にこにこと満面の笑顔の黄泉川が、この世の責め苦を全部背負い込んだ様なウンザリ顔の一方通行をお姫様だっこしながら廊下を歩く――絶対にあり得ない光景と思われるだろうが、実はこのアパートではよく見かける珍しくも無い光景だ。  
 やれ打ち止めに杖を奪われたとか、打ち止め相手にチョーカーの電源を使い切ってしまったとか、打ち止めに代理演算処理を止められたとか……とにかくそんな事が起る度に、一方通行は黄泉川にこうして抱きかかえられて運ばれる。  
 いい加減お互い慣れればいいのだが、相変わらず黄泉川はこの一見どうしようもない自称悪党の事が大好きだったし、一方通行はこの全方向死角無しの偽善者女に世話を焼かれると全身に原因不明の痒みが走る。  
 そんな相容れない様でいて息のあった2人は、黄泉川と芳川が寝室に使っている部屋に入って行く。  
 ここにも窓からの暖かい日差しが差し込んでいる。  
 そんな室内には床の上にきちんと畳まれた布団一式と、キングサイズのベッドが1つ置いてある。  
 黄泉川は一方通行をベッドの上にぽふっと投げると、自分の着ていたジャージやら何やら言葉通りにポンポンと脱ぎ捨てた。  
 一方通行は日差しで暖かくなったベッドの上で急速に眠りに引き摺りこまれながらも、あっという間に裸になった黄泉川に辛うじて残った意識を総動員して毒を吐く。  
「何がっついてンだテメエ……。テメエはサカリの付いた雌いぬかァ……なァン……かァァ……」  
「雌犬って言うより雌牛って感じ? ってか寝ちゃ駄目じゃんよ一方通行!?」  
「ン゛ア゛?」  
 慌ててベッドに飛び込んで来た黄泉川に、一方通行は眠気でとろんとした瞳を向けるが、今の彼には瞼を支える事すら難しいようだ。  
 夕日が水平線に沈むかのように赤い瞳が瞼に隠れて行く。  
「あッ!? ちょ、ちょっと待つじゃんよ一方通行ッ!! コラッ!! 眠ったらさっきよりもっと酷い事一杯するじゃぁ……」  
 黄泉川の必死の叫びもむなしく、一方通行は夢の世界へと旅立っていった。  
 その安らかな寝顔を前に、黄泉川は眉を下げて泣きそうな顔をしていたのだが、  
「よぉしッ!! ここは1つ眠り姫の目が覚める様な強烈なヤツをいくじゃんよ!!」  
 黄泉川はグッと拳を握ると、いそいそと一方通行の下半身に移動する。  
 そこには相変わらずの分身の姿。  
「へへへ、いくじゃんよ一方通行。私の前で無防備に眠った事を後悔するじゃん!!」  
 そして黄泉川が次に取った行動は……。  
 まずは自慢のロケットおっぱいを両手でむんずと掴む。  
 次に2つのおっぱいをぴったりと隙間無く合わせる。  
 そしてそこへたっぷりと唾液を垂らしてから、ぐにぐにと揉み合わせる。  
 暫くするとおっぱいの谷間は唾液でべたべたに。  
 黄泉川は自分の胸を見てにまぁと悪戯っ子の様な笑みを浮かべると、おっぱいをパカッと開いた。  
 狙いはもちろん一方通行の分身。  
「ふふ、それじゃあ眠り姫ちゃん、覚悟するじゃんよー♪」  
 黄泉川はグイッと状態を倒すとおっぱいとおっぱいの間に分身が来るようにして……ぺたんと2つのおっぱいを閉じた。  
 2つのおっぱいの飲み込まれて一方通行の分身は影も形も見えなくなる。  
 しかし、そんな事になっていようとは思わない――と言うか眠っているから知る由も無いのだが――一方通行(ねむりひめ)は相変わらずすやすやと寝息を立てている。  
 すると突然、おっぱい同士が絡み合う様にぐにゃりと動いた。  
 いや、動かしたのは黄泉川の手なのだが、それすらも隠してしまうおっぱい侮りがたし。  
 それはともかく別の生き物の様にグネグネネチネチとお互いすり合うおっぱい。その隙間からは時折、一方通行の分身が見え隠れする。  
 ピンク色の顔を出す度にパクパクと鈴口が開く様がまさに魚の息継ぎの様だ。  
「ンぐォォォおおおがああア゛ア゛――――ッ!?」  
「お!? 目が覚めた一方通行」  
 目覚めと同時に叫び声を上げた一方通行に、黄泉川はおはようの挨拶位にさわやかな返事を返した。  
 
