<2> はじめてのキス略してはじキス 後編  
 
 上条当麻は目を閉じながらも今起こっている事態に混乱していた。  
……な、なん……っ!?  
「ん、ちゅ、じゅ、んんぅ……」  
 艶やかな水音が暗い空間を支配する。  
 息が碌に出来ない。というか、息をするための片方の器官が塞がれているのだ。  
 そりゃ息も出来なくて当然だ、と思うが、目の前で起こっている事態の重要度はそれを遥かに凌駕する。  
 自分の唇を誰かが貪っている、という事態の前では息が出来ない事など些細な事だ。  
 そして現在進行形で口付けをしている人物、それを当麻は知っていた。  
 その人物とはいつものツインテールを解いて髪を流した少女。今日一日の半分を戦い抜いた戦友でもある少女だ。  
 それは、頬を赤く蒸気させてボーッとした虚ろな瞳で当麻を見る――白井黒子であった。  
 
  ○◇○  
 
 そこそこ広い空間。  
 様々な家具が設置された、しかし、人が常時住んでいるとは思えない清潔さを保った空間。  
 床にはカーペットが敷かれているというのに埃の一つも落ちていない。  
 そんな空間内に設置されたソファーに座りつつ上条当麻は言う。  
「で、なんでホテルなんだ」  
 当麻は半目で言いつつ、隣でテレビのチャンネルをまわす白井黒子を見やる。  
 黒子はリモコンを手元でくるくると回しつつ当麻へと向き、  
「学生が一番縁のない場所を選んだらこうなっただけですわ。深い意味はありませんのよ?」  
 わかってる、と巨大な窓から見える夜景に視線を移す。  
 するとそこには巨大な光の柱が走る街といった光景があった。  
「……お前のおねーさまっていつもあんな感じだっけか?」  
「……いえ、あんな全力全開通り越してゲージを振り切ってるお姉様を見るのはわたくしもはじめてですわ……」  
 二人してその柱を虚ろな目で見つつ、心に同じ事を思い浮かべた。  
 今の御坂美琴には会ってはならない、つか会ったら殺される、と。  
「で、今日はどうすんだ。このまま泊まるのか?」  
「まぁ、一日分の宿泊料は払ってしまいましたので、そうなりますわね」  
 当麻の疑問の声に黒子はテレビに視線を戻しつつ適当に答える。  
 そっか、と言うと同時に当麻は隣に座る少女を改めて見る。  
 金銭的余裕の無かった当麻に対して、結構ですわ、の一言で一泊分の料金を払ってしまう様なお嬢様。  
 性格も口調も生粋のお嬢様といった感じだが、嫌味ではない。むしろ人の事をよく考えている節もある。  
 悪い奴ではない、と当麻は思う。  
 そういえば、どんな番組を見ているのか。  
 どうやら少し見る限りでは魔法少女が活躍するといった類のアニメらしかった。  
 当麻は意外といった表情で黒子を見やり、  
「お前もこういうの見るんだな」  
「やってる番組で面白いものがありませんの。苦渋の選択というやつですわ」  
 その割には凝視しているが、という言葉が出てきそうになるが、言えば金属矢が飛んできそうなので言わない。  
 テレビの方に視線を向けてみれば、丁度オープニングを終えてあらすじに入ったところだった。  
 タイトルは【新世紀セメント魔法戦士キリングちゃん】。  
 名前からして既にバイオレンスさが漂いまくってるあたり、流石学園都市と言ったところか。  
 しかし、どこからともなく取り出したガトリングやマシンガンで敵を蹴散らしていくというのは魔法少女としてどうかと思う。  
 閑話休題。  
 取り敢えず、とある用件を思いだし席を立つ。  
「?どこに行きますの?」  
「ああ、ちょっと知り合いに連絡をな。今日は帰れねーって」  
 素直に『居候しているインデックスに連絡するのを忘れていたから連絡してくる』などとは言えるはずもない。  
 黒子に適当に手を振ってから、入り口の近くに設置された電話へと向かう。  
 背後からアニメが始まったのか重火器の爆音が響く。  
 なんとなくテレビアニメ業界の先行きが心配になる当麻であった。  
 
