学園都市の平日の夜。第七学区の、特に学生寮が多くあるエリアは、他の場所よりも比較的穏やかな暗闇に包ま  
れる。  
放課後に賑わっていた商店街や地下街は、公共交通機関が停止する最終下校時刻に合わせて人の波が引いていき  
、ごく少数の夜遊び派を除いて殆どの学生たちが寮へと戻っていくのだ。  
スキルアウト等の例外もいるにはいるが、大抵の住人たちは、自分の寮で静かにプライベートの時間を過ごす。  
それ故に、街はゆっくりと眠りにつき始める。  
そんな、いつも通りの夜。  
黄泉川のマンションでも、いたっていつも通りの日常が繰り広げられるはずだった。  
 
「打ち止めー。一緒にお風呂入るじゃんよー」  
「はーい、ってミサカはミサカは元気よくお返事してみたり!」  
夕食後、ジャージ女教師黄泉川愛穂に洗面所から声をかけられ、それまで芳川桔梗と携帯ゲーム機で遊んでいた  
(そして連敗していた)打ち止めは軽い足取りで駈けていった。  
例によってカギをかけていないドアを開けると、黄泉川はすでに服を殆ど脱ぎ去り、その豊かすぎる胸を恥じら  
うことなく晒して髪留めを外しているところだった。  
「おー来たじゃんね。よしよしじゃあ服脱いで洗濯機に突っ込んどけー」  
「はーい、ってミサカはミサカは再度お返事してみる」  
本来彼女が着ているワンピースの生地は手洗いする方が良いのだが、黄泉川はあまりそういうことは気にしない  
らしい。  
この洗濯機は学園都市でも最新モデルの一品なので、多少のことは大丈夫だと思っているのかもしれない。  
……そういった機械への無茶振りが、かつてイギリス清教の某女子寮での悲劇(?)を招いた訳だが、そんなこと  
は彼女達が知るよしもない。  
打ち止めは言われるままに脱いだ服と下着をまとめて洗濯機に放り込み、浴室へ足を踏み入れる。  
ばしゃっ、と洗面器に張ったお湯を頭から被り、彼女は濡れた髪の毛をかきあげて黄泉川の方を向いた。  
そして、思わず瞳を奪われたように彼女の身体を凝視してしまう。  
その視線は首から下への一点集中だ。  
「ん?胸になんかついてるじゃん?」  
「……ううん何でもないの……ただ、世の中ってなんて不公平なんだろうって考えてただけだから、ってミサカ  
はミサカはうなだれてみたり」  
「???」  
よく鍛えられ引き締まった体格には不釣り合いな、人の頭くらいの大きさのふたつの膨らみが柔らかそうに揺れ  
、打ち止めを絶望の海へと叩き込む。  
そんな様子を見てようやく合点がいったらしい黄泉川は、豪快に笑って打ち止めに向き合った。  
「心配しなくても大丈夫だって。大人になればおっぱいなんていくらでも大きくなるじゃんよー」  
「……ミサカの場合成長予定図があちこちにいるからなぁ……ってミサカはミサカはお姉様や下位個体の体つき  
を思い出してがっくりしてみる」  
「……あ、あはははは……」  
自分が以前見かけたことのある学園都市第三位の姿を思い浮かべ、打ち止めの言いたいことがなんとなく伝わっ  
た黄泉川は若干気まずそうに苦笑した。  
シャンプーを手に取り、打ち止めの髪の毛を泡だらけにしながら女教師は語りかける。  
「大丈夫大丈夫。一方通行はおっぱいの大小で女の子を判断するようなタイプじゃないじゃん。……つかむしろ  
あのロリコンは打ち止めの今の体つきこそが超ド級ストライクかもしれないじゃんよ」  
「う……なんでミサカがあの人基準で考えてるって分かったの?ってミサカはミサカは恥ずかしくなってみたり  
」  
「いやいや、打ち止めがお年頃になったんだなーって思っただけじゃん?」  
「そのニヤニヤ顔やめてよーっ!ってミサカはミサカはヨミカワの顔を見上げて憤慨して……にぎゃあああ!!っ  
てミサカはミサカは涙を浮かべて両目を押さえてみる!」  
「ほーら。あんまり上見るとシャンプーが目に入るじゃんよー」  
黄泉川にケラケラと笑われながらシャワーをかけられる。文句を言いたいところだが目が痛くてそれどころでは  
ない。  
「んん?でも打ち止め。よく見たら最近、胸ふくらんできたじゃん?」  
「えっ、そうかな?ってミサカはミサカは目を擦ってみる」  
ようやく元に戻った視界で改めて確認してみると、言われてみれば確かに、胸が育っているような気がする。完  
全にぺったんこ状態だった以前と比べれば、鎖骨の下には極めてなだらかな双丘があり、ほんの少しだが女性ら  
しさをアピールしていた。  
自分自身のことは意外に気付きにくいのかもしれない。黄泉川に言われてようやく、彼女は自分の身体の変化を  
感じはじめていた。  
 
