「んっふん〜ふ、んっふん〜ふぅ、チョコレートは〜め○じぃ〜」  
 今日は二月の上旬。主に一緒に、行動を共にしているお節介好き?!で主人公補正のためか女性に  
モテモテ上条さんは今頃、勉学にいそしんでいることだろう。  
 住んでいる場所から少し離れた、ちょっと大きめなとあるデパート。  
 入り口付近の案内板の前で一人たたずむ少女がいた。  
 他の買い物客や従業員から、珍しい物を見る視線を浴びせられている。 その出で立ちは教会などで  
見れそうなシスター姿。場所が場所である・・・そばを通り抜ける人は物珍しそうに見て歩いている。  
 それに小さな体躯には似つかわしくない胸の部分が、豊満な身体をしていた。   
 
 銀髪碧玉で真っ白な布地、それでいて丁寧な金の刺繍が施されているシスターが、案内板を前で眉間にしわを寄せ、  
「えっと、何階なのかな・・・色々ありすぎて迷っちゃいそうなんだよぉ。ねぇ〜スフィンクスはどこだと思う??」  
「にゃ〜ぁぁん」  
 と開いた胸元から、もぞもぞと頭を出す猫。自宅のマンションから、ずっと鳴き声も出さず大人しくしていたが  
、ご主人様の問いかけに反応を示す。  
 ガヤガヤと騒ぎたつデパート内で、三毛猫の鳴いた声を聞き分けれたのは幾人。その小さな鳴き声にも  
敏感に反応した従業員が、少し早足に近づいてくる。  
 シスターはいち早く危険を察知し、強引にスフィンクスを(元)歩く教会の中にかくまう。  
 
「すみません、お客様。当店はペットと一緒にご来店は・・・・・・」  
 出されているマニュアル通りに接し、申し訳なさそうに言い寄ってきた。  
「えっ?!な、なんの・・・ことなのかな?」  
「ですから、お洋服の中に隠れているネコのことなのですが・・・」  
 具体的に言われ、  
「な、なにも隠してないんだよ。て、天に増しますわれらが父に誓って、シスターさんが嘘つくはずないんだから・・・」  
 必死に庇いたてる空気もよそに、  
「にゃ〜ん」  
 と周囲が静まり返る位、ひと際力のこもった鳴き声を上げ顔を出す三毛猫。  
「・・・」  
「・・・・・・」  
 
 一瞬の間―――  
 (こ、これは、まずい状況かも。もぉ〜なんでスフィンクスと一緒だとだめなんだろう??とうまも最初、反対ばっかりしていたし・・・・・・でも)  
 この間約一秒未満、頭の中を総回転させ思考をめぐらせる。  
 従業員がシスターの視線に合わすかのように腰を落とし、  
「お客様?!ペット――」  
 その言葉を聞き逃すまいと、流れを遮る。  
「ペット?!・・・ち、違うんだよ!スフィンクスは私たち家族同然なんだよ」  
 ガルルと少し敵意を向けつつスフィンクスの頭を押し戻し、また豊かな様子に戻る。  
 それでもなお冷静に接してくる従業員は、  
 
「そうですね、大切なご家族であるのは重々承知なのですが、他のお客様のご迷惑になる可能性も少なからず  
ございます。お買い物をしていただいてる間は、お預かりできる場所がありますので・・・」  
 相手を怒らせないように笑み浮かべ、どういった返事がくるか備える。  
 
「なぁ〜んだ。そういうことは最初に言ってくれればうれしかったかも」  
 ほっぺを大きく膨らました顔が、無邪気な笑顔に変わった。そんな空気を察したのか再び三毛猫が顔を出し、ひと鳴き。  
「それとバレンタインフェアをしている場所も教えてくれるとうれしいな」  
 少し顔を赤らめ、その表情を隠すようにうつむきかげんで言う。  
「ご案内いたします。ペット・・・ではなくご家族の方が有意義に過ごせる場所も案内しますね」  
「にゃああぁぁん」  
 少女でなく三毛猫が嬉しそうに鳴いた。  
 