  ○◇○  
 
 テレビのスイッチを切る。  
 番組が終わってその余韻に浸りつつ、入り口の方を見てみれば既に当麻は居なかった。  
 そういえば、風呂に入るとかなんとか言っていた様な気もする。  
 取り敢えずは自分達の寝る部屋だけでも確認しておくかと立ち上がり、移動を開始。  
 それほど広くないリビングだったので少し歩いただけでベッドルームの入り口に到着する。  
 ドアノブに手をかけ、扉を開けて中を覗きこんでみる。  
 ベッドルームもリビングと同じ様に綺麗に清掃されており、埃一つ無いといった感じだった。  
 部屋にはクローゼットと鏡つきの机、そしてベッドが一つずつ設置されている。  
「あら?」  
 黒子は何か違和感を感じ、家具をそれぞれ指差してゆく。  
 そして、ベッドを指差したところでとある問題に気づいた。その問題とは――、  
「なんでベッドが一つしかありませんの……」  
 思わず頭を抱えてしまった。  
 なんでここまで頭が回らなかったんだろうと思う。  
 元々こういう学園都市内のホテルは一般客用ではなく学会等の発表で来たお偉いさんを止めるための場所だ。  
 それ故に複数滞在の場合は複数部屋を取るのが定石、といったところなのだろう。  
 黒子は溜息を一つ。  
 今更部屋を新しく取り直すのもなんだし、と諦めることにした。  
 あの上条当麻なら一緒に寝たところで襲うような真似はすまい、と安易に頷いて結論付ける。  
 そうと決まれば彼にも教えなければならないだろう。  
 少し嫌がるだろうが、彼は基本的にお願いを断れない人間だ、と黒子は今までの当麻の行動から性格を分析する。  
 ベッドルームの扉を閉じて、浴室へと向かって廊下を歩いて行く。  
 玄関への道の途中、左手の方に開いた扉があり、そこから連続した水音が聞こえてくる。  
 シャワーの音がするところから身体を洗っている最中らしい。  
 道を曲がり、浴室の前の脱衣室に入る。  
 取り敢えず浴室の曇りガラスの扉の目の前まで来ると中で影が動いてるのが見えた。  
 ふぅ、という溜息が聞こえ、ガタンという音が響いた。  
 おそらくは浴槽を覆う蓋を開けた音だろう。  
 少し悪戯心が働く。  
 黒子はシャワー音が止まるのと同時に曇りガラスの前に座り、わざとらしく悪戯っぽい口調で。  
「殿方さん、お背中お流しいたしましょう――」  
「やー、なんか、こういうところのシャワーって新鮮――」  
 言葉を放つと同時、ガチャリと扉が引かれて開き真っ裸の当麻が目の前に立つ。  
……?  
 思考が停止。  
 彼も停止。  
 時間が停止。  
 なにもかもがモノクロの世界で水の滴る音だけが一つ響いた。  
「き――」  
 最初に口を開いたのは黒子だった。  
 彼女は口から僅かな声を漏らすと顔を引き攣らせて真っ赤に染めあげ、  
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああ!?」  
「がとつっ!?」  
 当麻のとても言えないような場所へと鋭い一撃を叩きこんだ。  
 