「打ち止めも成長期じゃんねー。まぁ、揉んで育ててくれる野郎が身近にいるってのが最大の要因だろうけどさ  
ー」  
「ぶふっ!!?なっなななな何をいきなりそんな唐突な爆弾発言を!?ってミサカはミサカは顔を真っ赤にして叫  
んでみる!」  
「えー。でもどーせ君たちはきっと黄泉川さんたちの目を盗んでイチャイチャと乳繰り合ってるんじゃん?」  
「お、憶測でものを言っちゃいけないんだからね!ってミサカはミサカはプンスカ怒ってみたり!!」  
本当のことを言うと、彼女が怒っているのは素振りだけで、内心は『もしや感づかれているのでは』と相当冷や  
冷やしていたのだが。  
実際にはイチャイチャどころか相当なR指定の領域まで経験を積んでいるこの少女は、若干のぼせて足元がふら  
ついているのを自覚しながらも爆乳女教師黄泉川とのバスタイムを過ごすのだった。  
 
†††  
 
色々と刺激的な入浴を終え、歯磨きを済ませた打ち止めはパジャマ姿でベッドルームへと向かう。  
そのまま自分の部屋へ入ろうとした彼女だが、ふと隣の一方通行の部屋を見て、タンスの引き出しが半開きにな  
っているのに気付いた。  
「おおっと。ついでに閉めておいてあげよう、ってミサカはミサカはどこかの新妻っぽく甲斐甲斐しさを提供し  
てみたり」  
独り言を呟きながら彼の寝室へと足を踏み入れる。  
ファンシーな小物を飾っている打ち止めの部屋とは対照的に、整頓されていると言うよりも物が少なく寂しい印  
象を持つ部屋だった。  
閉め忘れていたらしい引き出しを完全に閉じる打ち止め。  
ついでに朝開きっぱなしだったカーテンも閉め、彼女はくるりと後ろを振り返る。  
物の殆ど無いその部屋で目立つのは、中央付近に置かれた真っ白なベッド。  
「えいっ」  
ほんの出来心だった。  
ぽすんっ、と軽い音を鳴らして、すぐ近くのベッドに腰掛ける。そのまま身体を横に倒すと、毛布が優しく彼女  
を受け止めてくれた。  
寝具に馴染むシャンプーの香りが打ち止めの鼻をくすぐる。  
「……ふあぁーいい匂い、ってミサカはミサカは人のベッドで勝手にゴロゴロしてみる」  
窓から差し込む光を浴びて染み付いた陽の暖かさや、洗剤の香り、それに人肌の柔らかな匂いは彼女をくったり  
と脱力させていった。  
「うーん、なんだか眠たくなってきちゃうなぁ、ってミサカはミサカはあの人の匂いがするお布団に頬ずりして  
みたり」  
日溜まりでうたた寝する猫のようになりながらも毛布に埋もれていた打ち止めは、一つだけ、異質な匂いを見つ  
ける。  
「……あ、」  
その正体に気付いた途端に、それまで微睡んでいた彼女の腹の中で、何か熱いものが蠢いた。  
 
毛布に染み込んでいたのは、今朝彼女が一方通行に無理矢理ここで吐き出させた、白濁の僅かな残り香。  
 
「……っ、」  
打ち止めの脳裏に、今朝舌に刷り込まれたばかりの、ひどく苦い味がフラッシュバックしてくる。  
あの時の、あの人の匂いだ。  
そう考えてしまうだけで、何故か子宮の奥底が疼いた気がした。  
脊髄を電気信号が這い上がり、背筋がぞくぞくと震える。  
「……ふ、ぅ……っ」  
誘惑に抗えずにどうしようも無くなった打ち止めは、泣きそうになりながらもおずおずと自分のズボンをずり下  
げてしまう。  
かすかに濡れはじめた足の付け根に手を伸ばし、下着の中へ指を滑らせる。うつぶせになったままで秘部をそっ  
と撫でた。  
ぬるりとした感触が、指の間に広がる。  
「あっ、ん……!」  
唇から紡がれる無意味な声が止められない。肺の奥まで満ちる雄の匂いが、アルコールのように彼女の中心をとろ  
けさせていく。  
だらしなく蜜を零す箇所に指先を出し抜きすると、その度に電流のような快楽が駆け抜けた。  
「……ッ!!あ、ぁ……」  
小規模な絶頂を感じ、奥から止め処ない熱が溢れ出して、下着を濡らした。  
 
それでも、打ち止めは悩ましげに眉を寄せる。これでは駄目だ、と身体中の感覚器が悲鳴を上げていた。  
彼女のか細い指先は奥深くには届いてくれない。  
柔らかくほぐれたその箇所は、彼に乱暴に奥底を掻き回された時の、例えようもない程の快感をまだはっきりと  
覚えているのに。  
恥ずかしさに震え、打ち止めは唇を噛む。  
これではまるで、期待しているようではないか。  
いや。  
きっと、期待しているのだ。  
ここにはいない少年に『いやらしいこと』をされるのを、幼い少女の身体は待ちわびている。  
一方通行の指先に触れられ、狂うほど焦らされ、挿し貫かれてめちゃくちゃにされることを、こんなにもみっと  
もなく期待していた。  
自分で自分が嫌になるが、それでも身体は止まらない。  
前ボタンを千切るように外し、胸に触れる。普段意識していない先端が硬く尖り、ひどく敏感になっていた。  
布地に擦れて痛い。耐えられなくなった彼女はついに上の服も脱いでしまった。  
さらけ出した色白な肌を、窓から差し込む夜景の無機質な光が照らす。  
「っあ、……ん!」  
今朝、指を絡め口腔に納めた屹立するモノを、掠れた声を、押し殺したような吐息を、溢れた白濁を喉に直接流  
し込まれる熱量を。  
一つ一つ思い出す度に、彼女の膣内は埋め込んだ自分の指を歓迎し、優しく締め付けてくる。  
「ん、っ……、あくせられーた、……っ!」  
ひたすら彼の記憶を手繰り寄せて、持て余した自分を慰める行為に――いけないことだと分かっていながらも、  
少女は溺れていった。  
 
