とあるマンションのリビングに3人の男女がいた。
その内ソファーに座っている2人は少女で、1人だけ立っているのは少年である。
そんな彼女らはテーブルの上に置かれた、少年が持ち込んだ品物を無言でじっと眺めていた。
少年もそんな2人を黙って眺めている――のだが、その口元が笑いでも堪える様にひくひくと痙攣しているのが妙だと言える。
そんな奇妙な沈黙を破ったのは、眠そうな瞳をしたピンクのジャージ姿の黒髪の少女――滝壺理后だった。
「はまづら?」
そう言って首を傾げる滝壺の姿に、『はまづら』と呼ばれた見るからにガラの悪そうな――中身も見た目とさほど変わらない――少年、浜面仕上は一瞬でれっと鼻の下を伸ばす。
「おう、何だ滝つ――」
浜面は滝壺だけに視線を向けて話をしようとした。
しかし、そんな事を許さない人物が居た。
「何ですかこれは?」
そう言って2人の間に割って入る栗毛色のボブカットが愛らしい少女――絹旗最愛は不機嫌そうにかわいらしい眉を八の字にする。
しかし、そんな絹旗の顔などどこ吹く風と浜面は「あ? ああ、飴だよ飴」と当たり前の様にそう答える。
「そんな事は聞かなくってもパッケージに超書いてある『力飴』って文字で判ります。私が超聞きたいのは……」
そこで絹旗は何か言い辛そうに口ごもる。
すると、そんな絹旗の様子にまた浜面の口元が先ほどより幾分大きく痙攣した。
あまつさえ口元を押さえる手から「ぷ、くくッ」などと聞こえて来ては、絹旗も流石に気付こうと言うもの。
その瞳が今しも吊りあがろうとしたその時だった。
「おい、滝壺何……?」
この状況で私を超無視ですか!? と怒りの機先を制されて爆発しそうになる絹旗だったが、何か嫌な予感に振り返り、そして振り返った事を後悔する。
そんな2人の視線の先で、滝壺が飴を手にとってじっくりと眺めていた。
棒に刺さったそれ。べっこう色をしいて、太さは丁度親指と人差し指で輪を作った位。全体は長く少し反りがあり、膨らんだ先端の鈴に似た割れや、くびれ部分のかさの開き具合までが実にリアルに再現された職人芸の集大成――、
その形はまさに隆々と起立した男根その物の形をしていた。
滝壺は相変わらずの無表情のままで2人にも良く見える様に自分の顔の前にそれを掲げると、
「はづらより、大きい?」
「「ッ!?」」
滝壺の愛らしさと天を剥いて起立するグロテスクな男根飴とのギャップに浜面と絹旗は同時にショックを受ける。
暫く斜めになって呆然とする2人だったが、まず先に復活した絹旗が浜面に食ってかかる。
「そ、そうです! 何ですかこの超卑猥な形をした飴は!? セクハラですか? 浜面の分際で超幼気な女の子にそんなもの見せて悦ぶなんて、やっぱり浜面は超ド級変態以下のゴキブリ野郎ですね。即刻窓から飛び降りて超自決して下さい」
「ちょ、ちょっと待て。これだけは言わせてくれ」
「何ですか浜面?」
「俺のモノはこんなに黒光りもしてないしグロくもねぇ!」
浜面の力説に一瞬にして場の空気が凍りついた――と次の瞬間、
「浜面超殺す!!」
「グフォッ!?」
絹旗の拳に集まっていた窒素の鎧が、怒りの叫びと共に突き出された拳を中心に渦を巻きながら浜面を弾き飛ばす。
体を九の字に折った浜面は、真っ直ぐ後ろに有ったソファーに当り、ソファーごと後ろにひっくり返る。
天井にまっすぐ突き出された浜面の足を前に、はあはあと息を付く絹旗と、ぼうっと眺めている滝壺。
そんな2人の視線の前で、直立していた足がゆっくりと倒れ、代わりに腹を押さえて苦しそうに浜面が立ち上がって来る。
「ば……か……マジ殴りやがって……つっ……ぅぅ」
「流石は超害虫。やっぱり頭を超狙わないと駄目ですか?」
「マジで殺しにかかる気かテメエ!? お、お前にはいたいけな男の子のエッチなジョークを笑って受け流す優しい心は無いんですかぁッ!?」
「一匹見つけたら百匹居るかもしれません。超浜面は元から断たなきゃ超ダメなんです」
(全く聞く気がねぇ――――!!)