  ○◇○  
 
「……」  
 消灯した暗い空間の中、白井黒子は不機嫌そうな顔で、幸せそうにベッドに眠る男を見ていた。  
 あの当麻素っ裸事件は当麻が平謝りし続ける事によって解決したのだが、それは別にいい。  
……まったく、普通は入る前に体を洗うのが常識ですのにこの殿方は……。  
 別にいいのだが、やはりそう簡単に忘れられるものでもない。  
 今日はなんだか変な方向で初体験の連続だ、と黒子は今日何度目かわからない溜息を吐く。  
 いや、大昔にも見たことがあるので初体験とは言いがたいがとまで考え、頭を振ってその思考を放棄。  
 何時までもグダグダ考えるのは淑女らしくないというものだ。  
 ここはスッパリと割り切って寝るべきだろう、と黒子は自分の考えに頷いて当麻の横に空いた空間に入る。  
「……?」  
 そこで気づいた、当麻が薄いタオルしかかけていない事に。  
 ああ、そうか、と黒子はその様子を見て思う。  
 つまり、本来は一人用であるのに布団が足りなくなるという、ただそれだけの事だ。  
 彼はそれに気づき、黒子のために布団を残して自分は薄いタオルをかけて寝ているのだろう。  
 彼のその優しさと少しばかり過剰な心配性に思わず笑みを漏らす。  
 と同時に気づく事があった。  
……何時の間にか警戒を忘れていますわねー。わたくしも……。  
 思えば彼に会えばお姉様と慕う御坂美琴の事でつっかかってばかりだったような気もする。  
 それもこれもお姉様を思っての行動なのだが、彼には悪い事をしていたかもしれない、と黒子は目を瞑り頭の中で  
 今までの当麻記憶を回想の如く走らせていく。  
 そこでは当麻が美琴に手を引かれていたり、心配されていたり、飲みかけのジュースを渡されていたり――。  
……やっぱり此処でトドメを刺しておいた方がよろしいかもしれませんわねー……。  
 一瞬どす黒い考えが頭を過ぎるが、今は金属矢も品切れで持っていないのでその案は見送っておく。  
 取り敢えずは、当麻の隣に寝転がり足元から器用に足を使って布団を手繰り寄せる。  
「……」  
 確かに暖かい。  
 しかし、同時にどうしても当麻の布団の貧相さが目立ってしまう。  
 これでは気になって眠れないではないか。  
……しかたないですわね……。  
 身を近づけ、自分の布団を当麻にも被せる。  
 すると、彼は身を動かし、気持ち良さそうに寝息をたて始めた。  
 それを子どもみたいだと思いつつも、黒子も当麻と同じ様に眠りにつこうとする。  
 その時だ。  
「んんぁー……」  
「!?」  
 ごろん、と彼が寝返りをうった。  
 ただ寝返りをうっただけならば良い。  
 しかし、黒子と当麻は今同じ布団をかけている状態。  
 つまり超接近状態なのだ。  
……ちか、近いですわ……っ!  
 当麻の寝息が顔にかかる。  
 別にそれを嫌だとは思わない。  
 というよりも別のことに今は意識を持っていかれていた。  
 眼前には上条当麻の顔。  
 正常な状態の黒子ならビンタの一つや二つかまして叩き起こしているところだろう。  
 だが、今の黒子の頭の中では今日の夕方に起こった出来事が凄まじいスピードで反芻されていた。  
 接吻。  
 簡潔に纏めてしまえばそれだけの事だ。  
 黒子にとっては違った。  
 思い出すように唇に触れる。  
 指が唇に触れる。  
 記憶の中にあるのは、生暖かい体温を感じて、蕩ける様に――。  
「!」  
 違う違う!と勢いよく頭を振る。  
 その際に髪も一緒に勢い振られるが、顔を真っ赤に染めた黒子にとっては大事ではない。  
 目の前では黒子が騒いでるというのに起きる様子すら見せない当麻がゆっくりと寝息をたてていた。  
 なんだか憎らしい。  
 耳でも引っ張ってやろうかと思うが、それはそれで理不尽な意地悪のような気もする。  
 ジッと当麻の顔を凝視が彼はやはり規則的な寝息をたてるだけでコチラに気づいた気配はない。  
 その様子を見て、  
……もう一度くらいなら……。  
 黒子の中で何かが鎌首をもたげた。  
 それは段々と強い奔流となり、黒子の理性を侵食してゆく。  
 段々と心臓の鼓動が早まる。  
 これは自分に変な性癖がないか調べるための実験ですわ、と心の中で呟き決心して一瞬目を閉じる。  
 そして、数秒。  
 黒子は目を開くと、  
「ん……」  
 ゆっくりと当麻の唇を奪った。  
 最初に感じたのは、やはり唇の温かさだ。  
 触れ合った唇から感じる彼の体温と吐息。  
 それを黒子は心地よい、気持ち良いと感じた。感じてしまった。  
 