 対する一方通行は早速罵声を浴びせようとするが、  
「テ、テメ……な……ン……くゥゥ……」  
 乱暴な快感に覚醒させられたと思ったら今度は強烈な射精感である。  
 勢いは殺がれ、言葉は悩ましい吐息に変わる。  
「喋るか感じるかどっちかにした方が楽じゃんよ一方通行」  
 頬を上気させて自分を責める相手にまで心配されてカッと頭に血が上るが、直ぐに無駄な努力だと理解して諦めた。  
 すると怒りの感情と入れ替わりに快感が甦って来る。  
「あァッ、ンッ、ンンッ、うンッ、うンッ」  
「どうじゃん? 気持ちいいじゃん?」  
 なンつゥ馬鹿な質問するンだこのクソアマァ、とは思うものの射精するのを我慢するので手一杯の一方通行に出来るのはせいぜい涙目でキッと睨みつけるだけ。  
 そんな瞳を見つめ返しながら、黄泉川は更に激しく複雑に一方通行の分身をおっぱいごとこね回す。  
「ぐゥッ、うッ、うン゛ッ、ン゛ン゛ッ」  
 黄泉川がおっぱいをこねる度に出したくない喘ぎが口を突いて飛び出してくると、その度にこの世から消え去りたい気持ちになる。  
「ィぐッ、ゥゥ……、ンン゛ッ、い゛ぎッ」  
「どう? もうイっちゃう? イク時はイクって言って欲しいじゃん」  
 そう言って黄泉川が舌舐めずりするのを見ると、一方通行は背筋にゾクゾクと這い上がるモノを感じる。  
 体は先ほどからずっと射精させろと悲鳴を上げていた。  
 またこのクソデカ女にいい様にイカされンのか思っても立つ腹も既に無い一方通行は、  
(も、勝手にしろォ)  
 いい加減疲れたと全てを諦めた。  
 その瞬間、尿道の奥からミチミチっと何かがせり上がる――精子だ。  
 我慢に我慢を重ねたものが痛みと快感を引き摺って狭いホースを押し広げながら――、  
「出ッ」  
「きゃッ!?」  
 一方通行は黄泉川の顎目掛けて射精した。  
 びちッびちッと音が出そうな白い塊が、黄泉川の顔や首や髪、そして一方通行をいじめていたおっぱいに降り注ぐ。  
 やがて射精が止まった所で、艶然とそれを浴びていた黄泉川の目にやっと正気の光が戻る。  
「あらら、急にじゃん? イクならイクって言って欲しかったじゃんよー。聞きたかったなぁ君の口からイクって……」  
 黄泉川は残念そうにそう言うと、頬を滑り落ちて来た塊を舌で舐め取る。  
「美味し」  
 そして精を浴びせた一方通行の方は、荒い息継ぎを繰り返しながらも、またもまどろみの中に落ちようとしていた。  
 と、そんな一方通行の分身に激痛が走る。  
「ン゛がッ!?」  
 死人も目覚める様な一撃に驚いていて目だけをそちらに向けると、  
「寝ちゃ駄目じゃんよぉ」  
 鈴口に爪を立てた黄泉川が目を座らせてこちらを見ていた。  
 その表情に一方通行の喉がひくりと動く。  
 直ぐに分身への戒めは解かれたが、今度は顔めがけて四つん這いになった黄泉川がゆっくりと向って来る。  
「私に魅力が足りないの? それともこんなオバさんじゃ気が乗らないじゃんか?」  
 恨み事を呟きながら黄泉川の顔がどんどんと近付いて来る。  
 