そう言って手を組み合わせて指を鳴らす様な真似をする絹旗を前に、浜面は背中に冷たいものを感じた。
これはマズイ。このままでは冗談ついでにブチ殺し確定である。
この飴はあくまで冗談なのだ。本命は玄関にちゃんと2つ買ってある。
浜面にしては珍しく気を利かせて某所にて長時間並んでまでゲットして来た、彼女たち位の少女にとって垂涎のお菓子。
ただ手渡しても詰まらないと、ほんのちょっとだけギャップを演出しようとしただけなのに……。
「ま、ちょ、ちょっと待て絹旗。な、こ、これは前座ッ。ちゃんとお前らが喜びそうな本命を2人に用意してあるから。な。拳で語るのだけは勘弁してくれ。マ、マジで俺が悪かったから。ホントに反省する。だ、だから俺にチャンスをッ!!」
浜面の必死の叫び――しかし、怒りで表情を無くした絹旗にその声は届かない。
「超問答無用です」
「ひぃッ!?」
振り下ろされる拳に浜面が無様に悲鳴を上げて目を瞑ったその時、そんな彼の耳にビニールを破るバリバリと言う音が聞こえたのだ。
そんな音の事など気に止める余裕など無く、次に訪れるであろう衝撃に身を強張らせる浜面――しかし、何時まで待っても痛みも衝撃も来ない。
もしかして痛みも衝撃も感じる暇も無く一撃であの世に行ったのか!?
(そんな!? 俺には芝生の庭のある白い家で滝壺と、ついでに絹旗も一緒にそれなりに楽しく暮らすって言う人生設計が有ったのに!? その為にあれから銀行に口座も作ってコツコツ金も貯め始めてたってのにいいいいいいいいいいいい!!)
とそこまで妄想した所で、絹旗の「滝壺さん!?」と言う驚きの声に我に帰る。
そして浜面は薄眼を開いて、まずはすぐ側にいる危険を確認――すると絹旗は拳を振り上げた姿勢で後ろを振り返ったまま固まっていた。
(?)
その原因を探るべく絹旗の視線を追って見た浜面が見たものは……。
「た、滝壺……おま……その飴……?」
先ほどの卑猥な飴を口に頬張る滝壺の姿に浜面は唖然とした。飴の形状に合わせていびつに膨らんだ頬や目元が赤いのは、息苦しい為か、それともそんなものを頬張る行為に興奮しているのか。
2人の視線が滝壺に集まる中、彼女は下品な位にじゅるじゅると音を立てながら口の中からゆっくりと飴を抜き取った。
「んはぁ……」
「お、おい」
「滝壺さん?」
「大丈夫。見た目と違って美味しいし、食べ甲斐もあるよ。ちょっと大き過ぎて、唾液がいっぱい出るけどるけど、問題無い」
「いや滝壺さん! 超そんな話じゃなくてですね……」
自分でも何を超必死になっているのやらと言う気がしないでもないが、何か滝壺を止めないと手遅れになる気がした――そしてそれはすぐに現実のものとなる。
「きぬはたも、ほら」
そう言って唐突に突き出されたのは先ほど滝壺が頬張っていた物と同じ飴。
それが唐突に口に入れられて絹旗は目を白黒させた。
「むぐぐッ!?」
まるで男のアレを口にねじ込まれて犯される様な感覚に背筋にゾクゾクとしたものが走る。
飴なのだからかみ砕いてしまうなり、吐き出してしまえばいいのだが、気が動転してそれが思い付かない絹旗は、舌先で弱弱しくそれを押し返そうと努力する。
「ン……ン゛ヴぅ……」
「大丈夫だよ、きぬはた。味を確かめて、きっと美味しい」
滝壺は目じりに涙を浮かべた絹旗に優しく囁きかける。
同じ優しさならこれを超引っ込めて欲しいと思う絹旗だったが、どうやらその思いは滝壺には伝わらない様だ。
(し、仕方ないですね……)
そう心の中で呟いて、滝壺の言う通りに味を確かめてみる事にした絹旗は、口内を蹂躙する飴におずおずと舌を絡めてた。
そしてゆっくりと2度、3度と男根ならばカリの部分に当る所を舐めてみた。
すると――、
「ン゛ッ!?」
予想外の美味しさに絹旗はびっくりする。
(これがただの飴だとは超信じられません!? その辺の既製の飴とは味わいも深さも甘さも超別格です!!)
