「あのさ…今頃なんだけどやっぱりもう一つ部屋借りないか?」  
ロシアで資金を温存するためにホテルを一室だけ借りることにしたのだが、ここにきて上条が不安になる。  
それは今までレッサーがスカートをバサバサしたりと卑猥なことばかり行っており、  
このレッサーなら何をやらかしても不思議ではないという結論に至った。  
 
「何でですか、別に私はあなたに何されてもかまいませんよ?」  
尻尾を振りながらベッドの上を転がる。  
しかもこのベッドが2人用になってることに何らかの意図を感じる上条。  
「あの…まさかこのベッドからして一緒に寝るってことですかね…?」  
「当たり前じゃないですか」  
即答した。上条的には顔を真っ赤にして否定してくれればありがたかったのだが相手が悪かったようだ。  
「やっぱもう一部屋借りてくる」  
ドアノブに手をかけた所で、  
「ちょっと待ってください!」  
「な、何だよ?」  
「ちょっとこっちに来てください」  
首を傾げながらとりあえずレッサーに近づく。  
「後ろ向いて目を瞑ってください。あと絶対目を開けないで下さい」  
「??? わ、わかった」  
言われた通りに目を瞑る。  
その間レッサーは素早く作業を済ます。  
 
「なんで俺の手縛ってんの?」  
返事が来ない。何か嫌な予感がするので目を開ける。しかし、目を開いても視界は真っ暗なまま…目隠しされていた。  
「これで大丈夫ですね。あなたの動きを封じたことですし…」  
「レ、レッサーサン、何ヲ?」  
 
「ちょっと覚悟してくださいね♪」  
と言って、上条を蹴り、そのままベッドに押し倒す。  
「痛ッ…お前何すんだよ!」  
上条が怒り、そのまま体を起こそうとするが、  
「ごめんなさい…」  
レッサーが上条に抱きついてきた。  
「私…あなたにここまでやらないといつまでもやってくれないと思ったんです……」  
「イギリスの利益になるとか、そんなのじゃないんです……」  
「私―――」  
 
 
「あなたの事が好きなんです」  
「……」  
いきなりの展開に上条の思考がついていかなくなる。  
構わずレッサーは続け、  
「前に騎士派の連中に狙撃されたとき、あなたは敵である私を助けてくれました。  
そして、助けてくれたあなたに私の気持ちを伝えたかったんです。そのためにロシアへ行きました。  
でもあなたに会っても恥ずかしくて言えず、結局こんな回りくどい事をして…本当にごめんなさい……」  
上条の目に見えないがレッサーが泣いていることが分かった。  
泣いてる少女を前にどうすればいいのかと考える。  
(せめてこの手が使えれば…)  
しかし自力で解くことはできないので、  
「あの…レッサー、縄を解いてくれないか?」  
レッサーは無言で上条の手の縄を解き、  
「本当にごめんなさい…」  
と再び謝る。上条は目隠しを外し、泣いているレッサーを優しく抱きしめる。  
「…え」  
「さっきは怒鳴ってごめん。お前の事何も分かってないのは俺だった…ごめんな」  
レッサーは小さな子供のように上条の胸で声を上げて泣いた。  
 
結局、上条はレッサーと一緒に寝ることにした。  
(レッサーは…もう寝てるか)  
隣で幸せそうに寝ているレッサーを見て、ようやく落ち着くことができた。  
(「寝込みを襲っていいですよ」とか言われたけど…流石に襲うわけにもいかないし…)  
しばらく考え、上条はレッサーの頬にキスをし、深い眠りに着いた。  
 
上条は気付かなかったが実はレッサーはずっと起きていた。  
(結局襲ってこないで寝ちゃいましたか…そこが彼の優しさでもあるのでしょうか)  
とぼんやり考えつつ、先ほどキスされたことを思い出す。  
(私が彼の事が好きで、彼は私の事をどう思ってるんでしょうか?  
ほっぺにキスする辺りまだ迷いがあるようですね…)  
分析を終え、自分はどうすればいいのか考える。  
(私がされっぱなしじゃ気が済みませんし…)  
レッサーも隣に寝ている上条の頬にキスをする。  
(これでよし…この戦いが終わったら彼から返事をもらうとしますか…)  
この戦いのすべての元凶たる神の右席フィアンマを倒さない限りこの戦争を止めることはできない。  
その強大な力を振るうフィアンマを倒すことができるのか。  
しかし、レッサーには不思議と不安はなかった。  
(この人と一緒なら絶対―――)  
そこでレッサーの意識が落ちた。  
 
翌朝  
「よし、準備完了。行くぞレッサー」  
「はい!」  
再び2人は戦場へと戻る。  
明日を勝ち取るために―――  
完  
 

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