だからこそ、打ち止めは気づくことが出来なかった。  
シャワーを浴び、寝支度を終えたこの部屋の持ち主がドアノブをひねり入ってくる、その直後まで。  
 
がちゃ、と。  
無防備なドアの音が、もどかしい快楽を夢中になって追いかけていた打ち止めの意識を、無理矢理現実へと引き  
戻した。  
「―――ッッ!!?」  
心臓が止まるかと思った。  
嫌だ、と彼女は心の中で叫ぶ。  
振り向きたくない。今の自分の姿を『彼』に見られてしまったということを、認めたくなかった。  
それでも、振り向かなければいけない。  
彼女は恐る恐るとドアの方に顔を向けた。  
そこには嫌になるくらい予想通りに、裸同然の姿となった彼女を呆然とした表情で見下ろす一方通行の姿があっ  
た。  
「……や、だ」  
何に対しての拒絶なのか本人にもよく分からないまま、首を横に振る。  
羞恥と自己嫌悪とが混ざり合って、彼女はぼろぼろと涙を零す。  
一番大切な人に、自分の一番いやらしい部分を見られてしまった。  
そんな途方もない絶望感が押し寄せてきて、打ち止めの胸は張り裂けんばかりだった。  
「……オマエ、」  
「っや、ごめんなさい……見な、いで……お願い、ミサカは、ミサカ……は」  
時折しゃくりあげながら彼女は、震える手つきで、露わになった身体を毛布でくるむ。  
一方通行はというと、未だ事情が飲み込めていないようで、その顔からは普段彼が表に出す不機嫌そうな感情が  
完全に抜け落ちていた。  
当然の反応だと思う。  
誰だって、自分のベッドで同居人の幼い少女が裸になって自慰に没頭しているのを目撃したら、すぐに普段通り  
の冷静な行動を起こせはしないだろう。  
学園都市最優秀の頭脳を有する目の前の超能力者は彼らしくないポカンとした表情のまま、極めて単純で素直な  
、心からの疑問を口にした。  
「……、何してンだ」  
「……っ!!」  
顔が極端に熱くなっていくのが自分でも分かる。  
何かを大声で喚きたかったが、これまで以上に涙が溢れ出して彼女の喉を塞いだ。  
そしてこんな時になっても、悲しいことに未だに打ち止めの身体は熱が冷めていなかった。  
本人はこうして自己嫌悪に陥り涙が止まらなくても、痺れた秘部は尻餅をついたシーツにひたすら水溜まりを作  
り続けている。  
 
これじゃあ本当に『誘ってる』みたいだ――そう思ってしまった打ち止めは、ますます彼の顔をまっすぐ見られ  
なくなる。  
「……オイ、」  
「……っ……!」  
呼びかけながら、彼がこちらまで歩み寄ってくる気配を感じる。  
軽蔑されたかもしれない、と打ち止めは悲観せずにはいられなかった。  
それを確認することが怖くて、返事が出来ない。涙を飲み、ひくっ、と喉の奥がしゃくりあげる。  
 