 ふと、ネコの鳴き声が聞こえたような気がした。  
「首をキリンさんの様に伸ばしキョロキョロ、ってミサカはミサカはあたりを見回してみたり。迷子の子猫さんが迷い込んだのかな、ってミサカはミサカは心配してみる」  
 頭頂部にある大きなアホ毛の少女も何か目的があって、遠出の買い物だろうか。  
「ん〜気のせいだったかな、ってミサカはミサカは目的のモノを捜し歩き始めてみる」  
 
 二月十四日はセントバレンタインデー。女性が男性に、愛情の告白としてチョコレートを贈る習慣は日本独特のものである。  
 そういった祝い日があるのをネットワークで知り、  
「これは贈るしかない、ってミサカはミサカは行動してみる!!えいえいおぉー、てミサカはミサカは拳を握り奮闘してみたり」  
 そう思ったのが誰もが寝静まる真夜中のこと。  
「おい、今なン時だと思ってるンだァ!!黙って寝やがれ」  
 そんな叱咤を受けて、しゅんと冷たい布団に潜り込む。  
 
 そんなやり取りをしたのが、昨日の夜で膳は急げと今日に至る。  
「さて、ってミサカはミサカは額に手をあてキョロキョロしてみる。ん〜これは大きいね、ってミサカはミサカは店の大きさに驚愕してみたり」  
 平日と言ってもそれなりの客の入りよう、かなり混み合っている。当てもなくふらふらと気の向くまま歩き周り、  
「ん〜ここはどこだろ、ってミサカはミサカは今の現状を考えてみる。そうだきっとそうなんだね、ってミサカはミサカは迷子になってみたりっ?!」  
 入ってきた入り口すらわからなく、迷える猫のように周りを観察していた。   
「いつもなら探し出してくれる人がいるんだけど、ってミサカはミサカは傍にいないアナタを思ってみる」  
 するとバレンタインフェアをアナウンスする声が天井に響く。それを聞き、友達同士で来たであろう女性グループが移動して行った。  
「この流れに乗っていけば、ってミサカはミサカは探偵さん風に尾行してみる」  
 
「うわぁ、すごくとっても美味しそうなチョコレートが沢山あるんだよ」  
 目をまん丸にして驚く、  
「どれにしようか迷うなぁ・・・全部美味しそうだし。困るかも」  
 色鮮やかなチョコレートに目移りし、瞳をキラキラと輝かせ気をとられていると、  
 
「はい、どうぞ」  
 と銀のプレートに一口サイズの可愛らしいチョコレートが乗っている。無料の試食も沢山あるようだ。  
「あっ、でも・・・・・・」  
「子供は遠慮しない、美味しいから食べてみて!」  
 少しの沈黙後、どこからともなくシスターに後光が射し、  
「・・・・・・シスターという立場から神に誓いを立てており、一切の嗜好品は禁じられている立場ですが、これはとうまためだから有り難くいただきますっ」  
 チョコレートが一つ、二つ、三つ・・・四つ一瞬で無くなった。  
「うあぁ〜舌の上ですぐ溶けて・・・それでいてあと味がさっぱり、かなり美味しいかも。それにこっちは少し苦めの珈琲って感じのチョコなんだね」  
 そんなシスター背後、『珈琲』の部分に人一倍敏感に反応したアホ毛の少女が、  
「珈琲?!ってミサカはミサカは身を乗り出して一口いただいてみる」  
 背の高さも同じくらいのこちらも可愛らしい少女が、シスターの横から出てきた。  
「うんうん、ってミサカはミサカは口に入れたチョコを味わってみたり。本当だ珈琲の味がする、ってミサカはミサカは隣のシスターさんに感想を述べてみる」  
「でしょ、美味しいよね・・・それより他のチョコレートも気になるかも」  
 同年代の女の子で、気さくに話しかけれそうな感じに互いに嬉しくなった。  
「気になる気になる、ってミサカはミサカはシスターさんの手をとり人混みを抜け出してみる。一緒に食べ歩こう、ってミサカはミサカはわっくわくしてみたり」  
「それいいかも、一人で食べるより二人で食べたほうがより美味しいチョコレートを発見できそうだね」  
 ここに即席のチョコレートグルメツアーが誕生した。  
 
