コンビニ袋を片手に町をぶらぶらと歩いていた一方通行(アクセラレータ)はある店の前で足を止めると、そこ張ってある派手な広告をしげしげと眺めた。  
 そこにはでかでかと書かれたホワイトデーの文字と、お決まりの『愛のこもったお返しは当店で!! 売り切れ必至!! お買い上げはお早めに!!』と言うキャッチフレーズが書かれている。  
(チッ、そォいやあのクソガキがンな事騒いでやがったな……)  
 そうして思い出すのは全身チョコまみれで嬉しそうにチョコを差し出していた打ち止め(ラストオーダー)の姿。  
 
 
 ――――このチョコはミサカが1人で作ったんだよ!! ってミサカはミサカはミサカだってやれば出来るんだからって言う所も猛烈にアピールしてみたりっ!!  
 
 
 そのチョコが形はいびつだったが、打ち止めが初めて作ったにしては上出来の味だった事を覚えている。  
 一方通行は面倒くさそうな顔をして自分の髪をくしゃくしゃと掻きまわすと、  
「これだからガキの相手は煩わしいンだ」  
 そうぼやくとガラス張りの自動ドアを抜けて華やかで甘ったるい世界へと足を踏み入れて行った。  
 
 
 それから数時間後、黄泉川愛穂のアパートに着いた一方通行は出迎えに出て来た打ち止めの胸に小さな紙袋を押しつけた。  
「何これ? ってミサカはミサカはホントは知っているんだけどあえてあなたの口から聞いてみたかったりしたりー」  
「知ってンならワザワザ聞くンじゃねえよこのクソガキ」  
「え――――ッ!? ってミサカはミサカは女心の判らないあなたにちょっと憤慨してみたりっ!!」  
 そう言って自分の周りを掛け回る打ち止めを無視して中に入ると、真っ直ぐリビングの特等席、ロングソファーにドカッと腰掛けた。  
「いらっしゃいじゃん一方通行。それとも『おかえり』の方が良かったじゃん?」  
「もちろん『おかえり』に決まってるんだよ!! ってミサカはミサカは意地悪な事言う黄泉川なんか大っキライって言ってみたりッ!!」  
 そう言って一方通行の首に抱きつきながら舌を出す打ち止めの姿に黄泉川はにやにやといやらしい笑みを浮かべる。  
「おお? そりゃめんごして欲しいじゃんよ。それじゃお詫びの印に打ち止めのだあい好きなニンジンとピーマンのフルコースを作ってやるじゃんよー」  
「ヤダ!! ヤダヤダヤダヤダ――――ッ!! ってミサカはミサカは黄泉川のバカァァァアアアアアアアアああああああああああああああああああって大声で叫んでみるッ!!!」  
「ッ!? 人ン耳元で騒ぐンじゃねえよこのクソガキ!!」  
 耳鳴りに顔をしかめた一方通行は、そう言って打ち止めの襟首を掴むと強引に引きはがそうとする。  
「なッ!? あなたまでミサカ事を邪魔にするの!? ってミサカはミサカは愛の力を証明する為に両腕に力をこめてみたりいいいいいいいいい!!」  
「く、あ、こ、このォ馬鹿ァァ……くゥ、首が、締ま、るゥ……」  
 そうして暫く続いた不毛な争いは先に根負けした一方通行の敗北によって終止符を打つ。  
 見事勝利を勝ち取った打ち止めは勝利の玉座に選んだ一方通行の足の間に陣取り、その胸板を背もたれにして戦利品のクッキーを口に運ぶ。  
「ぷふわぁ――――ッ!? ひょれってすっごく美味ひいんだねっ!! ってミひゃカはミひゃカは驚ふひてみたりー!!」  
「ッ!? テ、テメエは人ン股の間で何菓子口から飛ばしてやがンだ!! 食うか喋るかどっちかにしやがれ!!」  
「わははは。頭ぐりぐりされたって許せるくらい美味しいいいいいいッ!! ってミサカはミサカはあなたにこんなセンスがあったなんてビックリって思ってみたりっ!!」  
「フンッ」  
 それっきり一方通行は天井を向いたまま一言も喋らなくなり、そんな彼の足の間では打ち止めが嬉しそうにクッキーをむしゃむしゃと頬張っていた。  
 するといつの間にか席を立っていた黄泉川が、湯気の立つマグカップを2つ持ったまま一方通行を見下ろしていた。  
 