それでも、そんな彼女の濡れた目許を無造作に拭ったのは一方通行の掌だった。  
 
「っふぇ……、えう!?」  
俯いた真っ赤な顔を無理矢理上に向かせ、軽く鼻をつままれる。  
目を丸くする打ち止めに構わずに、一方通行は彼女の小柄な身体を後ろに傾けさせた。  
耳の裏に響いた、スプリングが軋む音。それを聞いて、ようやく彼女は自分がベッドに押し倒されたという事実  
を認識した。  
彼は、真顔の中へ僅かに苛立ちを混ぜたような表情のまま打ち止めを組み敷き、触れそうなくらいに近くに顔を  
寄せる。  
「……何してンだって聞いてンだよ。返事くらいできンだろォがクソガキ」  
「えっ、あ、あの……―――ひゃあッ!」  
不明瞭にうろたえる言葉は甲高い嬌声に寸断された。  
下着から染み出した生温い液体が伝った太股を、一方通行の手が持ち上げたからだ。  
脚が開かれ、それまで毛布で隠されていた両脚の付け根が露呈される。  
弄り過ぎてどろどろになった過敏な襞が、わずかに食い込む下着越しに見透かされていることを知り、にわかに  
彼女の脳は羞恥で沸騰しそうになった。  
半泣きになりながら、打ち止めは懇願する。  
「やだっ……、やめて……って、ミサカは、ミサカ、は」  
「はあ?オマエが自分で勝手にサカってンじゃねェか」  
つまらなさそうに息を短く吐く一方通行の顔には、表情が殆ど含まれていなかった。その赤い瞳が何を映してい  
るのかもよく解らない。  
逆にそれは一番危うい状態なのだと、何となく彼女は理解する。  
今、彼に触れられたら、自分はいったいどうなってしまうのだろう。  
緊張と、それを凌駕する過度の期待が打ち止めの抵抗を押さえつけた。  
自分の拙い手で慰め、達することも出来ないまま膨らみ続けた焦れったい熱が子宮深くで疼く。  
何も出来ないでいると、一方通行がそのまま毛布を剥ぎ取ってしまった。  
打ち止めが咄嗟に身体を隠そうとするよりも先に、彼の指が片胸に触れ、柔らかな肌を歪ませる。  
「あっ、ん……!」  
くすぐったさに近い刺激を得て、思わず甘ったるい吐息が漏れる。  
いつもの愛撫と比較して、やや乱暴な力の込め方だと思った。そしてそれこそが、打ち止めの身体が求めていた  
ものだと。  
発達段階の胸の中心を指でつまみ上げられると、もう言葉も出ない。  
「ひあッ―――、」  
先程までとは違った種類の涙が、彼女の視界を霞ませた。  
諦めたように身体から力が抜けたのを確認すると、一方通行は開かせて押さえつけた太股の間に再び右手を潜ら  
せてくる。  
びっしょりと濡れた可愛らしいデザインの下着が、辛うじてその幼い秘部を守っていた。  
しかし、彼はそれを脱がせることもせずに、上から指を押し込む。  
耳を塞ぎたくなる程いやらしい音が、打ち止めの鼓膜を震わせた。  
「ぁ、あ……ッ!」  
彼女の悲鳴には構わずに、中指は肉壁を押し割るようにして布地ごと第一関節の辺りまで入ってくる。只の指と  
は違う、布のざらついた感触が妙にリアルだった。  
「グチャグチャに汚しやがって……あー、もォ捨てるしか無ェかもなァコレ。オイクソガキ、このままコイツご  
と挿れちまえそォになってっけどどォするよ」  
「やっ、やだよ……、そんなの……!」  
軽口を叩く一方通行に、必死になって言い返す打ち止め。あんまり説得力が無いかな、と自分でも思ってしまう  
ほどに、吐き出す声は甘ったるいものだった。  
不安定な精神をグズグズになるほどいたぶられ、気持ち好さと恥ずかしさとが混ざり合い、また涙が滲む。  
「……クソったれが。……判ったから泣くな」  
心底面倒くさそうに振る舞ういつもの声音。その表情は、今は霞んで見えない。  
―――あるいは、彼が本心から心配してくれた言葉なのか。そんな少女らしい期待もまた、打ち止めは捨てられ  
ない。  
 
けれど、そんな希望に、今の一方通行は付き合ってくれないらしく。  
おざなりに彼女の下着を横にずらしたかと思うと、露出した外陰部の一カ所を、容赦なく捏ね潰してきた。  
「ひゃっ!?ア、あっ!」  
緩やかに痺れていくような、これまでの女特有の性感とは毛色が違う、直接的な刺激が打ち止めを爪先から貫い  
た。  
どう考えても、普通ではない感じ方だ。  
恐らくは、女性として一番弱い箇所へ触れるだけでなく、生体電流のベクトル操作を加えている。  
いつの間に電極のスイッチを切り替えたのか。考える暇さえも与えずに、一方通行はさらに秘裂へ指を潜らせて  
きた。  
一本、二本と細い指をくわえ込ませ、熱く蠢く内壁を引っ掻くように撫でられる。  
視界が明滅する。  
断続的な喘ぎ声が、口から勝手にこぼれ出す。  
「っあ!ん、は……駄目、ぁっ……ずらしただけで、指、いれるのやだ……っ」  
いやいやと首を横に振ってみても、吐息混じりの声音はその行為への悦びを素直に表現してしまう。  
もう、自分が嬉しいのか嫌なのかも解らない。  
誰だって、どんな扱いであれ身体の中心に抱える触れられたい箇所を攻め立てられたら、少なからず悦楽を感じ  
てしまうだろう。  
それが、好意を寄せる異性からのものなら尚更だ。  
打ち止めが一番親愛を寄せる一方通行からの行為は、乱暴ながらも、少しずつ彼女の幼い身体を蕩けさせていく。  
戻れなくなってしまう程に。  
 
―――それでは、駄目だ。  
 
「っ、や、めて……ってミサカはミサカは、お願いしてみる」  
「……あ?」  
先程までの虚ろな声とは違う、明確な拒絶の意思を持った言葉を受け取り、一方通行はチョーカーのスイッチを  
切る。  
訝しげに打ち止めを見下ろす彼だったが、彼女としても混乱していていっぱいいっぱいだった。  
―――何故、駄目なのだろう。  
これは、先程まで彼女自身が熱望していたことの筈なのに。  
『嬉しいのか嫌なのかも解らない』ではない。  
嬉しいけれど、嫌、なのだ。  
でも、何故。  
「……」  
少しだけ考えて、すぐに解った。  
目の前の、冷静さを欠いていない一方通行の表情を見て。  
 
「ごめんなさい……ミサカだけが、欲しがってたんだよね、って、ミサカはミサカは……落ち込んでみる」  
 
結局、これは彼にとって、ひどく取り乱した打ち止めを宥めるための作業の一環でしかない訳で。  
嬉しかったのは、触れられていた彼女だけだった。  
自分だけ、子供みたいに彼を欲しがっていたのだ。  
朝のことだってそうだ。  
『孤独から解き放ってあげたい』とか『守ってあげる』とかいう見え透いた建前を掲げ、打ち止めは自分のエゴ  
だけを追い求めていた。  
たとえそのエゴが、打ち止めが彼のことを好きでやまないからこそのものだとしても。  
それは、狡いことだと思う。  
行為そのものよりも、そんな自分の利己的な考えこそが、一番狡い。  
そんなものは、決してまともな対人関係ではない。対等な関係ではない。  
確かに、打ち止めを産み出したあの『実験』においての彼らの存在価値は対等では無かった。  
けれど、今の人間関係においては、彼女は一方通行と対等でいたかった筈だ。  
以前の境遇に縛られることなく、普通の人間らしく関係を築いていって、支え合っていたかった筈だ。  
『甘えてほしい』、と彼女は言った。  
けれど、実際に甘ったれていたのは打ち止めの方だけだったのだ。  
「……っ、」  
一度そう考えると、今までのさらに数倍、彼女は自分が恥ずかしくなる。  
 