 それから数時間後・・・・・・。  
「ちょっと休憩。体中の糖分がすごいかも・・・」  
 座っているアホ毛の少女に自動販売機で買ってきたジュースを渡し、  
「そうだね〜ってミサカはミサカは久しぶりの水分補給に感謝感激してみる」  
「全部食べてみてわかったことがあるんだよ・・・全部美味しいんだってことが」  
 互いにほぼ一気飲みに近い勢いでジュースを飲み終わりそうな時、  
「あら、そこにいらっしゃるのは・・・えっとどなたでしたっけ?!そう、お姉さまが慕っている殿方といたイン・・・なんとかさんじゃ〜ごさいませんこと」  
 
 常盤台中学の制服、茶髪に赤いリボンとツインテール姿。  
 バレンタインに渡すチョコを探しに来たのだろうか、渡す相手は男性ではないのは確実だ。  
「ちょっとぉ・・・私にはインデックスという名前がちゃんとあるんだよ、メモしておいてねメ〜モ!そういうアナタは、短髪と一緒にいた瞬間移動能力者」  
 座っている二人に近づいてくる白井黒子。  
「空間移動、テレポーターと言って欲しいですわね。それにジャッチメント・・・じゃなかった白井黒子ですの、それよりあなた方もチョコレェェェェェってぎゃあああぁぁ?!?!」  
 インデックスの隣に座る少女を見て発狂し始める。座っているインデックスの片手を握り、数メートル離れる場所へテレポートを発動した。  
 
「あれ、一体なんなんだよ?!急に驚くでしょ!!」  
 腰に両手をあてがって、怒りをあらわにする。  
「そ、そんなことより・・・アナタの隣に座ってらっしゃった女の子?!お友達?!お友達よね、お友達でしょ??わ、わたくしに紹介してくださると嬉しいなぁ・・・なんてオホホホホホォォ」  
 
 インデックスの両肩を掴み、ふしゅーと鼻息を荒げ言い寄り、  
「い、痛いんだよ、それに近い近い・・・顔が近すぎるかも」  
「あら、これはわたくしとしたことが失礼しましたわね」  
 平静を取り戻した黒子が、制服の乱れを直していると  
「ねぇ〜どうしたのかな?ってミサカはミサカはジト目で観察してみたり」  
 忽然と消えた二人を慌てて探した打ち止めが、壁から少しだけ身を乗り出した見ていた。  
 
「いえ、なんでもございませんの。それよりもお二方は、チョコレートを探しにいらしたのかしら?」  
「うん、そうなんだよ。でも色々ありすぎて困っているとこと・・・」  
「甘すぎる、ってミサカはミサカは販売先に不平不満を述べてみたり。甘くないチョコレートはどこだ、ってミサカはミサカは―――」  
 と不意に熱視線が向けられていることに気がつく。とてもアツイ・・・視線が、白井黒子から。  
 
「ならば手作りですわね、この不詳白井黒子が・・・最初から最期までお付き合いさせていただきますわ!!」  
 黒子の目が怪しく光ってテレポートし、打ち止めの後ろに回りこみ抱きかかえる。  
「ふぇ、ってミサカはミサカは第六感からdangerな香りがしてみたりっ?!」   
「安心なさって、それまでつきっきりで手取り足取り、腰取りとすみずみまでお手伝いいたしますの!」  
 そんな言葉を残し二人は消えた・・・  
「って、こらー私はぁぁぁ?!」  
 その場に一人残されるインデックス。  
 そして数日後、白髪ジャッチメント狩りという噂が学園都市を震撼させていた。  
 
 

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