「じゃあとうま、行ってくるね…!」  
白い肌をさらに白い水着で包んだ少女は、背中を少年に向けて肩越しに告げた。  
「待て、インデックス!やっぱり俺が…」  
「ダメだにゃー、かみやーん」  
後ろからアロハにサングラスの少年が声をかける。  
「かみやんにはその『対局地戦用歩く教会・Ver.SL』も、ヤツらを誘き出す術式も効果がないんだにゃー。今こ  
こで条件を満たすのは、禁書目録しかいないってことぜよ」「くっ…」  
 
「とうま。」  
 
少女は語りかける。  
「だいじょうぶなんだよ。いつもとうまには助けられてばっかりだけど、」  
彼女を知るもの全てが口を揃えて、最も魅力的だというであろう輝かんばかりの笑顔に、少しの決意を込めて。  
「わたしにも、とうまを幸せにすることくらいできるんだよ!」  
少年のための少女の精一杯の戦いが、  
いま幕を開けた。  
 
『とある禁書の漁港に旅行』  
 
はなしは3日ほど前に遡る。  
「お腹すいたおなかすいたおなかすいたああああァァァ!!!!」  
「っん、ふギャアアアアアふ、ふこうぎぃやァァああああ!!!!!」  
今日もきょうとて通常運転のお二人さん。だが眺める猫も目に見えるほど元気がない。家主はなおさらである。世間は大型連休に突入したのに、上条家はそれどころではない。  
 
世間は大型連休に突入したのに、上条家はそれどころではない。  
恥をしのんで姫神さんからいただいた天かすも、おからも片栗粉でさえも使い果たしてしまえば、もやしで暴食  
シスターの食欲を抑え込める筈がないのだ。  
切実な飢餓の恐怖と頭皮からの出血を伴う激痛に、上条さんの耳には近づく物音がリアルな死神の足音にしか聞こえなくなっていた。  
(ついにお迎えかー、かわいい死神がいいなぁ…。巨乳で優しいお姉さん風の…)  
ぴんぽーん「上条さーん?」  
(ハレ?)  
「サインお願いしまース!」  
巨乳どころか軽い感じの宅配にーちゃんから受け取った小包を開けてみると、見覚えのある手の手紙。  
 
『当麻へ。  
調子はどうだ?  
最近イタリアで買ってきた御守りのせいか、ツキにツイててな。温泉宿のチケットと食べ放題券が当たったんだ。  
しかも連続で。ひとつ送るから、インデックスちゃんと一緒に行ってきなさい。  
なぁに!礼ならいらないぞ!  
 
追伸・当麻さん的には、インデックスちゃんに変なことするのもダメだけど  
旅先で女の子にちょっかいかけるのももっとダメですよ!  
楽しんでらっしゃいな。  
 
とうや☆しいな  
』  
同時に読み終えた二人の顔から、表情が消えた。  
隣室から聞こえる歓声に耳を傾けながら、グラサン男の浮かべる不気味な笑みに気付かないのは、さて二人にと  
って幸運なのか、否か。  
日本海から魚が消えるかも知れない旅が今、始まる。  
 
〜続くはず〜  
 

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