「なンだよ?」  
「いんやぁ、何でもないじゃん」  
 そう言ってやっぱりにやにや笑う黄泉川から「フンッ」とそっぽ向いた一方通行。  
 すると黄泉川は前かがみになって一方通行の上を越えると、打ち止めの目の前にマグカップを1つ差し出した。  
「飲み物飲まなくちゃ体に毒じゃんよ。ほら」  
「ありがとう黄泉川、ってミサカはミサカは黄泉川って案外気が効くんだねって思いながらマグカップを受け取ってみる」  
「一応冷ましては来たけど気を付けるじゃん」  
 と黄泉川が声を掛けた時には、既に打ち止めはマグカップに口を付けている。  
「ん?」  
 その姿勢のまま上目遣いに黄泉川を見上げる打ち止めに、  
「あっちゃー。大丈夫じゃん打ち止め?」  
「全然平気だよ、ってミサカはミサカはココアのお湯加減に満足してみたりー」  
「それを聞いて安心したじゃん」  
「うん! ってミサカはミサカは元気に返事をしてみたりっ」  
 と2人がそんなやり取りをしていると、そこへ一方通行の不機嫌そうな声が割り込んで来た。  
「おォい、黄泉川ァ」  
「何じゃん一方通行?」  
「さっきから重いンだよテメエの乳が」  
 その言葉通り先ほど前かがみになった時から黄泉川の大きな胸が一方通行の頬を押しつぶしていた。  
 黄泉川がマグカップを持っているのを知っていたから黙っていたが、もういい加減そろそろ我慢の限界だった。  
「さっさ退け黄泉川ァ。それともこのデケエ乳ねじ切ってテメエの口に押し込ンでやろォかァ?」  
「あははははは。悪かったじゃん一方通行。めんごめんごー」  
 黄泉川は体を起こすと笑いながら謝ったが、一方通行はそっぽを向いたまま反応しない。  
「それよりどうだったじゃん?」  
「ンあ?」  
「私の胸の事じゃんよ。欲情したじゃん?」  
 その一言に一方通行の眉間に深い皺が寄る。  
「チッ。だァれがそンな脂肪の塊におっ立つっうンだよォ」  
 そう吐き捨てられた言葉にキョトンとした黄泉川は、次の瞬間マグカップの中身を零さない様にしながら器用に腹を抱えて大笑いした。  
 そんな姿に何と無く凍りついた場を元に戻された事を肌で感じた一方通行は再び小さく舌打ちした。  
「おォい、黄泉川ァ」  
「今度は何じゃん?」  
 そう黄泉川から返事が返ったのを確認した一方通行は、テーブルを囲んで右隣りのソファーに座る黄泉川に向かって紙袋を投げつけた。  
「これは?」  
「芳川が帰ってから渡そうかと思ったンだが……、ついでに買った」  
 相変わらずそっぽを向いたままの一方通行の耳が少し赤い様な気がするのは気のせいか……。  
「明日の天気は雨だったじゃんか?」  
 