「そ、そン、そンな事ねェよ」  
 黄泉川の気迫に押されたのか一方通行の言葉がどもる。  
 そしてついに、乾き切らない精液をこびり付かせた顔がずいと目と鼻の先まで近づいて来た。  
「ほんとじゃん?」  
「あ、あァ……」  
 鼻先が触れても目を逸らせない。  
 耳が痛くなる様な沈黙の中、心臓の鼓動が耳障りな程鳴り響く。  
 と、黄泉川が一方通行の鼻の頭をペロッと舐めた。そしてそのままスッと離れて行く。  
「安心したじゃん♪」  
 その言葉に一番安心したのが実は一方通行だった。  
 一方、元に戻ってあっけらかんとした黄泉川は、やっぱり最後まで事をするつもりらしい。  
 一方通行の大事な部分を膝立ちで跨ぐとにっと笑顔を見せた。  
「さあ今度はお待ちかねの合体じゃんよー」  
 お待ちかねなのはテメエだけだろ、とは口が裂けても言わない。  
 もう犬にでも噛まれたと思って諦めよう――何度も諦めた割には諦めの悪かった一方通行もついに観念した。  
「中出しオッケーだからじゃんじゃん出して欲しいじゃん」  
 そう言って薄く腹筋の浮いた腹を音を立てて叩く黄泉川に、一方通行は片方の眉を上げると、  
「あン? 教師にしちゃ随分と気前が良いなァオイ。まァ、俺としちゃァテメエの子袋ごと引き摺り堕しちまえば一緒なンだけどなァ」  
「あはははは。そん時は別の人に頼むじゃんよ。てか種明かしすると警備員(アンチスキル)なんて仕事してる手前、妊娠対策はばっちりやってるじゃん」  
「フン、避妊薬かなンかか」  
「アタリ。女性の警備員は避妊は義務になってるじゃん。パイプカットも出来るんだけど、そっちだといざって時に面倒じゃん?」  
 そう黄泉川はけろっと簡単に答えるが、  
(要はマワされても大丈夫にって事かよ……)  
 基より気の利いたセリフなど皆無な一方通行には、黄泉川にかける言葉が見つからない。  
「何?」  
「他人の為に御苦労なこったと思っただけだ」  
 一方通行はつんとそっぽを向いてしまった。  
 黄泉川はそんな一方通行にあははと笑う。  
 きっとまた黄泉川(じぶん)の心配でもしているのだろうと思うと、愛おしくてたまらなくなるこの少年――ともすれば打ち止めから奪い取ってしまいたくなる程に。  
(今だけ許してじゃん)  
 心の中でそっと少女に詫びの言葉を呟く。  
「ん……」  
 びしょびしょになったクレヴァスを指でパカッと開くと、待ちきれないと涎でも垂らす様に愛液が雫を作って一方通行の上に降り注ぐ。  
「あははは。はしたないじゃんねぇ」  
 また楽しそうに笑う黄泉川に、今更だろォがと口走りそうになる一方通行だが、ぐっとここも堪えた。  
「じゃあ覚悟はいいじゃんね? 入れた途端にイクとかは無しにして欲しいじゃん」  
「ふざけンな。テメエこそテンパって穴ァ間違えンじゃねえぞ」  
「そっちがお好みなら今から準備するじゃん?」  
「だァれがテメエのクソ穴なンかに興味あるかよォ。さっさと突っ込ンでさっさと終われ」  
「はいはい。君はホントにデリカシーが皆無じゃんねー」  
 
「フン」  
 そして、ぴとっと膣穴と先端が触れ合うと、お互いの粘膜が触れ合う感覚に2人は同時に身震いした。  
 ずぐっと先端が穴に飲み込まれる。  
「ん……」  
「ィゥ……」  
 口とも違う温かく包み込む感覚に一方通行はぴくぴくっと腰を震わせる。  
 と、ハッとして黄泉川に視線を向けた。  
 黄泉川が興奮した顔に悪戯っぽい笑みを浮かべてこちらを見ていた――いや、一方通行が気がつくまで待っていたと言う方が正しい。  
「止め――」  
 その事に気付いて止めようとしたが、むしろそれが合図となり――黄泉川の腰がすとんと落ちた。  
 一方通行の分身がまるで鞘に納められる刀の様に、黄泉川の中に滑り込んで行く。  
 未知の快感に一方通行は下腹にありったけの力を込めて耐えた。  
 一瞬が永遠に感じる様な瞬間――いくら物事に頓着しない一方通行でも、三擦り半ならぬ半ストロークで達するのは男として避けたい。  
(クッソォ、ふざけんじゃァァァァあああああああねェェェえええええええ――)  
 ぎゅっと目を瞑り意識を快感だけに囚われない様に努力していたその時、  
 