「んぅ、はん……はぁ、んぅぐ、ちゅ……」  
 理性がもう止めろと訴えてくる。  
 自分でもわからない。流されてはダメだと思うが、なぜだろうか止まれない。  
 知らずの内に当麻の首に両手を回していた。  
 そのまま自分の体を当麻の近くへと持っていき、更に唇同士を強く重ねあう。  
 水っぽい、淫靡な音がベッドルームに響く。  
 暫くそれを堪能した後、今度は舌も入れてみよう、と断片的な知識をかき集めて黒子はぼやけた頭で思う。  
 そして、いざ入れようとした瞬間。  
 上条当麻は目を開けていた。  
「あ……」  
 なにをやっているんだ、と責められているような気がした。  
 慌てて唇を離すと、二人の唇の間に唾液で出来た糸の柱がかかった。  
 それは垂れる様にしてベッドに落ち、染みを広げていく。  
 それでも、黒子の中で何かがもっと、これでは足りない、と彼を求める。  
 嗚呼、自分は本当に変態だったのか、とどこか違うところに思考が行くがその間にも彼の唇から目が離れない。  
「あぅ……あの」  
 と懇願しかけたところで彼に抱きしめられた。  
「え?」  
 驚きで我を失う黒子。  
 それと同時に欲望を刺激していた何かも去るように消えていった。  
「えーっと、なんだ……その、悪い」  
「な、何が、ですの……?」  
 今まで自分がしていた事に気づき、羞恥で声が小さく、途切れ途切れになる。  
 だけど、白井黒子はこの場面に至って、先程の欲望とは違う何かを期待していた。  
 少しだけ視線を逸らして言葉を紡ぐ当麻。  
「……不謹慎かもしれないけどさ。今のお前……」  
 内心ではどんな軽蔑の言葉が放たれるのか、それを恐れながらも、  
「すっげぇ可愛かった」  
 その言葉を望んでいたのかもしれない。  
 思えば確かに白井黒子は上条当麻が嫌いだった。  
 だけど、何故自分はあそこまで御坂美琴と上条当麻がくっつく事を嫌がったのか。  
 答えはどちらも好きだったからだ。  
 好きな人が好きな人にとられるのは嫌というような子どもの様な我侭。  
 黒子は当麻が嫌いなままでは居られなかった。  
 彼の意思の強さを、その迷いのない輝きを知ってしまったから。  
「あ、あはは、わり、何言ってるんでしょうね、上条さんは――って、んっ!?」  
 だから、その唇を、今度こそ自分の意志で奪った。  
「ふぅ、ん……」  
「ん、くふぅ……」  
 二人の吐息と唾液の絡み合う音が室内に響き合う。  
 彼も最初は驚いていたが、次第にコチラの唇の動きに応える様に舌を絡ませてきた。  
 くちゅくちゃという音が黒子の思考を溶かしていく。  
 長い長い深い接吻の後、二人はゆっくりと唇を離し、  
「……あのさ、白井」  
「黒子、と呼んでくださいませ……当麻、さん」  
 頬を赤らめながら恥ずかしくなって後半はほとんど小声になってしまう。  
「わかった……黒子」  
「はい」  
 当麻の目は真剣そのものだ。それでいてどこか優しい。  
「俺は今からお前をその……」  
 少しだけ言いよどむ当麻。  
 しかし、彼は決心したかのように黒子を見やり、言葉を放とうとして、  
「抱いてくださるんですの?」  
 黒子の悪戯っぽい声に先手を取られた。  
 当麻はそれに対して困ったような表情で笑い、しかし、答えとして唇を重ねる事で返した。  
 