「テメエ何時でも死にてェンなら小さく畳ンでやろォか?」  
「嘘じゃん嘘じゃん。お、べっこう飴じゃん? なっつかしいじゃんよー」  
「フンッ」  
「それってミサカが貰ったものと違う――――ッ!? ってミサカはミサカは嫉妬と興味で身を乗り出してみたりっ!!」  
 ワイワイガヤガヤとにぎやかに袋を開ける音が一方通行の耳朶をくすぐる。  
 それはとても居心地が悪くて、尻の辺りがムズムズする。反射で外的刺激が無い時とは違う、柔らかい、彼には場違いな程暖かい空間。  
 一方通行は急な睡魔に襲われて鼻から大きく息を吸い込むと、重くなって来た瞼を支える努力を止めようとした。  
 ところが、  
「ン?」  
 急に辺りが静かになった。  
 その事を不審に感じた一方通行はソファーに預けていた自分の首を持ち上げた。  
 そこから見えるのは打ち止めの背中だけ。  
「おォい、どォしたァ?」  
 しかし2人から返事は無い。  
 一方通行は不審げに眉間に皺を寄せながら首のチョーカーに手を伸ばしてスイッチを入れた。  
 すると脳内には、室内の空気の動き、塵の動き、マグカップの中の液体の動き――そして黄泉川や打ち止めの呼吸、心臓から血流、生体電気の流れ。  
 この空間にある全てのベクトルの変化が情報として頭の中に流れ込んで来る。  
 それらの情報から総合するに、2人に何かが起きている事が推測された。  
 原因は不明。だが先ほど一方通行が渡した紙袋が関係しているのは明らかだ。  
 悔やむのは後回しにした。まずは目の前の問題解決に集中する。  
 何の前触れも無く一方通行の体がソファーから跳ね上がった。  
 そしてそのまま床に立った一方通行は、目の前の邪魔な打ち止めの襟首を掴むと今まで自分が座っていたソファーに放り投げた。  
「きゃ!?」  
 打ち止めの悲鳴を背後に聞きながら、一方通行の目は目標を捕えた。  
 テーブルの上には先ほど一方通行が渡した紙袋。その隣には白い袋が2つ。そして黄泉川の手に握られた飴色の物体――。  
(あれか)  
 一方通行のかぎ爪の様に指を折り曲げた掌がその飴色の物体へと躊躇無く撃ち込まれた。  
 だがしかし凶鳥の如き一撃はむなしく宙を掻いた――それは捕える直前に目標がすっと動いた為。  
 その原因はたった1つ。  
(黄泉川ァ)  
 黄泉川の脳波には微弱ながら異常が出ている。万が一洗脳されていればダメージを最小限に意識を奪う。  
 実は偶然黄泉川がタイミング悪く手を引いただけだったのだが、一方通行にそこまで状況を読む力は無い。  
 状況から最悪のケースまで視野にいれたプランを基に一方通行は黄泉川の姿をその赤光を放つ双眸で捉える。  
 ところがその赤い瞳が驚愕に大きく見開かれた。その赤い瞳に映り込むのは――ぽろぽろと涙を零す黄泉川の姿だった。  
「お、い……」  
 想像しなかった状況に一方通行の声がかすれた。  
 