 
『ドンッ』  
 
 
 まだ底を突くには早すぎる位置での予期せぬ衝突に一方通行の腰が跳ねる。  
「ッ!?」  
 そこへ追い打ちを掛けるかのように今度は狭い肉壁に自分を突き刺す様な感覚が走る。  
「うぐゥッ!?」  
 ずぶっともぬむっとも形容しがたい、鈴口に分厚い唇でキスされた気分。  
 その直後に、今度は竿の根元をぎゅうぎゅうと締めつけられる感覚が続くと、一方通行の腰が続いて2度3度と跳ね上がる。  
「ぐ、ぎッ!!」  
 尿道に込み上げる強烈な射精感。  
 出させろと騒ぎたてる本能を一方通行は理性でねじ伏せようとした。  
(そう好き勝手にイカされてたまるかあァ)  
 力みから奥歯が軋む。  
 下半身に力を込めると肉壺に突き刺さった先端がパクパクと喘ぐのが判る。  
 射精してしまえば楽になる――そんな気持ちを男の意地で打ち消すと、一方通行は快感を鎮めようと何度も浅い呼吸を繰り返した。  
 すると徐々にだが込み上げるような感覚が落ち着いて来る。  
(ざまァみろォ)  
 そう心の中で毒づきながらも安堵に一気に肺の中の空気を出し切ると、止めきれなかった分の精液が尿道から少し滲み出て来て一方通行をまたヒヤリとさせた。  
「おいテメエ。いきなり子宮なンかぶつけてきやがって……」  
 そんなもろもろの不満をぶつけてやろうかと重い口を開いた一方通行の唇の動きが不意に止まる。  
 その視線の先には騎乗位の黄泉川が――その様子がおかしい。  
 先ほどの笑みも何処に消え失せたのか、呆けたように宙を見据えてぽかんと口を開けていた。  
 
 あまつさえその口からほんの少し舌が覗いているのだから異様な事この上ない。  
「黄泉川ァ」  
 声を掛けたが返事は無い。  
「よ、み、か、わァ」  
 もう一度声を掛けると、黄泉川が瞬きした。  
 その後一方通行に向けた顔は相変わらず間抜けた呆け顔のままだ。  
「来た」  
「あァ?」  
 黄泉川の言葉の意味が判らず一方通行は怪訝な表情で聞き返す。  
「すごいの来たじゃんんん……」  
 うわ言のように呟いたかと思うと、黄泉川は両脇をギュッと締めて何かの余韻を味わう様に小刻みに体を震わせた。  
 両腕の圧迫で押し出されたおっぱい同士が押しつぶし合って凄い形に飛び出している。  
 と、そこからもっと凄いモノが飛び出した。  
「あ、おっぱいでたぁ」  
 乳首の先から四方八方に噴水の様にミルクが飛び散る。  
 それは一方通行の顔にも降り注いで来て、彼は俄かに顔をしかめた。  
「避妊薬なンか常用してっからホルモンバランスが崩れたんだろ? いっぺン病院行って検査して来い」  
「やっぱり優しいじゃん一方通行」  
「チッ」  
 相変わらず夢見心地に喋る黄泉川に舌打ちで答えると、  
「テメエが居ねえとガキのお守するヤツが居なくなンだろォが。他に任せられる奴なンて知らねェんだ。せいぜい丈夫で居てもらわねェと……ォ……おい?」  
 気付けば黄泉川がぼろぼろと涙をこぼしていた。  
「優しいじゃんよぉ一方通行ぁ。ぐすっ」  
「なンでそこで泣く?」  
「私ばかになったじゃん」  
「意味判ンねェンだけど?」  
「だからぁ、私子宮をチ○コでドンとされてばかになったじゃん」  
「いや、多分テメエは元から大馬鹿だから」  
「じゃあ、もっとばかになったじゃん!! すっごいばかになったじゃん!!」  
 もう全く会話が成立しない事に一方通行はうんざりした。  
 どうやら本当に黄泉川はさっきの一撃で馬鹿になってしまったらしい。  
 一方通行は繋がったままだと言う事もすっかり忘れてどォしたもンかなと思案顔をする。  
 すると、  
「おっぱい」  
「はァ?」  
「おっぱい。吸って欲しいじゃん」  
「おま馬ガゴッ!?」  
 拒否しようと開いた口に無理やり勃起した乳首ごと右のおっぱいがねじ込まれる。  
 その独特な甘さと、口を塞がれた息苦しさに一方通行が目を白黒させていると、  
「んむぅ。美味しいじゃん。一方通行も吸うじゃんよ。吸いながら子宮をガンガンするじゃんよ」  
 