「……ごめん……ミサカ、今日ちょっと変だね、ってミサカはミサカは言ってみる……」  
寝不足なのかな、などと言いながら苦笑いを作って、腕の中から逃れようとする打ち止め。  
今このまま、自分の我が儘で、一方通行に最後まで『してもらう』訳にはいかないから。  
脱ぎ捨ててあった服を掴もうと、右手を伸ばす。  
けれど、彼は退いてくれない。  
真顔だった表情は、いつの間にか苛立ちを隠しきれなくなっていた。  
「……、ふざけンじゃねェぞ」  
先程までの指先の翻弄は無くなり、ただ強く抱き寄せるように動きを押さえつけられる。  
「痛、っ……」  
「ガキが知ったよォな口叩きやがって。この俺が、ボランティアでこンなだっせェ事してやってるとでも思って  
ンのかよ?」  
いつもと何ら変わらない憎まれ口。けれど、今の彼は打ち止めしか見ていない。何も映していなかったように見  
えた瞳は、今になって、暗い独占欲を湛えはじめていた。  
ぐ、と密着した彼の身体の中心は、表情には殆ど表されない情動をズボン越しに打ち止めの素肌へ突き付けてく  
る。  
「っ、あ―――」  
さらに一方通行を注視すると、脈拍はいつもより速く、触れ合う白い肌がかすかに熱を帯びていることに気付く。  
それは見ようによっては、彼が、少し取り乱しているようにも見えた。  
彼は、自分がこんな状態になるまで、打ち止めが身体を委ねるのを待っていてくれたのか。  
もしかして、という言葉が頭によぎる。  
 
もしかして一方通行は、打ち止めが予想していたよりもずっと強く、自分を欲しがってくれていたのではないだ  
ろうか?  
 
「……一方通行?」  
「ンだよ」  
「……、ありがとう、ってミサカはミサカは言ってみる」  
「意味分かンねェっつの」  
本当にどうでもよさそうな調子で返答してくる一方通行の言葉。  
それでも、打ち止めにはそれが冷たい声だとは思えなかった。  
彼女は失念していたのかもしれない。年上とはいえ、保護者とはいえ、一方通行も結局は高校生の少年なのだと  
いう事実を。  
つまり彼は、別に打ち止めのためにそういった事をしていた訳ではなく、ただ自分が欲しかったから、触れたか  
ったから、手を伸ばしてきたということになる。  
一見して傲慢に感じるかもしれないが、打ち止めにとっては、それだけ一方通行が自分を想っていてくれている  
ようで、嬉しかった。  
お互い様だったのだ。  
解りづらいだけで―――彼もまた、打ち止めに、自分なりの形で甘えてくれていた。  
一方通行が冷たい表情や憎まれ口で隠していた、その事実。  
―――『おやすみ』を言う前に、あなたの気持ちに気付けてよかった。  
そんな言葉を口の中で転がし、打ち止めは、この状況に似そぐわないほどの幸せを感じていた。  
「……で?どォすンだ」  
一方通行の、刃物のような危うい光を持った瞳が見据えるように細められる。  
こんな局面でも相手の意志を確認してくれる彼は、やはり優しいと思う。  
「あなたの……好きにしていいよ、ってミサカはミサカは言ってみる」  
言いながら、我ながら恥ずかしい台詞だったかもしれない、と思い、打ち止めは照れたような笑みを浮かべる。  
一方通行は何も言わない。  
行動で、自分の意思を示した。  
 
