫ぶように否定する。それは変えることのできない打ち止め自身の本心だった。
真面目な顔で言われ、思わず微笑んでしまう。真剣に言われてしまったのだ。自分の幻想を醒ましてくれたのだ。
「とうま。…んちゅっ―――」
「!!??打ち止め?」
「とうまお父さん、げんきでた?ってミサカはミサカは勇気を出してみたり」
「……打ち止めぇ。ありがとうな」
「そんなに抱きしめたら痛いってミサカもミサカも抱き返してみたり」
「暖かいぞ」
「うん」
「ありがとな、ちゅっ」
「――――んっ。えへへっ、唇にキスをされたってミサカはミサカは照れてみたり」
「そうか?俺はやっと心を開いてくれて嬉しいぞ」
「とうまは優しいお父さんってミサカはミサカは気持ちを伝えてみる」
「伝わったぜ。…………ってやばい、肉じゃがそろそろ混ぜないと下が焦げる」
慌てて立ちあがり、弱火の鍋に一直線。かき混ぜる幸いなことに焦げ付いてはいなかった。あとについてきた打ち止めを抱えあげて、鍋をかきまぜさせる。
ここ3日間で慣れた手つきになってきている。まるで娘がお母さんの代わりに頑張る姿そのものだった。ただし裸エプロンはお母さんそのものだが。
「よし、んじゃ俺は肉じゃがをつぐから、打ち止めはご飯をついでくれ。終わったら服を着てもいいぞ」
「はーい。お腹すいたってミサカはミサカは律義に報告してみる」
「水もついでお――――そうか」
「どうしたのってミサカはミサカはとうまに尋ねてみる。水ならミサカがもっていくよ?」
「いや、なんでもない。それに打ち止めのちっちゃい手じゃ持ち切れないだろ。俺が持ってくるから気にするな」
「うん、分かった」
少年は笑った。不敵な笑みを見せて、少女が使っているコップに粉末を入れてかき混ぜる。そんな少年の行動を少女は知らない。
「ごちそうさま。肉じゃがおいしかったってミサカはミサカはにんやりと告げてみる」
「ああ、んじゃ食後のケーキでも食べますかね」
「やったー。ミサカはまたあのケーキが食べられるって喜んでみる」
「はいはい、打ち止めは食べた皿を片づけてろよ。俺が冷蔵庫からケーキ出してくるから」
「うん」
という感じでケーキまでも食べてしまう。さすが育ち盛りだな。当然差し出された水も飲んだ。その水に溶け込んでいる邪悪な思いも知らずに。
「まだ4時か。んー今日は早めにかえろうか。いつも遅くなったら申し訳ないだろ」
「うん、そうだねってミサカはミサカは水を飲み干してみる」
「さて今日はのんびり散歩しながら帰ろうぜ」
「おおっそれはいい提案ってミサカはのってみたり。最近お料理ばかりで冒険してないって言ってみる」
「そんじゃ、10分ほど遠回りになるけど、公園のなかーのほうに行くか」
「うん」
打ち止めを連れて、歩き出す。公園の中。小さい山のようになっている場所。普段は誰も使うことがない道、なので自然が溢れている場所。
「空気が少し違うってミサカはミサカは感じ取ってみる」
「そうか?俺は一緒に感じるぞ」
「それはとうまの感性が足りないってミサカは威張ってみる」
「感性が足りないか、深呼吸して感性を深めるぜ」
「んっ」
「どうしたんだ打ち止め?」
「ちょっと、トイレに行きたくなってきたってミサカは素直に告げてみる」
「………マジですか、我慢できるか?」
「無理かもってミサカはミサカは冷や汗をかいてみる」
「この辺りのトイレは……公園のところだから10分ぐらいか」
「10分も我慢できないってミサカはミサカはピンチになってみたり」
「ミサカネットワークでもっと近いトイレがないか聞いてみろ。俺が抱えていける距離にあるかどうか」
「うん、分かった」
お腹を押さえて目を瞑りネットワークにアクセスをしている。目の間にいる当麻がにやりと笑みを浮かべていた。それもそのはず、水に混入させたのはちょーと強力な利尿剤である。
尿意を催してから5分までなら大丈夫だが、それ以上は膀胱炎になる可能性があるので、すぐに排尿しなければならないのだ。
「とっとうま、この辺りにはないってミサカはミサカは下位個体の情報を伝えてみる」
「一人でできるだろ。俺はここにいるから草むらでして来い」
「でっでもこの辺り空間移動の変質者が出るから一人になるなってミサカは下位個体から告げられてみたり」
「なるほど、なら俺も一緒に行くから、安心しろ」
「ごっごめんね、迷惑掛けてってミサカはしょんぼりしてみる」
「迷惑だなんて思ってないさ。打ち止めが困っていたら、助けるのは当たり前だろ」
「うんっ。……きゃぁっ」
「おっおい、大丈夫か」
「ミサカは強いから、泣かないって涙をこらえてみる」
ここまで全て仕組まれています。はい、利尿剤を混ぜたところから始まり、ネットワークを使用して“空間移動の変質者が現れる”という情報を得ることも……
まぁ御坂妹は俺の名前と、尿意の二つの言葉で状況を把握はできただろうからな。