気が付けば絹旗は、滝壺の手から飴を奪って一心に舌を使って舐め続けていた。
実はこの飴、浜面が本命と称して買ったお菓子と同じ店で買ったもの。
もっと言えばこの飴はその店のオーナー兼チーフパティシエが肝煎りで制作したものだった。
シェフの地元にある同名の商品を、自分の持つ全ての技術と良質の材料を惜しげも無く投入して作った最高の一品だったのだから不味い筈が無い。
ただ如何せんグロテスクな形は女の子受けする筈も無く女性店員にも毛嫌いされて店の片隅に。そしてそれを偶然見つけて買ったのが浜面だったのだ。
そんな経緯はともかく、すっかり飴の虜になった絹旗は先ほどの嫌悪感も何処へやら、じゅぶじゅぶと音を立てて飴を舐めている。
そんな姿に滝壺もやっと判ってくれたかと一安心して自分も飴を頬張った所で、浜面も居たのだと思いだしてそちらの方をチラリと見た。
するとそこには真っ赤な顔をした浜面が。
「ふぁはうは?」
しかし返事は無い。
聞こえなかったのかと、飴を口から出してもう一度呼んでみる。
「はまづら。はまづら、大丈夫なの?」
「え?」
ぼぉっとした視線がこちらを捕える。
「はまづら。顔が赤いけど、大丈夫?」
「顔?」
「そう、顔」
そう言われて浜面は自分の頬に手を当てた――確かに熱い。これなら顔が赤くても仕方が無い。
「大丈夫?」
また滝壺にそう言われて彼女の顔を見つめると、いつもは薄いピンク色をしている唇が真っ赤に、しかもテラテラと輝いていた。
続いて視線を移せば、愛おしそうに飴に舌を這わす絹旗の姿。
(また随分旨そうに飴舐めやがんなコイツ……。しっかしあれはちょっと犯罪チックだろ、まさかこれが狙いか?)
そんな事をぼんやりと考えていた浜面は、鼻の下をつっと流れるものを感じて鼻を啜る。
「あ、鼻血」
滝壺の言葉に浜面は無意識に鼻を擦る。するとその手にはべったりと血が付着していた。
「ふぅわわあッ!?」
その事に驚いてたたらを踏んだ浜面は、後ろに有ったソファーの上にドスンと尻もちを付く。
「んは……。どうしたんですか浜面?」
「はまづらが、また鼻血」
「またってオイ、そりゃ人聞き悪いじゃねえかよ!? 俺はきっと鼻の粘膜が弱いんだ! だから期せずして鼻血が出てしまっても不可抗力なんだ! エロとは直結しないんだ!」
「ハイハイ。そんな言い訳は超どーでもイイです。で、単刀直入に今回は何に超反応したんですか? ここには浜面を刺激する様なバニーは超ありませんよ?」
「ばッ!? 何でもかんでもバニーバニーってお前なッ! 俺だってたまには別のものにムラムラって来る時だって……」
最後に言い淀んだ浜面。その視線が有るものに注がれている事に絹旗は気付く。
「ふふふ。浜面、私今超ピンと来ましたよ」
「な、何ぃ!? お前もついに電波を受信出来ちまうようなキャラに?」
「その発言は超失礼ですよ浜面。私は滝壺さんの様な電波キャラではありません」
さらっと滝壺に暴言を吐く2人。ま、当の本人は我関せずと力飴を口にくわえもごもごしながらぼぉーとしている。
とここで絹旗は手にしていた飴を浜面の目の前に突きつけた。
「超ズバリ、これですよね!?」
「ギクッ!?」
まあ浜面の視線を追わなくてもうすうす気づきそうなものではあるが、それはともかく図星を指された浜面はギョッとする。
「やっぱり……。大方、浜面の脳内では私たち2人は超イラマチオ奴隷確定だったんでしょうね?」
「イラマ……って何言ってんだお前はッ!! 俺がそんな変態行為を強要するとでも!? 俺のAVのジャンルは全部和姦だけだわッ!! 双方合意でくわえてもらうに決まってんだろッ!!」
「キモイから超性癖をカミングアウトしないで下さい」
「あ、それはスマン……」
「まあ今回は超大目に見ましょう。と言うのも形はともかく味は最高なものを買って来た浜面にはご褒美を上げたいと思うんですよ」