  ○◇○  
 
 決意を固めれば行動は早かった。  
 当麻は白井を押し倒すように組み敷き、その唇に貪るようにして自分の唇を重ねる。  
 抵抗もせずに黒子はそれを受け入れ、先程と同じ様に当麻の首に腕を回した。  
「んぅ……んぐっくぅ……」  
 少しばかり舌を絡めとるのが強引だったせいか僅かに苦しそうな息を黒子が漏らす。  
 しかし、当麻の理性はすでに決壊寸前、止める事等出来るはずもなかった。  
「ん、んんぅ!んぐ……んぁ、ふ、あんんんぅ……!」  
 じゅるじゅるるるる、と激しく唾液をすすりあう音がベッドルームに響く。  
 黒子も暫くそれを繰り返しているうちに慣れてきたのか、頬を紅潮させ、自分から絡めて来るように舌を動かし始める。  
 当麻はそれに応えて舌を絡め、捕らえ、まるで小鳥に餌をやる親鳥の様に黒子の口内の奥で深い接吻を続けた。  
 どれくらいそうしていたか、実際には一分も経っていないのに凄く長い間していたようにも感じられる。  
 唇を離す。  
 それだけで何本もの唾液の糸橋がかかり、ただでさえ艶っぽい今の黒子の淫靡さを増した。  
 グッタリと四肢を投げ出し、黒子は当麻に全てを任せる。  
 それはつまり当麻を信用してくれているという事だ。  
 しかし、その可愛らしげな姿がなんとなく当麻の嗜虐心を刺激して来る。  
「や、ん……止めないで欲しいですの……」  
「ん、わかってる」  
 既に脱がれている上着を残念だと思いつつ純白のブラウスに手をかける。  
 丁寧に一個一個ボタンをはずしていくたびに、黒子の胸元の肌が露わになっていく。  
 そして、見えた下着の色は、  
「……また大人っぽいな……」  
 黒だった。しかも下着の方のデザインもかなり大人っぽい代物だ。  
 顔を上げて黒子の顔を見てみれば、恥ずかしいのかさっきまで当麻が被っていたタオルで顔を隠していた。  
 続いてスカートに取りかかろうと思い、手を動かすとその腕を掴まれた。  
 ん?とタオルで隠された黒子の顔を再度見ると、彼女は少しだけタオルの隙間から顔を出しており、  
「あ、あの、スカートは出来れば残しておいてくれると嬉しいですの……恥ずかしいので……」  
 相変わらず尻すぼみになる言葉。  
 しかし、それはそれで、と謎の納得をしつつ当麻は思う。  
……俺もダメかもしれんなぁ……。  
 これでは青髪ピアスの事を変態呼ばわり出来ないだろう。  
 しかし、取り敢えずは黒子の要求通り、スカートだけは残しておこうと思い、まずは上の下着に手をかけた。  
 元々、どのような形になっているのかわからないので、取り敢えず、ずらす様にして小ぶりな胸を露わにさせる。  
 黒子がまた羞恥でタオルに顔を隠すが、構わず手を乗せてみる。  
「ひうっ」  
 タオルから声が漏れた。  
 暖かい。そして、確かに鼓動を感じた。  
 他人の鼓動ってここまで暖かいものなんだなぁ、と感心しつつもその胸を優しく揉み始める。  
 此処から先は本当に手探りの領域だ。  
「あ、んぅ、ふぁ……く、くすぐったいんぅ、ですの……ふ、んぁあ……」  
 黒子の反応を見てやり方を変え、一番反応が良いものを見つけ出す。  
「ここか?」  
「ひうっ、んっ、やぁっ」  
 乳首を摘み上げ、少しだけ引っ張る。  
 それだけで黒子の体がビクリと少し仰け反り、タオルが剥がれて顔が露わになった。  
 唾液で汚れた顔。まぁ、あれだけ激しい接吻を繰り返したのだから仕方が無いが。  
 その顔は赤く染まっており、目尻には少しだけ涙を浮かべていた。  
「あー、悪い……痛かったか……?」  
 その反応に戸惑って思わず聞いてしまうが、黒子は顔を横に振り、  
「う、嬉し涙ですわ……続けてくださいませ」  
「……無理はすんなよ?痛くなったらすぐに言え」  
 ええ、と答える黒子に頷き、更に愛撫を続ける。  
「んぁ、や、あんんぅ、それ、いいっ、ですの……っ」  
 乳首を指で摘み、擦るようにしてこねくり回す。  
 黒子の反応は面白いほどに良く分かった。  
「くんっ」  
 乳首を擦る度に身を仰け反らせ、  
「ひぁあっ」  
 身を捩って悦びの声を上げる。  
 当麻にはそれが感じているという事だけしかわからないが、取り敢えず黒子は気持ち良くなってくれているようだ。  
 