「っ―――ん、……んく……ぅ」  
唐突に唇を塞がれる。  
体温よりずっと熱い、濡れた粘膜と舌とがぶつかる。  
噛みつかれるような、という形容をそのまま表したように乱暴な動きで掻き回されていく。  
「ん……、っ!」  
鈍痛が舌に広がり―――実際に、軽く歯を立てられたらしい。尖った犬歯が打ち止めの舌先を圧迫したのだ。  
神経を直接指がなぞっていったように、ぞくりと、肌が粟立つ。  
気紛れに与えられる痛覚にすら、恍惚を感じてしまう。  
耳に入るのは、スプリングがきしむ音と、唾液が絡む音。  
組むような形で重ねられた口唇の間には隙間が殆ど無く、互いに舌を往来させながらも、次第に彼女の脳は酸素  
を欲しはじめていた。  
「―――っ!ん、んむ……!」  
ついに酸欠に耐えきれなくなった打ち止めは、覆い被さる一方通行の背中をぱしぱしと叩き、ギブアップを示す。  
集中を邪魔された一方通行は、打ち止めの気が遠くなる寸前になってやっと、不機嫌そうな顔で唇を離した。  
「んぁ、っは、は……、……苦し……」  
頬を赤く染め小さな胸を上下させる少女の前で、一方通行は口許の名残を拭いながら、呆れたように呟く。  
「……、息継ぎくらいしろクソガキ」  
「っ、いじわる……しないで、ってミサカは、ミサカは……文句を、言ってみる……!」  
「……オイ、俺の好きにしていいって台詞はもォ撤回か?」  
「う……、ってミサカはミサカは言葉に詰まってみたり……」  
確かにそうは言ったけど、と打ち止めは恨めしげに彼を見上げた。  
「はっきりしろよ。こっちは睡眠時間削ってやってンだっつの」  
「どうせいっつもお昼まで寝てるくせに、ってミサカは、―――っ!」  
と、開かされたままの太股を彼の掌が滑り、打ち止めは反発の言葉を奪われる。  
「イイからこっちに集中しろ」  
言いながら一方通行は、着ていたTシャツを手早く脱ぎ捨てる。薄く汗を帯びた肌は、薄暗い部屋の中で白く浮  
かび上がるようだった。  
「っん、あ、ぁ……!」  
そしてまた、彼女の内部に指先が侵入する。強く掻き立てられ、先程まで放置されていた箇所に再び熱が灯され  
る。  
それに伴って液体の感触が脚の間を流れていき、濡らされたシーツは、ぬるりとした質感の光を照り返していた。  
物理的に狭い彼女の秘裂が自身を最後まで呑み込めるようにするため、挿し込まれた二本の指が内壁を和らげ、  
異物に慣れさせる。  
次第に、緩やかな痛みを伴う圧迫感は甘ったるい泣き声へと変換されていった。  
「十分だな」  
一方通行はそれを確かめるように、ぐり、と音が鳴りそうなくらいの力加減で露出した中核を押し潰した。  
「ぁ、―――っ!!」  
電気仕掛けの人形のように打ち止めの身体が震え、一瞬だけ意識が遠のく。  
そうしながらももう一度唇を食まれる。舌を絡め取られ、口唇の端からどちらのものともつかない唾液が伝う。  
―――痛覚さえも、彼女の脳を直接掻き回していくようだった。  
唾液の中で舌と溶け合うようだった彼のそれが引き抜かれる。熱に浮かされた曖昧な焦点で、目の前にある一方  
通行の顔を見上げる打ち止め。  
「んあ……み、さか、は、ミサカは」  
「黙ってろ」  
「―――っ……くるしいよ……、お願い……早く、はやく、ミサカに」  
「分かってる」  
手短な返事は、相手もまた切羽詰まっているからだと打ち止めは知っていた。  
液体にまみれた彼女の内部が、足りない箇所を埋め尽くすものを欲して蠢く。  
今はただ、壊れそうなくらいに、乱暴にしてほしかった。  
ファスナーの擦れる金属音が小さく響き、期待が下腹部の奥でいっそう膨らむ。  
薄い胸の輪郭を撫でられ、打ち止めは思わず瞳を閉じる。それを見計らったように、一方通行の身体が彼女の脚  
の間へと割り込んだ。  
軽く押し当てられた昂ぶりの微かなひくつきさえも、余さずにその身へと伝わっていく。  
張り詰めた自身の先端が、彼女の入り口を捏ねるように圧迫した。  
「あっ、ん……!」  
打ち止めが身悶えるように震える。高揚する互いの息遣いが重なった時、一方通行の体重がゆっくりとその中心  
へ傾いていった。  
 