何故かこの状況でパンチが飛んでくるでも無く、可愛くウインクしながら、この提案はどうでしょうと言わんばかりの笑みを浮かべた絹旗に、如何に浜面と言えども警戒心が刺激された。
それでも「ご褒美」と言う言葉は気になる。
時に好奇心は猫をも殺すと言うが……。
「ご、ご褒美って何? あ、いや、さ、催促する訳なな無いんだぜ? た、ただ、ちょちょ、ちょっとき、気になるかなぁ……ははははは……あれ?」
気が付けば絹旗と滝壺が何か話し合っている。と言うか絹旗が一方的に耳打ちして、滝壺がうんうんと頷いている。
これがアイテム純構成員と下っ端の絆の差ですか、と浜面が疎外感に打ちひしがれていると、話が終わったのか2人がそろってこちらに視線を向けて来た。
「覚悟は超良いですか浜面?」
「な、何だよ覚悟って? ご褒美くれるんじゃなかったのかよおい……?」
「大丈夫だよ、はまづら。ちゃんとご褒美になる、と思うから」
「と言う訳で超浜面にズリネタを提供してあげちゃいましょう!」
背後にジャジャーンとでも効果音が出そうはテンションで力飴を構える絹旗と滝壺。若干滝壺のテンションが低いのはいつも通りだ。
そして浜面は、
「ズ、ズリネタぁ!?」
絹旗の言うご褒美とやらに愕然としていた。
「どーせ終生超エロエロの浜面には何を言っても無駄でしょうから。この飴だってそう言う意図で超買って来たんでしょう?」
「ち、違う!? それは本当にジョークで買ったんだって!! ちゃんとしたヤツは別の場所に隠して……」
「浜面」
「お、おう」
急に真顔になった絹旗に名前を呼ばれてビクッと背筋を伸ばす。
そう言えばいつの間にか鼻血が止まっていた、などと関係無い事を思い出していると、
「そこから立ち上がったら超殺しますからね」
「え? 何で?」
浜面の疑問は払拭されないまま、絹旗は何も言わずに力飴を構えた。
それに倣う様に滝壺も力飴を構える。
「何だ?」
そう言って思わず身を乗り出しそうになる浜面だったが、先ほどの絹旗の一言が思い出されてじっと我慢した。
すると、
「そうやって超我慢して下さいね浜面――それでは、まずは超丹念にサオを舐めましょう」
そう言って絹旗は飴の胴体部分に舌を這わすと、言葉通りに丹念に舐めまわし始めた。
そして滝壺もそれに合わせる様に、こちらも飴を舐め始める。
上に、下に、全体にたっぷりと唾液を馴染ませるように、小さな舌を精一杯広げて、そのした全体で味わうかのように擦りつける。
「う、うおぉ……」
その光景に浜面が低く唸る。
と次の瞬間鼻の奥にジワリと例の感触が走って、慌てて近くに有ったティッシュを鷲掴みにして鼻の辺りを押さえつけた。
そんな浜面の様子に内心ほくそ笑む絹旗。
(そうそう。そぉやって超カッコ悪い所を滝壺さんに見られれば良いんです。それに約束を破って立ち上がったら超ブチ殺して一生こき使ってやります)
滝壺はそんな浜面でも大丈夫だとか言っていたが、絹旗からすればそんなエロエロ大魔神など超願い下げなのである。
男は理性なのだ。部分部分は仕方ないとしても、せめて頭くらいは理性で何とかして欲しいと思うのだ。
「続いてカリの部分」
内心は置いておいて次のステージに進む絹旗。
言葉通りにカリの部分に当る反り返りに舌を這わる。
舌先を凹凸にぴったりと押し付けながら、先ほどと同じように丹念に、そして少しだけ力を加えて隙間から何かをこそげ落すようにぐるりと一周させる。
とここで滝壺が、
「ここは、さっきより味が濃い。まはづら、ちゃんと洗ってる?」
その一言に無言でコクコクと頷く浜面。
そんな彼の股間ははち切れそうな程に隆起して、目の前の可愛い子羊たちに狙いを定めている。
しかし――、
(っきしょぉ……これが狙いかぁ……。くそ、ハメてぇ……いやいやハメられただから俺。そこんところ間違えちゃ駄目だろ? だが負けねえぞ! 俺は負けねえ。誘惑に勝ってこそ男ってモンだからなああああああああああああああああああ!!)