 ふと、とある事を思いついた。  
「はむっ」  
「な、ひぁんっ!?」  
 片方の乳房を口に含み舌の上で転がす。  
「あっ、あひ、それ、すごっ、ああああ、んぁっ!」  
 ビクビクと目を見開いた状態で痙攣する黒子を見て当麻は満足し、しかし攻めを止めない。  
「も、らめっ!ひぁ、それ、らめですのっ、あ、だめ、胸だけで、ひぁああああっ」  
 一際大きな痙攣。  
「はあ、はあ、はあ……」  
 そして、黒子は身をベッドに投げ出し、グッタリとしてしまった。  
 しまった、やりすぎたか、と思う。  
 しかし、彼女は暫くして身を起こすと当麻を見やり、  
「……初めてじゃ、ないんですの……?」  
 半目で頬を赤らめつつ言った。  
「へ?いや、初めてだけど」  
 確かに当麻は初めてだ。  
 なんせ記憶が無くなって以来、キスすらした事がない純情ピュアボーイだったのだから。  
 居候シスターからなんどか噛み付きを貰っていたが、あれは接吻のうちには入らないだろう。  
「まぁ、いいですわ……次はわたくしがしますので、ん、横になってくださいませ……」  
 黒子は息を整えつつ、当麻を押し倒す。  
 そして、ズボンのチャックを下ろし、ズボン越しで主張していた男根を取り出し、目を見開いた。  
 
  ○◇○  
 
……で、でかいですわ……。  
 黒子には男性器についての知識はない。  
 ましてや見たことすらなかったのだが、初めて見るソレに黒子は目を奪われていた。  
 本当にこんなのが自分の中に入るのかという不安と共に、彼も我慢していたのだと申し訳なくなる。  
「ん」  
 まずは先端にキス。  
 苦いと思うが、それほど苦ではない。  
 むしろこれが彼の味なのだと思うとある種の喜びすら感じる事が出来た。  
「んぅ、ふっ、んちゅううううう……」  
「くっ、あ、黒子、それは……っ!」  
 頭を掴まれる。  
 亀頭の先端を吸い上げる。  
 それだけで彼の男根は更に膨張し、  
「だ、駄目だ、出る……っ」  
「へ?きゃっ」  
 白濁の液体を放出した。  
 大量の白濁液は黒子の顔と体に降り注ぎ、その身を汚す。  
 ようやく収まった放出の後、黒子は不機嫌そうな目で当麻を見やり、  
「早漏ですの……」  
「ぬぁあああー!言われると思ったけど、やっぱり実際に言われるとショックですよー!?」  
 まぁ、それも仕方のない事だろうと黒子は思う。  
 出した時には既にパンパンの状態だったし、それに彼の男根はまだまだその硬さを失っていない。  
「まぁ、まだまだ元気そうですし……」  
 心臓の鼓動が早まる。  
 これからこれを受け入れるのだと思うと自然と身が強張る。  
 しかし、そんな黒子は当麻は抱き締め、  
「恐いなら……やめるぞ?」  
「……いえ。お願いいたしますわ……わたくしはアナタに今、抱いて欲しいんですの……」  
「そうか……なら」  
 当麻は再び黒子を押し倒し、  
「やっ、汚いですわよぉ……」  
「大丈夫。汚いことなんかあるもんか」  
 スカートを捲り上げ、黒い大人下着をずり下ろしながら当麻は黒子の綺麗なピンク色の秘所を見つめる。  
 黒子は途端に恥ずかしくなり顔を両腕で覆うが、何の意味も持たない。  
 彼はそのまま秘所へと顔を近づけ、  
 