押し込められる。  
深く、深くに。  
「……っ、あああああああああああ!!」  
待ち焦がれた重圧に、少女の痩身が跳ねる。  
一番奥深くまで硬いモノを挿れられて、それでも限界まで和らげられた彼女の中心は従順に異物を飲み込んでい  
った。  
きゅう、と意図することなく内壁が彼自身を締め上げ、その形、大きさを認識させられる。  
―――灼け付きそうなくらい、熱い。  
力、抜け、と一方通行の声。まるで手負いの獣が唸ってるみたいだ、と、煮えた脳の何処かでぼんやりと思った。  
「んっ、は……ァあ……!」  
必死の思いで息を吐き、こわばる全身を弛緩させる。  
吃驚するくらいに、自分の上擦った声は、女の、欲情した音色だった。  
しかし、それでも。  
彼の動きはまだ、優しかった。  
足りない、と打ち止めは思う。  
この先にある物を知っているからこそ。この先にある物を、教え込まれたからこそ。  
享楽に貪欲な子供の身体は、それを強く渇望してしまう。  
「あ、んあっ……、あ、ミサカは……ミサカ、」  
どうなってしまうのか、なんて、自分にも判らない。  
歯止めが効かないまま、少女は剥き出しの言葉を口に紡ぐ。  
「もっと、……もっと……つよく―――して」  
「っ……!」  
ずぐん、と。  
声に応えるように、昂ぶりの切っ先が乱暴に奥を貫く。悲鳴のような嬌声が溢れ、瞼の裏側で火花が散った。  
二度、三度と恥骨が重なり、淫らな水音は次第に大きくなる。  
ひっきりなしに続く痛いくらいの快感に、狂ってしまうかと思った。  
「っく、ふあああぁっ、はぅっ、ぁ……、き、もち……い……、っ」  
うわごとのように囁く喘ぎ声。それを抑えようとする気力が、最早殆ど消えかけていた。  
突き上げる度に境目にわずかに留まっていた空気がぐちぐちと膿んだような音を立て、泡立つ液体となって外に  
押し出される。  
愛液と先走りが掻き混ぜられたそれは抜き差しされる結合面から溢れ、尻のラインを伝い滴り落ちて、彼女の太  
股や、奥の窄まりまでも濡らしていった。  
「は、あっ……ダメ、そこ、ミサカ、ミサカの、奥にきて……痛、あぅ、……すご、熱い……、や、助けて、こ  
んなの……死んじゃう、ミサカ、おかしくなっちゃうよ……ってミサカは―――んっ、」  
支離滅裂となった言葉の切れ端を、一方通行の指が唇の間に潜って黙らせる。  
咄嗟に舌で押し返そうとしても、その動作は余計に深くへと指先を導くのを助長してしまっていた。  
「んんっ……あ、ふ……!」  
そのまま何度か細かく突き上げられるが、口を塞がれているために声を出すこともままならず、思うように反応  
を示せないもどかしさがぐるぐると回って打ち止めを苛む。  
眩暈のようなそれを紛らわせるように、口の中に突っ込まれた指を小さく吸いあげた。  
唇でくわえ、爪の生え際や指先を舌で舐る。奇しくもそれは、朝方のあの行為と重なっていた。  
「っ、ぐ……!?」  
暫くされるがままにしていた一方通行の指がびくりと震え、驚いたように引き抜かれる。  
思わず前歯に込めていた力は、彼に鋭い痛覚を与えていたらしい。  
舌の上に残ったわずかな血の味で、はっと我に帰る。  
「……っ!?ご、ごめんなさ―――あ、ゃうっ!」  
また泣きそうになりながら、呂律が回らない不明瞭な声で謝る。中心に突き挿れられた自身が膨らみ、一際きつ  
く押し込められた。  
もう無理だ。  
これ以上この過敏な全身を彼に苛められれば、自分はきっと気が変になってしまう。  
擦れあう滑らかな肌に縋るようにして、一方通行の背を抱いた。  
目の前にある、彫刻のように青白い顔立ちと唇とが触れる。舌の温い温度が混じり合い、たちどころに思考を蝕  
んでいく。  
癖のない白い髪が打ち止めの頬を滑り落ちる。  
「っ……、ぁ、あああ……あ!」  
がり、と背筋に爪を立て、足先から昇ってくる何かの予感に震える。  
彼女の身体に、限界が近づいていた。  
そして恐らく、それは一方通行も同じだ。  
 
脚を彼の腰に絡め、逃げられないように固定する。  
「……離れ、ないで……ミサカの中に、全部、ちょうだい」  
「っ、」  
一方通行の表情が強張る。  
それを宥めるように耳殻に唇を寄せ、飛びそうになる意識を振り絞って、打ち止めは懇願した。  
「一緒に、いて、離れちゃやだよ、ってミサカは、ミサカは……!」  
気がつくと、瞳から涙が零れていた。  
理由も解らないまま。壊れかけた涙腺から、暖かいものが滲む。  
打ち止めの意志に従い、彼の全てを受け入れるために、一方通行を包み込む内壁が収縮する。  
互いの思考が、より高い所へと突き上げられていく。  
「―――くそったれ、が……!」  
一方通行の、掠れた、呻くような声。  
それが合図となった。  
音もなく、幼い少女の中で一方通行の熱が弾けた。  
「っ、あ……ぁぁああああああああああああああああっ……!!」  
叫びと共に、白く、白く視界が爆ぜる。  
止め処なく、打ちつけるように放たれる白濁は打ち止めの子宮を隅々まで犯し、奥へと注ぎ込まれていく。  
身体の芯を紫電が走り抜け、一方通行の自身が胎動する度に、びくびくと腰が跳ねる。  
「……っ、あ、う……」  
腹の中で彼の残滓が蠢く。  
恐怖にも似た感触が背を這いずり回り、背徳感と恍惚が、狂おしいほどに彼女を満たした。  
「っ―――、」  
やがて、全てを打ち止めの中に吐き出し終えた一方通行の重心が、がくん、と力尽きたように彼女の小柄な身体  
へ委ねられる。  
打ち止めの方が不安になってしまうくらい、彼の体重は軽かった。  
一方通行の胴に肌をすり寄せ、良く知る体温を認識して―――彼女は、意識を手放した。  
 
†††  
 
「ロリコン乙、とミサカ一〇〇三二号は開口一番あなたに最大級の罵倒をぶつけてみます」  
「え、ええっ!?ってミサカはミサカは驚いてみる!!」  
「やっほう。会いにきたよ、学園都市最強のロリコン」  
「帰れ」  
次の日、朝起きてリビングに行ったら何故か一〇〇三二号と番外個体がいた。  
突然の二人の来訪にあわあわと両手を振る打ち止めの隣で、容赦ないロリコン認定を浴びせられた当の一方通行  
は不自然にこめかみを痙攣させている。  
「どうしてここにあなたたちがいるの!?聞いてないよ!?ってミサカはミサカはびっくりしながら質問してみる!」  
「ミサカ達は昨晩うっかり幼女相手に本気を披露してしまった変態の顔を拝みに来たのです、とミサカは番外個  
体の説明をより丁寧に咀嚼してお届けしてみます」  
「なっなななななんで昨日のこと知ってるの……!?ミサカはしっかりネットワークから隠していた筈なのに、っ  
てミサカはミサカは真っ赤になってみる!!」  
「自分では気付いてないみたいだけど、あなたっていつもイってるときとか無意識にデータ垂れ流しにしてるよ」  
「ふぇえっっっ!!?」  
「さながら実況中継のようでした、とミサカは昨晩のミサカネットワークのパニックっぷりを思い出してため息  
をつきます」  
「最終信号の感覚情報までこっちに伝わってくるから気持ち悪かったよ。このミサカは負の感情を認識しやすい  
体質だから嫌な事をスルーしたりできないし……あ、思い出したら鳥肌立ってきた」  
「何人かのミサカはうっかり感覚を共有してしまい、第一位の無駄なテクニックに耐えきれず二〇〇〇一号と一  
緒に滅茶苦茶にされてしまったようです、とミサカは心中でそっと十字を切ります」  
「男のベッドでお尻振って自慰する幼女ってのもアレだけど、それに欲情して押し倒しちゃう第一位も相当終わ  
ってるよね、人間として」  
「お願いもう何も言わないでぇええええっ!!ってミサカはミサカは羞恥に耐えられなかったり!!」  
プライバシー保護もへったくれもない、年上の下位個体たちからの好き勝手な言葉に、打ち止めはカーペットの  
上をゴロゴロしながら頭を抱えた。  
 