 と、そこで黄泉川の釣り上がった目とバッチリ視線が合った瞬間、  
「酷いじゃんよ一方通行!! お前がこんな嫌がらせするヤツだなんて思ってもみなかったじゃん!!」  
 罵声を浴びせられてキョトンとする一方通行など中々見る事は出来ないだろう。  
 ここに冷静な人間が1人でもいれば、携帯カメラで写真の1つも撮っていたかもしれない。  
 だが、  
「そうだよそうだよ!! ってミサカはミサカはあなたって本当にデリカシーの欠片も無いんだねって本気で呆れてみるッ!!」  
「なッ!?」  
「い、いくら私が最近男関係が希薄だからって……、こ、こんなの無いじゃんよぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!」  
 そう言って黄泉川が泣きながら突き出したのは先ほどの飴色の物体。  
 長さ一五センチ、直径三センチの円柱形で、全体的に反りが有り、先端は直径よりも一回り大きく卵型に近い。  
 ただ造形はもっと複雑怪奇であり、飴細工と言うよりも木工彫刻のような趣も感じられた。  
 それをまじまじと眺めた一方通行は眉間に深い皺を刻むと、  
「これがどォした?」  
「どうしたじゃ無いじゃん!?」  
「何で判らないの!? ってミサカはミサカはあなたの反応にびっくりしてみたりッ!?」  
 何がと言わんばかりの一方通行に、黄泉川と打ち止めが同時に吠える。  
「どお見たってコレ男のお○ん○ん(アレ)じゃんよ!! 冗談にも程があるじゃん!!」  
「あなたは本当に何のつもりでお○ん○ん(コレ)を買っちゃったのかな――――ッ!? ってミサカはミサカは本気であなたの頭の中を心配してみるッ!!」  
 ところが全く要領を得ない一方通行。  
「はァ? アレとかコレじゃ判ンねェンだよォ? 大体何をカリカリしてやがンだ? 生理かテメエら?」  
「んがあああああああああッ!! また変な事言ったじゃんよおぉ!!」  
「し、信じられない!? ってミサカはミサカは呆然自失で声を失ってみたり……」  
 またも大騒ぎする2人にこれ以上関わっていられるかとばかりに、一方通行は立て掛けた杖を拾い、チョーカーのスイッチを切ってリビングを出て行こうとした。  
 するとそんな一方通行の目の前に人影が、  
「あら? 騒がしいと思ったら一方通行。おかえりなさい」  
 それは白衣姿の芳川桔梗。小脇に茶封筒と新聞を挟み、両手にはビニール袋をぶら下げている。  
「食事。買って来たものばかりだけどどうかしら?」  
「いや、俺はもう――」  
 そう一方通行が言いかけた時、その肩と腕がグイッと引っ張られた。  
「ッうォォお!?」  
 慌てて態勢を立て直してみれば、  
「桔梗ぉ――――!!」  
「芳川ぁ――――!! ってミサカはミサカは芳川の足にしがみ付いてみたりー」  
「どうしたの貴女たち!?」  
 困惑する芳川を中心にした人垣が目の前に出来ていた。  
「一方通行が私にこれをよこしたじゃんよぉ!!」  
「あら、随分リアルなバイブね。良かったじゃない愛穂」  
 
「良かったじゃないじゃないじゃんよー!? 桔梗の分もほらぁー!!」  
「あら? ありがとう一方通行」  
「ありがとうじゃ無いじゃんよぉ桔梗ぉー!!」  
「そうだよ芳川ぁー!! ってミサカはミサカは男日照りが続くと女って皆こうなっちゃうのかなぁって心配してみたり」  
「「打ち止めっ」」  
「ひえッ!? ってミサカはミサカは図星を指してしまったミサカの迂闊さに困惑してみる」  
 かしましい事この上ない。  
(チッ。こンな事なら来るンじゃぜ)  
 心の中でそう吐き捨てる。  
 そしてふと考える――そもそもこの騒ぎの原因は何なのか。  
(なンでこォなった? 俺の何が悪いンだっうンだ?)  
 一方通行の赤い目が忙しなく動き回る。  
(打ち止めまでは問題無かった筈だ。すると……)  
 一方通行の瞳が黄泉川の手に握られた禍々しい男根を象った飴を捕えた。  
(これかァ……)  
 一歩通行は目を細めると、「貸せ」と黄泉川の手から飴を奪い取る。  
「あっ?」  
「飴如きでぎゃあぎゃあうるせェンだよテメエらは? こンなモノは食っちまえば形なンか関係ねェだろォが」  
 そして何を考えたのか一方通行はその飴を口に入れた。  
「まあ」  
「「!!?」」  
 軽い驚きに口を開く芳川と、驚愕に声も出ない黄泉川と打ち止め。  
 そんな3人の前で飴を3分の1程口に入れた一方通行は早速自分の軽率な行動を後悔していた。  
(最後に飴食っンわ何時だったかなンて……。クソったれがァ。俺は甘いもンは苦手なンだっつうのによォ)  
 内心毒づきながら飴に舌を絡めて見るが、溶けるのは僅かばかりで埒が明かない。  
「ン゛ン゛?」  
 息苦しさに少し頬を上気させながら歯が当たる硬い音をさせて飴を頬張るが埒が明かない。  
「一方通行。喉から唾液を搾って口に溜めてみなさい。その方が良く溶けるわよ」  
「ン゛?」  
 芳川にそう言われて試してみる。  
 まず喉と舌を搾る様にして口の中に唾液を集める。そしてその唾液を舌を使って飴の周りに塗りつけて行く。  
 すると先ほどまで滑りの悪かった表面がつるつると溶けだして、それに従って口の中には芳醇な味と香りが広がって行く。  
(なンだこりゃ? 俺がこンなモン美味いなンて冗談だろォ?)  
 内心驚愕する一方通行だったが、体は正直に反応する。  
 この飴を口にした多くの者がそうであったように、一方通行も恍惚に目を細めて飴をしゃぶり続ける。  
「な、何か色々とやばいじゃんね?」  
 そう言いながら黄泉川は、芳川に抱きつきながら体をくねらせる。  
 