「じゅる、じゅずずずずず」  
 いきなり強く、吸い上げた。  
「あひっ!ら、らぁっ!なにこれ、やですわ、あ、だめ、わたくし、へぁああっ」  
 両手で当麻の頭を剥がそうとするが力が入らず、彼の頭に手を添えるだけのような状態。  
 その間も耐えずやってくる快楽の波に黒子は身を振るわせつつ嬌声を上げる。  
「あやぁっ、ひんじゃう、やらぁやらぁやらぁ……っ!」  
 碌に舌が回らない。  
 もう頭の中など既に真っ白という名の快楽に埋め尽くされている。  
 目を見開きつつ、涎をだらしなく垂らしてしまうがそれすら気にかけている余裕はない。  
「あ、も、や、ああああ、あ、あ、ああっ、ああっ!」  
「じゅるるるるるるるるるるる!」  
 黒子が再び達するのと同時に更に勢い良く吸い上げる当麻。  
「ぁ―――――っ!」  
 それによって黒子は快楽の上に更に快楽を上乗せされ、声にならない叫びを叫んだ。  
 ドサリと音を立てて、再びベッドに倒れ伏す。  
 やられてばかりだ、とどこか頭の冷静な部分が思うが、これ以上の快楽を得たい、彼に任せてしまえ、と何かが囁く。  
 黒子がとったのは後者だ。  
 彼女は当麻へと抱きつくと、いきりたった男根を見て、次に顔を上げて彼の顔を見つつ言った。  
「当麻さん……ひは、黒子を、ん、お願いしますですの……」  
「ん、わかってる」  
 彼に抱き上げられる。  
 頭を撫でられたそれをくすぐったく心地良いと思いつつ、秘所に何か暖かいものが触れたのを感じた。  
 恐らくは彼の男根だろう。しかし、黒子は既に身を強張らせることはしない。  
 黒子は再び彼の首に手を回して目尻に涙を溜めた危うげな笑顔で彼に懇願した。  
 彼はそれに応え、腰を付きだし、  
「あ―――っ、かはっ……!」  
 一気に黒子の再奥まで貫いた。  
 
  ○◇○  
 
「く、ぅううっ」  
 きつい、というのがまず第一に感じた事だ。  
 続いてくる、気持ち良すぎる自分の性器を締め付ける感覚に必死に抗う。  
「だい、じょうぶか、黒子……っ?」  
「はっ、ひ、だいじょ、ですの……」  
 息を荒げつつも必死に答える黒子を見て、どこが大丈夫なんだと思い、抱き締める。  
 黒子は腕の中で何度か震え、痛みの声を上げるが、暫くしてそれも止まった。  
「も、大丈夫ですの……動いて、ください……」  
 首に回された黒子の腕に力が篭る。  
 当麻は頷き、腰を前後に激しく突き出し始めた。  
 最初からトップスピード。  
 決壊寸前だった理性は、もはや枷をはずされ止まることなど知らず、黒子の未成熟な膣を犯す。  
 突き上げるたびに黒子の秘所から血と愛液が混じったものが吹きだす。  
 あらかじめタオルを敷いておいたから良かったものの、これを敷いていなければ大参事になっていた事だろう。  
 激しい水音が薄暗い部屋の中に響く。  
「あ、ひぁっ、や、これ、はじめてなのに、いや、いやぁああ、変になってる、わたくし変ぁああっ!」  
 ゴツリと亀頭部分に子宮口がぶつかるのを感じた。  
 少し腰を動かしてやると子宮口に亀頭が擦れ、快感が体を走る。  
「あっ、かはっ、息、もはひ、壊れ、壊れるぅ……っ!」  
 呂律が回っていない叫びが聞こえるが、当麻とて既に余裕はない。  
 先ほどから自分自身が爆発しそうになり、しかし、引き抜く事が出来ない。  
「く、あ、も、出る……っ!」  
「きす、キスをしてくださ、ひが、あはっ、キス……んぅ、んぐふっ」  
 頭をぶつける様にして唇を重ね合わせ、そのまま互いに貪りあう。  
 それと同時に当麻の分身が膨張の限界を向かえ、  
「―――ッ!」  
 ドクドクドクッと激しく波打ち、黒子の膣内に白濁の液体をぶちまけた。  
「じゅ、んんぐ、は、が、出てますの、なか、に出てますのぉ……ん、ちゅっ」  
「ぷじゅ、んぐぁ、ふっ、んんぅ……っ!」  
 なおも接吻を続ける二人。  
 