 もう一つのおっぱいを自分で吸っていた黄泉川が楽しそうに、一方通行にとって面白くも無い事を口にした。  
「ッ!?」  
 そして黄泉川の言う通りに乱暴なピストンが開始された。  
 素早く引き抜いては勢い良く叩きつける。  
「モガガァッ!!」  
「あんッ、いいじゃんよぉ。おっぱいもっとすうじゃぁん。子宮もぶっ壊すくらいガンガン突くじゃんよぉ」  
 外では恥骨が、中では子宮がぶつかって、肉と肉どころか骨同士がぶつかっている様な音を響かせる。  
「あんッ、凄いぃぃッ!! お腹破れちゃうじゃん!! 口から子宮が出そうじゃんよぉ!!」  
 黄泉川が狂ったように叫ぶ度に、結合部から掻き出されたゼリー状の愛液がぐちゅぐちゅと卑猥な音を奏でる。  
 そして一方通行の口の中では黄泉川のミルクがぴゅうぴゅうと吹き出す。  
「ヴグガッ!!」  
 飲み下せないミルクを口から零しながら一方通行が吠える。  
 息は苦しいは、分身は痛い程に気持ちいいは、腰は痛いわ、黄泉川にはムカつくわで、彼の頭の中はかつてない程ぐちゃぐちゃに混乱していた。  
 その苛立ちをぶつける様におっぱいに歯を立てると、  
「ヴエ゛ア゛ァ!!」  
 ゴリッと言う歯ごたえに一方通行自身が驚いた。  
 そして、  
「ん゛ぎぃぃッ!!」  
 痛みに黄泉川がのけ反る。  
 その勢いで無理やり一方通行の口からおっぱいが引き抜かれると、噛むモノの無くなった歯がぶつかり合う不快な音が響く。  
 無残に血の滲んだ右のおっぱいと、無事な左のおっぱいが、ぶるんと振り子の様に振られて天に向かって直立する。  
 その何とも奇妙な光景――だがそんな光景も霞む出来事が黄泉川の中で起っていた。  
 深く突き刺さった一方通行の分身が、のけ反った拍子に子宮口を半ばこじ開けたのだ。  
 更にその状態からすりこぎ棒の様にぐるぐると暴れ回る。  
「ギゥッ!!」  
 一方通行の瞳の奥で星が瞬く。  
「はがぁッ!!」  
 黄泉川が女性らしくも無い方向を上げた。  
 そしてついに黄泉川の中に向って待ちに待ったものが叩きつけられた。  
「ン゛ッ、ン゛ン゛ッ、ン゛ン゛ッ」  
 一方通行が小さく呻く度に熱い塊が迸って黄泉川の隙間を埋めて行く。  
「あ゛あ゛、あ゛あ゛、あ゛あ゛……」  
 黄泉川は馬鹿の様にぽっかりと開いた口から断続的に声を漏らす。  
 恥も外聞も無い。誰に憚る事も無い。駆られる使命も、束縛される運命も無い。  
 黄泉川はこの瞬間1人の女として……いや一匹の雌として解放された。  
 やがて黄泉川を解き放つ要因となった射精も段々と弱まって来る。  
 むしろ4度目の射精にして黄泉川のなだらかだった下腹部を歪に膨らませる量は異常とも言えた。  
 しかし淫獣と化した黄泉川の欲望の火はまだ消えてはいない。  
(やっと終わったか……)  
 一方通行がそう安堵したのもつかの間、  
 