「やばいのは貴女でしょ愛穂。私に変な所擦りつけないでくれるかしら?」  
 一見冷静に対処する芳川だが、その普段は眠い様な瞳に妖しい光が指さすのは気のせいか。  
「あ、あなたのこんな姿見たく無いよ? ってミサカはミサカは言葉とは裏腹に固唾を飲んで見守ってみたり」  
 顔を覆う打ち止めは指の間から見た思い人のあられも無い姿に興奮を隠しきれない。  
 そんな3人の視線の先では、一方通行がじゅぶじゅぶと卑猥な水音を立てている。  
 その横顔はまるで男根を貪る淫魔のようであった。  
 そして一方通行は、  
(ちくしょォ止まらねェぞォこりゃァ!? 何が形がアレだかソレだか知らねェがそンなモンやっぱ関係ねェじゃねェかよォォォオオオオオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!)  
 学園でも一二を争う気難しいこの少年をして、ここまで虜にした作り手はきっと神の手を持っているに違いない。  
 まさに伝説の甘露に等しい甘い霞に頭の中を覆われた一方通行。  
 そんな彼を正気に戻したもの……それもまた彼が愛してやまない飴だった。  
 何度目かの全体に舌を這わし終えた一方通行が溶けた表面の飴を唾液ごと強く啜ったその時、先端から何かが口いっぱいに迸ったのだ。  
「ン゛!?」  
 目を丸くする一方通行は衝撃的な強い甘味に我に帰ると、口の中に溜まったものを飲み下そうと努力したのだが――、  
「ぶはッ!? ンだこりゃ? 甘ェ……? すっげ甘ェンだけど……ちくしょォ零しちまった……」  
 ねっとりとした白いものを口の端からぼたぼたと零す一方通行は、飴と床と服を交互に見やってから、助けを求める様に視線を上げた。  
 だがしかし、その赤い目が驚愕に見開かれ……やがてジト目に変わるのにさして時間は掛からなかった。  
「おい」  
 初めは比較的優しく呼びかけたが、3人からは何も反応が帰ってこない。  
「おォい!」  
 眉間に深い皺を刻んで呼びかけると、  
「何かしら?」  
 芳川だけだがやっとそれらしい反応が帰った来た事に、一方通行は何故か深いため息をついた。  
「病気かお前ら?」  
「え? 言ってる意味が判らないわ」  
 確かにそれだけでは判らない。しかし、一方通行は説明ひとつせずに「テメエらまとめて洗面所に行ってこい」とだけ告げた。  
 するとその言葉に従って、3人揃って洗面所のある方に消えた。  
 そして暫くした後――、  
「げぇぇぇぇェェェェエエエエエエエエええええええええええええええええ!!?」  
「あ、愛穂!? 女が『げぇ』は無いでしょ? そ、それよりティッシュ、ティッシュは何処に有るのよ!?」  
「ちょ、ちょっと鼻血ぃ!? ってミサカはミサカは何かすっごく色々と否定したい気分になってみたり!! ってこらこら妹達(シスターズ)は映像を回さないでッ!! ってミサカはミサカは上位命令聞けぇ――――ッて叫んでみたり!!」  
 洗面所の方向から響く悲鳴に一方通行は本日何度目かの深いため息をつくと、手にしていた飴の残りをゴミ箱に放り込む。  
 そして側に有ったティッシュボックスを掴むと、阿鼻叫喚のるつぼと化した洗面所に向かうのだった。  
 
 
 
END  
 

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