 その間も当麻の男根は放出を全く止める気配を見せず、ぶちまけ続けていた。  
 暫くして黒子が倒れると同時に男根が抜け、アーチを描くように白濁液が黒子の体にかかる。  
 そこで漸く射精が止まった。  
「はあ、はあ、はあ、はあ……」  
 お互いに息絶え絶えと言ったところだ。  
 もう既に黒子は限界だろう。  
 
 しかし、しかしだ。  
 当麻の中の欲望は未だにその勢いを衰えさせてはいなかった。  
 そもそも当麻の生活というのは常にインデックスという居候によって性欲処理が禁じられているような状態にあった。  
 
 簡潔に言ってしまえば溜まっているのだ。  
 
「……」  
 グッタリとした様子で荒い息を吐く黒子を見る。  
 すると、黒子はコチラの様子に気づいたのか――、  
 
  ○◇○  
 
「はあ、ふ、あ、はひ……」  
 凄かった、一言で言ってしまえばそんな漠然とした感想だ。  
 しかし、彼に愛されたというのは確かだろう。  
 その事を幸せに思いつつ、彼の顔を見ようとして――そこに獣を見た。  
「ひはっ!?」  
 目を見開いて、涙目のままロクに動かない体を腕を使って僅かに後退させる。  
 それでも、あの獣からは逃れられない、と黒子は感じた。  
「や、やぁ……」  
 だが、彼になら、と納得して、黒子は、上条当麻という名の獣に全てを任せることにした。  
「ひゃあああああああ!ひ、そこは、ちが、あんっ!?」  
 
 夜はまだまだ長い。  
 
  ○◇○  
 
「……なぁ」  
「なんですの、ケダモノ」  
 うわきっつー!と心の中で叫びつつ、上条当麻は自分の横で怒った顔をしている白井黒子を見た。  
「悪かったって、でも、あんまりお前が可愛かったから……」  
 そういうなり彼女は頬を少しだけ赤らめた。  
 お、効いたか?と思うとそれを読まれたかのように睨まれたが。  
「まったく……一睡もできませんでしたし、腰がガタガタですわ……」  
「でも凄かったよなぁ、お前の乱れようってごめんなさい嘘です、でも可愛いというのは本当でして、はいー!」  
「……はぁ」  
 彼女は溜息を一つ。  
 二人とも現在は裸で布団に包まっているような状態だ。染みはなんとかなりそうだから良かったものの、  
 タオルは完全にアウト。真っ赤に染まっていた。二重に折っておかなければ下まで染みになっていたかもしれない。  
「でも、これで……」  
 黒子が腕に抱きついてくる。  
「うおっ、な、なんだ!?」  
「うふふ、なんでもないですわー」  
 本当に幸せそうな顔で当麻を見上げてくる。  
 その笑顔が見れたなら少しくらい痛い目にあってもいいかもなぁ、などと思いつつ当麻も笑みを返した。  
 その時だ。  
 
 
 インターホンが押されたのか電子的な音が響いた。  
「やべ、モーニングコールか何かか?」  
「放っておけば大丈夫ですわよ。それよりも――」  
「ん?」  
 気になって振り向いてみれば、キスをねだるように黒子が顔を差し出していた。  
 当麻は苦笑を一つ、愛しさを篭めて黒子と唇を重ねた。  
 この愛しい少女と、ずっといられますように、とそんな幻想を抱きながら。  
 
 
 
 
 
 当麻が祈ると同時―――爆発音が響いた。  
 
「「はい?」」  
 二人の声が重なる。  
 目の前には粉砕された壁とその瓦礫が。  
 そして、そこに立っていたのは――。  
 
「みぃ〜つ〜け〜たぁ〜」  
 
 

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