暖かい日差しが降り注ぐ午後。  
 黄泉川愛穂の自宅になっているアパートの窓からも優しい日の光が差し込んで来る。  
「ふわぁぁ……。こう暖かいと眠くなるじゃんよぉ」  
 そう言って黄泉川は読んでいた雑誌をテーブルにポンと置くと、片方の肘掛けに全体重を掛けてぐたっと寄りかかった。  
 小さく悲鳴を上げる肘掛けを無視して更に体を傾がせると、ロングソファーに横になっている人物と顔の高さを合わせた。  
 一方通行(アクセラレータ)――学園都市第一位の超能力者(レベル5)の少年。彼は今、2枚の毛布を重ね掛けしてすやすやと眠っていた。  
「寝顔だけ見てるとかわいいじゃんよねー。打ち止め(ラストオーダー)じゃないけどイタズラしたくなるじゃん」  
 無論そんな無粋な事をして寝た子ならぬ、眠った悪魔を起こす様な馬鹿はやらない。  
 こうして一方通行の寝顔を見ているだけで十分満たされるじゃん、と黄泉川は自身も眠りに引き込まれつつもそんな事を考えていた。  
 ちなみに一方通行がここに居るのには訳が有った。  
 それは、本来この様な状況下で、彼を放って置く筈の無いある人物の姿が見えない事が関係している。  
 実はこの日、全妹達(シスターズ)の一斉生体調整が行われていた。  
 当然、打ち止めも例外で無く、今頃はカエル医者の病院内で他の妹達と同じくカプセルの中に水中花の様に浮かんでいる事だろう。  
 その様な事が行われているのだが、そこでひとつの問題が判明した。  
 それは今回の調整が、ミサカネットワークを使った代理演算に支障を与えると言う事実。1人2人の妹達ならまだしも、全妹達が強制停止状態に置かれた状況ではまともに機能しないと言う事なのだ。  
 今、一方通行には能力を使う事はおろか、杖を使っても立っている事すら困難だった。  
 カエル医者からは入院を勧められたが即座に断った。  
 すると手を上げたのが黄泉川だ。  
 それも断って逃げようとしたのだが、その瞬間に打ち止めに演算代理機能を停止されてしまった。  
 今は代理演算も回復しているが、先の様に喋る事以外は、体を起こす事さえ困難な状況。当然黄泉川の下から逃げる事も不可能。  
 よって一方通行が取れる唯一の手段――それは寝る事。つまり彼はふて寝しているのだ。  
 騒がしい打ち止めが居ないだけで、ここまで静かになるのかと驚く様な静けさの中、いつの間にか黄泉川も安らかに寝息を立て始めていた。  
 とそんな中、一方通行の目がぱっと開いた。  
 そしてもそもそと毛布の中で身じろぎをしていたのだが、  
「うォあッ!?」  
 驚く声と共にソファーから転げ落ちた。  
「ゥゥ……クソったれがァ……」  
 床に頭を打ち付けてくらくらと眩暈を覚えつつも、不自由な自分の体に毒づいていると、  
「どうしたじゃん一方通行?」  
 いつの間にか黄泉川が顔を覗きこんでいた。  
「あァ? 便所だよ、べ、ン、じょ」  
「なぁーるほどじゃん」  
 一方通行の答えに拳で掌をポンとたたいた黄泉川は、一方通行に絡みついていた毛布を引きはがすと、彼の体をひょいと小脇に抱え上げた。  
「おい」  
「何じゃん?」  
「俺は荷物か何かか?」  
「そんな訳無いじゃん」  
「そォかよ。俺はてっきり間違えられてンのかと思ったよ」  
「あははは。一方通行は荷物って言うより爆発物じゃん」  
 そんな相槌に一方通行は無言を通すが、黄泉川はお構いなしに話を続けた。  
「そんじゃトイレにいくじゃん。爆発物処理班出動じゃんよ♪」  
 そのまま一方通行を抱えてトイレへ向かった黄泉川は、ドアを開いてから一方通行を壁際に立たせると彼の足首に付いたベルトを外し始めた。  
「一応確認しとくけどよォ、なンのつもりだ黄泉川ァ?」  