そして、こけることも計算に入れてある。これで打ち止めの手は汚れてしまっているので、自分でトイレをできなくなった。
「よし、偉いぞ、流石は俺の娘だ。でも、手に泥が付いてないか?」
「ついてるってミサカはミサカは払ってみたり」
「あーとだな、打ち止め。申し訳ないんだがな。トイレできなくなったぞ」
「えっ?そっそれってどういうこと?!ってミサカは差し迫る危機を我慢して聞いてみる」
「打ち止めの両手は今はウイルスが……黴菌だらけだからそれでトイレなんてしたら、女の子の大切な場所がはれ上がるぞ」
「えっえっ?どっどうしたらってミサカは焦ってみる」
「手を洗って消毒しないと」
「それまで我慢できないってミサカはもう我慢できなくなってみたり。どっどうしたらいいのってミサカは泣くのだけは我慢して聞いてみる」
「一つあることはあるんだが……。俺が手伝うっての何だが……」
「ううぅぅっ、んんんっ。もっもう我慢できないから手伝ってミサカは恥ずかしさをこらえてお願いしてみる。んんくっとうまあまり見ないでね」
「ああ、分かってる」
そこから当麻の行動は早かった、すぐさま打ち止めのワンピースを捲くりあげて、クマさんパンティを片足だけ脱がせる。そして両ひざ裏を抱えあげた。文字通り赤ちゃんのおしっこを手伝うかのような体勢だ。
「こっこんな恰好恥ずかしいよってミサカはミサカは顔を覆ってみる。とっとうま見たらだめぇっ」
「ほら、早く出さないと膀胱炎になるから急げよ」
「いっいやいやっ、見たらだめぇっ」
ちょろっ、ちょろろろ。じょろろろろろっ。と勢いよく、打ち止めの女の子の証しの部分から大量の尿が排泄される。両手で顔を覆って、見られないようにしていた。
恥ずかしさのあまり死んでしまうのはないだろうか。と言うぐらいに、顔は真っ赤に染まりあがり、目じりには大量の涙がたまっていた。
ちょろろろっちょろっ、と最後の尿が出てしまうと。器用にポケットティッシュで打ち止めの尿道口を拭きあげる。
それから打ち止めを下ろしてパンティを穿かせる。そこで当麻は打ち止めが泣いているのに気づいた。声を我慢して、肩を上下させて、手で必死にあふれ出てくる涙をぬぐっていた。
「ひっぐっ。えぐっ、えぐっひぐっ」
「……ごめんな打ち止め。こんな恥ずかしい思いをさせて。本当にごめん」
「ひぐっ、えっぐえっえっひっぐ」
泣いている打ち止めの頭を抱き寄せる。自然と胸板を濡らしていた。クローン体で能天気だと言っても中身は少女そのものにかわりはないのだ。喜怒哀楽があり、羞恥心だってある。そんな少女が人前で排尿するなんて、死んだほうがマシと思うぐらい恥ずかしいことなのだ。
「えぐっ、とうまのっ、ひぐっ。とうまの……せいじゃないって……ミサカが…ミサカが……」
「俺が悪いんだよ。打ち止めも女の子だからな、こんなことされたら恥ずかしいって分かってたのにさせた俺が悪いんだ」
「ちっちがう!ミサカが家を出る前にトイレに行ってなかったのが悪いの!ってミサカは言ってみる。とうまは一生懸命考えて一番いい方法を取ってくれたって感謝してみる」
「感謝なんてするなよ。俺は打ち止めを泣かせたんだ。最低な男だよ」
「もう泣かないからってミサカは涙を拭いてみる。とうまは優しいんだよ、最低じゃないからそんな風に言ったらダメって叱ってみる」
「そんな風に言ってくれてありがとな」
「ミサカを抱きしめてくれてありがとうってミサカは笑顔を見せてみたり」
「ああ、やっぱりミサカは可愛いな。よし、それじゃぁもう転ばないように手繋ぐぞ」
「うん、帰ろうってミサカはとうまに提案してみる」
「帰るぞ」
手を繋ぎ、歩き出す。打ち止めの眼は少し腫れてはいたものの、顔は笑顔でいっぱいだった。とうまに放尿を見られたのは確かに恥ずかしかったが、あれも自分のことを第一に考えてくれての行動なので、恥ずかしさと共に嬉しさがあった。
「土曜と日曜はゆっくりてろよ」
「えっ?明日はないのってミサカは訪ねてみる。明日もやりたいって言ってみたり」
「土日は一方通行とどこかに遊びに行ったらいいぞ」
「でっでもってミサカはまだチョコレートを作っていなかったりする」
「火曜日がバレンタインだろ?なら月曜日につくれば間に合うぞ」
「う〜。分かったってミサカは休暇を入れてみたり。じゃぁ月曜日は何時からするのってミサカは訪ねてみたり」
「そーだな。4時にまたいつもの場所だでどうだ?」
「うん。それでいいってミサカは答えてみる。今日もここまででいいよ」
「ああ、また月曜日な。打ち止め。んちゅっ」
「んんっ。とうまのくちびる暖かいってミサカは素直に言ってみたり」
「打ち止めのも暖かかったぞ。次は打ち止めがしてくれ」
「罰ゲームだもんねってミサカは背伸びをして唇を重ねてみたり。ちゅ」
「んっ。月曜日な。お休み打ち止め」
「おやすみ〜ってミサカは元気よく手を振ってみたり」
こうしてミサカの当麻との前半戦は幕を閉じた。