一方、杖をつきながら突っ立っていた一方通行はようやく一言を発する。その口許には彼がキレた時特有の不自  
然な笑みが広がっていた。  
「……どォやって勝手に人ン家に入ってきたオマエら。ここのセキュリティはどォなってやがる」  
「あなた方に会いに来たと伝えたところ無職の元研究員が寝ぼけ眼でドアを開けてくださり、その後紅茶まで入  
れてもらったのです、とミサカは手厚い歓迎を前に感激しながら返答します」  
「『貴女たちぐらいの年頃の子達ともっと前から交流させていれば、あの子はあんな重度の幼女趣味に走らずに  
済んだのかしらね』とか言ってたよ」  
「よォく分かった。アイツは後で殺す」  
一方通行はその表情だけで人の心臓を止められそうな怒りを顔面に表した。が、現在その芳川は自室で二度寝中  
なので意味は無い(流石の彼も女性の寝込みを突撃して怒鳴る気は無いらしい)。  
そんな彼と対峙する番外個体は鬱陶しそうに髪の毛をかきあげると、気軽な調子で話を続ける。  
「でも、昨晩あれだけ焦らしプレイを続けた挙げ句、小学生に容赦なく中出しした変態のくせに、彼女の説でい  
くとあなたは別に根っからのロリコンな訳ではないってことになるんだよね」  
「当たり前だブチ殺すぞボケ」  
「洒落にならない買い言葉はやめてほしいんだけど。で、あなたが『好きになったのがたまたまロリだっただけ  
だ』とかいう常套句を吐くつもりなら、ひょっとして―――」  
言いながら番外個体は、ひょいっ、と一方通行の手を掴みあげたかと思うと、  
 
「このミサカの身体にも、ちゃんと反応したりするのかな?」  
 
意地悪な笑顔で、衣服越しの自分の胸の膨らみにそれを押し当てた。  
「ッッッ!!?」  
声にならない声をあげたのは一方通行当人ではなく、傍らで転がっていた打ち止めだ。  
番外個体は押し付けた手をもにゅもにゅと動かし、その胸の柔らかさを一方通行の手に思う存分刷り込む。  
その動きに従う形で、意外にもかなり立派な番外個体の胸がたぷたぷと揺れた。  
初めて会った時のような戦闘用の衣服とは全くイメージが異なる、年相応の制服風ファッションの服の上からで  
も分かるようなそのスタイルの良さはあまり妹達らしくない。全く同じ遺伝子から製造された筈なのに、不思議  
なものである。  
斜め下のアングルからそれを見ていた打ち止めとしては複数の意味で愕然とせざるを得ない。  
「なっ、なななななな……っ!!ってミミミミサカはミサカは憤慨してみたりーっっ!!」  
「ほらほら、どう?やっぱり欲情する?言っておくけど、このミサカは全ミサカの中で一番大きな胸を持ってい  
るよ。将来性を含めば三割増しじゃ済まないからね」  
「……、何してンだオマエ」  
「……案外悪趣味ですね番外個体、とミサカは呆れかえってみます」  
「単純な興味本位の実験って言えば、ミサカの意図は分かるかな?あーでも全然駄目っぽいね。そうか、やっぱ  
りあなたは幼女にしか反応しない変態だったか」  
「オーケー。殺させろとは言わねェからせめて一発殴らせろ」  
べりっ、と音が鳴りそうな勢いで一方通行は手を剥ぎ取り、不機嫌顔のままで番外個体に掴みかかる。  
「ぎゃー助けてー幼女愛好家に犯されるー」  
「オマエ本気で一辺黙れ引き千切られてェのか!」  
がっくんがっくんと揺さぶられながらも悪戯っぽく軽口を叩く番外個体と、彼女を揺さぶりながらマジ切れに入  
りつつある一方通行。  
ちなみに打ち止めは『馬鹿っ、馬鹿っ!!ってミサカはミサカは涙目になって抗議してみる!!』とか言いながら二  
人の脇腹辺りをポカポカ殴っていた。  
そんな三人から少し離れたところで、ミサカ一〇〇三二号―――通称『御坂妹』は朝食用の食パンを拝借し、人  
数分用意してやりながらも、呆れのため息をつく。  
そして、誰にも聞こえないような声で一言。  
 
「……まあ、今日も皆仲良く平和なのはいいことです、とミサカは適当にまとめてみます」  
 
END  
 

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