「このままじゃトイレ出来ないじゃんよ。それともはいたままするのがお好みじゃん?」  
 黄泉川の答えに一方通行は舌打ちするとそれきり何も言わなくなる。  
 
 その事を了承と取った黄泉川は作業を再開する。  
 次々とベルトを外してズボンのチャックを下ろすとチラリと一方通行の下着が覗いた。  
 そして、そこまで準備が終わると、黄泉川はおもむろにズボンごと下着に指を掛けて、躊躇も確認も無くズボンと下着を一緒に引き摺り下ろした。  
 些か乱暴とも思える行為だったが、既に覚悟を決めていたのか一方通行からは何の反応も帰って来い。  
 黄泉川の目の前に晒された一方通行の分身はまだ皮を被っていた。  
 ここも刺激が少ないのか色素沈着も無く赤ん坊の様に白い竿。少しだけ覗く先端は綺麗なピンク色をしている。  
 陰毛は薄く、その上ここも真っ白なので一瞬無毛かと思わせた。  
 そして黄泉川を一番驚かせたのは臭気が無い事。このくらいの年齢の男子特有の蒸れた様な雄の臭いがしないのだ。  
 その非現実的な状況が返って黄泉川の女に小さな火をともす。  
 本人も意識せずに見入ったままこくりと生唾を飲み込む。  
 するとそれを悟ったのか、それとも限界だったのか、一方通行から明らかに苛立ちを含んだ声が飛んで来る。  
「おォい、何時までこのままなンだよ? まさかテメエが便器の変わりでもすンのかァ」  
「ま、まさかそんな訳ないじゃん!? あはあ、ははははぁ……。すぐッ!! すぐ準備するじゃーん!!」  
 黄泉川は作り笑いを引き攣らせながら慌てて一方通行の足からズボンと下着を一緒に抜き取ると、その体を慎重に便座に座らせた。  
 一方通行の方も狭い壁の両側に手を付いて体のバランスを整える。  
 そして全ての準備が整え終わると、  
「でわごゆっくりじゃん」  
 黄泉川は慇懃に深々とお辞儀をするとトイレのドアをパタンと閉めた。  
 トイレの個室でやっと1人になった一方通行は、目を閉じて小さく長いため息を付く。  
 すると程なくしてちょろちょろと水音が狭い室内に響き渡る。  
 安堵のひと時……ところが、  
「あァ?」  
 突然妙な胸騒ぎに襲われて一方通行は閉じていた瞼を少しだけ持ち上げた。  
 何かがおかしい。妙に鼓動が速い。それに体も急に熱くなって来た。  
「なンだァ……?」  
 無意識に眉間に深い皺が寄る。  
 これはチョーカーか、もしくは代理演算を司る妹達に何かが起きたのかもしれない。  
 そんな考えが頭を過ぎった時だった。  
「お、おい」  
 今度は下半身に妙な熱の高まりを感じる。  
 その原因を調べようと不自然な態勢で自分の股間を覗きこんだ。  
 すると放尿中にも関わらずむくむくと鎌首を持ち上げる分身の姿が見えた。  
「ちょ、それはやべェ――」  
 慌てた一方通行は咄嗟に前かがみになろうとした。  
 そして――、  
「うォあァッ!?」  
 元々不自由な体で取っていた危ういバランスが一瞬の気の迷いから一気に崩れた。  
 立て続けに響くドタンバタンと言う音は廊下に居た黄泉川の耳にも直ぐに聞こえた。  
 何が起きたのかと慌ててドアを開けた黄泉川。  
「だ、大丈夫じゃん!?」  
 そこで彼女が見たのは――、  
「ア、一方通行?」  
「ッきしょォォ……死にてェ……」  
 床に転がって自分も回りも小便まみれにした一方通行の姿だった。  
 
 ざばぁーっと頭からお湯を被った一方通行は、髪から滝の様に流れる雫もそのままにじっとしていた。  
 ここはバスルーム――先ほどの粗相の後始末のために一方通行は風呂を借りていた。  
「で、俺が風呂に入ンのは判ンだけどよォ、なンでお前も一緒なんだァ?」  
「それは一方通行が1人で風呂に入れないからじゃんよ」  