「もっとぉ……もっとだすじゃぁん……」  
 黄泉川がうなされる様に呟きながら一方通行を中心に円を描くように腰を動かした。  
「ッ!!」  
 ぞりぞりぞりっと先端を肉で擦られた刺激に再び射精が再開する。  
「ぐぎィッ!? い、いいかげンッ、ぐはァッ!!」  
 ただでさえ限界だったのにまた搾り取られる快感に一方通行は意識が途切れ途切れになって来る。  
「んッ……まだでるぅ……じゃ……んくッ、こ、こぉんなに……まぁ……あ゛あ゛……まだぁ……」  
 一方の黄泉川は、まだまだと言わんばかりに腰の動きを激しくする。  
 結合部からごぼごぼと白濁を粟立たせる姿は完全に常軌を逸していた。  
「うふふふぅ……いゃあらしいい゛ぃッ……お゛お゛ッ……とぉがぁ……すぅぅう゛う゛ッ、るぅぅ……」  
 唐突に不快な声も耳を塞ぎたくなるような旋律も止まった。  
 息も絶え絶えな一方通行にはそれを確認する余裕も無いが、黄泉川は欲望に精神が追い付かなくなって気を失っていた。  
 涙と鼻水と涎で化粧を施された淫乱人形は、操り糸がぷっつりと切れた様に倒れ込むと、ぴくぴくと痙攣しながら自身の中に詰め込まれた大切な白濁を吐き出す。  
 続いて黄色い尿を漏らす姿は何とも無残の一言に尽きる。  
 そしてこんな乱行に付き合わされた一方通行は、  
(眠、ィ……)  
 まどろみに落ちる幸せを噛締める間もなく意識を手放したのだった。  
 
 
 
 
 その日の深夜。黄泉川の住むアパートに5つの人影が集まっていた。  
「まさかちょっと目を離したすきにあの人を黄泉川に取られるなんて、ってミサカはミサカは呆然と呟いてみたり……」  
「ま、将来のお子様より目の前のないすばでぃと言ったところでしょうか、とミサカ一〇〇三二号は冷静に分析してみます」  
「ムムム、それって上位個体に対する反逆とか? ってミサカはミサカは憤りを感じてみたり」  
「率直な意見を曲解するとは流石負け犬は違いますね、とミサカ一〇〇三二号は上位個体の八つ当たりを軽く受け流しました」  
「ま、負け犬ッ!? ってミサカはミサカは自分の耳を疑ってっみたりッ!?」  
「その通り負け犬です、とミサカ一〇〇三二号は上位個体に駄目押しを加えます」  
「むっがああああああああああああああッ!! ミサカは負け犬なんかじゃ無いもん!! ってミサカはミサカはミサカの頭の中に有る秘密の将来設計を披露してみたりッ!!」  
「根拠の無い妄想をネットワークに垂れ流さないで下さい、とミサカ一〇〇三二号は上位個体の馬鹿さ加減を鼻で笑います。ふっ」  
 地団太を踏む小さな影と、それを取り囲む4つの影。  
「ま、与太話も大概にしてミサカたちを招集した理由を聞かせて下さい、とミサカ一〇〇三二号はプランはあるんだろうなこのクソガキとそこまでは言わないまでも話の進行を促します」  
 その言葉に小さな影はまたも地団太を踏んだ後、  
「黄泉川にはたっぷり罰を与えるの、ってミサカはミサカはほくそ笑んでみたり。それでねそれでね計画は――」  
 そこで無言になる影達。  
 それから程なくして――、  
「了解しました、とミサカ一〇〇三二号はここに居るミサカを代表して上位個体の命令に従いますと答えます」  
 4つの影の1つが頷くと、他の影も合わせる様に頷いた。  
 
 
 
END  
 

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