まかりなりにも絹旗と浜面の意見は一致していたようである――だから滝壺に仲が良いと言われてしまうのだが。
とにもかくにも浜面は心の中で誓いを新たにするとギリリと奥歯を噛締める。
そうやって力を入れれば入れる程、逃げ場を無くした血液が鼻から出て行くのだが、興奮している彼は気付かない。
その内、カリを責め終わった2人は先端の割れ目に舌を這わせ始めた。
「先端の割れ目。ほら、蜜が超溢れて来てますよ」
飴なのだから先走りが出るなどあり得ない。
しかし、今まで丹念に2人が舐めたおかげで表面が溶けた力飴は、まさに先走りの涙に濡れた様に妖しく光を反射していた。
そしてついに、絹旗と滝壺は飴の先端を口に含んだ。
「あーん」
舌先をレールに見立てて口の中に引き込む絹旗。
「んむぅ」
少しとがらせた唇に先端を押し付けてから、その唇をこじ開ける様にねじ込んだ滝壺。
その行為だけで浜面は目の奥にチカチカと光が瞬く様な気がした。
このままでは狂う、確実に狂ってしまう。ならばいっそ狂う前に2人を……。
(駄目だ駄目だ駄目だあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!)
小さなソファーの上でじたばたと1人格闘する浜面の姿の何と哀れな事か。
そしてこちらも浜面を懲らしめようとは言え間抜けなひょっとこ顔まで披露する羽目になった2人。
(超しぶといですね浜面のくせに)
(はまづら。私はそんな頑張り屋のはまづらを応援してるから)
それぞれの思いを胸にストロークを開始した。
部屋に響くのは、荒い息遣いと2人の少女の唇から漏れるじゅぼじゅぼと卑猥な水音。
上目遣いにチラチラとこちらを伺う様な瞳が一層浜面の理性を揺さぶる。
(くっそ、ヤリてえ……。あいつらをめちゃめちゃ犯してやりてえぜ……。俺以外じゃ感じられなくなるくらい……)
いや、既に浜面には理性は残っていなかった。
後僅か何かの切欠さえあれば、浜面は2人に飛び掛るだろう――そして、そのきっかけは突然やって来た。
まず最初の変化は飴の味と香りに現れた。南国のフルーツを思わせる甘い香りと、実際に今までとは違う甘さが口の中に広がる。
その事に気付いた2人の動きが緩慢になったその時、突然口の中で何かが弾けた。
「「!!?」」
その何かはあっという間に2人の口の中を満たして行く。
驚いて飲み込もうとするが、強いとろみとむせる様な甘さが邪魔して容易に飲み干せない。
その結果――、
「ぷはッ!」
「ぅ……」
慌てて飴を引き抜いた2人の口から、だらだらと白い液体が零れ落ちた。
更には飴の先端からも白いものが吹き出して、2人の顔を汚して行く。
呆然とする2人を前に飴から噴き出た白い液体も直ぐにおさまり、辺りには零れた白い液体と、果実特有の甘い香りが残った。
「んぷっ。びっくりしたね、きぬはた」
「飴に超口内射精されるとは思いませんでしたよ」
そう言ってお互い顔を見合わせて、お風呂に入らなくてはとそんな事を話し合う。
とここである事を思い出した。それは浜面の事。
「はまづら?」
呼びかけてみるがソファーの上で突っ伏したまま返事は無い。
今度は絹旗が、念のため窒素装甲を身にまとって近付いてから、顔を覗きこむ。
「きぬはた、大丈夫?」
「貧血ですかね?」
絹旗が言った通り浜面は顔面蒼白になって気絶していた。
「ティッシュが鼻血で超真っ赤ですから多分そうなんでしょうね。浜面にしては超頑張ったと言う事なんでしょうが……正直超格好悪いです」
「大丈夫かな、はまづら?」
「駄目だったら例のかえる顔の医者がいる病院に超ブチ込めばオーケーですよ。ま、取り合えずここに放置するのも超目障りなオブジェなのでベッドにでも放り投げてきましょう」
そう言って浜面をお姫様だっこした絹旗が歩き出すと、その後を追う様に絹旗も部屋の奥に姿を消して行く。
その後、浜面がいかな運命を辿ったのか、それを知る者は誰もいない。
END