 黄泉川はそう返しながら、自分の入っている浴槽からまた洗面器でお湯をすくって、ムッとした表情の一方通行の頭にざばぁーっと掛ける。  
「それならテメェが裸ンなる必要はあンのか?」  
「当然じゃん」  
「ほォ。その理由を聞かせてくれると涙が出る程嬉しいンだけどよォ」  
「私だってお前を運ぶ時に汚れたじゃんよ。風呂に入る権利があるじゃん。それとも一方通行の……」  
「あァ、もォいい!! それ以上言いやがったらテメエの無駄にでけェ乳を引き千切って口ン中に突っ込むぞ!!」  
 それっきりムスッとして黙ってしまった一方通行。  
 そんな彼の頭をタオルで笑顔でガシガシと力強く拭いた黄泉川は、ぐいっと強引に一方通行の視線を自分と合わせさせると、  
「もしかして、恥ずかしいじゃん?」  
「一回マジに死なねェと判ンねェみてェだなァテメェはよォ」  
「あははははは。おお怖ッ」  
 そんなやり取りをした後、黄泉川は支えていた一方通行の体を浴槽の縁に寄りかからせると、ざざぁーっと言う大きな水音と共に湯船から立ち上がる。  
 今の黄泉川が身に付けているのは一枚のタオルだけ。  
 それはマイクロミニのワンピースの様にかろうじて大事な部分を隠しているが、それが返って黄泉川の豊満な胸やむっちりとした太ももを強調していた。  
 しかも大胆に動くものだから何時タオルが肌蹴てもおかしく無い様な状態になっている。  
 そんな恰好の黄泉川は事もなげに浴槽を跨ぐと一方通行の背後に立つ。  
 そして何を思ったのか背後から一方通行を抱きしめた。  
「ン?」  
「お湯に浸かるじゃんよ」  
「あァ」  
 特に驚く様子も無くされるがままの一方通行。実は浴室内にはいる時もこんな感じに抱きかかえられたので、その事に関して一方通行には特に抵抗は無い。  
 むしろ抱きかかえている黄泉川の方が拍子抜けする位大人しく抱きかかえられていた。  
「なあ一方通行」  
「あァ?」  
「私って魅力無いのかなぁ?」  
「……頭腐ってンのかテメェ? いいからさっさと風呂に入れろ」  
「…………」  
 その言葉に今度は黄泉川が珍しくムスッとした表情を見せた。  
 そして何を思ったのか一方通行を抱えたまま尻から湯船にダイブした。  
 激しい水音と共にお湯が辺りに飛び散って、2人とも頭から水を被る事になる。  
「ンガゴブハァ!! ンぬァにしやがンだァ黄泉川ァ!!」  
「ぷはッ!! ふ、不可抗力じゃん!! 単に足が滑っただけじゃんよ!!」  
「ざけンじゃねェぞテメエ!! 今明らかにそのクソデケェケツからワザと突っ込ンでっただろォが!!」  
「男が細かい事気にするなじゃん!! 足が滑ったって言ったら足が滑ったじゃん!!」  
 そうして短い舌戦が終わると2人は同時に大きなため息をついてそれきり黙りこくってしまう。  
 狭い浴槽の中で胡坐をかいた姿勢の黄泉川と、その胡坐の中にすっぽりは待って背中から抱きかかえられたままの一方通行。  
 暫くの間2人は黙って湯船に浸かっていた。  
 しかし、その沈黙を一方通行が唐突に破る。  
「おい」  
 声を出すが反応は無い。  
 
「おォい!!」  
 先ほどよりも大きな声に、苛立ちの感情を込めて呼びかけた。  
「何じゃん? もうのぼせたじゃん?」  
 黄泉川の返事に一方通行のこめかみにびきびきと青筋が浮かび上がると、  
「のぼせたじゃ無くて手うォッ!?」  
 怒りの叫びは途中から驚きの叫びにすり変わる。  
「まだ大きいままじゃんね」  
「っゥゥ……、ほっときゃァ治ンだそンなモンはァァ……」  
「でも苦しそうじゃん一方通行?」  
「ゥゥ……、そ、そりゃテメエが、ァゥンン……」  
 黄泉川の指摘通り苦しそうに体を折り曲げる一方通行。その身に一体何が……?  
 とその時、湯船の中の黄泉川の右手が何かを指の先で練り込む様に擦った。  
「はァぐゥッ!!」  
 途端に嬌声を上げてびくびくと体を震わせる一方通行。  
 すると黄泉川はそんな彼の耳元に口を近付けるとそっと優しく囁いた。  
「先っぽからぬるぬるしたものが出て来たじゃぁん」  
「や、めろ、よみ、か、わァ……」  
 一方通行が苦しみ、身もだえ、嬌声を上げるのも無理は無い。  
 先ほどの一件から原因不明の怒張をしたまま基に戻らない分身。  
 不自由な体では抵抗する事も出来ない一方通行は、完全に皮が剥けて反り返ったその分身を、黄泉川の手淫によって弄ばれていたのだ。  
 鈴口から染み出るぬめりを十分に堪能した黄泉川は、そのぬめりを逃がさない様にしながら竿を扱く。  
 そうしながら再び一方通行に囁きかける。  
「だって抜いたら治るかもしれないじゃん」  
「ば、か、やめ、ろォ……」  
 その言葉を合図にして黄泉川は本格的な手淫による抽送を開始した。  
 湯船の中で締めつけの強弱を付けながら黙々と擦りあげると、一方通行の口から「ふゥゥゥゥ……」と、呻きともため息ともつかない声が漏れる。  
 更に黄泉川は開いた手で一方通行の胸をまさぐると、硬く突き出た小さな芽を掌を使って押しつぶす様に転がした。  
「ンンッ、ン、ン、ンンンン……」  
 眉間に深い皺を寄せて声を殺す一方通行。しかし黄泉川には彼が確実に感じているのが掌の感触から、まさに手に取る様に判る。  
「何か女の子相手にしてる気分じゃん」  
「だァ、れ、がァ……、ォンなァ……だァ……クソよみかァ……」  
「こらこら女の子がはしたない言葉使っちゃだめじゃんよ」  
 黄泉川はそう言ってからニヤリと笑った後、扱いていた分身の鈴口に人差し指の爪をねじ込んだ。  
「グギィィィ……」  
 その瞬間今まで以上に一方通行の体がびくん跳ねた。  
「判ったじゃん?」  
「わッ、かるかァ……こォのクソったれがァァ……テメェ……しきゅうゥゥ……ひきィ……ぬゥいてェ……オ、オォ、オナホ、にィ……うぐッ!?」  
「もう黙るじゃんよぉ。ってか黙らせてやるじゃん」  
 顎を掴んで無理やり自分に顔を向けさせた黄泉川は、そのまま強引に一方通行の唇を奪った。  
「むぐゥおごァァ――――ッ!!」  
 そのまま肺の力に任せて一方通行の息を吸い上げながら口の中を縦横無尽に犯す。  
 そして、一方通行の口を犯しながら抽送のピッチを一気に上げて行た。  
 凶悪と呼ぶにふさわしい刺激が一方通行を翻弄すると、基より外的刺激に弱い一方通行に耐える術など無かった。  
 まして我慢する程に込み上げるものは膨らむのだ。  
 そして――、  
「ンン゛ン゛う゛う゛う゛う゛ゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウ!!」  
 一方通行は黄泉川に悲鳴を飲み下されながら、湯船の中に激しく精を放つのだった。  
 
 

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